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三章 どこになにが潜んでるかは分からない
9.この強さは尊敬する
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広翔は、見た目がどうにかなるまで部屋で仕事していた。僕が帰って来る頃も、ボソボソと部屋から話し声が聞こえて来るから、出来るだけ静かにして生活。
「あ~家で仕事するの楽だけど、なんだろ。メリハリがない気はする」
「そう?通勤ないだけ楽でしょ。僕もいないし」
「そうだけどさ。昼もちーが作ってくれてるからそれ食べて、一歩も外でないのはどうなの?」
「あはは。お昼どきにコンビニとか行けばいいじゃん。僕作り置きやめるよ」
「いや、それは食べたい」
他はお菓子もあるし飲み物もある。なにが必要?って。
「俺タバコも吸わないし、本気で出かける用事がなくてさ。まあ今日までだけどね」
「うん。明日から頑張れ」
「おう!」
家にいたって仕事ばかりでね。たまに夜中に起きてメールの返事したりしてるのは知ってた。広翔の仕事風景が少し見られた気がして、僕とは違うねえと改めて感じたり、話し口調もビジネスマンらしい感じでね。
「かっこいいだろ?」
「うはは。そうね」
顔もきれいにはなったけど、切り傷とか擦り傷とかも色が抜けると目立つ。それでも外に出れないほどじゃない。女性だったら……お化粧で顔が痛そうに見えるくらいの傷かな。
その間僕はいつも通り生活していた。広翔がそれでいいって言うからね。合わせて休んでも仕事してるし、かまえる訳じゃないからって。
そして翌日から普通に出勤。元気に出かけていってぐったり帰って来た。
「人事とかから説明しろって言われてな。半分働いてなかった。分かってたけどさ」
「そう」
問題の彼はやはり、だったそう。今入院中。刑事事件にするかと問われたけど、しなかったそうだ。まあ入院するくらいだから。
「やっぱり工藤は特になにかあった訳じゃなかったらしいんだ。本人もうちに来る前から少しおかしいとは感じてたらしいんだけど、疲れだろ?って」
「うん」
「違うチームに短期とはいえ来て、頑張ってて目の前に理想がいて、好かれようと頑張ってさ」
「うん」
はあ……と頭を抱えた。
「俺が悪い。目先のことばかりでスタッフの異常を見抜けなかった。俺のところにいる奴らは、叩いても死なないような根性据わったやつばっかでさ」
「うん」
彼が頑張りすぎてるのが分からなかった。自分たちが出来るから、出来るって思い込んでてさって。リーダーとしては少し未熟と判断されたんだそう。仕事を遂行するのは当然で、スタッフのマネジメントも仕事なんだよって。
「相手が悪いけど、そうなった責任の一部はお前にあると言われた」
「あ……そっか」
「俺はこのプロジェクトが終わったら一度リーダー外れる。騒動を起こした責任があるからって」
こんなに頑張ってきたのに?それこそ僕は近くで見て来てたのになんで……
「広翔……」
天井を仰ぎ自嘲気味にふふって笑った。
「脇目も振らずちーにも負担かけて、結果はこれだよ。クソッ!」
僕はなんと声を掛けていいか分からなかった。どれだけのものを犠牲にして頑張ってきたか知っていたから。お金じゃないやり甲斐だけで頑張ってきたのに。
「彼が落ち着いたら謝りに行ってくる」
「うん……」
え?でもそれはどうなんだろう。病んでたからもあるだろうけど、好きなのは変わらないんじゃないのかな?そんな心配が浮かんだ。でも、今の広翔に言うべきじゃないような気がして聞き流した。
翌日からも広翔は仕事に行ってたけど、明らかに目に生気がない。
僕にしてあげられることってなに?と考えれば、横で見守って、美味しいご飯を食べさせて、気持ちが前向きになるのを待つしか出来ない。そんなことしか思いつかなかった。
「どうしたの?」
