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三章 イアサント王国の王として
8.手詰まりに白状……
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う~んなんか暑い……喉かわ……うお!なんで二人がいるんだ!僕一人で寝たはず!ったくもう。
ゴソゴソと布団から出て水飲んで寝室を出るとソファに横になった。もういいここで寝る。あ~また暗いね、夜明けは遠そうだ。はあ……ねむ……
少ししてバタンッとドアの大きな音でビクッとした。なに?
「ルチアーノ!なんで!なんでだよ……」
薄暗い中で二人は泣きそうな顔をしていた。
「言ったはずだよ。ひとりにして」
「やだ……やだよ」
はあ……僕の方に二人は近づき抱きつこうとしたから、
「触るな」
「え?」
「触るなって言ったの!」
「ル、ルチアーノ?」
「数日でいいんだ。一人にして!」
呆然と立ち尽くす二人。ごめん、まだ頭が整理しきれてないんだ。僕は自分が許せないんだ。二人の愛に溺れたらなんの意味もない。お願いだから構わないで。
「説明はしてくれないのか?」
「今は無理」
見合った二人は哀しそうに、
「そうか……悪かったよ。ステファヌ行くぞ」
「ああ……また明日なルチアーノ」
「うん。ありがと」
二人はトボトボと自分の部屋に戻った。本当にごめんなさい、もう少し下さい。それから数日僕は二人と仕事以外の会話もせず一人で寝て彼らは彼らで種くれ要請に出たりしていた。
その間イレールやレオンスと行動を共にしながら城の大臣や職員を観察。僕はいかに三人の世界に浸り周りを見ていた「つもり」になっていたか身に染みて余計自己嫌悪。アンセルムに断って一人でイアサントたちに会いに行くかなと考えたけど、あの二人も僕を可愛がるだけだから……両親もね。つい誰かに助けを求めたくなる衝動を抑えるのにも苦労した。
「あの……ルチアーノ様。あのお二人が辛そうで……ね?」
風呂上がりのフルーツのお水を給仕しながら、
「うん。分かってるんだ。僕も甘えたくて仕方ない。だけど駄目なんだよそれじゃ」
「ん?番だし……何が駄目なんでしょう?」
二人には何も話さないでよと前置きして、
「僕はここに来て王になり大臣にも他国にも評価してもらった。自分でも頑張ったと自負はしている。だけどね……」
だけど?いえあなたは魔力もですが人の上に立つ器量っていうんですかね?持ち合わせていると思います。私はなんと良い方にお仕え出来たんだろうと日々思いますが?と褒めちぎってくれた。
「ありがとうイレール。それは僕の表面だ。中身のないね」
「は?中身のない……?はあ?」
驚き納得がいかないとイレールは捲し立てたけど待ってと黙らせた。
「出来ているのはみんながお膳立てしてくれたから。その流れに乗ってれば出来る事だよ」
ばっ馬鹿ですか!!と叫ばれた。
「お膳立てすれば出来るなら王族なんか要りません!貴族もね!何を……何を言ってるんですか!」
「買いかぶりだよイレール」
僕は失笑が漏れた。僕に才能なんで多分ない。もし出来て見えたなら血がさせているのかもね。僕自身で考えてやっている「つもり」なだけだよと。
「なんで……なんでそんな事を?あなたは……あなたは……」
僕の言葉にイレールは泣き出した。
「泣かないで」
「だって私は一番お二人の次に近くにいました。見ていました……そんなふうには見えませんでした……」
「ありがと」
と微笑んで隣に座るイレールを抱いた。なんで……と泣きながら僕を抱いてくれた。私はあなたをお慕いしています。こんなに努力してと泣いた。
「うん努力はしたさ。みんながきれいにしてくれた道を歩いてね。でもそれだけだ」
「それだけって……それが出来ないんですよ!みんな!」
まあいいやそういう事でさと慰めた。だけど僕の中でそれだけじゃ足りないと心が騒ぐ。言われた事をするだけじゃこれから先は王では居られない時が来ると。
