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五章 僕のこれから
6.まとわりつく……
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僕のお腹はパンパンだ。いつ産まれてもおかしくはない。二人は不安なのか常に僕に付きまとう。そう、付きまとっているんだ。
「どこに行く?」
「花摘みに!」
「なら一緒に行く」
「ボケ!出るもんも出なくなる!」
「なら、ドアの前で待つよ」
「待たなくていい!すぐそこだよ!」
なんでこんな……二人はここひと月仕事をしていない。僕に付きっきり。仕事行け!
「やだよ。なんかあったら怖いから」
「うぐぅ……」
とりあえずおしっこ……ドア開けてふう、スッキリ。クルッと振り返るとドアが開いていてジュスラン。
「やめて!ここは聖域だよ!」
「だって……」
「だってじゃない!こんな姿は見せたくないの!」
「見慣れてるじゃん。ちんこなんか」
「そういう事じゃ……」
はあ……この間は驚いてう◯こ引っ込むかと思ったし。トイレだけはやめて。
「でも……」
「でもじゃないんだよ。ここは無防備になるから本当にやめて」
「うう……ならここは諦める」
なんで部屋の隅に行くのにこんな……シクシク。
「ジュスラン、トイレはやめてやれよ」
「でもステファヌ……」
「お前は心配し過ぎだ」
ああ?お前もだよステファヌ。トイレに付いてこないだけだろ?
「仕事行っていいから!フェリクスと働いてきて!」
「「ヤダ!」」
む~ん……三人でうふふってしたかったけど、これは違う。息苦しくなっていた。
「イレールぅ」
「あはは、お二人の気持ちも分かりますからね。若い頃とは違いますし、私はいてもいなくてもって感じですしねぇ」
「でもさ、これは僕の思ってるうふふとは違うんだよ」
「でしょうね」
イレールも困ったもんだと言うが止めるのは嫌かなと。
「なんでだよ!」
「え~っとですね。私の身内にルチアーノ様くらいで産んで、神の国に旅立った者がいまして……おかしいと言われて駆けつけたらもう……ですからね?こんな時に言うものではありませんがそんな事考えちゃうんで」
産むまで我慢しろと。うげぇ……
「だろ?もう四十過ぎてんだぞ?心配するのは当たり前!」
「はい……」
息の詰まるひと月とちょっとを過ごしてい三日後。
「あれ?お腹……」
「うあ……ん?産まれるか?」
お昼寝中になんだか……二人はガバっと起きて僕のお腹を捲り、おお!と。
「虹色に光ってるぞ!ステファヌ医者を!」
「おう!」
バタバタと部屋を出てイレール産まれる!と叫びみんなを呼びに行った。
「あ~あ、僕だけまた痛いのかな?」
「そうなんじゃないかな?頑張れ!」
「む~ん、不公平だよね」
「仕方ねえよ」
なんとも理不尽な気持ちを持ちながら横になっていると、イレールが先生を連れて来てくれて診察。
「あれ?ん~……前回はもう唸ってませんでしたか?」
「あれ?」
お腹を見ると紫に近くなってるのにそんなに痛くはないな。
「よかったですね。今回は軽いみたいで」
「あはは、こんな事もあるんだね」
「ええ、その時々ですよ」
人により、その時により。出産は不思議ですと先生。産まれるまで待ちましょうと端のソファに座りお茶を飲んでいる。レノーも久しぶりにきてくれて、楽しみですと先生たちとお茶を飲んで待った。色が完全に紫になるかどうかって頃に少し痛みが強く……
「ジュスラン痛い!」
「お?出てきたぞ!頑張れ!」
隣で僕の手を握り頭を撫でてくれる。先生も隣で様子を診ながら、膜が見えてきましたよと。
「うん……うっぐうっ!んん!!」
痛みが一層強くなった。ぐああっ!
