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五章 僕のこれから
最終話.突然世界は変わったけど、僕らは何にも変わらない
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新しい屋敷に引っ越して、十数年は穏やかに過ごした。本当に穏やかに三人で楽しく過ごしたんだ。時々ベルンハルトやベトナージュの王子が遊びに来てさ、みんなで遊んでね。
それにランベールは近いから行き来もたくさんして、僕の種の子にも会ってね。うん、フェリクスヤバい。あの子本当に何か足りない気がすると思ったね。何かと言われると分からないんだけど……覚悟かな?もしかするとね。
僕が庶民の様に育てたのが裏目に出たのかもしれないと感じたけど、今更どうする事も出来ないし頑張れとしか。そしてここは大事で、城を出る時、イアサントにオーブに入るやり方を教えてもらったんだ。魔力をたっぷり使うから魔石をたくさん用意して、術も死と同時に発動するよう、その日に備えてもいた。
「俺は死んでも離れたくなかった。俺たちのわがままを聞いてくれてありがとな、ルチアーノ」
「うん、いいんだ。僕も離れたくないからね」
あのイアサントたちの若い姿はイメージだそうだ。オーブに入る時に、どの年代になりたいか強く願えと言われ、そうだなあ……ジュスランは、
「俺はね、やっぱり三十ちょっとくらいがいいな」
「俺もだな。あの頃は大変だったけど、充実してて楽しかったんだ」
なら僕はそれより四つしたかな?
「それが嬉しいな。戦が終わりイアサントもドナシアンも急速に発展していった時期。やることはたくさんで、でもルチアーノはエロくなってさ」
「そう?」
優しく見つめてチュッとジュスラン。
「そうだよ。あの頃からエロさが強くなってな。若さだけではない、こなれたエロさが堪らんかったからな」
そうかな?自分じゃわからないかな。それとこの屋敷に来て少ししてから、父さんも母さんも神の元に旅立った。幸せだったよと二人は僕に感謝してくれたんだ。無理やり連れて来たみたいになったからその言葉は嬉しかった。
それから僕ら専属の騎士は三人も……サミュエルは事故でね。息子たちと若いつもりで狩りに行って、騎獣の操作ミスであっけなく。悲しさは半端なかったよ。他のみんなもね。ずっと一緒にいるものだと疑わなかったから……
あの頃の大臣たちも半分は神の元へ。当たり前の事なんだけど、次々と減っていく。戦を共に戦い、苦楽を共にした者がいなくなるのは辛かった。美しかったアンセルムも美しいままね……もう人物鑑定出来る者もいくなったし、もうすぐ僕らの孫が王になる歳が近づいている。
僕の最後の子オーレリアンは降下して公爵となり、フェリクスの子を助けている。僕は王になりたくないと初めから宣言して、成人してもこの屋敷から出なかった。だから、ほんの少しのこの辺の土地を直轄地にして、彼の領地とした。この土地は森しかなくて街にも遠い。別荘のような場所で収入にはならない。だから飛び地で別の直轄地も彼の領地にしてあるんだ。フェリクスの配慮でね。
「お前がよくてもこの先の子が困るだろ」
「いえ……でもフェリクス兄様」
「でもじゃねぇよ。オーレリアン、先を考えろ」
「グッ……はい」
なんてやり取りがあったそうだ。フェリクスは僕らが城を出ると徐々に雰囲気が変わっていった。王らしい威厳を纏うようになったんだ。それと共に僕の気配は城から消えて行き、彼を中心に国が動くようになっていった。ドナシアンのアンベールは、セレスタンのしつけの賜物でよい王だと評判で、大国らしい……とはならず、イアサントふうの穏やかな国になっている。
僕はいつ召されても大丈夫だと思うけど、最後の子、オーレリアンはやはり魔力が濃く、計測オーブも深緑になっていた。だからイアサント王国は安泰だけど、フェリクスの子は下の子しか濃くはなかったんだよね。……可哀想に上の子たちはドナシアンに通って濃くしているそうだ。
ふう。ぼんやりと色んなことが浮かんでは消え……僕は変体してイアサント王国に来て……ずいぶんと時が経ったね。はじめの頃は大変で訳分かんなくてただ頑張ってね。う~ん……お庭の日差しがぽかぽかと暖かく……眠い。
「ジュスラン眠い……」
「いいさ、抱いててやるよ」
「うん……」
優しい胸に抱かれてうとうと眠りについた。穏やかな日差しはとても心地良い………
う~ん……目を開けたら世界は真っ白でイアサントの腕の中で?アデラールもいた。ふえ?なんだ?うそ?