「王とは……グスッ人が一目置くような魅力があればいいとは思いますが慢心すれば次第に独裁政権になりかねません。誰も否と言えない環境は国として間違っています」
「そうだね」
「ルチアーノ様はこの短い期間に皆が惹かれる力を発揮されています。理解が早く判断も的確、お二人が会議で発言する事が減っていると聞いていますし、何が不満ですか?」
不満か……足りていないという思いが強いんだよ。基本がないからね。王族として生きて来なかったからその辺が不安要素。そして僕は異質な気もしている。あくまで庶民の感覚だ。
「それは国の運営にも必要なものです。王侯貴族の持ち合わせていない大切なものと考えます。国を舵取りするのが王侯貴族ですから……」
「だからだよ。その纒める力が足りてないんだよ。してこなかったからね。みんなの顔色伺ってるの気がついてた?きっとこう言って欲しいんだろうなって言葉を話してたんだ」
うそだ!否定も問いただしもしているとレオンスが!と叫んだ。
「うん、納得いかないのはね。それ以外はほとんどだよ。だから受けもいい」
「そんな……卑下しすぎです!」
でもそう思うんだよ。僕自身の足で立ってはいない。
「グスッではあなたにとって自分の足で立つとはどういう事ですか?」
「ふふっそれが分かんない。自分で見つけるものでしょ?」
「こんな……二人を排除してまで見つけなきゃならないものですか?」
「うん」
イレールは息を吐き僕の肩を掴んで強く見た。
「分かりました。見つかるまでお手伝いします。お二人を言いくるめたり……くるめたり……」
「お願いね」
「はい。では今日は遅いので寝ましょう!」
「あはは、うん」
翌日からも自分はどうあるべきか、皆がどう合って欲しいと思うかを考え続けた。その間に二人の目は次第に死んで生気がなくなった。してないし触るなと言われたからね。会話すらいい天気だねとか子供たちの話くらいだから。
「あのルチアーノ……?」
「はい何でしょう?ジュスラン」
「いえ……いいです」
「はあ……?」
もう泣きそうだね、ごめん……え?泣いた?ここ執務室だよ?
「ジュスラン?」
「俺もう無理……寂しくて死ぬ」
ステファヌの方を向くと目が真っ赤で今にも……下からはルチアーノ様がもうひと月くらい冷たいからだとヒソヒソと聞こえる。グッ……結論がどうしても出なくて僕も苦しくはなっているけど、自分に負けたくなくて……でもジュスランを見てると鼻がツンとした。
「お前も泣いてるじゃないか……」
「え?」
頬を触ると涙が?
「お前も辛そうだぞ?」
「うん。グスッ……」
二人がなんかしたんだとしても許してやればいいのにとヒソヒソ……するとアンセルムが苦笑いで僕の前に来た。
「もうやめましょうよ。何か思う所があっての行動でしょうが無理が来てませんか?」
「え?」
「かれこれひと月。お一人で悩んでも堂々巡りになって混乱されているのでは?」
「そうなのかな?」
もう何が正解かも分からなくなっているのは確かだ。
「そうですよ。また今までみたいに過ごしているうちに見つかるかもしれないじゃないですか。違いますか?」
う~ん……僕はどんなふうになりたいんだろう。目移りしてそれすら固まらない。ファンダル様は目標だけどこの国は商業国、あのゆったりと一人ひとりを見るようなやり方は合わない気がする。
「ルチアーノ……」
「ほら、可哀想でしょ?」
手をかざし二人を見ろとアンセルム。ぐっ……そんな目で見ないで。僕が悪い事してるみたいじゃない。あ、してるのか……
「はあ……夜僕の部屋に来て。二人ともね」
「本当か!ああ!すぐ行くから!」
ぱあって幸せそうになった。ほらねってアンセルムが笑う。
「三人はそうでなくちゃね。私は幸せそうにしてるあなたたちが好きですよ」
「はい……意地を張りました……」
「分かればよろしい。ではあと少しです。頑張りましょう」
「うん」
下からあ~よかった、このひと月息が詰まったからなとザワザワ……不穏な情勢が執務室までと聞こえ……ごめん。
そして夜……ゲホッ!むせる!
