緑の竜と赤い竜 〜僕が動くと問題ばっかり なんでだよ!〜

琴音

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一章 森の中の国

4 話し合いは続く

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 兄上は、後で詳細をアルフレッド様に聞いたんんだけどなって続けた。それによると……

 ガンブケの執拗な嫌がらせは続き、宮中の催しで顔を合わせれば毎回で、彼らは大人に見られないようにロベールを虐めてた。

「ロベール様、王妃はもう寝たきりだと伺いました。もう長くないのでしょう?」
「た、確かにそうだが、きっと母様は元気になられる。今はその……少し…」

 ほら見ろ。俺が言ったことは間違いない。もうすぐ王妃は死ぬんだよ。あなたはアルフレッド様とは違い、年齢より体も小さく力も弱い。

「王子なのに、母親の容態すら聞かされないとはなんとまあ。あなた、使えないということですね」

 ロベールは絶句し項垂れた。ロベールは言い返せず悔しくて手を強く握り黙った。確かにそうなのだ。父上たちは「きっと治るよ。お前が信じなくてどうする」と諭されていて、それ以外は母の見舞いくらいだったから。

「母様は……きっと治るんだ。お前の言葉など信じぬ!」
「ふふん。まあよろしいですがね。あなたが使えない王子なだけですから」
「なんだと!」

 悪口に耐えきれなくなったロベールは、ガンブケに殴りかかった。だが、簡単に抑え込まれ、取り巻きが加わり痛めつけられた。卑怯なことにアザが見えないようになのか、体ばかりを狙って。隣にいたリシャールは、手を出すなとロベールに言われていて、黙って見ていたが我慢できなかったのだろう。

「やめて!ガンブケ様もご自分の母様好きでしょ!やめてぇ!ロベール様!」

 リシャールはロベールに覆い被さり、ガンブケたちの攻撃を防いでいた。ふたりとも声を殺して泣きながら耐えていた。

「どけよリシャール!そんな役立たず庇ってもなんにもならないぞ!」
「なるもん!ロベール様はいい子だもん!優しいしかわいいもん!」
「そんなのは王族の能力に関係ない。賢く強いのが王族だよ。バーカ!」

 隅っこでふたりは殴られていたが、リシャールの泣き声に気がついた子が、王太子たちに知らせに向かった。

「アルフォンス!リシャール様がガンブケ様たちに殴られてるぞ!なんかおかしいんだ!」
「え?」

 アルフォンスはその子と急いで現場に行くと、リシャールはロベールを抱えてうわーんと大声で泣いていた。ロベール様、痛くない?大丈夫?と、泣きながら庇っていた。アルフォンスは、

「ガンブケ!お前なにをしているんだ!こんな小さな子をいたぶってなにが楽しい!」
「はあ?ロベール様が母上の死を受け入れないのでね。アルフレッド様はご存知でしょう?もう王妃は長くないと。それを知らなかったロベール様に教えて差し上げたまでですよ」

 子どもとは思えない醜悪な笑みを浮かべるガンブケに、アルフレッドは静かに黙れと。

「それをロベールに伝えることの意味は?」
「それはですね。彼だけが事実を知らないのは、お可哀想かと思ったのです。その時の心の準備のお手伝いですかね」
「そうか」

 アルフレッドはそう言うとサッと手を上げた。すると、近くにいた衛兵がガンブケ一味を拘束して、部屋から引きずり出した。ガンブケたちはやりきったとばかりに笑いながらだった。