「う、うん。どうもしてないよ?」
「そう」
僕はあの日から毎日べったりくっついていた。僕はいるよって分かってもらおうと思って。味方だよって……もうこれくらいしか出来なかった。
「ちー、ありがとう」
「へ?」
「心配してくれてるんだろ?」
「あ、うん」
背中をポンポンと叩いて、ごめんなって。
「俺は入社以来突っ走って来て、順調に階段を登ってた」
「うん」
「俺、人を見る目は悪くないと思ってたんだよなあ。疲れてそうなスタッフは休ませてたし、有休も忙しくても取らせてた」
「うん」
「いつも疲れてるのはみんな一緒で……俺より役職上の人なんて、いつ寝てるんだろうって人もたくさんで」
そう、みんながみんな強い訳じゃない。この仕事のやり方に疑問に思ってたり、無理してついて来てる人だっているかもと考えなくちゃならなかった。今なら分かるけどと、自嘲気味に話していた。
「自分が楽しかったからね。辛いと思ってる人の存在に目がいかなかった。鈴木さんも、工藤の元々のチームのリーダーも、同じく責任を取らされてる」
「そう……」
会社からは一度スタッフに戻って、周りをよく見てやり直せって言われてるそうだ。
「もうすぐ今のが終わるからさ」
「うん」
言葉にも元気がなくて、でも僕にしてあげられることは少ない。でも、これは僕にも言えること。
僕もチームリーダーのようなことはしてて、他部署との共同のもの、品質管理部とか、事業推進部とかの連携もある。その時のものでリーダーは変わるけど、僕もなることがある。他人事と聞いていてはだめなんだとも思った。
それでも広翔はなんでもない顔して頑張っていた。抱きたいと言われれば、いくらでも相手をしたし、食べたいもののリクエストには応えていた。僕には労ることしか出来なかったんだ。
でも広翔は強かったよね。短期間で切り替えて新しいプロジェクトに参加して、楽しそうな雰囲気になっていった。
「やり直せってって言うなら、それに全力を尽くす。よく考えればこんなに派手ではないけど、他の人にもあったりするし、二度としなければいいんだよな」
「うん、そうだね」
俺はこの仕事好きだしねって。前向きに捉えるのが俺の良さなんだと微笑んで、膝の上の僕の頬を撫でる。
「うん。頑張ってる広翔はかっこいいもん」
「おう!どんな立ち位置であろうと、俺は俺だよ」
「うん」
それからだいぶ経った頃、工藤さんが辞めたと聞いた。薬で安定はしたけど、仕事に耐えられなくなったそうなんだ。総務とか組合とかそちらにって言われたらしいけど、正気に返れば何してたの僕となって、会社に戻りたくないって。
「俺も家に戻って落ち着いた時に会いに行ったんだ」
「そう」
おお!広翔マジで行ったのか!彼の心の傷をえぐりに行っただけではと、不安になりながら聞いていた。
「彼は、なぜあそこまで執着したのか分からないってさ。今思えば愛してる人がいてごめんねって言われた時点で、普段は引き下がってたそうだ」
「そう」
ドキドキする。彼は広翔と会って大丈夫だったんだろうか。僕が同じ立場ならと不安しかない。
「うん。あの頃忙しさと疲れと、知らない人ばかりでチームに馴染もう、迷惑にならないようにと気を張ってて、余裕もなくなってて」
「うん」
俺のことは素敵な人だなとは思ってたけど、そのうち俺しか見えなくなって、体調は以前からおかしくて、友だちにも変だぞって注意されてたそうだ。
「僕こそごめんなさい。大事にしなくてありがとうってさ」
「そう」
会社にもあなたにも迷惑かけました。償うことが出来ないけどと泣いてて、俺どうしたらいいか分かんなくなって、大丈夫だからって言うしかなくて。
「落ち着いてからの工藤はちーに似てた。見た目だけじゃなくてね」
「ふーん」
少しニヤニヤしながら僕の方を向いた。
「ちーより先に出会ってたら、分かんないかなってちょっと思った。よく見るとかわいかった」
「ゲッ!」
こ、怖い!広翔、儚げな子も好きなのか!