「二人ともまず話聞いて貰うから匂い抑えてよ」
「え?」
しおしおと項垂れた。イレールはその様子に後ろを向いて笑いを我慢している。ゲホゲホいいながら。
「では私は下がりますね」
「うん。ありがとね」
「いいえ、お力になれましたか?」
「もちろん!感謝しているよ」
ではと微笑み下がって行った。すると二人はすぐに向かいのソファからいつもの定位置に座り僕を抱いた。
「あ~久しぶりのルチアーノ……いい匂いだ」
「少し痩せたか?」
「ん~自分じゃ分かんないけど?」
「キスしていい?」
「ダメ」
はあ……気持ちいいな、二人の体温も匂いも。こんなにも僕自身我慢してたんだね。意識が違う所にあったから気が付かなかった。
「あのね……」
このひと月あの日クレールを抱いた後から感じていた不甲斐なさと悔しさを話した。
「それはなぁ……一生王は考える事だと思うぞ?」
「俺もそう思う」
う~んと考えて二人は、
「番に関してはまあ確かに次は持てないが、気に入ったやつ噛めば家族の愛くらいは持てるから孤独ではないんだよ、人族はな」
え?なにそれ?
「習わなかったのか。確かに獣人は誰か噛んでも変わらない、もう番がいるから無効だ。だが人族は魔力のせいかほんのり愛情が湧くらしいんだ。だからそんなに心配しなくても……」
へえ……でもこんなに激しく愛しいとか欲しいとか思わなくなるのはやっぱり……
「ん~それは考えたらキリがないよ。その家の都合とかもあるしな。俺たち王族はそこまで口は出さない」
「そうだ。それが貴族と上手くやるコツでもある。この国ではな」
他国は知らんがなと笑う。
「俺たちはお前のなりたい王の後押しはする」
「そう、いくらでも手は貸すしなんの心配もいらないぞ」
二人の自信満々の笑顔……これに弱い。
「んふふっそれが甘えになって駄目になる気がしたんだよ」
そうか?と二人。
「そう思ったんだよ。僕は卑怯で弱いんだ……」
ポンポンと頭を叩きチュッてジュスラン。
「弱さを知っているヤツは強いよ。無敵だ!俺が王だ従え!なんてヤツはすぐ終わるんだよ。独裁は終わりが早い。イアサントを見ろよ!あいつは俺にそっくりだろ?真っ当な志さえあればなんとでもなるさ」
うん、彼は戦後魔法省に命じ無料で個人の家も街も修復し、国庫も放出して給付もした。復旧不可能な汚染地域の人には王族所有の土地を分け与え、民が飢えるのを防ぎたくて王国の魔法使いを農地に向かわせすぐに収穫出来るようにした。騎士は一緒に森に行って獣を仕留めて肉を確保したり、冒険者みたいな事をさせて総動員で復興に尽力した。
その後も民が過ごしやすい政策を惜しみなく施行し続け、寿命が来るその時までやったすごい人なんだ。まあ……オーブの魂の頃は戦前でしょうもなかったらしいけどやる気になった彼は伝説のように言われている。
そうそう、教会は彼が神で祀られているんだ。元々の太陽信仰と一緒にね。だから城にはあまり肖像画とかはない、イアサントのもアデラールのもね。歴代王の肖像画が一同に飾ってある廊下くらいにしか二人と他の三人のはないんだ。見たけりゃ教会に行けって感じ。
「一緒に探そうぜ。それに俺たちは従うし守ってやる。間違っていると思えば指摘もするしな」
「俺たちは生粋の王族だぞ?嫌な事も見てきたんだ。間違えば分かるさ」
「うん……そうする。今までごめんなさい」
いいさ、それほど真剣にこれからを考えたんだろ?悪い事じゃないからなとステファヌ。
「でも相談はして欲しかったな。イレールにはしてたんだろ?」
「相談っていうか愚痴だね。自分の弱さを嘆いていただけだよ」
はあ……とジュスランはため息吐いて僕を睨んだ。
「そういうのこそ番に言うもんだ!庭で触るなと怒鳴られた時の気持ちが分かるか?」
「俺はね、剣で刺されたくらいの衝撃があったぞ?」