「どうやってここに来たんだ僕はああ!!」
パニックになった。記憶がねえぞ?どういう事だ!ああ?考えろ考えろ僕!!ガバッと起き上がり、なんだよ!と叫んだ。
「ルチアーノ落ち着け!」
「うるせえ!落ち着けるか!」
「いいから俺の話を聞け!」
「うるせえよ!なんでだあああ!!」
ルチアーノ!!とグイッと腕を掴まれ引っ叩かれた。
「落ち着け!お前は死んだんだ!」
え?
「へ?し?死んだ?うそ?」
ほれこれ見ろとイアサントはぶわわ~んと空間に穴を空け、そこには僕の葬儀?マジ?国葬してる?よろよろしてる二人が!!
「あの僕……どれくらい目が覚めなかったの?」
「ん~ひと月か?」
「ながっ!」
ウソだぁ……呆然としていると記憶が蘇ってきた。お庭で眠いって寝て……
「そう、そのまんまな。お前は無理したから寿命が短かかったんだろうよ」
「そうなのかな……」
アデラールも仕方ありませんよと。
「僕もルチアーノくらいでした。七十ちょっとが限界でしたね」
「俺は八十過ぎ。俺の勝ちだな」
何を言ってるイアサント。
「はあ?勝ち負けは関係ないでしょうよ?」
いやいや、こんなつまんないことを競うのが楽しいんだよと。あの双子はいつ来るかな?ってイアサントは笑ったが、わりとすぐ来た。
「ルチアーノ寂しかったよぉ~」
「ジュスラン!ステファヌ!なんで?あれから対して経ってないよ?」
抱き合って再会を喜んでるとバツが悪そうに、あのさ、ここで見てたか?と聞かれたけど見てはいなかった。
「そうか。俺たち寂しくてさ……食事をあんまり食べなくなってポーションも拒否。そしたらあっという間でな?あはは……ごめん」
ジュスランは項垂れた。
「もう……子どもたちが可哀想でしょ?立て続けにいなくなったらさ」
そうだけどさあ、仕方なくね?と三十代の美しかった頃の二人は苦笑い。僕は過去を考えていたからか、二十五~六くらいかな?しっかり念じられなかった敗因だ。そんな話をしていると、
「ボケェ!クソオヤジどもどこだあ!出て来い!クソども!!どこだぁ!!」
「え?」
イアサントのお部屋もどきの端で叫んでるわが子たち四人。四人?アンベールもいるの?僕らに気がつくと走ってきた。
「母様!お久しぶりです!あっクソオヤジども!あんな死に方はねぇだろうよ!それも一緒に死ぬとか!」
フェリクスは怒鳴った。
「あ~悪かった。思ったより身体が弱ってたかな?あはは」
ステファヌが言い訳を垂れるとブチギレた。
「ふざけんな!国葬二回とかどんだけ金かかると思ってんだ!隙間開けろ!ばかやろう!」
「そこかい!」
二人はツッコんだ。当たり前だろ!国庫半分消失だぞ!バカ!みんな口々に親を罵る言葉が出て来てカオス。それは悪かったね。ん?腰に纏わりつく息子が。
「なにしてんの?フェリクス」
「母様……寂しかったよ」
「お前はまだそんな……」
腰にしがみつき顔を擦り付けて嬉しそう。
「よかった。また会えたから嬉しい。若いしね」
んふふっそうだね。
「まだフェリクスが学園に行く前くらいの姿かな?」
「そうだね。俺の大好きな母様の姿だ」
立ち上がり母様と頬をなで始めると……ぶちゅう……え?舌入れてくんな!