……ど、どうしよう、僕儚げとか無縁だよ?スンとしてるからね。弱さが違うんだ、そういった弱さは僕持ち合わせてない。
「ちー?」
「あ、ああはい、なんでしょう」
聞いてみる?いやいや!怖くて聞きたくない。そんな子が現れたら、本気でいらねってなるのかも?嫌だよ。
「何考えてるの?」
「いえ……なにも」
広翔の膝を枕にお腹に顔を押し付けて、なんもないふりをした。
「心配になった?」
バレてる。
「……うん」
あははと笑われた。嫉妬してもらおうって思ったんだって。なんだよもう!
「俺は、自分から今の恋人を捨てて乗り換えるなんてしたことないし、飽きたこともない。短い付き合いの人たちも、あちらからなんか違うねって言われてだから」
「うん」
俺なりに愛してたし、大切と思ってた。でもね、俺は会えない時間多かったから横からかっさらわれたり、心変わりする人ばかり。
「総合すると寂しいってさ。忙しい時は月に数度短い時間しか会えないし、俺がこんなだからベタベタするの好きな人で多くてね」
「ああ……」
「待てないし、せめて週末くらいは一緒にいたいって、当たり前のことを言われたんだ」
帰宅は遅いし休みは不規則。海外に行くこと多数で放置されてる時間は……うーん。
「ちーだけだよ。耐えてくれてんの」
「僕は耐えてる訳ではなくて、そんなもんだって思ってるだけ」
「そう?同じ会社の人ならなら理解してくれるだろうけど、万が一別れた時とか、顔見れば辛いしね」
「まあ」
俺は素直なちーが好き。付き合ってだいぶ経つけど、初めて抱いた日は忘れられないし、あの時から俺は変わらないって。
「それ忘れて」
「ヤダよ。ぷるぷる震えてんのがもうね。俺が舌を絡めると、怯えてるくせに絡め返してさ」
「ホントに忘れて」
「久しぶりで時間かかっても解させてくれてさあ」
「やめて!」
思い出したら顔から火が出る。あれはどうかしてたんだよたぶん!僕はお腹に本気で抱きついた。
「ふふっ今でも恥ずかしがるのは変わんない」
「あ、あれはホントに……」
「今やエッチ大好きな俺のちんこ仕様の体だもんね」
「やめれ!」
俺知ってるんだ。ちーはあれから俺のために、いつでも相手出来るようにしてたって。だって中にローション残っててね?くぷぷっ
「やめてよ!」
「ねえ、今日もしてるの?」
「え?」
ジャージのズボンに手を入れてぷすって指が。うっ!
「やっぱぬるぬるだ」
「や、やめてぇ……」
「いいじゃん」
僕をお腹から引き剥がして、下を脱がすとぶすり。
「やめ!ひろ生だよね?だ!ダメ!」
「たまにはねぇ」
そのまんまずんずん。彼に唇で口を塞がれると、アッという間に僕は蕩けた。
「ちーはエッチになったね」
「あ、うっ…んっ……ひろちゃんが悪い」
「うん、俺か悪いね。ちーを俺のにしたかったから」
ローション足りないよねってドボドボ。
「これなら痛くならないよね」
「ならないけど……ひっ!」
「ヒクヒクぎゅうってエッチ」
「うっ……」
ぬちぬちと音が!でも……気持ちいい……どうしよ……
「乳首好きだよね」
「あっ!」
シャツをめくりあげて強く、本気で強く吸い付いて……がくがくと震えた。も……生早くイクんだよ!刺激強くて、そんな擦ったら、んーーっ
「出ちゃったね」
「ハァハァ……ひろ……」
「怒んなよ。俺ももう無理かな」
グチグチと押し込んで奥にぐりっ。びくびくと中が温かくなって、腰を振るたびにお尻に流れていた。
「やべぇ……堪んない」
「ハァハァ……ソファが……」
「いいよ。なんだかんだされてくれるちーが好き」
「だって……」
「そんなちーが大好き」
いきなりしてきたりするけど、それもいいかとも思っちゃう僕は広翔に毒されてる。でもね、こうやって抱かれてるのも嬉しい。僕は頭を抱き寄せてキスを……
「ちーはしてる時は積極的だよね」
「んっ…ひろちゃんが好きなんだもん……」
「うん。俺も」
「……ありがと」
週末の夜。明日の心配もしなくていい日はこんなのもいいな。広翔とただ抱き合ってるだけもいいかなとも思うけど、繋がるのはやっぱり好きだね。うはは。
