月の破片を受け取って 〜夢の続きはあなたと共に〜

琴音

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最終章 僕が来る前に戻った……のか?

4 僕のセンスのなさが…… 

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 翌日も城下町を練り歩き、記憶した街を再現していった。この国は城をぐるっと囲むように城下町があって、とても広い。うちも似たようなもんだけど、僕らの国のお城の後ろには低い山があって、三日月形に城を囲み街があるんだ。でも僕は自分の領地も王都もまともに歩いたことはない。貴族の奥様は馬車ばかりで、街を歩くことなんてないんだよね。
 それに、他国は建物の雰囲気も違うんだなあなどと思いながら、街の内側から順繰りときれいになっていった。そして数日かけて半分くらいきれいになった所で、ここまでと言われた。ここに城壁を作ってくれと。

「地図でも確認しましたが、だいぶ小さくなりますが、いいのですか?」
「ええ。人もいない国です。まずは小さく民が住んでくれる街にしたいのです」
「かしこまりました」

 そこから外周の壁を直して行ったけど、まだ道半ば。日が西に沈む頃城に帰って休息。全部で十日ほどで街は完成した。だけど建物は枠だけでなにもない。窓も扉もね。人がやってきたら希望を聞いて作るそうだ。
 この期間、ふたりの賢者は本当に帰って来なかった。城から遠く離れた地方に行くから、城に戻ったりは時間の無駄。いくら騎獣があっても、時間を無駄にはしたくないからとお二人は言っていた。

「いちいち帰っていたら無駄だ。それこそいつ終わるか分からぬ」
「そうだ。適当に空き領主の屋敷を復元しつつ泊るさ」

 そう言って自国からの料理人を従えて行ったんだよね。僕は翌日から完成した城壁の外に向かい……あっ!遠くに人がいる。

「この辺り……農夫の方がいる!」
「ええ。残ってくれた民です」

 シュタルクの頃からの民で、聞けばこんなのは慣れっこだと残ったそうだ。その考えがすげえ。前と違っただろうに。

「ならば僕は頑張ります!」

 元は牧草地だったのかな?って場所で、馬車を降りてぐるっと範囲確認。グワッと全力で土地の活性をさせる魔法を展開。僕を中心に薄く広く魔力の光が円形に走る。そしてここからが本題だ。民には気持ちよく暮らして欲しいもんね!人のいるところに移動して趣旨を説明した。

「あのね。あなたはどんなお家がいいですか?場所はここでいい?」
「……ハッはい!ここで構いません!家は……俺と妻、子どもが一人です」
「お部屋はいくつ欲しい?」

 えっとその、冷や汗かきながら、そんなの考えてなかったからどうしようって。急に聞かれてもわからんとご夫婦でワタワタ。土地だけだと思ってたから、なんも思いつかないと悩んでいる。

「あの、夫婦の部屋と居間とキッチンと子供部屋を二つ……二階建てかな。ね?」
「え?ええ!それでお願いします。あ、馬小屋も」

 農夫のご夫婦はいきなり僕らが来て落ち着きがなかった。来るとは聞いてたけど、いつとは言われてなかったそうだ。それに土地も建物も彼らには賢者の再生の記憶はなく、じいさまの、そのずっと前の代にあったと、昔話しで聞いただけと話してくれた。

「ふーん。なら外見はどうする?」
「へ?クラネルトふうでもなんでもお好きに!」
「希望はないの?」
「え?ええ?おいなんかあるか?」

 奥様はうーんと考えてかわいいのがいいって。農家らしい家もいいけど、街のお家みたいなかわいいのがいいって。よしっ僕の記憶をたどり……

「エクスキュレージョン!」

 おお……と農夫の夫婦は眺めていた。そして完成すると奥様がわあって、満面の笑みで喜んでくれた。なんかロマンチック街道とかにある白い壁で、木が剥き出しの木組みの家を作ってみた。

「見たことないものだけどかわいい。出窓がある」
「ありがとうございます」
「いえ!こちらこそ!」

 中に入るとうわーって喜んでくれた。広くなったしとニコニコしてたけど。うんと、いきなり黙った。なんで?