「よし!産まれました!お疲れ様でした!」
ハァハァ……先生の手には半透明の球体。スゥーッと膜が溶けた。
「ああ!かわいい!」
「おめでとうございます!……赤ちゃん……あれ?泣かない?」
その場がザワッとした。ふむと先生が赤ちゃんの足を持って逆さにすると、背中を強く何度か叩いた。
「ふえ……ふええ……うぎぁあ!うぎゃあ!」
「泣いた!泣いたよ?ジュスラン!ステファヌ!」
「ああ、よかった」
赤ちゃんの泣き声に部屋で控えていたフェリクスとアンベールも入って来ておめでとうって。
「母様おめでとう」
二人は涙ぐんでよかったと。高齢だから怖かったんだよと……本当によかったと抱き合っていた。
「俺、母様に何かあったらとずっと不安で………」
「本当によかったね、兄様」
うんと頷いてアンベールと二人で喜んでくれた。俺は母様に万が一があったら生きていけないよと……え、まだそんな事いうのか。
「お前は番がいるでしょ?」
「それとこれは違う。母様は別枠だから」
こわ……この子怖いわ。僕ですらそこまで両親に依存はしていない。マザコンこわ……ってか本当にマザコンなだけ?……考えるのはやめよう。
「ルチアーノ様、赤ちゃんは少し喉に何か詰まってたんでしょう。元気ですよ」
「ありがとう先生」
はい、薬湯と薬師の先生のまっずい薬湯を飲んで赤ちゃん抱っこした。
「うわあ……懐かしいね。こんなだったよね」
「うにゃ……ふにゃ……」
金髪、深い緑の目でジュスランたちによく似ている。……恐ろしく僕に似ている所がない。四人子供がいて誰も僕に似なかったのはなんでだ。まあ多少目元はエルネストが似てるかな?程度でね。神様は意地悪だね……一人くらい似てても。
「なんだよ、俺たちに似てるのが不満か?」
「不満とかじゃないんだけど。いやさ、どこの兄弟もどちらかに似てたりするじゃん?なのに僕の所は誰もね……」
ちょっと残念って思っただけだよ。
「こればかりはどうにかなるものではありませんからね」
先生も苦笑い。
「でもさ、ベルンハルトの子はお前にそっくりじゃないか」
いやさ……そこで出ても意味はないんだよ。あの子は僕の子であって僕の子ではないからね。種提供なだけでベルンハルト夫婦の子だよ。
「まあなあ」
ジュスランは力ない感じで返事した。ねえねえ母様ってフェリクス。
「母様、俺は嬉しいよ?俺と同じ母様が母親の子でそっくりとか嬉しくて堪んないよ?」
「ふふっそうだねフェリクス。今の発言は聞かなかったことにしてよね」
「うん!」
みんなもはいって、ありがとう。赤ちゃんはとてもかわいくて。ぐわんと頭が……あれめまい?
「あ~……痛くなかっただけで体力は減ってるかな」
「え?大丈夫か?」
「うん……フラフラする」
みんなが横になって寝ろって赤ちゃん取り上げられて横にされた。また来るねって子どもたちは仕事に戻って行って、先生の診察後三人で眠った。
「ルチアーノ?」
ペチペチと頬を叩かれて目を開けると二人が起きれるか?って。
「うん」
「夕食が来たけど食べられるか?」
「う~ん……あんまりお腹空いてないかな」
そうか、でも食べたほうが回復は早いぞ?俺の体験談だけどとステファヌ。
「うん……なら少し食べる」
「よし、イレール!」
「はい」
布団の上に置ける小さなテーブルにお盆に乗った食事を出された。
「では……」
サッとフォークを取られ、
「はい、ルチアーノあ~ん」
「いや……自分で食べられるよ」
「いいから!」
ならまあ……
「あ~ん。もぐもぐ」
「美味いか?」
「うん」
母様どう?と仕事終わりに寄ってくれた息子二人が来た。
「うわ~父様たちなにしてんの?」
「ん?食べさせてる」
「え?母様そこまでには見えないけど?」
「いいんだ!ほっとけよ!」
あ~んもぐもぐ……それが正しい反応だよ。
「いい歳してこの親たちは……」
「ねえ?二人とも父様たちどうにかして」
二人で見合ってイヤと。
「なんでだよ!」
