捨てる神あれば拾う神あり こんな僕でいいってどこ見て言ってんの?

琴音

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三章 どこになにが潜んでるかは分からない

2.楽しい時間

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 広翔は長期の出張はなくなったけど、その分遅かったり早かったり、すれ違う出勤になった。

「ちー……疲れた」
「うんお疲れ様」

 僕の膝枕で、腰にまとわりつくのがかわいいなあ。俺こういうの好きだったんだよって、ニコニコ。

「ひろちゃんかわいい」
「うん。俺かわいいんだよ。誰よりもかわいい」

 頭を撫でるとサラサラの柔らかい髪で、少し染めてるのもよく似合って、大好き。

「キスして」
「うん」

 チュッチュッって……唇が触れるようなキス。んふふっ

「ちー」
「う~ん?」
「好き」
「僕も」

 そのうち強くなってきて……舐めてきて。

「ひろちゃん、したくなるでしょ」
「いいじゃん、しようぜ」
「寝る時間なくなる」
「ならちーが俺を欲しがるまでキスする」
「もう……」

 俺がしたいんだよ、毎日でもね。我慢してんのって頬を撫でる。

「お尻壊れちゃう」
「ふふっだから我慢してんの。週末だけじゃ寂しい」

 舌を絡めて蕩けてると、何か思いついたようだ。

「あ、入れなきゃいいのか」
「へ?」

 ムクッて起き上がって手を引かれベッドに。広翔は脱ぎだして僕にも脱げって。

「チー来て」
「う、うん」

 僕は広翔の上に乗るといつものように愛撫が……ああ……

「乳首だけでこんなに勃起して、乳首だけでイケるんじゃない?」
「あ、あん……それはさすがに」

 エッチな言葉で煽りながらの……僕は後ろに手を回して掴む。

「ひろちゃんのもこんなじゃん。濡れてるし」
「当たり前だよ。俺セックス大好きもん」
「んふぅ……あん……知ってる」


 あったかくて硬い。ビクビクして太くて擦ったり先をこねたり。

「欲しくなる?」
「うん……」
「でも今日は」

 そう言うと僕を上から下ろし、背中に張り付いた。股の間にローションヌリヌリして、

「ちー、しっかり閉じて」
「うん」

 するとぬるんと僕のたまを押してぐちゅぐちゅ腰を振った。

「これならお尻の負担はないし、ほらここも俺がね」
「あっ……んんっ」
「ちんこいいでしょ?」
「ああっそんな強く擦ったら出ちゃ……」
「ならゆっくりね」

 首や背中にひろちゃんの舌も、吸い付く感触も気持ちいい……僕の先を優しく撫でる。

「素股なら毎日でも……」
「うっ……」

 乳首を摘んでグリグリ……ううっ……気持ちよくて……震える……股も熱く硬いのが……

「俺もう出したい……」

 すると強く擦られて、首を噛まれ?ああーっ!

「出ちゃ……ひろ……んんーっ!」
「うっ……クッ……」

 強く抱き締められ……ビクンビクンと……ふたりで。

「ハァハァ……」
「あはは……いいよ。一緒にイケるし」
「う……うん……」
「難点は、ちーのエロい顔が見れないことかな」
「あ…ハァハァ……見なくていい」
「それはつまんないんだよ。蕩けてるちーはかわいいから」

 何年経っても、ちーはかわいいって大切にしてくれる。この腕は僕を愛して……僕は手を絡めて握った。

「どうした?」
「うん……ひろちゃん大好きって思って」
「もっと言って」
「愛してるよ」
「ふふっ俺もだよ。ずっとこうしてたい、抱いていたい」
「うん」

 肩に頭を乗せてチュッチュッってふふっちー……って。ふうって力が抜けたような気がしたらスーッて寝息、疲れてるもんね、僕は布団を引き上げて軽く拭いて眠った。温かな背中が嬉しいって思いながら。

「ひろ」
「なんだよ」
「お前はバカだよねぇ」
「知ってる」

 ナッツを摘んであーんって食べながらフンッて。佐久間さんは、によによと広翔を見つめる。

「お前はホント相手しか見えなくなるよな」
「ああ」
「無駄な行動力もあるしなあ」
「うるせえ」

 ママはクスクスと笑っている。

「ひろちゃんはねぇ、本当に惚れるとこんなになるの。もうダメそうとかなるとパニックよ。溺愛なんて物語の中だけだと思うでしょ?マジでいるのよ。怖っ」
「ママもうるせえ。大好きでなにが悪いんだよ。ちーは喜んでるし、なーんも問題ない」

 ごくごくハイボールを煽って、なあちー?って。広翔は外でも僕をちーと呼ぶようになっていた。優しくちーちゃんではなく、俺のだよな?って気持ちの籠もった少し乱暴な言い方。

「ほんと?」
「あはは。うん」

 酔いが回ったのか口が悪くなり始めていた。

「俺に抱かれてすっげぇ悦んでんだよ!」
「ひっ!やめろ広翔!恥ずかしいでしょ!」
「やめなーい。ちーは俺に溺れてんの!」

 そうだけどやめろ!僕は真っ青。そういうベッドの話はするな!

