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三章 イアサント王国の王として

20.国に帰還

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 部屋に戻るとステファヌは戻っていた。

「お帰り、ルチアーノ」
「うん、ただいま」

 あれ?なんだろうこの香りは。とても香ばしい少し苦みのあるような香り。

「ルチアーノ様、我が国にはない「コーヒー」という飲み物だそうです。鬼牛のミルクを入れて飲むんだそうです」
「へえ……これの香りか!」

 カップを手に取りゴクリ。うわあ……苦いけどミルクと合ってて美味しい。

「美味しいよ」
「でしょう?今度取引出来るそうで王宮でどうぞと少しですが持ち帰れます。こんなに遅くなったのも口に合うかわからなくて薦めなかったそうですよ」
「じゃあなぜ……?」

 騎士が眠そうにしている所をこちらの騎士が見かけて砂糖もミルクも入ってない物を飲ませたそうです。それがとても美味しかったと評判になりならばと取引しませんかとなったそうだ。

「へえ……ゴクゴク。美味しい」
「俺もこれは美味いと思うよ」
「本当だね。これば何なのかな?」
「ベトナージュの外れの方の最南のレジェス王国の山間部で取れる木の実だそうです。赤い小さな実が付いてその種を乾燥させて煎って臼で粉にしてこのロートのような物にこの布を被せる。そして専用のスプーンで粉を入れてお湯を注ぐと下のポットに出来ます」

 ほほう……少しお茶より面倒くさいけどずずぅ……美味い。

「気に入ったか?」
「うん!」
「俺も」

 ああ!眠気覚ましにもなるから夜は飲まないほうがいいそうですよ?とイレール。

「じゃあ朝までしたい時に飲むかな」
「ゲッ……二人には飲まさなくていいよ」
「はあ?番の欲にも付き合えよ」
「朝まではさあ」
「たまにだよ?」
「なら……仕方ないか」

 リカルド様はどうだったの?と聞くとむ~ん……

「何かここに残らないかと言われて嫌だと言ったら悲しそうでな」
「あ……僕も同じ、哀しそうにされて」

 二人でむ~ん……コーヒー飲みながらクッキー……ウマっ!すごく合うね!

「コーヒーとクッキー美味しい」
「ほんとにな」

 喜びも一瞬でむ~ん……あの哀しそうな顔がなあと。確かにね。後味が悪い。そしてジュスランも戻りむ~ん……同じだったそうだ。

 コーヒーは美味いしクッキーも美味いとボリボリ。

「お前一人なら国は困らんだろ?ってさ」

 全員同じ事を……ダメでしょ。王族ゼロになるよ。それに二人以外はいらない。

「そうなんだけどなんだろうね。番の執着がない人たちが言うからさ……」
「「うん……」」

 む~ん……と黙ってゴクゴク、ボリボリ……

「イレール夕食会までどのくらい時間ある?」
「はい……ん~三時間くらいですかね?」

 んふふっとジュスランがいや~な笑い方をした。

「ルチアーノ少し……な?」
「はあ?」
「モヤモヤして辛いんだよ。俺を癒やして!」
「俺も!」
「はあ?二人して何を……」

 言ってる間に抱かれてベッドに放り込まれてあんあん……あ~やっぱり二人に抱かれると安心する。ちんこもこれだよとお尻が……

「さっきまでしてたような解れ方だな?」
「ハァハァ……仕方ないでしょ?あうっ!」

 まあな、俺たちも同じようなもんだとズクンッ!くわあ!

「サカリウス様よりいいか?」
「いいに決まってるでしょ!ちんこは番が……いやん!待って!」
「待てないよ!ほらイケよ!」

 ぐあぁ……お尻壊れるぅ……

 なんてことをしながら数日過ごし出発の日。来た時と同じ大きな庭で、

「君たちのお陰でたくさんの子供が産まれるんだ!僕は嬉しくてね」
「お役に立ててようございました」
「本当だよ!ルチアーノたち王族と交われたのはラッキーだった。匂いが合わなかったらとふあんだったんだよ。僕の匂いに相手は酔うけど僕がダメな時があるんだ」

 おお!そんな事が……あるか。特殊能力だから相手はまあね。

「嬉しかったよ!今回対象でなかった者たちも他国に大勢いるんだ。よろしくね!」
「うっ他国?」
「うん、今回はベトナージュ王国のみだ。まだ十九あるよ?」

 その場でユーリウスの声の聞こえた者が全員絶句した。あはは!と彼は笑った。

「今回みたいに一気にとはしないよ?貴族は対象にしていない。王族のみだ」
「僕らも王族のみ?」
「うん!」

 うへぇ……なんとか疫病を!胸に誓った。少しずつ婚姻でなんとかしたい。それまでは諦めるか……全身が真っ青になる気分で魂が抜ける気がした。

「じゃあまたね!ドナシアン他いくらでも受けるよ。好きなだけよこすといい。お金も要らないよ」
「ありがとう存じます」
「今回の君らの仕事は素晴らしいからね。お返しが足りないくらいだよ。合わない者が数人で相手変えれば完璧とか!」

