月の破片を受け取って 〜夢の続きはあなたと共に〜

琴音

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最終章 僕が来る前に戻った……のか?

5 おにぎりとお茶会

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 おにぎりうまっ!何度食べても美味い。みそがまたいい。

「うーん……食べ慣れないせいかな。美味いけどうーん」
「分からなくていいの!」
「そうか」

 タラコかシャケが欲しくて探したけど、シャケっぽい魚は見つけた。ケンプフェルに売ってたんだ。だからうちの領地の商会に頼んで、毎月少しずつ納品してもらってる。のりがあれば最高だけど、この世界では食べないらしい。昆布もね。昆布は説明して取ってきてもらって庭で干してね。うひゃひゃ美味いんだこれが!

「俺はなんでもしょうゆの味に感じられて、全部同じ味のような……」
「いいの!」
「そうか……」

 アンジェや屋敷の人の評判は微妙だけど、いいんだ。僕が幸せならばね!今ちょっとしたお金が僕にはある。報奨金が出たんだ。お前の分だとアンジェがくれたの。

「個人的に欲しいものに使えばいい」
「ありがとう……お金コインなんだね」
「うん?」

 僕の世界では紙とコインの二種類あったんだと説明した。紙は不味いだろ?燃えるしって。

「魔法のない世界では、簡単には燃えません」
「そっか」

 革袋を開けると金と銀、銅色のコインがあった。金は初代の王様で裏は王妃。銀は今のハルトムート様、裏はエルマー様。銅は城の絵と裏は国の地図だ。へえ……

「他国ではその国のお金が必要だな」
「為替は?」
「カワセ?」
「ないのか。ふーん」

 何だそれはと聞かれたんだけど、色んな数字が絡んで出てくるから簡単には説明できない。簡単に説明するなら……いや、いらないな。

「金は金に変更?」
「うん」

 等価交換か。ほほう。

「さっきのは僕の世界の話で、ここには必要ないんだ。ごめんなさい」
「いいや。未来の世界は面倒臭そうだな。シンプルに考える方が楽だよ」
「うん」

 世界が広がり、ここのようなやり方に問題が出て出来たシステムなんだよね。ふふっこのままがいいかな。優しい世界が続くといい。

「なに笑ってんだ?」
「うん。アンジェとこの優しい世界で生きたいなって思ったの」
「俺もだ」

 僕はほぼ白の賢者の仕事はなくなり、お茶会は頻繁にある。うん……厳選するかな。エルマー様とリーヌス様、シリウス様の奥様ルイーズ様の所は楽しいから行こう。後はハンネス様の奥様と……いやいや、これではアンジェの友だちか身内だろ。うーむ。招待状を見つめて唸っているとカールがなにをお悩み?と僕の手元を覗き込む。

「たくさん来ててね。全部出席したら週二回は出かけていることになる。僕こんなに行きたくなくて、時々お断りしようかと思ったんだけどさ」
「ああ。そうですね」

 この避けているのは行きたいんですね?と聞かれてうんって。なら……これとこれとと分けてくれた。

「うちが仲良くしているお家とそうでないお家ですね。この仲良くしてないお家は、お二人をよく思ってません。賢者だ聖者だと幅利かせてと、陰口を言うお家です」
「ああ、だからみんなエルマー様のところでしか見ない人なのか」

 奥様は旦那様とは違う繋がりがあったりしますから、エルムント様に分けてもらうといいですよって。

「うん。ちょっと行ってくる」
「はい。いってらっしゃい」

 コンコンコン

「エルムント忙しい?」
「少しなら。どうされました?」

 僕はたくさんのお手紙を持って、エルムントの机に並べた。

「ふむ。お茶会の招待状ですね。これがなにか」
「あんまり多いから、少し行くのを減らしたいんだけど、お断りした方がいいお家が分からないんだ」
「ほほう。では拝見」

 最近はエルムントやアンジェの選別がなく、僕にお手紙をくれるから彼は見てないんだ。

「こんなもんですかね。こちらがお断り。こちらはぜひ参加を」
「うん。ありがとう」

 確認してみるとカールが分けたのと同じかな。

「あのさ。僕らを悪く言ってるお家ばかり弾いたよね」
「そりゃあ行っても楽しくありませんから。奥様同士の繋がりがあるのはありますけどね。旦那様とは違う繋がりですので、ご自分で作るのも楽しいかもですが、初めは様子見です」
「うん」