「だって……父様たち母様関係になにかすると面倒くさいんですよ。だから見てます」
「エルネスト?」
「僕も嫌です」
「グッ……」
ニヤニヤとジュスランとステファヌ。
「息子は賢いな。はい、あ~ん」
「あ~ん」
もぐもぐ……呆れて見てたけどフェリクスは僕の側に来て手を握った。
「早く元気になって下さいませ」
「うん」
「また来ますね」
そう言うと二人は部屋を出た。
「もうお腹いっぱいだよ」
「まだこんなに残ってるけど……まあ、無理してもな。イレール!」
「はい!」
食事を下げてもらった。
「二人も食事に行って来て」
「うん……なんかあったら呼べよ?すぐ戻る!」
二人は仕方ないと出て行った。
「はあ……久しぶりに一人だ」
「あはは、このひと月食事もここで取られてましたからね、二人とも」
「うん、本当にへばりついてさ」
イレールがお茶と薬湯ですと持って来てくれて……マズっ!お茶ごくごく……あ~口に残る苦みと酸味がきつい。病の時の薬のほうがまだ美味かったね。
「この薬湯は本当に不味いらしいですね」
「イレールも飲んでみるといいよ。マジでマズい」
「いえ、いりません。私は体力満タンですから」
「イレール……一口飲んでみなよ」
ずいっと前に差し出すとええっと言いながら受け取り一口。
「まっずっ!マジかこれ!」
「でしょう?ありえん不味さだよ」
「ですね……これは改良して欲しいですね」
飲んだらまた寝ましょうねと横にされて布団掛けてポンポン。
「イレール、僕ら大分年取ったけどフェリクス産んだ頃と何も変わらんね」
「そうですねぇ、ん~……心はあの頃のまま、あんまり成長してない気はしますね」
外見はそりゃあ年を取りましたし、仕事の面では成長しましたけど何でしょうね。あの頃の楽しかったままですね。
「ね?僕は年取ったらそれなりに心も年取るかと思ってたけどそうでもないね」
「ええ、これはなってみないと分からないものでしたね」
んふふっと笑い合ってるとジュスランたちが戻って来た。
「早いね?」
「掻き込んで来たからな!ゲフッ」
バカか。
「そんなに急がなくていいよ」
「いやさ気になってな」
過保護も甚だしいな。
「もう産んだんだから体力戻すだけだよ?」
「それでもさ」
ふふっ……なんだろうね。ずっとこうしていたいって思っちゃった。愛されてずっと……
「どうした?ルチアーノ?」
「ああ……幸せだなあって……思っ……て」
グスグスと泣いてしまった。色んなことがあったけど僕は幸せだ。
「泣くなよ……イレール何があった?」
「あはは……昔話を少し」
二人は説明を聞くと、
「バカだなあお前は。変わらなくて上等だよ」
「そうそう、俺たちはこれでいいんだよ」
「うん」
ほらお前は寝ろよ。そんで早く回復しろ。
「うん」
チュッと優しくキスされて目を閉じるとスゥーッと眠った。新しい赤ちゃんが成人するまでは生きて……ぐう……
「どこに行く?」
「花摘みに!」
「なら一緒に行く」
「ボケ!出るもんも出なくなる!」
「なら、ドアの前で待つよ」
「待たなくていい!すぐそこだよ!」
なんでこんな……二人はここひと月仕事をしていない。僕に付きっきり。仕事行け!
「やだよ。なんかあったら怖いから」
「うぐぅ……」
とりあえずおしっこ……ドア開けてふう、スッキリ。クルッと振り返るとドアが開いていてジュスラン。
「やめて!ここは聖域だよ!」
「だって……」
「だってじゃない!こんな姿は見せたくないの!」
「見慣れてるじゃん。ちんこなんか」
「そういう事じゃ……」
はあ……この間は驚いてう◯こ引っ込むかと思ったし。トイレだけはやめて。
「でも……」
「でもじゃないんだよ。ここは無防備になるから本当にやめて」
「うう……ならここは諦める」
なんで部屋の隅に行くのにこんな……シクシク。
「ジュスラン、トイレはやめてやれよ」
「でもステファヌ……」
「お前は心配し過ぎだ」
ああ?お前もだよステファヌ。トイレに付いてこないだけだろ?