「リシャール大丈夫か?」
「うわーん兄様ぁ」

 ふたりは自分の兄に抱き起こされ、なぜこうなったのかを聞き、拙い言葉で説明するのを聞いた。

「そうか。もうガンブケたちはいないから安心しな」
「うん。あっロベール様は?」

 リシャールは兄の腕から離れて、ロベールに駆けより抱きついた。

「ロベール様、どこも痛くない?あーおめめが真っ赤だね」

 リシャールはロベールを抱き寄せ、泣き腫らした瞼にチュッチュッとキスをする。

「痛くない?」
「うん。平気だリシャール。ありがとう」
「いいえ。ロベール様が痛くなければ。んふふっ」

 自分は殴られてボロボロなのに、笑顔でロベールを見つめてニコニコしていた。ロベールはリシャールの嬉しそうな顔に照れてしまい真っ赤。その時王子たちの側近なだれ込み、みんなそれぞれ連れて行かれて……




 なんてことがあったと兄上。その後からお前は宮中の催しにほとんど行かなくなったんだよって。

「ふーん。申し訳ないのですが、なにも……」
「まあなあ。四~五歳の頃の話だし、覚えてないのは仕方ないな。だが」

 兄上は、そこからお前は人と関わるのを嫌がり始め、ひとりでいることが多くなった。ロベール様にも近づくなとあちらから言われ、本当にひとりぼっち。それに、年上に話しかけられるのを嫌がるようになって、学園に入学しても図書館で本を読むだけになったんだと。

「そうですね。覚えてはいませんが、上級生とはあまり関わらないようにしてましたし、大人はもう……あはは」

 ふと父上を見るとブルブル体を震わせ、目が血走っている。あ……

「ヘルナー……あの家は子どもの躾すらできないのか。ならば俺が今からでも……コロスッ」
「父上はもう!それは後で王とご相談を。今はリシャールの縁談ですよ!」

 そうだよって母様も父上を諌めた。

「ムカつくけど今はその話じゃない。リシャールのこれからの大切な話しなんだ。落ち着けよ」
「クソッ王がヘルナーを放置してるからだ。そうだよ、リシャールは明るい子だったんだ。なのにこんなにして……」

 こんな?……なんも言えないけど、父上ひどい。それでも小さい頃よりは人付き合いも出来て、彼もいたよ?全部振られたけど。

「その原因だろガンブケは!」
「そうかも知れませんが……まあ、僕が弱いんですよ」

 蒸し返すなリシャールと、兄上に叱られた。それでどうすんだ?受けるのか?と。父上もイライラしながらお茶のカップを掴み、ぬるいお茶を飲みきった。

「断れはしないと思うがな。だが、今なら出来るかもだ」
「うーん……」

 ロベール様の妻……想像もつかないけど、僕はなんと家族に言おうか考えた。なんも思いつかなかったけど、

「あの、まずはお付き合いから……とか?」

 父上は両手を広げ首を振る。とても呆れた様子でね!

「ロベール様は貴族じゃない王子だ。その希望は無理だな。お前がそう言ったところで知らないうちに妃殿下教育が始まって嫁になってる」
「ゔっ……」

 とりあえず予告も来てしまったから俺が調整するが、受けることになるはずだ。心しておけと母様と立ち上がり、部屋を出て行った。あー……

「リシャール。俺はそんな悪い話しじゃないと思うぞ」
「そっかな」

 部屋に残った兄上は、優しげに話しかけてくる。

「きっとロベール様はお前を大切にしてくれる。今までの相手とは違うはずだよ」
「そうかなあ」

 兄上はロベール様の評判は知ってるだろうが、それは表面だ。今や王太子よりも魔力が多く、何もかも彼の方が上。民にも慕われる王子なんだ。問題がなくはないが、俺は勧めると。

「なら、前向きに検討します」
「ああ。だが確定だからな」
「はい……」

 それにお前は、あの頃ロベール様が好きだったはずだと言う。まぶたにキスする姿は、とても愛しい者にするキスだったからって。

「でもそれは子どもの頃の話しでしょ?」
「ふたりともかわいかったぞ?」
「そう?……まあ、断れないなら頑張ります」
「ああ、俺は応援するよ」

 そしてひと月後、僕とロベール様の婚約は正式に決まったんだ。


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