 エルムントは改めていいますが、この家は公爵家です。あなたの実家とは元々仲がいい。フリッツ様の人徳ですが、大臣職の人が全部旦那様と仲がいい訳でもない。表立っては言いませんが、敵対する家があるのも当然です。
 例えばユリアン様は、始祖の二番目の弟の家柄です。うちは始祖の三番目の子の家柄で、同じくそれが脈々と続いています。王家の一員であることは変わりませんと、エルムント。

「はい」
「わざわざ敵対してるお家の方とは付き合わず、エルマー様のお茶会のみになされた方が、私は得策と考えます。他の方とお付き合いしても変わらないと思いますよ」
「そっか……」

 そうだよね。アンジェの足を引っ張るなんてなっても困るし、僕よく知らない人ばっかは辛いし。

「でも御学友の方はいいかもですね」
「うん」

 やっぱり社交は面倒臭え。この際身内のみで行こう。そこに来られている方を優先しよう。うん。とかいいながら頑張ってお茶会に出席して、リーヌス様がお前もやれとせっつかれた。仕方なく、リーヌス様とシリウス様の奥様ルイーズ様、オットー様の奥様ポラール様とハンネス様の奥様フロレンツ様をお呼びした。気心の知れてる方ばかりだけどいいよね。

「お招きありがとう存じます」
「いいえ。楽しんでいただけたら」

 僕はグレゴールに頼んで、精一杯のおもてなしをしようと頑張った。まあ、彼の物は全部美味しいから問題はない。だけど僕は甘いものは好きだけど、箸休め的にキッシュやサンドイッチ、サレとかもお願いしたんだ。

「お茶会に珍しいですね。サレなんて」
「甘いものばかりだと僕が辛くて」

 あら、クルト様は舞踏会でもたくさん召し上がってますよね?って言われたけど、実は交互に食べてた。あはは……

「ならクルト様はうちのお茶会好きだろ」
「ええリーヌス様。初めてキッシュがあるお宅にお邪魔しましたから嬉しかったです」
「だろう?僕も甘いのだけは苦手なんだ……あはは…」

 美味しいとみんな喜んでくれた。お茶も美味しいですって。これはアンジェの好みで、僕は何もしていないんだ。

「どちらから仕入れてるの?初めて飲みました」

 オットー様の奥様フロレンツ様は香りがいいですねって。

「アンジェの商会からのようですね」
「ふーん。ならこの領地にしかないのかしら」
「たぶん」
「なら帰りに寄りますね」
「ありがとうございます」

 なんて当たり障りのない会話から、僕のことに話しが移った。

「クルト様は、今たくさんお茶会の招待状が来てるだろ」
「はい」
「それな……」

 捲し立てるように西の〇〇様、北の〇〇様と〇〇様は絶対行くなって。

「はあ、なぜですか?」
「ベルントの頃に嫌な思いをたくさんして恨んでる。そして白の賢者の活躍も、それで商売を拡大していることにも不満を持っている家だよ」
「ああ」

 みんなウンウンって。まあ聞けってリーヌス様は、ベルントのことは天に帰ったからまあいいとして、白の賢者関連のことだと言う。

「なんででしょうか?」
「この公爵家は古い家柄で、しきたりを重んじるはず。なのにノルンの夫と共に戦場に行くなんてけしからんとさ」
「でも行かないと困るのはそちらでは?」
「それは分かってるんだ。アンが表に出ることが嫌なの」

 それは仕方ないだろ。僕が今期の賢者なんだから。そこを文句言われるとなんも言えない。

「ノルンばかりの所でアンジェがいるとはいえ、ふしだらだそうだ」
「はあ?僕アンジェ以外目に入りませんが……」

 そう言ってるジジイどもは、自分がふしだらなんだよ。愛人たくさんで子どももたくさん。奥様との子ともがいるにも関わらずな。そしてその子をゼェメに嫁がせたそうだ。うんそれは知ってる。

「外の力を手に入れたいんだろうね」
「はあ。でもあちらの人は幸せだそうですよ?」
「それとこれは関係ない。ジジイが考えることだから」

 あー……こんなところが貴族面倒臭え。貧乏国なりに稼ごうとしたり、姻戚で幅を利かせたいって思惑か。

「クルト様はポヤポヤし過ぎ!」
「すみません……」

 ふしだらで騎士と交わって楽しんだんだと、根も葉もない噂流されてんだよって。

「マジで?」
「マジで」
「僕はアンジェとしか……ああいった戦いは興奮するんです。生と死が近くて性欲に結びつく。だから……」

 そんなのはみんな分かってるから、ハイハイと仲のいい方は流してるけど、僕らの周りではない方は信じてしまうそう。嘘だろ……自分の夫を見れば分かりそうなもんだけど?