 荷物を運んでいる騎士たちは飛び始めた。

「では情勢が落ち着きましたら次回はこちらに」
「うん、戦も援軍要るなら声かけてよ。助力は惜しまないよ」

 一礼して僕らも飛び立ち天空の扉を通り来た空を戻った。日が暮れる頃最初の山脈の中継地に到着。屋敷は全員入れないから騎士たちはお外に簡易で作った小屋で。全体に防壁を張っているけどベトナージュが近いせいかこの辺は魔物は出ない。

「あ~自国の者だけが落ち着くぅ~」

 ジュスランの感想は全ての者が思っている事だ。狙われるような目がないだけで安心する。人族は珍しくはないがあちらにいた人族は肌が褐色の者ばかりで白い肌の者がいなかったんだよね。暑い方からの人族が多かったから。だから僕らは珍しがられた。

 当然顔立ちも違い彼らは凹凸の少ない特徴が弱く見えた。だけど慣れればみんな違う顔。本当に他国に行ったんだと思ったよ。驚きは人族でも魔力がない人がいたんだ。肌の真っ黒の方たちはなかったんだ。

 聞いたら僕らの国にあるような砂漠ではなくて本気で暑くて、水が貴重な地域の国らしい。僕らの国からは簡単に行けないような遠くの国。彼らも国交はないけど来ているんだそう。国が貧しくドナシアンのように荒れてしまって逃げてきた人たちだ。

「どこも変わらんな。魔力とか関係ないもん」
「だねぇ、水や金や銀の奪い合いとか……」
「まあ、稼げるからな、どの国に持っていってもな」

 鉱山の利権で争って内戦状態で食べる物自体が隣国からも入ってこなくなり、当然自国で作っている物は少ないからそれも奪い合い。もう無理と山越え谷越えでここまで来たのをベトナージュは受け入れているだ。少なくとも他の血だからね。潜在的には魔力はあるらしいから、この地にいればもしかして目覚める?と王は期待してるようだ。

「もう寝るぞ!明日もたくさん飛ぶんだからな」
「うん。あのさしっかり抱っこして?」
「や~だ~ルチアーノがかわいい事言い出したぁ~」

 二人はふふんと微笑み抱っこしてくれた。

「これでいいか?」
「うん!あ~幸せ」
「俺もだ」

 二人の匂いに包まれている内に眠ってしまった。翌日も日が暮れるまで飛んで黒い森の屋敷に。ここはもう僕らのオーブの範囲になるから魔物は出る。だから一帯に物理防壁をきっちり張ってある。この辺大型のサラマンダーとか瘴気溜まりからゴースト系の魔物が……

 ついでに美味しいイノシシ系の魔物もいるから騎士たちが一頭取ってきて夕飯になった。せっかくだからとお外で丸焼きでみんなで食べた。

「うまっ!血抜きも上手く出来てるから臭くなくて!」
「うん!美味しいね。バーベキューって城ではしないからな」
「あ~暇がなくてしてないな。もぐもぐ」

 ん?暇があればしてたの?

「うん。エブラール側にも別荘があるんだよ。あっちは狩りをメインにするための屋敷だ」
「行ってないけど?」
「あ~今は屋敷管理する者がいなくて閉鎖してる」

 法務省のクレマンの縁戚の爺様が管理責任者でやってたんだけど年で体力的に無理と引退してな。代わりがいないんだと。

「やりたくない場所なの?」
「リンゲルとエブラールの境辺りでな、領地に丁度いい……なんだ引退した爺さんがいないんだよ。若手にやらすには寂しい場所でな」

 観光地でも何でもなく、魔物の森が近いだけの林業が主産業の山奥で、領地の街にも遠くてお茶畑と薬草畑しかない。

「それは……若い人はキツイね」
「だろ?番と二人、メイドとたまに来る王族だけだ。寂しいと思ってさ。俺もヤリ……いや……」
「そういう使い方もしてたんだね?」
「……はい」

 ステファヌはわははと笑い、

「ジュスランは王族所有の別荘はヤリ部屋くらいに思って使ってたんだよ。人の目がないからな。騒いでも人の迷惑にもならんからあそこら辺の辺鄙な所を使う時は……な?」
「やめてくれステファヌ……」

 俺はそんな事はしていないよ?夜伽だけだ……うん……声が小さくなって行った。たまに城の人も……かな?僕が来る前の悪行があちこちから聞こえる。ステファヌ様が知らないエヴァリスの別荘は……とか、いやいやランベール側の別荘はさぁとか……ヒソヒソ。

「お前らやめろ!ルチアーノに聞かせるなよ!本当にやめてくれ!!」

 みんなあははと笑いだして、今は素敵な番と幸せですものねと。ルチアーノ様が聞きたければ騎士寮においで下さいませ!私たちがいくらでも!と。やめろ!マジでキレるぞ!?とジュスランは肉持って叫んだ。

 うん、誰も言うことは聞かないね。あの頃は酷かったからなと。

「イヤだぁ……ルチアーノ違うんだ!違わないけど違うんだ!」
「ジュスラン?何度も言うけど僕が来る前のあなたはあなた。僕が好きなジュスランは今のジュスランだよ?」
「良かったな。ルチアーノが寛大で」
「うん、お前もそれなりにやってたの俺は知っている……ふん!」

 ぐはぁ!とやめろ!と。そんな感じで楽しく食べて眠りを繰り返しどうにか城に四日目の昼過ぎには到着した。

 ベルンハルトがなんかしてないといいなあと思いながら城の庭に降り立った。













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