哀しそうに僕を覗き込むふたり。
「ごめん。自分が嫌過ぎてイライラしてるの見せたくないし、のほほんと王様やっていた恥ずかしさに死にそうだったんだ」
馬鹿だなあ……だけどそんなルチアーノが大好きだと二人は抱き締めてくれた。
「あのさ?そろそろちんこ痛くてもげそう……我慢の限界でさ。興奮しないようにするのも限界……」
「俺も」
え?股間を見るとガウンがはだけてて何も履いてないから剥き出しでヤバい色でハチキレそう……
「凄いね。こんななのに匂い殆どしないよ?」
「そりゃあ王族だからだ。泣きながら躾けられたんだぞ?」
「え?」
「そうそう!好みの夜伽を目の前にして我慢しろとか拷問よ」
ほえ……
「夜伽は煽れって言われてるから自慰をして見せるんだ。ちんこ握って自分で穴に指入れてあんあん……入れてぇとか言いながら。きっつかったよな?」
「そうそう!」
おおぅ……それはすごい。でさあ、匂いが出ると身体に痺れと痛みが出る魔石を首から下げててな?出過ぎると衝撃が全身に来てぎゃあ!で、当然触ればぎゃあ!だと。
「その成果でここまで抑えられる。お前もするか?俺たちがお前の前で自慰するよ。魔石下げてさ」
「いえ……必要ならしますが拷問でしょそれ」
「ああ拷問だな。自分の痛すぎて握るとぎゃあ!だ、んふふっ」
嫌だよ。だけど少し練習は必要かな?と考えてるとポンポンと頭を叩き大丈夫と微笑む。お前の匂いで襲って来るヤツは俺が切り捨てるからとステファヌが怖いことをサラッと言う。
「ねえ?」
「うん。でも久しぶりだから優しくしてね?」
「う~ん努力はするよ……多分」
二人とも返事が怪しいけど僕を抱き上げると寝室に向かった。我慢しなくてもいいよなって言うと一瞬でむせ返るほどの香りで僕はあっという間に酔ってハァハァ。ベッドに寝かされると無理と香油がお尻に流れズクンッ!ああ……
ゴソゴソと布団から出て水飲んで寝室を出るとソファに横になった。もういいここで寝る。あ~また暗いね、夜明けは遠そうだ。はあ……ねむ……
少ししてバタンッとドアの大きな音でビクッとした。なに?
「ルチアーノ!なんで!なんでだよ……」
薄暗い中で二人は泣きそうな顔をしていた。
「言ったはずだよ。ひとりにして」
「やだ……やだよ」
はあ……僕の方に二人は近づき抱きつこうとしたから、
「触るな」
「え?」
「触るなって言ったの!」
「ル、ルチアーノ?」
「数日でいいんだ。一人にして!」
呆然と立ち尽くす二人。ごめん、まだ頭が整理しきれてないんだ。僕は自分が許せないんだ。二人の愛に溺れたらなんの意味もない。お願いだから構わないで。
「説明はしてくれないのか?」
「今は無理」
見合った二人は哀しそうに、
「そうか……悪かったよ。ステファヌ行くぞ」
「ああ……また明日なルチアーノ」
「うん。ありがと」
二人はトボトボと自分の部屋に戻った。本当にごめんなさい、もう少し下さい。それから数日僕は二人と仕事以外の会話もせず一人で寝て彼らは彼らで種くれ要請に出たりしていた。
その間イレールやレオンスと行動を共にしながら城の大臣や職員を観察。僕はいかに三人の世界に浸り周りを見ていた「つもり」になっていたか身に染みて余計自己嫌悪。アンセルムに断って一人でイアサントたちに会いに行くかなと考えたけど、あの二人も僕を可愛がるだけだから……両親もね。つい誰かに助けを求めたくなる衝動を抑えるのにも苦労した。
「あの……ルチアーノ様。あのお二人が辛そうで……ね?」
風呂上がりのフルーツのお水を給仕しながら、
「うん。分かってるんだ。僕も甘えたくて仕方ない。だけど駄目なんだよそれじゃ」
「ん?番だし……何が駄目なんでしょう?」
二人には何も話さないでよと前置きして、
