ゆるゆる王様生活〜双子の溺愛でおかしくなりそう〜

琴音

文字の大きさ
56 / 104
三章 イアサント王国の王として

13.私は恵まれていた(エドガルドside)

しおりを挟む
 騎獣に跨り数日、イアサントの騎士に付き添われベトナージュ王国見える位置に来た。イアサントは黒い森、山脈に小さな屋敷を中継地に持っていて、休みながら移動だった。

 イアサントに来てから気がついたが、随行する騎士たちは私でもわかるくらい魔力量が多い。アルベルト様よりもずっと。そう……城のメイドすらも。私の魔力は十万……ドナシアンの貴族としては普通だったが、イアサントでは庶民も貴族も多く、私の魔力量は貴族の生まれたての赤子ほどだそうだ。

 元はドナシアンの王族なのに魔力がこんなにも違うのかと唖然とした。そして城内の人々の明るい笑顔に笑い声が楽しそうに響く。私の国にこの様な環境は登城以来見たことはない。メイドも側仕えもいつも怯えているような目だった。城は常に緊張感が漂い、廊下には時々血溜まりがあるのも普通。

 普通……?普通であってはならなかったのだ!あれは異常だ。いつ死が訪れてもおかしくない恐ろしい場所だった。自分の屋敷は?私はここの貴族の様に皆に接していたか?いや、してはいなかった。同じ様に恐怖で支配を……なんと愚かな。もっと早くに逃げるべきだった。おかしい事に気がつけなくなる前に……涙が頬を伝う。

「父様?どこか痛いの?」
「いや……自分の愚かさが悔しいだけだ」
「エドガルド……」
「オリヴィル……済まない。私が……」

 いいえと。私はイアサントに来てからきっとあなたと同じ事を思っています。なんと我が国は愚かで私も愚かでと涙する。

 騎士たちは私たちを本当に客のように扱ってくれた。この旅でも食べ物も風呂も何もかも。ルチアーノ陛下はつい最近王に即位したと聞いている。市井にいた獣人の変体でアデラールの末裔とか。二年そこらでどこの王よりも王らしかった。威厳に満ち信頼しているとばかりの騎士たち。私もあの様な王に仕えていたら違ったのだろうか……

 ベトナージュの門に着くと騎士が話を通し、我らはこちらの騎士に連れられ事務所のような部屋に通された。そして魔力測定をして戸籍登録、ここの法を簡単に説明された。ドナシアンと同じ事を一つでもしたら一生牢から出られないのだけは分かった。大国ゆえの法の厳しさだそうだ。

「では、其方らは何が出来る?貴族だったそうだが……魔力が十万ではここの庶民並みが。まあ、住んでる内に上がるが何年も掛かるから……金はあるか?」
「いえ……対して持ち合わせはありません」
「ふむ……イアサントからの依頼だから無下には出来んが……」

 係員は悩んでしまった。そう、私は何も出来ないのだ。生まれた時から上級貴族で側仕えか行政官になるものだと生きてきて、それ以外は考えた事もなかったのだ。

「役人になるにもこの魔力じゃすぐには無理だ。若いからまああれだがう~ん、多分三十くらいまでは士官も出来んなぁ……」

 係員はドナシアンからの者はほぼいないから安心して住めるがまあ、自分の食い扶持は自分でと農家はどうだ?と。商人は人の下に付かなくてはならないからいやだろ?と言う。農家ならば家も土地も用意しようと提案して来た。

 冒険者など文官の私には無理だし、何もしなければ飢えて死ぬだけだと受け入れた。その前に十日ほどこの地の情報を勉強した。自国との違いに目眩。

 二十もある国を束ねる筆頭国ベトナージュ王国、国民の教育、福祉、産業何もかもが整えられている。驚いたのは水道?ネジのような物を捻ると水が出た。井戸ではないとは!貴族なら食事も作れまいと妻に指導もしてくれたのだ。全てはイアサントの助言だそう。

