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五章 流れに身をまかす

4 疲れたのかな

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「うーん……」
「なんですかカミーユ」

 子供部屋で息子を撫でて歌っている。貴族は自分で子育てはしないが、授乳期間の母親は子供部屋でほとんど一緒に生活するんだ。庶民は同じ部屋でいつも通りらしいけど。

「あのね。初めはキャルに似ててかわいかったんたけど、どうもぼくに似てきてない?」
「そう?いいじゃないの?」
「いや……ぼくに似てくるってことはアンかもしれないでしょ?」
「別によくない?」
「よくない。初の子は父親似のほうがいいってライリーが言ってたもん」

 グッまたライリーか……余計なことを。
 あちらの国は属性関係なく能力で当主にはなるけど、基本初めの子がなることが多い。アンなら大変かなってぼくは思うんだって言ってたようだ。

「まあねえ。でも僕は、領主をやりたくない者に跡を継げとは言わないよ」
「うん……」
「最悪父上の身内からここをやってもらうって案もあるんだから」
「うん…」

 カミーユと囁いて、抱き寄せ首筋にキスした。

「んふふっキャルったら」
「抱きたい」
「うん」

 カミーユを抱っこしてベッドに……は無理だから乳母にあとを頼んで隣に移動した。

「今日からいいんだろ?」
「うん。お医者さんはもういいよって。でも体のために一年は開けたほうがいいよって」
「分かった。ならこれ飲んで」

 カミーユに不妊のポーション飲ませて、押し倒して撫で回した。ここ最近カミーユが近くにいるとムラムラ。

「硬いな……」
「ハァハァしてなかったら……グッ」
「痛い?ごめん」
「違う……その…気持ちいい…」

 なんだか仕事の頃を思い出した。僕に会いたくて、半年に一度くらいお金貯めて来てるれる客がいたなあって。自分にご褒美のつもりで来ていたそうだ。その人は早くに夫を亡くして再婚しろって身内に言われるのを嫌っていた。愛してたから別の人はないって。
 そんなある日、街に仕事で来て宿屋でぼんやり階下の酔客の言葉が耳に残ったそう。街一番の娼館にきれいな人ノルンがいるって聞こえて、興味で来たら僕がいた。
 彼の夫は美しい男だったようで、彼は僕に夢中になったがお金はムリ。だから半年に一度一晩だけ。

「アルフォンソ…愛してる……」

 そう、彼は夫に会いに来ていたんだ。僕は似ているらしかった。だから僕は彼の夫になりきって奉仕してた。

「ミシェル…愛してるよ」
「僕も……アルフォンソ……」

 なんて、硬い穴に古い記憶が蘇った。

「キャルもういい…よ」
「うん」

 僕はズブリと押し込むとグチュリと溢れる……堪んねえ快感に僕はブルッとした。

「ああキャル……嬉しい。しかたったんだけど許可が下りなくて」
「うん。ビチョビチョだもんね」

 愛液が溢れて股間からもトプトプと。入れただけで射精していた。僕はカミーユの匂いに正気を保つのが辛い。

「愛してるキャル」
「うん。僕もあなたを愛してる」

 久しぶりだからゆっくりカミーユに合わせて動かしていると、グッちぎれる!

「あ、ああ……キャ…ル」
「うん。またイッたね」
「気持ちい……」
「少し我慢できる?」
「うん」

 僕もイキたくて溢れる愛液をグチュグチュしながら……グッウッ!中にドクドクと……やべぇいい。動かしてると僕のもカミーユのも溢れてくる。

「キャルの匂い好き……この強い匂いが…」
「ふふっ僕もだ」

 ふたりとも久しぶりで盛り上がってその後二回。カミーユが弱ったから終わり。萎えて抜くと溢れる液にゾワッとして勃ったけど、我慢!根性で元に戻した。

「キャル抱っこして」
「うん。ウォッシル」

 なんかスッキリしたと微笑んでキスした。

「抑制の匂いがこのところなかったろ?僕は我慢するのきつかったんだ」
「ふふっぼくも。キャルの匂いに勃って、お尻も漏れちゃって……えへへ」

 なんてかわいいんだ……お母さんになってもカミーユはなにも変わらず僕の愛しい人。多分僕は父親になりきれてはいないだろうと感じる。カミーユを妻としか見ていないんだ。伴侶としか認識出来ていないんだ。だからこんなに欲しくなる。