「僕はここに来て王になり大臣にも他国にも評価してもらった。自分でも頑張ったと自負はしている。だけどね……」
だけど?いえあなたは魔力もですが人の上に立つ器量っていうんですかね?持ち合わせていると思います。私はなんと良い方にお仕え出来たんだろうと日々思いますが?と褒めちぎってくれた。
「ありがとうイレール。それは僕の表面だ。中身のないね」
「は?中身のない……?はあ?」
驚き納得がいかないとイレールは捲し立てたけど待ってと黙らせた。
「出来ているのはみんながお膳立てしてくれたから。その流れに乗ってれば出来る事だよ」
ばっ馬鹿ですか!!と叫ばれた。
「お膳立てすれば出来るなら王族なんか要りません!貴族もね!何を……何を言ってるんですか!」
「買いかぶりだよイレール」
僕は失笑が漏れた。僕に才能なんで多分ない。もし出来て見えたなら血がさせているのかもね。僕自身で考えてやっている「つもり」なだけだよと。
「なんで……なんでそんな事を?あなたは……あなたは……」
僕の言葉にイレールは泣き出した。
「泣かないで」
「だって私は一番お二人の次に近くにいました。見ていました……そんなふうには見えませんでした……」
「ありがと」
と微笑んで隣に座るイレールを抱いた。なんで……と泣きながら僕を抱いてくれた。私はあなたをお慕いしています。こんなに努力してと泣いた。
「うん努力はしたさ。みんながきれいにしてくれた道を歩いてね。でもそれだけだ」
「それだけって……それが出来ないんですよ!みんな!」
まあいいやそういう事でさと慰めた。だけど僕の中でそれだけじゃ足りないと心が騒ぐ。言われた事をするだけじゃこれから先は王では居られない時が来ると。
「王とは……グスッ人が一目置くような魅力があればいいとは思いますが慢心すれば次第に独裁政権になりかねません。誰も否と言えない環境は国として間違っています」
「そうだね」
「ルチアーノ様はこの短い期間に皆が惹かれる力を発揮されています。理解が早く判断も的確、お二人が会議で発言する事が減っていると聞いていますし、何が不満ですか?」
不満か……足りていないという思いが強いんだよ。基本がないからね。王族として生きて来なかったからその辺が不安要素。そして僕は異質な気もしている。あくまで庶民の感覚だ。
「それは国の運営にも必要なものです。王侯貴族の持ち合わせていない大切なものと考えます。国を舵取りするのが王侯貴族ですから……」
「だからだよ。その纒める力が足りてないんだよ。してこなかったからね。みんなの顔色伺ってるの気がついてた?きっとこう言って欲しいんだろうなって言葉を話してたんだ」
うそだ!否定も問いただしもしているとレオンスが!と叫んだ。
「うん、納得いかないのはね。それ以外はほとんどだよ。だから受けもいい」
「そんな……卑下しすぎです!」
でもそう思うんだよ。僕自身の足で立ってはいない。
「グスッではあなたにとって自分の足で立つとはどういう事ですか?」
「ふふっそれが分かんない。自分で見つけるものでしょ?」
「こんな……二人を排除してまで見つけなきゃならないものですか?」
「うん」
イレールは息を吐き僕の肩を掴んで強く見た。
「分かりました。見つかるまでお手伝いします。お二人を言いくるめたり……くるめたり……」
「お願いね」
「はい。では今日は遅いので寝ましょう!」
「あはは、うん」
翌日からも自分はどうあるべきか、皆がどう合って欲しいと思うかを考え続けた。その間に二人の目は次第に死んで生気がなくなった。してないし触るなと言われたからね。会話すらいい天気だねとか子供たちの話くらいだから。
「あのルチアーノ……?」
「はい何でしょう?ジュスラン」
「いえ……いいです」
「はあ……?」
もう泣きそうだね、ごめん……え?泣いた?ここ執務室だよ?