「家具が浮いてるな」
「うん。仕方ないよ」

 新築に恐ろしく使い古された家具たち。どうする?って。買い替えは店がないし、俺たちは作る能力はない。いつか店が出来たらだなと肩を落とした。ステキなお家なのにと、ふたりで見合って苦笑い。

「じゃあサービスだ!えい!」

 この世界の家具を再構築。衣服や食器とかは無理だけど家具だけならね。

「うわっ…貴族のお家みたいになった……」
「でも、農家にこれは……」

 彼らは今度は絶句。僕んちにある感じのを小さめに作ったんだけどね。お店とかもこんなだったし。

「ごめん…僕農家の家具とか知らないんだよ」
「い、いいえ!ありがとうございます!」

 盛大に感謝されてそのお家をお暇した。そしてまた土地を活性化して移動。さすが外周、終わらねえ。持参したお昼を食べて再開。ポツンポツンと残る農家のお家も再生。フーゴ様は色とりどりで、不思議なお家ばかりになりましたと笑った。

「ごめんなさい。僕の知識の貧弱さが……」
「構いません。ありがとうございます」

 僕は数日農地を回り、土地を活性化しながら歩いて(当然馬車も活用)無人の領主の屋敷も復活。意見は聞かねえとばかりに元に戻しただけ。使う人が微調整すればいいかなと。
 そして初日から二週間が経つ頃、おふたりが帰って来た。さすがに賢者三人は早かったね。その日の夜、みんなでお話しながら夕食を取った。

「それは以前より狭い範囲だからだよ」
「そっか」

 シュタルクの頃の半分以下。僕らの国より狭くなったんだ。他はいらないって王様は言うから。いつか時が経ち、自分の後の者が広げたければすればいいってクラウス様。

「あの失礼ですが、クラウス様は奥様やお子さまは?見かけないのですが。どこかに避難されてるのですか?」

 ああと恥ずかしそうに頭を掻いた。

「三十も中だが結婚してないんだ。恥ずかしい話だが、遊んでて婚期を逃した」
「ああ……」

 アンジェも僕も頭にユリアン様が浮かんだ。やりそうかって見た目だもんね。今は大分落ち着いた感じで素敵だけどさ。これがイケイケならもうね、遊び放題だろう。お二人の賢者もウンウンと頷く。
 私も王のような見た目に生まれていれば、さぞかし……とオスヴィン様は残念そうに話すと、がははと盛大に笑った。ないものねだりはなあって。彼はハンネス様に近いガッツリむっちりのゴツいお顔。イケメンの種類が違う。

「あはは。オスヴィン様は見た目が良くても遊べないだろう。あはは」
「あなたもだろう!他人事みたいに言うんじゃない!これは我らの……だな」
「まあな」

 おふたりは昔からよく顔を合わせていて、仲がいいらしい。賢者のお友だちかあ。ちょっと羨ましい。

「ヨルク様は若い頃はそれは美しかったんだ。あなたはモテただろ?」
「いいや。冷たく見えると嫌われた」
「そう?」
「アンからとノルンからの評価は違うんだよ」
「ふーん。そんなもんか」

 アンジェはヨルク様の若い頃の記憶があって、ものすごいイケメンだったけど、眼力がありすぎてなって。睨まれてるって感じる方が多かったよって。

「へえ……ステキだっただろうって見た目だけどね。年取ったら目尻が下がったのか、今は優しげだね」
「ああ」

 僕らがヒソヒソ話してたら、クラウス様は私だけじゃないんだと苦笑い。

「ここの貴族は誰も結婚していない。する前に王位継承問題が起きてしまってね。結婚どころじゃなくなってしまったんだ」
「ああ。なら、これからですね」

 あー……とあちらの貴族がみんな目を伏せ、王は、

「嫁が来るかどうか。こんな評判の悪い王に嫁ぎたいなんていないでしょう。他の貴族もね」

 フーゴ様も困ったなと笑う。ふたりとも三十ちょっとで、アンジェと近い。まだ余裕でしょう?と言うと。

「民でも誰でもいいんですがね。いかんせんアンがほとんどおりません」
「あ……」

 とっくに逃げちゃって国に残るアンは番がいる人ばかり。落ち着いたら紹介してと言われた。

「私どもは心から反省しております。貧乏だけど番は大切にしますから」
「はい」

 こちら側はかしこまりましたと返事はしたが、みんなどうだろうと目が言っていた。でもこの見た目なら……かな。北の方の特徴で真っ白な肌と赤や紫の瞳がとても美しい。サラサラの銀髪にエルフのような整った顔立ちだ。このあたりにはいない種族で、本気で見目麗しい。これなら誰かしら来そうだよねと、アンジェとヒソヒソ。