「あ~家で仕事するの楽だけど、なんだろ。メリハリがない気はする」
「そう?通勤ないだけ楽でしょ。僕もいないし」
「そうだけどさ。昼もちーが作ってくれてるからそれ食べて、一歩も外でないのはどうなの?」
「あはは。お昼どきにコンビニとか行けばいいじゃん。僕作り置きやめるよ」
「いや、それは食べたい」
他はお菓子もあるし飲み物もある。なにが必要?って。
「俺タバコも吸わないし、本気で出かける用事がなくてさ。まあ今日までだけどね」
「うん。明日から頑張れ」
「おう!」
家にいたって仕事ばかりでね。たまに夜中に起きてメールの返事したりしてるのは知ってた。広翔の仕事風景が少し見られた気がして、僕とは違うねえと改めて感じたり、話し口調もビジネスマンらしい感じでね。
「かっこいいだろ?」
「うはは。そうね」
顔もきれいにはなったけど、切り傷とか擦り傷とかも色が抜けると目立つ。それでも外に出れないほどじゃない。女性だったら……お化粧で顔が痛そうに見えるくらいの傷かな。
その間僕はいつも通り生活していた。広翔がそれでいいって言うからね。合わせて休んでも仕事してるし、かまえる訳じゃないからって。
そして翌日から普通に出勤。元気に出かけていってぐったり帰って来た。
「人事とかから説明しろって言われてな。半分働いてなかった。分かってたけどさ」
「そう」
問題の彼はやはり、だったそう。今入院中。刑事事件にするかと問われたけど、しなかったそうだ。まあ入院するくらいだから。
「やっぱり工藤は特になにかあった訳じゃなかったらしいんだ。本人もうちに来る前から少しおかしいとは感じてたらしいんだけど、疲れだろ?って」
「うん」
「違うチームに短期とはいえ来て、頑張ってて目の前に理想がいて、好かれようと頑張ってさ」
「うん」
はあ……と頭を抱えた。
「俺が悪い。目先のことばかりでスタッフの異常を見抜けなかった。俺のところにいる奴らは、叩いても死なないような根性据わったやつばっかでさ」
「うん」
彼が頑張りすぎてるのが分からなかった。自分たちが出来るから、出来るって思い込んでてさって。リーダーとしては少し未熟と判断されたんだそう。仕事を遂行するのは当然で、スタッフのマネジメントも仕事なんだよって。
「相手が悪いけど、そうなった責任の一部はお前にあると言われた」
「あ……そっか」
「俺はこのプロジェクトが終わったら一度リーダー外れる。騒動を起こした責任があるからって」
こんなに頑張ってきたのに?それこそ僕は近くで見て来てたのになんで……
「広翔……」
天井を仰ぎ自嘲気味にふふって笑った。
「脇目も振らずちーにも負担かけて、結果はこれだよ。クソッ!」
僕はなんと声を掛けていいか分からなかった。どれだけのものを犠牲にして頑張ってきたか知っていたから。お金じゃないやり甲斐だけで頑張ってきたのに。
「彼が落ち着いたら謝りに行ってくる」
「うん……」
え?でもそれはどうなんだろう。病んでたからもあるだろうけど、好きなのは変わらないんじゃないのかな?そんな心配が浮かんだ。でも、今の広翔に言うべきじゃないような気がして聞き流した。
翌日からも広翔は仕事に行ってたけど、明らかに目に生気がない。
僕にしてあげられることってなに?と考えれば、横で見守って、美味しいご飯を食べさせて、気持ちが前向きになるのを待つしか出来ない。そんなことしか思いつかなかった。
「どうしたの?」
「う、うん。どうもしてないよ?」
「そう」
僕はあの日から毎日べったりくっついていた。僕はいるよって分かってもらおうと思って。味方だよって……もうこれくらいしか出来なかった。
「ちー、ありがとう」
「へ?」
「心配してくれてるんだろ?」
「あ、うん」
背中をポンポンと叩いて、ごめんなって。
「俺は入社以来突っ走って来て、順調に階段を登ってた」
「うん」
「俺、人を見る目は悪くないと思ってたんだよなあ。疲れてそうなスタッフは休ませてたし、有休も忙しくても取らせてた」
