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二章 イアサントとアデラールとオーブ

17.やっと会える!

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 やはりというかなんというか父さんと母さんに会いに行けたのは戴冠式から三日目という……

「ごめんなさい……ずっと引き止めちゃって。することなくて大変だったでしょ?」
「ふふっそんな事ないぞ?イレール様が気を効かせてギー様たちと城下に行ったり買い物させて貰ったりしたよ。来客がいない図書館とかサロンとかも使わせて貰ったし」

 二人は見た事も体験した事もない経験を楽しそうに話してくれた。

「よかった……僕時間取れなくてさ。細かい会議とか会食会とか目白押しで自分の時間も取れなくて赤ちゃんも任せっきりで……授乳が終わってたのが幸いだったよ」

 え?王族なのに授乳?と母さん。

「うん。自分であげたくてね」
「はあ……よくいいって言われたね」

 呆れ顔の母さん。

「ふふっ母さんも僕をそうやって育てたでしょ?だからと、よそのお母さんのも見ててかわいかったから最初だけでいいからって抱っこしてお乳上げてね。かわいいよ」

 そっかあと母さんはなんだか嬉しそう。

「そうだねぇお前もかわいくてね。そうそうよくゲップでゲボ~って全部吐いてこの子育つのかしらと不安に思いながら育てたんだ」
「あはは、あれびっくりするよね」

 そして少し寂しそうに、

「俺が手伝えたなら……なんてね。お前の子は俺の孫だから……」
「エネーア……仕方ないんだよ」
「分かっているんだけどねアルバーノ……それでも息子の役に立ちたいって思うのも親心でしょう?」
「そうだな……」

 肩を抱いて父さんが慰めてる。ごめんなさい……そんな時コンコンとドアがノックされた。何だろうとそちらを見るとロベールがフェリクスを抱いて立っていた。

「ご両親に少しだけでも抱っこをとジュスラン様が」
「あ……ありがとう」

 二人はガタンと急いで立ち上がりロベールの元に行きフェリクスを眺めて、

「なんてかわいい……ジュスラン様によく似て……少し金髪にお前の髪色が混じってるのか」
「あんまりお前に似てないけど……あっ笑うと似てるかな?」

 座って抱っこをとロベールに言われてすぐに座り母さんが抱っこ。

「赤ちゃんなんてルチアーノ以来で……」
「キャキャ……んんっ」

 知らない人なのに泣かないね?なんてとても嬉しそう。

「そうなんだよ。人見知りはしないんだよね。さすが王族なのかな?」
「いや、お前もしなかったから似たんだろ?」
「え?そうなの父さん」
「ああ、俺もお前が産まれた時嬉しくてよく色んな人に抱っこして貰ったがお前はグズりもせずな」

 へえ……そうなんだ。嬉しくて……か。今更ながら親の愛情を感じるのはいいものだね。

「今はお乳飲まないのか?早くないか?」
「うん、人族は離乳早いんだよ。今は鬼牛の乳と離乳食食べてる」
「ほう……種族が違うとそんな所も違うのか」

 父さんは感心してた。俺気にしたことなかったよと。

「うん、魔力のせいで一歳までで獣人の二歳くらいの身体にはなるらしいよ。話すのも早くてね。でも七歳くらいになると体力差とかほとんどなくなるんだって」

 ふ~ん……と聞いてるんだがどうだかわかんない返事をして赤ちゃんに夢中だ。僕は既に目に入ってないね……まあいいけど。そこにアンセルムがやって来た。

「あれ?どうしたのアンセルム」
「こんばんは、ルチアーノ様。ちょっとご両親にご提案をと伺いました」
「はあ提案?」
「はい」

 ロベールがフェリクスを母さんから受け取り下がって行った。

「では早速ですがお二人はルチアーノ様の近くにいたいとは思いませんか?」

 キョトンとした二人は、

「はあ……出来るのならばイアサントに来たいとは思いますが……この歳で職替えも難しいですし、獣人ですからこの国ではいい仕事も……」

 父の身内は既になく母の方も兄が一人いるのみだ。二人で見合ってなあと。母さんも俺は畑しか知らないしと困り顔。国に未練がないと言えば嘘になりますがルチアーノの国ですからそこはと。アンセルムは微笑み、