 翌日の朝、城が借りてる航空部隊が迎えに来てくれて帰還した。後は王の努力しかないんだ。きれいな街に人を呼ぶのは王の力だもの。




 あれから二年過ぎた。ゼェメの王様はお嫁さんをもらったんだ。フーゴ様も他の方もね。うちの国や二国、近隣の国の貴族が多いかな。それに王様だと城でふんぞり返らず、街に人が来るたび視察して民と交流していったそうだ。農地に来たいって人には初めはフーゴ様が行ってたけど、途中で雇った魔法使いを派遣して希望の場所に家を作ったり、土地を渡したりした。

 街が落ち着きゆっくりと人が流入してたのが、街の賑いを聞きつけた元の住人らが戻りたいと希望して、それも受け入れたら一気に人が増えた。それでも少ないけど、どうにか国としての体裁が整いつつある。僕らの国も足りない分の野菜や麦、家畜を売りに行ったりね。

 賠償金やツケはまだ待ってと言われているけど、あと少しで返し始めるだろう。空いている領地には近隣の子だくさんの貴族の息子たちが行ったりして、地方もいい感じだそうだ。

 そうそう!暗黒の森の街道は復活させたんだ。安全になったからね。そんで作る前にバルナバスにあいさつにいったら「またうるさくなるのか」とブルルと鼻で返事された。

「ごめんなさい」
「まあいいがな。それとワイバーンか。いるにはいるが、あの討伐以来数が減ったんだ。あんまり連れていかないでくれ」
「ああ。まず数匹からだから増えるのを待つよ」

 そうしてくれとバルナバス。まだ、あの討伐前には戻ったないんだよって。見た目はいいだろうが、生き物はそう簡単には増えないんだそうだ。

「それと竜種は発情期にアンを取り合って暴れるから、森に施設を作るといいぞ」
「ああ、ありがとう」

 竜種は小さくても増えるスピードが人間とは違う。年に一匹産むとかじゃなく、何年かに一度発情期が来て、卵を四~五個産むらしい。それが大人になるのは半分だそうで、森では小さいうちは他の獣の餌になったりで、全部は育たない。

「大量に連れて行くなら十年は待て」
「いやいや、ワイバーンを飼える家は少ないからそんなには」
「ならばいい」

 まだ馬車の代わりになんて考えてるのは、今は城の騎士たちくらいだからね。民が普通に使うには、相当時間がかかると思う。そんなやり取りの後街道を復活。冒険者の需要も増え、なおかつ街の輸入品の値段も下がった。迂回が必要がなくなったからね!

「落ち着いたな」
「うん」

 僕はいい年になったけど、相変わらずアンジェの脚に跨る。僕はお嫁に来た頃のアンジェの年になった。アンジェはもうすぐ四十。でも見た目は若いんだ。

「お前と交わってるからだろうな」
「そっかな」
「うん。俺ヨルク様に聞いたんだ。うちの妻は同い年だが四十そこそこにしか見えない。きっと俺のおかげだって言ってたんだ」
「ほほう」

 どうも白の賢者の奥様は、若さを保ちやすいそうだ。見た目だけなのか、中身もなのかは分からないけど歴代そうだって。あー…確かに母様見た目若いな。でも僕に途中で代わったから効果が弱いのかな。年より少し若いくらいか。

「俺がジジイなった頃は同い年に見えるかもな」
「いいねそれ」

 なんの効果かは分からないけど、年の差を感じなくなるのはいい。他人からそう見えたら嬉しいな。

「なにしてんの?」
「うん?」

 僕のお尻をペロンと捲りズブッ

「ああ……んんっ…いい」
「だろ?」

 では本日は下がりますと、ローベルトはスタスタ扉を開けてといなくなった。もうアンジェのやりたい放題に家臣の方が諦めた。旦那様は極端だよとロ、ーベルトはよくブツブツ言っている。カールも昔のまんまだなあって大笑い。エルムントは無表情になり反応はなくなった。怒るだけ無駄と諦めたようだ。ただ、

「それだけやってんだったら子どもを増やして下さい。領地はワイバーンのこともあるし、領主一人ではやれなくなりますから!」
「そうだな」

 それでね?あの後もう一人産んだんだ。かわいくてアンジェそっくりでさ。でも中身が僕っぽいんだ。だから育つのが楽しみだねって。

「アンジェ……ああ…ふっ……」
「なんでこんなに求めたくなるんだろうな」
「番だから?ハァハァ……イク…」
「いいや。俺がお前をとても愛してるからだ」

 優しい僕の大好きな笑顔を……んグッ

「んーっ」
「イッたな」
「ダメだ……ハァハァ年々持たなくなってる……」

 アンジェのちんこいい。ていうかいいところを知り尽くして狙ってくるからか?