「でもノルンばっかだからなあって。アンジェも病から復活したからもしかしたらってな」
「んな訳ないですよ。アンジェは今でも求めてくるもん。よその人いらないって言ってくれてて…」

 はあ……と全員ため息。なんで?

「アンジェがそんな生き物だってみんな知ってる。だけど、今ラングールとフリートヘルムは注目の的だ。観光客も多く、買い付けの商人も増えている」
「ええ。それは」
「それにワイバーンの調教もアンジェが始めた。ヘルテルに航空部隊を借りなくてもやれると見せつけてる」
「あ、はい……」

 それにラングールはアルバン兄様が品種改良して、ワインの味が多岐にわたるようになり評判もよく、ゼェメにもたくさん出荷している。クソ儲かってんだよとリーヌス様。

「確かに多少の嵐では民は飢えないようになったと、兄様言ってました」
「ただの妬みだよ」

 ルイーズ様がボソって。うちはヘルテルが実家だ。僕がこちらに嫁に来たから、実家も同じようなことを言われた。自分のところだけ食料確保かとか、安く何か仕入れているんじゃないかとか。酷いな。でも商売とかそんなのでこちらに来たんじゃない。シリウス様が仕事で来て、たまたま踊ったら見初められただけ。彼はどこの子だなんて気にもしてなかった。なのにと哀しそうになった。

「どの国にもあるんだよ。一見仲がよくてもね。人を貶めても自分が上になることなんてないのに」
「はい……」

 フロレンツ様はリーヌス様は言い過ぎだよって諌めてくれた。確かにクルト様はそういったものに疎い。でも仕方ないところがありますよって。

「ありがとうございます」
「でもね。アンジェに頼ってばかりはダメ。ご自分で気をつけないとね」
「はい……」

 まあいいや、ここまでだとリーヌス様が終わらせて、こないだあげた本は役立ってる?と聞いてきた。はて?

「ベッドは楽しかろう?」
「へ……あれあなたなの!」
「うん。ユリアンに持たせた」

 他の奥様もビクッとして真っ赤になった。全員にあげたのか!

「いやあ。愛し合うって楽しいだろ?気持ちいいし。なら夫にも頑張ってもらわないとな」
「あ、あなたなのね!」

 フロレンツ様が叫んだ。意地悪されて意識がぶっ飛んだだろって。ほほう。

「いいでしょ?」
「……いい」
「ルイーズ?」
「ハッはい!」

 モジモジして真っ赤だね。だよね……

「交わるってさ、子ども作るだけじゃないよねえ。みんなお母様だけど、それとこれは違うもんね」

 みんな無言……ダラダラ汗かいて真っ赤だよ。毎回リーヌス様の会はこういう話になるんだ。エルマー様の会は大人しくしてるけどさ。年齢なんて関係ない。いつまでも交わればユリアンみたいにツヤツヤだよって。

「あ、あのねリーヌス様。下の話は毎回どうなの?」
「あん?僕はみんなの性生活を充実させてだな。子どもいっぱいで、愛し合う番を見るのが大好きなんだ!僕は変態ユリアンをとても愛してる」
「あはは……」

 ユリアンは外でなにかしてるかもしれない。でもそれが僕に還元されれば問題なし。僕好きなんだよねえって。抱くのも抱かれるのもさって。

「アンジェは抱かせてくれる?」
「ないですよ」
「みんなは?」

 首を横に振る。なんだ残念だなあって笑った。あの本にはやり方とかたっぷり書いてあるのに。図解つきでねえって。どんなエロ本だよ。黙ってたらこーしてあーしてとか手振り身振り。やめれ!

「リーヌス様。気心が知れているとはいえ、やり過ぎ」
「ホントです。下品ですよ」
「うー……どの国の人も繋がるのは好きなくせに!」
「そうだけど!口にしちゃダメ!」

 フロレンツ様が真っ赤になって叫んだ。でもリーヌス様は、だってよそ様のベットの中興味があるんだもん。自分を開示すればみんな話してくれるかなと思ったんだもんって、いい年こいてかわいくえへって。クッソッかわいい。この人いくつになってもかわいいんだな。反則だよ。

 そんなエロ話でお茶会は終わった。僕がホストのはずだけど、リーヌス様のお茶会となにも変わらず、場所だけ僕んちになっただけだった。あはは……






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