「なんでえ?あんなにかわいいのに。ふふっ」

 カウンターに腕ついて頭乗せてふにゃふにゃしてる。それを佐久間さんが困ったやつだねって。

「酔っぱらいはエロも平気になってやだねぇ」
「ここに来れること自体珍しいんだよ。楽しいんだもん」
「だけどさ。ちーちゃんが恥ずかしいだろ?」
「俺は恥ずかしくないもーん」

 ちーちゃんってゆうくん。

「こんなのでいいの?もっといいヤツいそうだよ?実際こいつかなり下品だし、しもの話も好きだし」
「うん。でもねぇ……僕は彼が好きなんだよねぇ。困ったことに」
「ちーちゃんも頭おかしい部類ね。ははん」

 やれやれって、否定できない。

「最近のちーちゃんいい体だし、モテるし変えればいいのに」
「ふふっ広翔以外に好かれても何も感じない」

 広翔のいない時に来ると、店ですら声かけて来る人もいるけど、速攻断る。通うようになって、チラチラ見てくる視線にも慣れた。

 俺たちも広翔は人として好きだけど、こんなだから寝るだけならまあねって。恋人はなあ……って。何度も聞いた言葉だ。

「束縛……溺愛……人の話を聞く分には楽しいけど、うへぇ……」
「いいんだ、僕はねっとり愛されるの好きだから」
「まあねぇ……」

 そう言うと他のお客さんの方に行った。

「あーあ、広翔寝ちゃったぞ」
「あーらら」

 佐久間さんももういいや、寝かせておこうって。

「ちーちゃん、辛かったら俺が相談に乗ってやる」
「うん、ありがとう」

 呆れながら広翔の背中をボンボンと叩く。

「昔のまんまだよこいつは。好きになるとホントダメなんだ。友だちとも遊ばなくなるし連絡すらなくなる。忙しいばっかじゃなくて、ここにも顔ださない。疑われたり、取られるかもって嫌がったんだろうな、きっと」
「ねえ、肝っ玉の小さい」

 ママも呆れ気味。ここはゲイバーだからそんな会話は日常茶飯事だけど、広翔は特別下品。あーしたら悦んだとか、酔っぱらうとぶっちゃけるんだよ。だから言われた方はいたたまれなくなって、来なくなる。

「ホントに営業妨害よね。ひとりやふたりでないところもムカつく」
「な。だから知ってるやつはこいつとは寝なかったんだ。ぶっちゃけられても嫌だしね」
「あはは……」

 ひろちゃん何してるのかな?ううっ……とか唸ってるけど。

「でもね、ひとりに絞ると別人。いいかっこしいで、相手を大切にするんだよ。べったりでね」
「うん」
「普段会えないことも多いから、会えばそれこそでね」

 あーあって。こんなボロクソ言ってるけど、俺たちも下品は下品。一緒に楽しんでたから、似たもんだよって。

「俺は裏表ないから下品なまんま。あはは」
「佐久間ちゃんモテるもんね」
「おう。男に困ったことはないね。あのね、俺は特定な相手は持つの苦手でさ」
「へえ?なんで?」

 なんで?それは性格かなって、可愛らしい笑顔をした。

「んふふっ俺は人とずっと一緒にいるのが苦手なんだよ。家に誰かいると例え好きな人でも、なんで帰らないの?とか思っちゃう」

 ほえぇ、そんな人いるんだ。好きな人なら一緒にいたくなるだろうに。

「ならねぇのが俺。一緒に住みたいとか思ったこともない。だから浅く広く、ひとりが楽なんだよ。そんなだから恋人も長続きもしない」
「へえ……」

 佐久間、太陽さんは広翔の対局の人。食い散らかすのが当たり前で、でもそんなことを人には言わない。いや、それ普通。

「俺ガタイいいだろ?モテるんだよ。営業だから人当たりもいい。嫌われる要素はない!」
「ここは広翔と変わんないいや~なところ」

 キッとママを睨んで、

「うるせえよママ。ママだって若いころは……」
「黙れ!佐久間!」
「ええ~前にママの友だちがさあ」
「それ以上は絞め殺すぞ、佐久間!」

 あははって楽しく過ごして、広翔を起こして帰ろうと、佐久間さんが手伝ってくれて外に出た。

「ちーちゃん」
「はい?」
「こいつに飽きたら俺どう?」

 タクシーを止めるとボソッと。

「あはは……僕一緒にいてくれる人が好きなの。帰れとか言われたら泣いちゃう」
「チッなら俺は対象外か。好みなのにな」
「ありがとう。友だちでいて」
「おう!」

 彼はタクシーに広翔をぶち込んで、マジでぶち込んでくれた。

「じゃあまたなちーちゃん」
「うん。佐久間さんありがとう」

 僕は乗り込んで感謝を伝えた。

「はは……その顔反則。食べたくなる」
「ふふっ……僕くらいならそこら中にいるよ。ありがとうおやすみ」
「うん、おやすみ」

 タクシー代は無駄だけど、広翔がもう歩けなかったから仕方なし。降りてから抱きかかえて帰った。でも着いた時の料金にうおって、目ん玉飛び出そうになった。見たことない数字でねうはは。

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