「プハッ!何をする!」
「むふふ。母様やっぱり美味いな」
ばかやろう!と引っ叩いた。
「いった~い。だって一度母様とキスしたかったんだよ。夢がかなったな」
うふふと自分の頬を擦りながら蕩けた顔している。それに気が付いた二人。
「フェリクス!お前は何している!」
「キス」
「ばかやろう!」
魂になったんだからいいだろ?寝ることも可能だよとしれっとしている。
「殺すぞお前!」
「あはは!魂は死にませ~ん!ボケッ!」
二人はブルブルと震え、
「親に向かってなんだその口の聞き方は!」
「国の金を減らすバカは知らん!」
「なんだと!フェリクス!」
僕は蚊帳の外で四人の子と二人は揉め始めてた。フェリクスは本気でステファヌに殴られていた。
「止めなくていいのか?」
「はい、ほっときます」
「そうか。ならお茶飲むか?」
「はい。頂きます」
ソファに座りアデラールが淹れてくれたお茶を飲んだ。美味いね。死ぬ前は感触はあるけど味が薄くて、霞を食べているようだったけど、死んだら美味い。本当に死んだんだなあって実感したのがお茶だった。
「ここはな、想像の賜物で何でも出来て楽しいぞ?それにな、時間感覚が怪しくて長くは感じないんだ。双子もお前と半年は違ったはずだが、二~三日で来た気がしただろ」
「ええ、子供たちも殴り込んで来たけど、双子の葬儀から半年は経っているはずなんですよね」
ああとイアサントは微笑みリンゴをシャクシャク。
「彼らは目覚めが遅かったから子どもたちと一緒の日になりましたね」
アデラールがそう言うと優雅にカップを口に運んだ。
「ふむ、では僕死んでから一年は過ぎているのか」
そうだよとイアサントはいちごをむしゃむしゃ。そんなに?一週間くらいに感じてたよ。
「だろ?だからここでの暮らしは苦痛は少ないはずだ。お前も俺も番がいるしな」
「んふふっですね。これなら時間も気にせずにいられるし、二人もいるから寂しくはありませんね」
ドヤ顔でそうだぞ、わりと楽しいんだとクッキーバリバリ。どんだけ食べるんだこの人。
「俺が一人の時は、記憶と記憶の間が何年もあったんだ。だけどついさっきの様な気がするんだ。きっとドナシアンも同じだろう。深く考えずオーブが壊れるか、この世の終わりかまで楽しもうぜ」
「はい」
楽しそうに話すイアサントと、隣で優しく微笑むアデラール。なら僕ら三人で楽しくこの世の終わりまでここにいようかな。チッ………うるせえぞ。
「止めてこい。そんな顔するならな」
「はい」
すっくと立ち上がりみんなの元にズカズカ行き、全員をグーで殴って止めた。
「「「母様痛い……」」」
「「ルチアーノ酷い!」」
「いい加減にしろ!死んだものはどうにもならないの!お金かかったのはごめん!でも僕らはここにずっといるからまた会いに来て!」
みんな頬を擦りながら、うんって。
「母様。俺も死んだら来るからね」
「いや……フェリクス無理しなくていい……」
「俺は正直番より母様だから」
「おおぅ……そう……」
まあいいやと子供たちを抱いて……やっぱりかわいいな。どんなに育ってもおじさんになっても僕の子どもたちは。遠くから時間だぞ!とイアサント。
「また来るね!」