「かもな」
「ホントに?」

 僕がカップルが長く寄り添うと、倦怠期とか言うでしょ?慣れてつまんないとかさと聞くと、

「なにそれ。聞いたことないな」

 おお…ぅ。番システムには倦怠期は存在しないのか。飽きねえってことだよね?それすげえな。マンネリは?と聞くと、なにそれって。

「相性のいい番はマンネリも飽きるもない。やることは一緒でも、いつも愛しく気持ちいいものだよ」
「へ、へえ……」

 よいしょと繋がったままアンジェは立ち上がり寝室へ。僕を押し倒す。

「俺はまだ果ててない」
「んふっアンジェ……」

 僕は食べるようにキスしてくるアンジェの首に腕を回し、身を委ねる。彼の触る手は気持ちいい。乳首を捏ねてつねるのも……グッ…

「摘むと締まるな」
「ヤメて!何年経っても報告はいらない!」
「なんで?」
「だって……恥ずかしいもん」

 ぷっと笑う。ベッドの中のアンジェは最近特に意地悪だ。僕が恥ずかしがってるのを楽しんでいる。新婚の頃とは別人だよ、ったく。

「もうイクだろ」
「うーっ言わな……いやーっ」

 強く僕のちんこを掴む。なにすんの!イケないでしょ!

「グッもげそ……」
「離してぇ!」
「イヤ」
「ぐるじぃ……出したいぃ~」

 さすがに毎日求めるなんてなくなったけど、それでも多いんだ。僕も嬉しくて求めに応えるが!コレきついっ

「堪らない…お前のその顔は……この締付けもな」
「ふえっ…アンジェ…僕おかしくなるぅっ」
「なってくれ」

 グチュグチュと押し込まれ出せなくて、朦朧としていると中に熱いモノが溢れた。

「ア、アンジェ……も…」
「出しな」

 手が緩むとおしっこ漏らしたみたいに……いやあ!叫ぶように声を上げると、唇で口を塞がれた。

「んんっあっ…うあっ…ぎもぢい…」
「だな。ものすごく我慢したな。お前の匂いで俺がフラフラする」

 アンジェも力が抜けて朦朧として唇が離れた。ぼんやりする。気持ちよすぎだよコレ。アンジェもハァハァと動けない。

「ハァ……繋がるだけが番の愛ではないんだが……俺はダメだな。欲が強すぎて」
「いつまでも性的に求められるのは、ハァハァ…嬉しいからいい」

 落ち着いて家にいることが増えたアンジェは領地にも力を入れていて、定時に始まり定時に終わることが増えた。一緒にいるのに求めたくて堪らないと言う。

「きっと俺はお前を独り占めしたかったんだ。世間に愛されて聖人と崇められているのが辛いんだ」
「そんなこと。僕の一番はアンジェ。同列で子どもたちかな」
「……俺を一番に。子どもたちには悪いが俺だけを見てくれ」
「あはは。アンジェ父様なんだよ?」

 黙って僕を抱き締める。いくつになっても痩せっぽちで……俺の腕にすっぽり収まる。こんな細い体で子どもも世界も愛して……でも俺を一番にしてくれって。

「うん。誰かを選べって言われたら、アンジェを選ぶよ」

 なんかそんな選ぶ話があったよね。でも実際はその時になってみないと分からない。子どもは親がなくても育つ環境はある。リーンハルトは学園に行ってるし、みんなすぐに行くようになる。アンジェだけを見てもいい頃かもね。

「アンジェ愛してます」
「うん」
「あなただけを愛してます」
「うん」

 スーッと寝息が聞こえる。このところ忙しかったもんね。ちんこ入れっぱなしじゃ寝れないとか言ってたのが、嘘のように寝るようにもなった。年取ったのかな?んふふっ
 あの日、初夜の日から愛情は増えるばかりで、アンジェの嫌なところが見つからない。きっと僕に見せないようにしているんだと思うけど、それはちょっと寂しい。アンジェの全部を知らないようでね。

 今度深いところまで聞いてみようかな。いや、その時々かな。今すぐには思いつかないから。




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