「うん」
「いつも疲れてるのはみんな一緒で……俺より役職上の人なんて、いつ寝てるんだろうって人もたくさんで」
そう、みんながみんな強い訳じゃない。この仕事のやり方に疑問に思ってたり、無理してついて来てる人だっているかもと考えなくちゃならなかった。今なら分かるけどと、自嘲気味に話していた。
「自分が楽しかったからね。辛いと思ってる人の存在に目がいかなかった。鈴木さんも、工藤の元々のチームのリーダーも、同じく責任を取らされてる」
「そう……」
会社からは一度スタッフに戻って、周りをよく見てやり直せって言われてるそうだ。
「もうすぐ今のが終わるからさ」
「うん」
言葉にも元気がなくて、でも僕にしてあげられることは少ない。でも、これは僕にも言えること。
僕もチームリーダーのようなことはしてて、他部署との共同のもの、品質管理部とか、事業推進部とかの連携もある。その時のものでリーダーは変わるけど、僕もなることがある。他人事と聞いていてはだめなんだとも思った。
それでも広翔はなんでもない顔して頑張っていた。抱きたいと言われれば、いくらでも相手をしたし、食べたいもののリクエストには応えていた。僕には労ることしか出来なかったんだ。
でも広翔は強かったよね。短期間で切り替えて新しいプロジェクトに参加して、楽しそうな雰囲気になっていった。
「やり直せってって言うなら、それに全力を尽くす。よく考えればこんなに派手ではないけど、他の人にもあったりするし、二度としなければいいんだよな」
「うん、そうだね」
俺はこの仕事好きだしねって。前向きに捉えるのが俺の良さなんだと微笑んで、膝の上の僕の頬を撫でる。
「うん。頑張ってる広翔はかっこいいもん」
「おう!どんな立ち位置であろうと、俺は俺だよ」
「うん」
それからだいぶ経った頃、工藤さんが辞めたと聞いた。薬で安定はしたけど、仕事に耐えられなくなったそうなんだ。総務とか組合とかそちらにって言われたらしいけど、正気に返れば何してたの僕となって、会社に戻りたくないって。
「俺も家に戻って落ち着いた時に会いに行ったんだ」
「そう」
おお!広翔マジで行ったのか!彼の心の傷をえぐりに行っただけではと、不安になりながら聞いていた。
「彼は、なぜあそこまで執着したのか分からないってさ。今思えば愛してる人がいてごめんねって言われた時点で、普段は引き下がってたそうだ」
「そう」
ドキドキする。彼は広翔と会って大丈夫だったんだろうか。僕が同じ立場ならと不安しかない。
「うん。あの頃忙しさと疲れと、知らない人ばかりでチームに馴染もう、迷惑にならないようにと気を張ってて、余裕もなくなってて」
「うん」
俺のことは素敵な人だなとは思ってたけど、そのうち俺しか見えなくなって、体調は以前からおかしくて、友だちにも変だぞって注意されてたそうだ。
「僕こそごめんなさい。大事にしなくてありがとうってさ」
「そう」
会社にもあなたにも迷惑かけました。償うことが出来ないけどと泣いてて、俺どうしたらいいか分かんなくなって、大丈夫だからって言うしかなくて。
「落ち着いてからの工藤はちーに似てた。見た目だけじゃなくてね」
「ふーん」
少しニヤニヤしながら僕の方を向いた。
「ちーより先に出会ってたら、分かんないかなってちょっと思った。よく見るとかわいかった」
「ゲッ!」
こ、怖い!広翔、儚げな子も好きなのか!
……ど、どうしよう、僕儚げとか無縁だよ?スンとしてるからね。弱さが違うんだ、そういった弱さは僕持ち合わせてない。
「ちー?」
「あ、ああはい、なんでしょう」
聞いてみる?いやいや!怖くて聞きたくない。そんな子が現れたら、本気でいらねってなるのかも?嫌だよ。
「何考えてるの?」
「いえ……なにも」
広翔の膝を枕にお腹に顔を押し付けて、なんもないふりをした。
「心配になった?」
バレてる。
「……うん」
あははと笑われた。嫉妬してもらおうって思ったんだって。なんだよもう!