「うん、待ってるよ」
じゃあねと白い霧になって四人は消えた。ほほう……こちら側から見るとこんなふうにいなくなってたんだね。
「ルチアーノごめん。俺の番に子であろうと手を出されてキレてしまった」
「うん……僕も油断があったよ。あの子のマザコン甘く見てた」
両手でジュスランの頬を撫でると、幸せそうに微笑んでくれる。お前らこっち来てお茶にしようとイアサントの声に、てくてくと歩きソファに座りずず~う。美味い。
「ルチアーノには説明をしたが、部屋は自分で想像して作れ。時間はたっぷりあるし、外から見るよりも中は広い。好きにしろ」
「はい」
別に部屋なんぞ無くとも、凍えも暑さに負けることもない。魔法は有効だし、病気もないが五感はある。寿命がなくなっただけだ。飯も本当はいらないんだと。
「では永遠の寿命に辛くなったりは?」
「しないさ。ルチアーノに聞け」
そんな感じで三人でのオーブ生活が始まった。側仕えはいないから、みんな自分ですることになる。二人はきついかな?ジュスランは、
「いや、騎士訓練で身支度なんかは出来るようにはしているよ」
「そう。なら三人で楽しんでこの世の終わりまで仲良くしようね」
「おう!噛んでしても子は出来ないんだろ?」
そこかい!二人はニヤニヤ。
「はい、出来ません。生きてる人としない限りね」
「ならしまくろうぜ」
「うん!」
このオーブの中でイアサント王国の行く末を三人で眺めて暮らそう。僕は永遠に二人を手に入れたんだ。なんと幸せな人族生活だったのだろう。苦労も良い思い出だ。
「ルチアーノおいで」
「うん」
二人に肩を抱かれ歩いた。ふわふわとした幸せの中、三人で溶け合う様な気がした。繋がっている訳ではないのにあの感覚に近い。
「とりあえず会えなかった時間を埋めさせてくれ」
「うん。僕の大好きなきれいなジュスラン、ステファヌ」
「ああ、かわいいルチアーノ」
「愛してるよ」
三人で抱き合うとオーブに溶け込んで行く気がした。これからはずっと一緒で離れることはない。幸せは続くんだね。嬉しくて強く抱きついていると意識が薄くなっていった………
それにランベールは近いから行き来もたくさんして、僕の種の子にも会ってね。うん、フェリクスヤバい。あの子本当に何か足りない気がすると思ったね。何かと言われると分からないんだけど……覚悟かな?もしかするとね。
僕が庶民の様に育てたのが裏目に出たのかもしれないと感じたけど、今更どうする事も出来ないし頑張れとしか。そしてここは大事で、城を出る時、イアサントにオーブに入るやり方を教えてもらったんだ。魔力をたっぷり使うから魔石をたくさん用意して、術も死と同時に発動するよう、その日に備えてもいた。
「俺は死んでも離れたくなかった。俺たちのわがままを聞いてくれてありがとな、ルチアーノ」
「うん、いいんだ。僕も離れたくないからね」
あのイアサントたちの若い姿はイメージだそうだ。オーブに入る時に、どの年代になりたいか強く願えと言われ、そうだなあ……ジュスランは、
「俺はね、やっぱり三十ちょっとくらいがいいな」
「俺もだな。あの頃は大変だったけど、充実してて楽しかったんだ」
なら僕はそれより四つしたかな?