「仕事行っていいから!フェリクスと働いてきて!」
「「ヤダ!」」
む~ん……三人でうふふってしたかったけど、これは違う。息苦しくなっていた。
「イレールぅ」
「あはは、お二人の気持ちも分かりますからね。若い頃とは違いますし、私はいてもいなくてもって感じですしねぇ」
「でもさ、これは僕の思ってるうふふとは違うんだよ」
「でしょうね」
イレールも困ったもんだと言うが止めるのは嫌かなと。
「なんでだよ!」
「え~っとですね。私の身内にルチアーノ様くらいで産んで、神の国に旅立った者がいまして……おかしいと言われて駆けつけたらもう……ですからね?こんな時に言うものではありませんがそんな事考えちゃうんで」
産むまで我慢しろと。うげぇ……
「だろ?もう四十過ぎてんだぞ?心配するのは当たり前!」
「はい……」
息の詰まるひと月とちょっとを過ごしてい三日後。
「あれ?お腹……」
「うあ……ん?産まれるか?」
お昼寝中になんだか……二人はガバっと起きて僕のお腹を捲り、おお!と。
「虹色に光ってるぞ!ステファヌ医者を!」
「おう!」
バタバタと部屋を出てイレール産まれる!と叫びみんなを呼びに行った。
「あ~あ、僕だけまた痛いのかな?」
「そうなんじゃないかな?頑張れ!」
「む~ん、不公平だよね」
「仕方ねえよ」
なんとも理不尽な気持ちを持ちながら横になっていると、イレールが先生を連れて来てくれて診察。
「あれ?ん~……前回はもう唸ってませんでしたか?」
「あれ?」
お腹を見ると紫に近くなってるのにそんなに痛くはないな。
「よかったですね。今回は軽いみたいで」
「あはは、こんな事もあるんだね」
「ええ、その時々ですよ」
人により、その時により。出産は不思議ですと先生。産まれるまで待ちましょうと端のソファに座りお茶を飲んでいる。レノーも久しぶりにきてくれて、楽しみですと先生たちとお茶を飲んで待った。色が完全に紫になるかどうかって頃に少し痛みが強く……
「ジュスラン痛い!」
「お?出てきたぞ!頑張れ!」
隣で僕の手を握り頭を撫でてくれる。先生も隣で様子を診ながら、膜が見えてきましたよと。
「うん……うっぐうっ!んん!!」
痛みが一層強くなった。ぐああっ!
「よし!産まれました!お疲れ様でした!」
ハァハァ……先生の手には半透明の球体。スゥーッと膜が溶けた。
「ああ!かわいい!」
「おめでとうございます!……赤ちゃん……あれ?泣かない?」
その場がザワッとした。ふむと先生が赤ちゃんの足を持って逆さにすると、背中を強く何度か叩いた。
「ふえ……ふええ……うぎぁあ!うぎゃあ!」
「泣いた!泣いたよ?ジュスラン!ステファヌ!」
「ああ、よかった」
赤ちゃんの泣き声に部屋で控えていたフェリクスとアンベールも入って来ておめでとうって。
「母様おめでとう」
二人は涙ぐんでよかったと。高齢だから怖かったんだよと……本当によかったと抱き合っていた。
「俺、母様に何かあったらとずっと不安で………」
「本当によかったね、兄様」
うんと頷いてアンベールと二人で喜んでくれた。俺は母様に万が一があったら生きていけないよと……え、まだそんな事いうのか。
「お前は番がいるでしょ?」
「それとこれは違う。母様は別枠だから」
こわ……この子怖いわ。僕ですらそこまで両親に依存はしていない。マザコンこわ……ってか本当にマザコンなだけ?……考えるのはやめよう。
「ルチアーノ様、赤ちゃんは少し喉に何か詰まってたんでしょう。元気ですよ」
「ありがとう先生」
はい、薬湯と薬師の先生のまっずい薬湯を飲んで赤ちゃん抱っこした。
「うわあ……懐かしいね。こんなだったよね」
「うにゃ……ふにゃ……」
金髪、深い緑の目でジュスランたちによく似ている。……恐ろしく僕に似ている所がない。四人子供がいて誰も僕に似なかったのはなんでだ。まあ多少目元はエルネストが似てるかな?程度でね。神様は意地悪だね……一人くらい似てても。
「なんだよ、俺たちに似てるのが不満か?」
「不満とかじゃないんだけど。いやさ、どこの兄弟もどちらかに似てたりするじゃん?なのに僕の所は誰もね……」
ちょっと残念って思っただけだよ。
「こればかりはどうにかなるものではありませんからね」
先生も苦笑い。
「でもさ、ベルンハルトの子はお前にそっくりじゃないか」
いやさ……そこで出ても意味はないんだよ。あの子は僕の子であって僕の子ではないからね。種提供なだけでベルンハルト夫婦の子だよ。
「まあなあ」
ジュスランは力ない感じで返事した。ねえねえ母様ってフェリクス。
「母様、俺は嬉しいよ?俺と同じ母様が母親の子でそっくりとか嬉しくて堪んないよ?」
「ふふっそうだねフェリクス。今の発言は聞かなかったことにしてよね」
「うん!」
みんなもはいって、ありがとう。赤ちゃんはとてもかわいくて。ぐわんと頭が……あれめまい?