「ではここに住みませんか?」
「はあ?城に?」
「ええ、お父様はイアサントの直系ですしここの親戚みたいなものですからね」

 え?と二人は固まった。

「あ、あの……仕事は何すれば……」
「いえ、別にしなくともいいです」
「いやそれは……居づらいです……」

 ふむ……と顎を擦りながら、

「ではルチアーノ様と同じ様にこの国の事を勉強しながらしたい事を探すのはいかがでしょう?見聞きするうちに畑以外の何かが見つかるかもしれませんよ?」
「はあ……でも畑を放置してきましたし国籍もリンゲルですよ?」
「国籍なんぞこちらでどうにでも。畑は……」

 二人はやはり僕の国とはいえ他国に来るのはと不安になっている。

「僕は父さん母さんが近くにいると嬉しいよ?」
「それは俺たちもだ。だが……農民だぞ?それもお前と違って歳も取って頭も硬くなっててさ。簡単には馴染めそうにも……」

 後なと悪そうに頭を掻いて、

「常に人に世話されるのがどうにも馴染まねぇ。風呂も着替えも辛い……」
「あ~それはルチアーノ様も言ってましたね。では城内に屋敷でも建てますか。最低限のお世話だけにして過ごして貰えばいいのでは?」
「え?出来るのアンセルム!」
「はい。王族の庭の隅にでも屋敷を建ててメイドに通わせれば可能かと」

 おお……それはいいね。

「それなら二人の時間も確保出来るね!」
「ええ、身の回りの世話は通いでメイドを行かせますよ。食事とか洗濯とかですかね。イレール?」
「はい出来ます。宿屋の様な感じでしょうか。そのくらいのお世話になさればよいのでは?」

 ならなぁと二人は満更でもない様子。

「あの……このままここにいるのならば、畑だけ兄に頼むように手紙を書きたいのですが……」

 母さんはここにいてくれるようだね。父さんも仕方ないお前がいたいならと諦めた顔をしている。

「ええ手配いたします。屋敷が完成するまではここに滞在という事になりますね。そして今まではルチアーノ様の側仕えを付けていましたが明日からは新たな者に変更させて頂きます。その者がお二人の側仕えになりますので」
「はあ……」
「人が変わっても何も変わりません。ご安心を」

 不安そうではあるけど母さんたちはもう帰らない!僕のそばにずっと……もう会いたい時に会えるんだ……グスッ

「ルチアーノ……王様は泣かないんだぞ?グスッ」
「父さんも泣いてるでしょ!」
「父さんは庶民だからいいんだよ!」
「父さん?あなた王の父親で二人共アデラールの末裔……」
「いいんだよ!俺は出来損ないだし!」

 僕は席を立ち二人に抱きついた。もう離れる事はないんだと思うと嬉しくて離れていた時間の寂しさが込み上げて涙が止まらなかった。

「お前も親になったんだろう?こんな子供みたいに泣いて……」
「ううっ関係ないよ!僕は何歳いくつになっても母さんと父さんの息子だよ……うわ~ん!」
「お前はもう……ルチアーノ……」

 母さんの懐かしい逞しい腕に猫臭さに安心して……では私はここで失礼しますねとアンセルムが部屋を出てイレールがルチアーノ様もと。

「ずびぃ……また来るね。イレール母さんたちが楽しめるようになんか考えてやってね。グスッ」
「はい。勉強ばかりでは辛いですからね。貴方みたいな詰め込み方はしません」
「確かに。あっそうだ!暇になったら温泉に行こうよ!僕もまだだからみんなでさ!」

 イレールは微笑みいいですね。騎獣ですぐですしと。

「え?騎獣?空飛ぶあの?」
「うん。僕も出せるようになったんだよ!ファンダル様のような立派な獅子なんだ!」

 そう……魔物ではなくなった。僕頑張ったよね……マジで。書物に載ってた他国の伝説の化け物のヌエとみんなにバカにされてたけどね。

「あ……うん。あのさ騎士様も護衛で行くよね?」
「ん?うん行くね」

 あははと笑い、

「あ~俺は騎士様に乗せてもらうわ」
「え?なんで?僕のに乗ろうよ」
「は?……覚えたばかりのヤツのに乗るほど俺は怖いもの知らずじゃないよ……」

 ボソッと失礼発言だよ父さん!

「僕は上手いよ!騎士団長のサミュエルにもお墨付きを貰ってるよ!母さんは乗るよね?」
「いや……俺もまだ命が惜しい……」
「はあ?失礼だよ母さんまで!」

 まぁまぁまた今度になさいませとイレールに止められてまたねと部屋を出た。そう、また来ればいい。母さんも父さんもどこにも行かないんだから!!


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