「それが嬉しいな。戦が終わりイアサントもドナシアンも急速に発展していった時期。やることはたくさんで、でもルチアーノはエロくなってさ」
「そう?」
優しく見つめてチュッとジュスラン。
「そうだよ。あの頃からエロさが強くなってな。若さだけではない、こなれたエロさが堪らんかったからな」
そうかな?自分じゃわからないかな。それとこの屋敷に来て少ししてから、父さんも母さんも神の元に旅立った。幸せだったよと二人は僕に感謝してくれたんだ。無理やり連れて来たみたいになったからその言葉は嬉しかった。
それから僕ら専属の騎士は三人も……サミュエルは事故でね。息子たちと若いつもりで狩りに行って、騎獣の操作ミスであっけなく。悲しさは半端なかったよ。他のみんなもね。ずっと一緒にいるものだと疑わなかったから……
あの頃の大臣たちも半分は神の元へ。当たり前の事なんだけど、次々と減っていく。戦を共に戦い、苦楽を共にした者がいなくなるのは辛かった。美しかったアンセルムも美しいままね……もう人物鑑定出来る者もいくなったし、もうすぐ僕らの孫が王になる歳が近づいている。
僕の最後の子オーレリアンは降下して公爵となり、フェリクスの子を助けている。僕は王になりたくないと初めから宣言して、成人してもこの屋敷から出なかった。だから、ほんの少しのこの辺の土地を直轄地にして、彼の領地とした。この土地は森しかなくて街にも遠い。別荘のような場所で収入にはならない。だから飛び地で別の直轄地も彼の領地にしてあるんだ。フェリクスの配慮でね。
「お前がよくてもこの先の子が困るだろ」
「いえ……でもフェリクス兄様」
「でもじゃねぇよ。オーレリアン、先を考えろ」
「グッ……はい」
なんてやり取りがあったそうだ。フェリクスは僕らが城を出ると徐々に雰囲気が変わっていった。王らしい威厳を纏うようになったんだ。それと共に僕の気配は城から消えて行き、彼を中心に国が動くようになっていった。ドナシアンのアンベールは、セレスタンのしつけの賜物でよい王だと評判で、大国らしい……とはならず、イアサントふうの穏やかな国になっている。
僕はいつ召されても大丈夫だと思うけど、最後の子、オーレリアンはやはり魔力が濃く、計測オーブも深緑になっていた。だからイアサント王国は安泰だけど、フェリクスの子は下の子しか濃くはなかったんだよね。……可哀想に上の子たちはドナシアンに通って濃くしているそうだ。
ふう。ぼんやりと色んなことが浮かんでは消え……僕は変体してイアサント王国に来て……ずいぶんと時が経ったね。はじめの頃は大変で訳分かんなくてただ頑張ってね。う~ん……お庭の日差しがぽかぽかと暖かく……眠い。
「ジュスラン眠い……」
「いいさ、抱いててやるよ」
「うん……」
優しい胸に抱かれてうとうと眠りについた。穏やかな日差しはとても心地良い………
う~ん……目を開けたら世界は真っ白でイアサントの腕の中で?アデラールもいた。ふえ?なんだ?うそ?
「どうやってここに来たんだ僕はああ!!」
パニックになった。記憶がねえぞ?どういう事だ!ああ?考えろ考えろ僕!!ガバッと起き上がり、なんだよ!と叫んだ。
「ルチアーノ落ち着け!」
「うるせえ!落ち着けるか!」
「いいから俺の話を聞け!」
「うるせえよ!なんでだあああ!!」
ルチアーノ!!とグイッと腕を掴まれ引っ叩かれた。
「落ち着け!お前は死んだんだ!」
え?
「へ?し?死んだ?うそ?」
ほれこれ見ろとイアサントはぶわわ~んと空間に穴を空け、そこには僕の葬儀?マジ?国葬してる?よろよろしてる二人が!!