「いいよ。あなたが産んだわけじゃないからすぐにはムリだよ。ゆっくり父上になってね」
「うん。ありがとう」

 僕は口で言うほど父親になれはしない。本当の心の奥底が変わらないんだ。僕はきっとどこかが歪んでいると感じる。
 番、夫婦、恋人。頭では分かっているんだ。あの事件以降、苦労してる人に比べれば吹けば飛ぶような些末なことだろう。だけど、僕が壊れるのに十分な時間だったと、息子のアンリが生まれてから強く感じるようになった。

 金を出せとやってくる領民をさげすむ気持ちが湧いてくる。笑顔で対応はしているけど、見下す気持ちが湧くんだ。浅ましく浅慮、一時の感情に振り回されるバカな奴らと。
 僕がこれだけ世話して損もしない運営してるのに、それを否定するなど、彼らに侮蔑の気持ちが振り切れない。
 反対に元奴隷の民にはいやらしい優越感を感じる。自分が慕われていることに恍惚とする時すらある。興奮で股間に熱が集まることもあるほどの、浅ましい「してやった」という達成感に悦んでいるんだ。

「キャル?」
「ふふっ寝ようか」
「うん」

 カミーユを抱いて目を閉じる。
 僕はアセベドとは血の繋がりはない。過去にも母方から嫁や婿が行ったこともないはすなんだ。だけど幼い時から父の悪行は耳には入ってはいた。それの意味はとおも過ぎれば分かるようになる。
 僕は意味が理解出来て……その時どう思った?なにを感じた?民が可哀想とは思ってはいた。それは嘘じゃない。貴族の世界はその行為が当たり前だと言うように話す者ばかりで、それはおかしいとは思っていた。
 本心でおかしいと考えていたのか、相手に不正か何かがあってのこととは考えなかったのかと、自分に問う。アセベドが暗殺していた貴族にそんな感情を持たなかったのだろうか?

 その問いを考えると、僕はアセベドの子なんだと思うしかない。幼い頃の海綿が水を吸うように、そう言った悪い部分も素直に吸っていたんだ。だから簡単に悪い考えに行き着く。
 腕に眠るカミーユは純粋の塊だ。王族はそれこそ見聞きすることが多いはず。なのにこの純粋さは奇跡だと思う。元々の彼の性格もあるんだろう。コンラッド様や、セフィリノ様は裏がある感じはするからね。末の子だからか……いや、人を信じたい、信じるんだって強い意志があるのかも。

「あなたが言うようないい子ではなかったんだよカミーユ。僕はね」

 純粋では王族も貴族も生きていけない。隙は死やそれと同等な破滅に繋がるからだ。だけど、うちの王族はみな貴族に比べれば準好きに生きているように僕は感じる。始祖の言葉が残っていると昔習ったな。

「民は国の宝。民の平穏、安寧を最優先を心得よ」

 それが初代国王の言葉だ。その言葉を心に誓い育つからだろうか……それが出来る時代は家臣も忠実で、王族を支えようと力を合わせていたんだろう。記録ではそう書いてあるし。

「そんな時代に生まれてカミーユと幸せになりたかったな。苦労を知らず、お気楽な性格のまま幸せに……」

 出来もしないことがつらつらと思い浮かんだ。カミーユが女の人に会ってみたいってことと変わらないな、これじゃあね。接客で身についた受け流す力を超える者が現れないことを願うしかない。

 小さな声で「この幸せはかりそめなんだよ」と、頭の片隅で何者かが言う。カミーユのお腹の紋を見てから僕はおかしいんだ。感情のゆらぎが大きく、アンリが産まれてからは強くなる。こうして快楽に身を委ねても消えはしない。

 自分が変化の大きい人生を歩んでいる自覚はある。疲れてるのかな。結婚式が終わったら少し休もう。ヘラルドに任せて……ね……

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