「あ~……痛くなかっただけで体力は減ってるかな」
「え?大丈夫か?」
「うん……フラフラする」
みんなが横になって寝ろって赤ちゃん取り上げられて横にされた。また来るねって子どもたちは仕事に戻って行って、先生の診察後三人で眠った。
「ルチアーノ?」
ペチペチと頬を叩かれて目を開けると二人が起きれるか?って。
「うん」
「夕食が来たけど食べられるか?」
「う~ん……あんまりお腹空いてないかな」
そうか、でも食べたほうが回復は早いぞ?俺の体験談だけどとステファヌ。
「うん……なら少し食べる」
「よし、イレール!」
「はい」
布団の上に置ける小さなテーブルにお盆に乗った食事を出された。
「では……」
サッとフォークを取られ、
「はい、ルチアーノあ~ん」
「いや……自分で食べられるよ」
「いいから!」
ならまあ……
「あ~ん。もぐもぐ」
「美味いか?」
「うん」
母様どう?と仕事終わりに寄ってくれた息子二人が来た。
「うわ~父様たちなにしてんの?」
「ん?食べさせてる」
「え?母様そこまでには見えないけど?」
「いいんだ!ほっとけよ!」
あ~んもぐもぐ……それが正しい反応だよ。
「いい歳してこの親たちは……」
「ねえ?二人とも父様たちどうにかして」
二人で見合ってイヤと。
「なんでだよ!」
「だって……父様たち母様関係になにかすると面倒くさいんですよ。だから見てます」
「エルネスト?」
「僕も嫌です」
「グッ……」
ニヤニヤとジュスランとステファヌ。
「息子は賢いな。はい、あ~ん」
「あ~ん」
もぐもぐ……呆れて見てたけどフェリクスは僕の側に来て手を握った。
「早く元気になって下さいませ」
「うん」
「また来ますね」
そう言うと二人は部屋を出た。
「もうお腹いっぱいだよ」
「まだこんなに残ってるけど……まあ、無理してもな。イレール!」
「はい!」
食事を下げてもらった。
「二人も食事に行って来て」
「うん……なんかあったら呼べよ?すぐ戻る!」
二人は仕方ないと出て行った。
「はあ……久しぶりに一人だ」
「あはは、このひと月食事もここで取られてましたからね、二人とも」
「うん、本当にへばりついてさ」
イレールがお茶と薬湯ですと持って来てくれて……マズっ!お茶ごくごく……あ~口に残る苦みと酸味がきつい。病の時の薬のほうがまだ美味かったね。
「この薬湯は本当に不味いらしいですね」
「イレールも飲んでみるといいよ。マジでマズい」
「いえ、いりません。私は体力満タンですから」
「イレール……一口飲んでみなよ」
ずいっと前に差し出すとええっと言いながら受け取り一口。
「まっずっ!マジかこれ!」
「でしょう?ありえん不味さだよ」
「ですね……これは改良して欲しいですね」
飲んだらまた寝ましょうねと横にされて布団掛けてポンポン。
「イレール、僕ら大分年取ったけどフェリクス産んだ頃と何も変わらんね」
「そうですねぇ、ん~……心はあの頃のまま、あんまり成長してない気はしますね」
外見はそりゃあ年を取りましたし、仕事の面では成長しましたけど何でしょうね。あの頃の楽しかったままですね。
「ね?僕は年取ったらそれなりに心も年取るかと思ってたけどそうでもないね」
「ええ、これはなってみないと分からないものでしたね」
んふふっと笑い合ってるとジュスランたちが戻って来た。
「早いね?」
「掻き込んで来たからな!ゲフッ」
バカか。
「そんなに急がなくていいよ」
「いやさ気になってな」
過保護も甚だしいな。
「もう産んだんだから体力戻すだけだよ?」
「それでもさ」
ふふっ……なんだろうね。ずっとこうしていたいって思っちゃった。愛されてずっと……
「どうした?ルチアーノ?」
「ああ……幸せだなあって……思っ……て」
グスグスと泣いてしまった。色んなことがあったけど僕は幸せだ。
「泣くなよ……イレール何があった?」
「あはは……昔話を少し」
二人は説明を聞くと、
「バカだなあお前は。変わらなくて上等だよ」
「そうそう、俺たちはこれでいいんだよ」
「うん」
ほらお前は寝ろよ。そんで早く回復しろ。
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