「あの僕……どれくらい目が覚めなかったの?」
「ん~ひと月か?」
「ながっ!」
ウソだぁ……呆然としていると記憶が蘇ってきた。お庭で眠いって寝て……
「そう、そのまんまな。お前は無理したから寿命が短かかったんだろうよ」
「そうなのかな……」
アデラールも仕方ありませんよと。
「僕もルチアーノくらいでした。七十ちょっとが限界でしたね」
「俺は八十過ぎ。俺の勝ちだな」
何を言ってるイアサント。
「はあ?勝ち負けは関係ないでしょうよ?」
いやいや、こんなつまんないことを競うのが楽しいんだよと。あの双子はいつ来るかな?ってイアサントは笑ったが、わりとすぐ来た。
「ルチアーノ寂しかったよぉ~」
「ジュスラン!ステファヌ!なんで?あれから対して経ってないよ?」
抱き合って再会を喜んでるとバツが悪そうに、あのさ、ここで見てたか?と聞かれたけど見てはいなかった。
「そうか。俺たち寂しくてさ……食事をあんまり食べなくなってポーションも拒否。そしたらあっという間でな?あはは……ごめん」
ジュスランは項垂れた。
「もう……子どもたちが可哀想でしょ?立て続けにいなくなったらさ」
そうだけどさあ、仕方なくね?と三十代の美しかった頃の二人は苦笑い。僕は過去を考えていたからか、二十五~六くらいかな?しっかり念じられなかった敗因だ。そんな話をしていると、
「ボケェ!クソオヤジどもどこだあ!出て来い!クソども!!どこだぁ!!」
「え?」
イアサントのお部屋もどきの端で叫んでるわが子たち四人。四人?アンベールもいるの?僕らに気がつくと走ってきた。
「母様!お久しぶりです!あっクソオヤジども!あんな死に方はねぇだろうよ!それも一緒に死ぬとか!」
フェリクスは怒鳴った。
「あ~悪かった。思ったより身体が弱ってたかな?あはは」
ステファヌが言い訳を垂れるとブチギレた。
「ふざけんな!国葬二回とかどんだけ金かかると思ってんだ!隙間開けろ!ばかやろう!」
「そこかい!」
二人はツッコんだ。当たり前だろ!国庫半分消失だぞ!バカ!みんな口々に親を罵る言葉が出て来てカオス。それは悪かったね。ん?腰に纏わりつく息子が。
「なにしてんの?フェリクス」
「母様……寂しかったよ」
「お前はまだそんな……」
腰にしがみつき顔を擦り付けて嬉しそう。
「よかった。また会えたから嬉しい。若いしね」
んふふっそうだね。
「まだフェリクスが学園に行く前くらいの姿かな?」
「そうだね。俺の大好きな母様の姿だ」
立ち上がり母様と頬をなで始めると……ぶちゅう……え?舌入れてくんな!
「プハッ!何をする!」
「むふふ。母様やっぱり美味いな」
ばかやろう!と引っ叩いた。
「いった~い。だって一度母様とキスしたかったんだよ。夢がかなったな」
うふふと自分の頬を擦りながら蕩けた顔している。それに気が付いた二人。
「フェリクス!お前は何している!」
「キス」
「ばかやろう!」
魂になったんだからいいだろ?寝ることも可能だよとしれっとしている。
「殺すぞお前!」
「あはは!魂は死にませ~ん!ボケッ!」
二人はブルブルと震え、
「親に向かってなんだその口の聞き方は!」
「国の金を減らすバカは知らん!」
「なんだと!フェリクス!」
僕は蚊帳の外で四人の子と二人は揉め始めてた。フェリクスは本気でステファヌに殴られていた。
「止めなくていいのか?」
「はい、ほっときます」
「そうか。ならお茶飲むか?」
「はい。頂きます」
ソファに座りアデラールが淹れてくれたお茶を飲んだ。美味いね。死ぬ前は感触はあるけど味が薄くて、霞を食べているようだったけど、死んだら美味い。本当に死んだんだなあって実感したのがお茶だった。
「ここはな、想像の賜物で何でも出来て楽しいぞ?それにな、時間感覚が怪しくて長くは感じないんだ。双子もお前と半年は違ったはずだが、二~三日で来た気がしただろ」
「ええ、子供たちも殴り込んで来たけど、双子の葬儀から半年は経っているはずなんですよね」
ああとイアサントは微笑みリンゴをシャクシャク。
「彼らは目覚めが遅かったから子どもたちと一緒の日になりましたね」
アデラールがそう言うと優雅にカップを口に運んだ。
「ふむ、では僕死んでから一年は過ぎているのか」
そうだよとイアサントはいちごをむしゃむしゃ。そんなに?一週間くらいに感じてたよ。
「だろ?だからここでの暮らしは苦痛は少ないはずだ。お前も俺も番がいるしな」