「ジュスラン?」
「俺もう無理……寂しくて死ぬ」
ステファヌの方を向くと目が真っ赤で今にも……下からはルチアーノ様がもうひと月くらい冷たいからだとヒソヒソと聞こえる。グッ……結論がどうしても出なくて僕も苦しくはなっているけど、自分に負けたくなくて……でもジュスランを見てると鼻がツンとした。
「お前も泣いてるじゃないか……」
「え?」
頬を触ると涙が?
「お前も辛そうだぞ?」
「うん。グスッ……」
二人がなんかしたんだとしても許してやればいいのにとヒソヒソ……するとアンセルムが苦笑いで僕の前に来た。
「もうやめましょうよ。何か思う所があっての行動でしょうが無理が来てませんか?」
「え?」
「かれこれひと月。お一人で悩んでも堂々巡りになって混乱されているのでは?」
「そうなのかな?」
もう何が正解かも分からなくなっているのは確かだ。
「そうですよ。また今までみたいに過ごしているうちに見つかるかもしれないじゃないですか。違いますか?」
う~ん……僕はどんなふうになりたいんだろう。目移りしてそれすら固まらない。ファンダル様は目標だけどこの国は商業国、あのゆったりと一人ひとりを見るようなやり方は合わない気がする。
「ルチアーノ……」
「ほら、可哀想でしょ?」
手をかざし二人を見ろとアンセルム。ぐっ……そんな目で見ないで。僕が悪い事してるみたいじゃない。あ、してるのか……
「はあ……夜僕の部屋に来て。二人ともね」
「本当か!ああ!すぐ行くから!」
ぱあって幸せそうになった。ほらねってアンセルムが笑う。
「三人はそうでなくちゃね。私は幸せそうにしてるあなたたちが好きですよ」
「はい……意地を張りました……」
「分かればよろしい。ではあと少しです。頑張りましょう」
「うん」
下からあ~よかった、このひと月息が詰まったからなとザワザワ……不穏な情勢が執務室までと聞こえ……ごめん。
そして夜……ゲホッ!むせる!
「二人ともまず話聞いて貰うから匂い抑えてよ」
「え?」
しおしおと項垂れた。イレールはその様子に後ろを向いて笑いを我慢している。ゲホゲホいいながら。
「では私は下がりますね」
「うん。ありがとね」
「いいえ、お力になれましたか?」
「もちろん!感謝しているよ」
ではと微笑み下がって行った。すると二人はすぐに向かいのソファからいつもの定位置に座り僕を抱いた。
「あ~久しぶりのルチアーノ……いい匂いだ」
「少し痩せたか?」
「ん~自分じゃ分かんないけど?」
「キスしていい?」
「ダメ」
はあ……気持ちいいな、二人の体温も匂いも。こんなにも僕自身我慢してたんだね。意識が違う所にあったから気が付かなかった。
「あのね……」
このひと月あの日クレールを抱いた後から感じていた不甲斐なさと悔しさを話した。
「それはなぁ……一生王は考える事だと思うぞ?」
「俺もそう思う」
う~んと考えて二人は、
「番に関してはまあ確かに次は持てないが、気に入ったやつ噛めば家族の愛くらいは持てるから孤独ではないんだよ、人族はな」
え?なにそれ?