 十日後初めての者でも出来るからと暖かい地域に広大な!土地と古いが家もくれた。

「父様……僕農家なんて……土すら触った事がありません」
「私もだ。だが死なずに済んだしイアサントの口添えのお陰で家もこ~んな広い土地も頂いた。文句を言う前にこの地の農業ギルドに登録して種を買って頑張ろうな」
「はい父様」
「私も頑張ります、エドガルド」

 支度金をイアサントからと私の一年分の給料と同じだけ頂いた。これだけあれば軌道に乗るまでなんとかなろう。ただこの金額……太っ腹なのか私の給料が少なかったのか。まあ、いずれ分かるだろう。

 私たちの新たな生活が始まった。


「サミュエル、彼らはどうなった?」
「彼らとは?」
「ふん!ふん!ドナシアンの人たちだよ!」

 僕はフラフラしながら木刀で素振りの練習をしながら聞いた。報告ないよ!って。

「あはは、すみません。彼らは郊外の土地で農家になり頑張っているそうです。支度金やらなんやら感謝してますって。獣人の中の人族で目立つけど皆に良くしてもらっているそうですよ?」
「そう……ならいいっ!」

 ふんっ!ふんっ!

「疲れましたか?よろけてますよ!腰に力入れて足は揃えず前後に!」
「うん!」

 ふんっ!ふんっ!クワより軽いけど振り続けるのはキツイね。

「お疲れでしょう?一休みしませんか?」
「しない!やあ!」

 がははと笑われたけど頑張るもん!気になっていたんだ、彼らは生粋の貴族だったからねぇ。僕はどんな人でも死んでいい人なんていないと思っている。甘いかもしれないけどね。

 そしてドナシアンはやはりカベサス王国を落とせず敗退。寄せ集めの愛国心のない者を連れて行った所で勝てる理由はない。大分寝返ったり、逃げたりしたらしい。第二皇子は第六皇子の暗殺には成功はした。

 王にはなったけど国内の現状把握はしてなかったようで、何もかも立ち行かず狼狽うろたえてるってさ。落ち着いたから視察って外に出たら城下は地獄と化していたからね。その惨状に言葉が出なかったそうだ。

 ちなみによそに簒奪さんだつに行こうにも金も騎士も兵士すらまともに残っておらず、庶民は言うに及ばず……見るからに力が無くなったドナシアンの様子を、属国にした二国の元の貴族が放っておく理由もなく、今内戦が勃発中。

 イアサントは時々逃げて来る様々な人を受け入れ、ドナシアンの人は五国である程度の人数が集まり次第ベトナージュに移送をしていた。でねぇ……かなりの人数を受け入れてもらったのと、戴冠式に来てないから顔合わせしたいと呼び出しが来た。僕が代表でさ……

「ううっもう手が痛い!ハァハァ……」
「お疲れ様です。迎えが来ましたよ」

 鍛錬場の入口で二人が手を振る。

「ちったぁ出来るようになったか?」
「数日で出来るはずないでしょ!もう!」

 あははと笑われてムカつく。

「これから毎日するのか?」
「うん!こうして少しだけ早く終わらせて貰ってね。何かさ、お腹ぷよぷよして来た気もするし?自分の身を守るために物理攻撃も必要かなって」
「まあなぁ、魔法は万能じゃないからな」

 ですねぇとサミュエルもうんうんと。身体が覚えていればとっさの時はこれでプスッ!短剣を見せた。

「だな」
「いや……刺すのは出来るだけしたくはないんだけど……」
「そのための鍛錬なんだろ?」
「そうだけど……」

 甘いがそんな所もルチアーノらしくていいとステファヌ。どうしても人を傷つけるって考えるとイヤなんだよね。

「まだやるのか?」
「ん?もうおしまいにするよ」
「なら帰ろうぜ?」
「うん!」

 サミュエルや騎士のみんなにまた明日!って言って鍛錬場を後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処理中です...