「んふふっですね。これなら時間も気にせずにいられるし、二人もいるから寂しくはありませんね」
ドヤ顔でそうだぞ、わりと楽しいんだとクッキーバリバリ。どんだけ食べるんだこの人。
「俺が一人の時は、記憶と記憶の間が何年もあったんだ。だけどついさっきの様な気がするんだ。きっとドナシアンも同じだろう。深く考えずオーブが壊れるか、この世の終わりかまで楽しもうぜ」
「はい」
楽しそうに話すイアサントと、隣で優しく微笑むアデラール。なら僕ら三人で楽しくこの世の終わりまでここにいようかな。チッ………うるせえぞ。
「止めてこい。そんな顔するならな」
「はい」
すっくと立ち上がりみんなの元にズカズカ行き、全員をグーで殴って止めた。
「「「母様痛い……」」」
「「ルチアーノ酷い!」」
「いい加減にしろ!死んだものはどうにもならないの!お金かかったのはごめん!でも僕らはここにずっといるからまた会いに来て!」
みんな頬を擦りながら、うんって。
「母様。俺も死んだら来るからね」
「いや……フェリクス無理しなくていい……」
「俺は正直番より母様だから」
「おおぅ……そう……」
まあいいやと子供たちを抱いて……やっぱりかわいいな。どんなに育ってもおじさんになっても僕の子どもたちは。遠くから時間だぞ!とイアサント。
「また来るね!」
「うん、待ってるよ」
じゃあねと白い霧になって四人は消えた。ほほう……こちら側から見るとこんなふうにいなくなってたんだね。
「ルチアーノごめん。俺の番に子であろうと手を出されてキレてしまった」
「うん……僕も油断があったよ。あの子のマザコン甘く見てた」
両手でジュスランの頬を撫でると、幸せそうに微笑んでくれる。お前らこっち来てお茶にしようとイアサントの声に、てくてくと歩きソファに座りずず~う。美味い。
「ルチアーノには説明をしたが、部屋は自分で想像して作れ。時間はたっぷりあるし、外から見るよりも中は広い。好きにしろ」
「はい」
別に部屋なんぞ無くとも、凍えも暑さに負けることもない。魔法は有効だし、病気もないが五感はある。寿命がなくなっただけだ。飯も本当はいらないんだと。
「では永遠の寿命に辛くなったりは?」
「しないさ。ルチアーノに聞け」
そんな感じで三人でのオーブ生活が始まった。側仕えはいないから、みんな自分ですることになる。二人はきついかな?ジュスランは、
「いや、騎士訓練で身支度なんかは出来るようにはしているよ」
「そう。なら三人で楽しんでこの世の終わりまで仲良くしようね」
「おう!噛んでしても子は出来ないんだろ?」
そこかい!二人はニヤニヤ。
「はい、出来ません。生きてる人としない限りね」
「ならしまくろうぜ」
「うん!」
このオーブの中でイアサント王国の行く末を三人で眺めて暮らそう。僕は永遠に二人を手に入れたんだ。なんと幸せな人族生活だったのだろう。苦労も良い思い出だ。
「ルチアーノおいで」
「うん」
二人に肩を抱かれ歩いた。ふわふわとした幸せの中、三人で溶け合う様な気がした。繋がっている訳ではないのにあの感覚に近い。
「とりあえず会えなかった時間を埋めさせてくれ」
「うん。僕の大好きなきれいなジュスラン、ステファヌ」
「ああ、かわいいルチアーノ」
「愛してるよ」
三人で抱き合うとオーブに溶け込んで行く気がした。これからはずっと一緒で離れることはない。幸せは続くんだね。嬉しくて強く抱きついていると意識が薄くなっていった………
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自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
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琴音さん
運命のいたずらによって突然人生が激変しても全てを受け入れ、力強く生き抜くルチアーノ。彼の内面の変化が丁寧に描かれていたのが、この物語の大きな魅力だと感じました。次々に立ちはだかる困難に対し、一国の王として悩みながらも、双子と共に、その優しさの奥に秘められた確固たる強さで立ち向かっていく姿には、何度も心を揺さぶられました。また、神秘的なオーブにまつわる言い伝えや、各国間の関係性が織りなす壮大な展開にも最後まで夢中になりました。素晴らしいファンタジーの世界を体験させていただき感謝いたします。