「習わなかったのか。確かに獣人は誰か噛んでも変わらない、もう番がいるから無効だ。だが人族は魔力のせいかほんのり愛情が湧くらしいんだ。だからそんなに心配しなくても……」
へえ……でもこんなに激しく愛しいとか欲しいとか思わなくなるのはやっぱり……
「ん~それは考えたらキリがないよ。その家の都合とかもあるしな。俺たち王族はそこまで口は出さない」
「そうだ。それが貴族と上手くやるコツでもある。この国ではな」
他国は知らんがなと笑う。
「俺たちはお前のなりたい王の後押しはする」
「そう、いくらでも手は貸すしなんの心配もいらないぞ」
二人の自信満々の笑顔……これに弱い。
「んふふっそれが甘えになって駄目になる気がしたんだよ」
そうか?と二人。
「そう思ったんだよ。僕は卑怯で弱いんだ……」
ポンポンと頭を叩きチュッてジュスラン。
「弱さを知っているヤツは強いよ。無敵だ!俺が王だ従え!なんてヤツはすぐ終わるんだよ。独裁は終わりが早い。イアサントを見ろよ!あいつは俺にそっくりだろ?真っ当な志さえあればなんとでもなるさ」
うん、彼は戦後魔法省に命じ無料で個人の家も街も修復し、国庫も放出して給付もした。復旧不可能な汚染地域の人には王族所有の土地を分け与え、民が飢えるのを防ぎたくて王国の魔法使いを農地に向かわせすぐに収穫出来るようにした。騎士は一緒に森に行って獣を仕留めて肉を確保したり、冒険者みたいな事をさせて総動員で復興に尽力した。
その後も民が過ごしやすい政策を惜しみなく施行し続け、寿命が来るその時までやったすごい人なんだ。まあ……オーブの魂の頃は戦前でしょうもなかったらしいけどやる気になった彼は伝説のように言われている。
そうそう、教会は彼が神で祀られているんだ。元々の太陽信仰と一緒にね。だから城にはあまり肖像画とかはない、イアサントのもアデラールのもね。歴代王の肖像画が一同に飾ってある廊下くらいにしか二人と他の三人のはないんだ。見たけりゃ教会に行けって感じ。
「一緒に探そうぜ。それに俺たちは従うし守ってやる。間違っていると思えば指摘もするしな」
「俺たちは生粋の王族だぞ?嫌な事も見てきたんだ。間違えば分かるさ」
「うん……そうする。今までごめんなさい」
いいさ、それほど真剣にこれからを考えたんだろ?悪い事じゃないからなとステファヌ。
「でも相談はして欲しかったな。イレールにはしてたんだろ?」
「相談っていうか愚痴だね。自分の弱さを嘆いていただけだよ」
はあ……とジュスランはため息吐いて僕を睨んだ。
「そういうのこそ番に言うもんだ!庭で触るなと怒鳴られた時の気持ちが分かるか?」
「俺はね、剣で刺されたくらいの衝撃があったぞ?」
哀しそうに僕を覗き込むふたり。
「ごめん。自分が嫌過ぎてイライラしてるの見せたくないし、のほほんと王様やっていた恥ずかしさに死にそうだったんだ」
馬鹿だなあ……だけどそんなルチアーノが大好きだと二人は抱き締めてくれた。
「あのさ?そろそろちんこ痛くてもげそう……我慢の限界でさ。興奮しないようにするのも限界……」
「俺も」
え?股間を見るとガウンがはだけてて何も履いてないから剥き出しでヤバい色でハチキレそう……
「凄いね。こんななのに匂い殆どしないよ?」
「そりゃあ王族だからだ。泣きながら躾けられたんだぞ?」
「え?」
「そうそう!好みの夜伽を目の前にして我慢しろとか拷問よ」
ほえ……
「夜伽は煽れって言われてるから自慰をして見せるんだ。ちんこ握って自分で穴に指入れてあんあん……入れてぇとか言いながら。きっつかったよな?」
「そうそう!」
おおぅ……それはすごい。でさあ、匂いが出ると身体に痺れと痛みが出る魔石を首から下げててな?出過ぎると衝撃が全身に来てぎゃあ!で、当然触ればぎゃあ!だと。
「その成果でここまで抑えられる。お前もするか?俺たちがお前の前で自慰するよ。魔石下げてさ」
「いえ……必要ならしますが拷問でしょそれ」
「ああ拷問だな。自分の痛すぎて握るとぎゃあ!だ、んふふっ」
嫌だよ。だけど少し練習は必要かな?と考えてるとポンポンと頭を叩き大丈夫と微笑む。お前の匂いで襲って来るヤツは俺が切り捨てるからとステファヌが怖いことをサラッと言う。
「ねえ?」
「うん。でも久しぶりだから優しくしてね?」
「う~ん努力はするよ……多分」
二人とも返事が怪しいけど僕を抱き上げると寝室に向かった。我慢しなくてもいいよなって言うと一瞬でむせ返るほどの香りで僕はあっという間に酔ってハァハァ。ベッドに寝かされると無理と香油がお尻に流れズクンッ!ああ……
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