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二章 イアサントとアデラールとオーブ

16.この王はまったく……

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 ホールに出ると楽団がダンス曲を演奏し始めみんな各々踊り出した。半年前も思ったけど綺麗だね。アン属性の方はとても華やかな衣装でふわふわ軽い生地で出来た衣を羽織ったり腰に巻いたりしてるからそれが揺れてキレイなんだ。

 僕たちは各国の王や貴族と踊りながら過し、ジュスランがいない分頑張らないとと僕も笑顔で踊った。特にファンダル様と踊れたのは感無量だ……感動で涙が出そうになっちゃたよ。

「ルチアーノ様、僕と踊っていたたけますか?」
「はいベルンハルト様」

 鳥族の王は皆の注目の的だ。優雅な身のこなしに人懐こい笑顔でうちの貴族たちの熱視線はすごい。まあ……他国の大臣たちも見惚れていたけどなんだろ狙うような……いやらしい視線だよね。あはは、彼の普段の素行が伺える。ちなみに美しさでは引けを取らないエルフ王は高嶺の花過ぎて恐れ多くて遠巻きにみんな眺めていた。彼の踊る姿は精霊と見間違いそうなくらい優雅で美しい。

「ふふっ本当にかわいいね、ルチアーノ様」
「あはは……ありがとう存じます」
「双子もかわいいけどあなたのかわいらしさとは違う……あのさ僕と楽しみません?」
「はあ……今踊って楽しんでますが?」

 クルッと回り抱き寄せられて、

「ベッドでだよ」

 皆に分からないくらいの早業でチュッと頬にキスされた。

「あの……さっき会ったばかりの僕とですか?」
「うん。すごくいい匂いがするものルチアーノ様」
「え?匂い分かるんですか?」
「ふふっ僕らは少し魔力があるとさっき言いましたよね?僕らも匂いで番を決めるんですよ」
「へぇ始めて知りました」
「あは~んいい匂い……僕この匂い堪んない!」

 ゔっ……彼の視線に獲物になった気分がする。確かにこの人から香る匂いは好ましいけど……甘い南国の花の様な強い香り。華やかな香りでとても良く似合っているね。

「ベルンハルト、ルチアーノを誘うのはやめて貰おうか」
「あ~ステファヌか」

 ちょうど音楽の切れ目で助けに来てくれた。王はブスッと一瞬したけどすぐニヤニヤ。ステファヌの頬を撫でながら、

「お前でもいいぞ?ジュスランとは素敵な夜を過ごせたからね」
「はあ……お前式典に来てるんだろ?物色に来てるんじゃないはずだ」

 とりあえずホールの端の椅子に三人で座り、給仕がお酒を持ってきてくれて手に取り一口。

 「やだなあもう。知ってるだろ?僕は他国に来るのは仕事と物色だ。妻がいないのはそういう理由で更に持ち帰るためだ。今回連れて来た彼は気に入ってるから次の王を産んで貰おうかなぁって番になったんだよ。深い意味はないんだよ」

 フンとステファヌは鼻を鳴らし、

「なら他はいらないだろう?」
「んふふっそれとこれは違うさ。僕はランベールでは奇跡の王なのよ。それを最大限使うのさ。見てみろ」

 彼はうなじを見せてくれた。

「魔力を通してみろ」
「ああ……?」

 ステファヌが人差し指で軽く触れるとふわっと二重紋が現れた。

「うわ!なんで鳥族にこれが?」
「ふふっだから奇跡なんだよ」

 話によるとランベールの始祖の頃に混じった人族の血のせいだろう、何代かにランダムに現れるらしい。大体何か国内、国外に問題がある時に現れる確率が高い。

「本能による種の保存かな?王族がいなくなると困るからかもね」

 ほほう、確かにこの五国は謀反などなく始祖の頃から王族家が代わった国はない。

「僕らの国はほぼ全ての者が飛べてこの五国以外にも休み休み飛びなから商いや仕事に行ってるんだよ。だからね僕らの国はここ以外の外にも国交があるんだ」

 ほほう……飛べるってすごい。

「それは知っている。それとルチアーノを狙うのと何が関係あるんだ?」
「んふふっここでは話せないよ。人に聞かせられないからね」

 彼は人差し指をステファヌの唇に触れて微笑んだ。

「ただ気に入っただけではないと?」
「うん、前にジュスランを抱いたのは興味だけだったけど、彼との子は欲しいとは思わなかったんだ。ちんこユルユル同士の子って怖くない?」

 あはは……確かにね。

「だからね?僕と寝てよ。そんで子種ちょうだいルチアーノ様」
「おい!ベルンハルト!」
「ステファヌ聞いて?」

 急に真面目な顔になった。

「僕はこの先も我が国民を守りたい。死んだ後もこの先ずっと……だからルチアーノ様の子種が欲しいんだ」
「あ?……俺たちの知らない何かがあるのか?」

 んふふっと微笑むと、個別の会議の時に話すよと明言を避けて僕は他の方と踊ってくるねと去って行った。ステファヌは苦悶の表情になった。

「ヤバい何かがあるぞルチアーノ。多分あいつと寝なくちゃならないはずだ。悪いな、すっげぇ嫌だけど各国の王族か貴族とも……俺たち含めてな」

 何それ……?

「どういう事?」
「はあ……実はまだお前に話してない事も多いんだよ。来たばかりでやる事多いのに何でもかんでも詰め込むのは違うと思ったからな」

 あ……そうか。これでも抑えてくれていたんだ。僕には相当キツかったけどそうだよね。目先がオーブと子作りってだけだよね。考えれば分かることだった。

「納得いくものだったら……」
「うん……多分気がついているのがランベールだけなんだろうとは思う、あの口ぶりはな。だが……そう遠くない時期に何かが起こるとアイツは踏んでいるだろう」
「何か嫌なことだよね。魔力持ちの子が欲しいということだから」
「だな……」

 と言ったきりダンスを眺めステファヌは僕を抱いて黙ってしまった。この後ひと月ある会議がどうなるのか不安しかなくなったよ。

 この戴冠式は年一回ある各国の王族会議に合わせているんだ。本来ならエヴァリス王国の当番だったけど僕の王様就任もあり、イアサントに変更したんだ。だから調整に時間が掛かったんだよね。

「ステファヌ……僕はどうすればいい?」
「ルチアーノ心配するな。今はお前が来る前とは違うしな。オーブも本来の稼働を始め、知識の固まりイアサントとアデラールがいる」
「うん」
「だからなんとかなるさ。過去の出来事をまるっと体験してるように記憶してるんだぞ?対策はきっとある」

 うんと僕は返事をして……言葉が出なくなった。確かに知識は手に入れた。だけど実行するのは僕たちだ。それにベルンハルトの口ぶりは戦を思い出させた。強さを求める……僕は二人に愛されて子供作って幸せに過ごすつもりだった。そして優しい国民に愛される王になるつもりで頑張っていた。戦など……

 この地にイアサントが国を作り五国が覇権争いの戦をしたのが最後。暴動とか内戦見たいのはどの国もあったけど、国同士は平和に付き合って来たのにね。僕はなんて時に王になったのだろうか。

 煌びやかなダンスと音楽を聴きながら不安に胃が痛くなるようだった。










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