「俺は、自分から今の恋人を捨てて乗り換えるなんてしたことないし、飽きたこともない。短い付き合いの人たちも、あちらからなんか違うねって言われてだから」
「うん」
俺なりに愛してたし、大切と思ってた。でもね、俺は会えない時間多かったから横からかっさらわれたり、心変わりする人ばかり。
「総合すると寂しいってさ。忙しい時は月に数度短い時間しか会えないし、俺がこんなだからベタベタするの好きな人で多くてね」
「ああ……」
「待てないし、せめて週末くらいは一緒にいたいって、当たり前のことを言われたんだ」
帰宅は遅いし休みは不規則。海外に行くこと多数で放置されてる時間は……うーん。
「ちーだけだよ。耐えてくれてんの」
「僕は耐えてる訳ではなくて、そんなもんだって思ってるだけ」
「そう?同じ会社の人ならなら理解してくれるだろうけど、万が一別れた時とか、顔見れば辛いしね」
「まあ」
俺は素直なちーが好き。付き合ってだいぶ経つけど、初めて抱いた日は忘れられないし、あの時から俺は変わらないって。
「それ忘れて」
「ヤダよ。ぷるぷる震えてんのがもうね。俺が舌を絡めると、怯えてるくせに絡め返してさ」
「ホントに忘れて」
「久しぶりで時間かかっても解させてくれてさあ」
「やめて!」
思い出したら顔から火が出る。あれはどうかしてたんだよたぶん!僕はお腹に本気で抱きついた。
「ふふっ今でも恥ずかしがるのは変わんない」
「あ、あれはホントに……」
「今やエッチ大好きな俺のちんこ仕様の体だもんね」
「やめれ!」
俺知ってるんだ。ちーはあれから俺のために、いつでも相手出来るようにしてたって。だって中にローション残っててね?くぷぷっ
「やめてよ!」
「ねえ、今日もしてるの?」
「え?」
ジャージのズボンに手を入れてぷすって指が。うっ!
「やっぱぬるぬるだ」
「や、やめてぇ……」
「いいじゃん」
僕をお腹から引き剥がして、下を脱がすとぶすり。
「やめ!ひろ生だよね?だ!ダメ!」
「たまにはねぇ」
そのまんまずんずん。彼に唇で口を塞がれると、アッという間に僕は蕩けた。
「ちーはエッチになったね」
「あ、うっ…んっ……ひろちゃんが悪い」
「うん、俺か悪いね。ちーを俺のにしたかったから」
ローション足りないよねってドボドボ。
「これなら痛くならないよね」
「ならないけど……ひっ!」
「ヒクヒクぎゅうってエッチ」
「うっ……」
ぬちぬちと音が!でも……気持ちいい……どうしよ……
「乳首好きだよね」
「あっ!」
シャツをめくりあげて強く、本気で強く吸い付いて……がくがくと震えた。も……生早くイクんだよ!刺激強くて、そんな擦ったら、んーーっ
「出ちゃったね」
「ハァハァ……ひろ……」
「怒んなよ。俺ももう無理かな」
グチグチと押し込んで奥にぐりっ。びくびくと中が温かくなって、腰を振るたびにお尻に流れていた。
「やべぇ……堪んない」
「ハァハァ……ソファが……」
「いいよ。なんだかんだされてくれるちーが好き」
「だって……」
「そんなちーが大好き」
いきなりしてきたりするけど、それもいいかとも思っちゃう僕は広翔に毒されてる。でもね、こうやって抱かれてるのも嬉しい。僕は頭を抱き寄せてキスを……
「ちーはしてる時は積極的だよね」
「んっ…ひろちゃんが好きなんだもん……」
「うん。俺も」
「……ありがと」
週末の夜。明日の心配もしなくていい日はこんなのもいいな。広翔とただ抱き合ってるだけもいいかなとも思うけど、繋がるのはやっぱり好きだね。うはは。
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