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二章 お互い足りない
7.お互い本音を言わないから、おかしな感じに
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あっという間に二年が過ぎた。なんて気分ではなく、ものすごく長く感じていた。でもね、お互い友だちに連絡してるみたいになってもいた。
「ちーちゃん俺のこと好き?」
「好きだよ」
「うん……ありがと。ちーちゃんの心が俺から離れていくような気がしてる」
寂しそうな困ったような、甘える顔で。僕は焦って、
「そんなことない!大好きだよ!ひろちゃんこそ……僕のこと好き?」
「好きだよ!当たり前だろ!」
ふたりとも口ではそう言ってるけど、どちらもテンション低め。心が寂しさの先に行ってしまっているんだ。達観してるっていうか、隙間だらけになってると言うか。それでも不安で愛の確認はする。
広翔は年に一回二回くらいの短い帰国、会えば燃え上り愛し合うけど、その気持ちを長く維持できない。今日は何したあれしたなんて報告も、あんまりしなくなっている。週末に少しだけ。
「またね。ひろちゃん」
「うん千広」
携帯のボタンを押して終わり。
「こんなはずじゃなかったのにな」
後一年、こんなで元に戻れるんだろうか。ひろちゃんはその時、僕を好きでいてくれるんだろうか。自分はひろちゃん好きなままだろうか。
だろうか?
この言葉は不安の塊だ。僕が誰かを好きになることはないと断言は出来る。でもそれと、ひろちゃんを愛したままかは別物だ。
「いやだあ……こんな僕が嫌いだ!」
あんなに愛してたのに、今も愛してる愛してるんだよ。あの燃え上がるような強い愛は……クソッ!
ぼんやり部屋を眺める、広翔の気配の消えた部屋。僕しか使ってないから……どんどん僕の使いやすいだけの部屋になる。きっと広翔は、他所の部屋に帰って来てる気分になっていたはずだよね。
「心に広翔いればほっこりするなんて嘘だ。愛されてればいいなんて、顔を見てたからだ!バカだ……僕」
会おうと思えばいつでも会えるって環境だから、そう思えたんだよ!今更気がついても遅い。きっと広翔も同じこと考えてるはずだ。
これじゃ一年過ぎた時、なんか違うよねって別れるかもしれない。そんなのは嫌だ!広翔は僕のだ!
「よし!次に連絡来た時に!」
そんな決意をしながら、淡々と日々を過ごしていた。僕は広翔のおかげか、前より少しだけ人と話すのが苦にならなくなっていた。
いつも緊張の中で頑張って話してたのが、そこまで緊張しなくてもいいくらいにはね。
「あはは。あれはねちこく話しかけるから、黙ってる時間が少なくて訓練になったんでしょ?」
「うーん。そんなことはないけど」
「ええ~セックス中もしゃべってそうだよ」
ゆうは楽しそうに悪口を言ってるけどね。普段そんなにしゃべんないけど、セックス中はいじわるではある。
「ねえどんな?」
「あ~……想像に任せるよ」
やっばりか!ギャハハって大笑い。そう言うってことは言葉責めにされてるんだね?やりそうって。
「俺を見ろの究極だね」
「やめろよゆう。俺もそう思うけどさ。ぶはは」
広翔、ここでどんな会話を楽しんでたんだよ。佐久間さんまで大笑い。
「あれね。広翔は本当に相手の愛情を求めるんだ。その分あげるけどさ。俺昔の彼氏に相談されたことあんの」
「へえ」
その彼いわく、愛してる?俺好きとかは常にで、愛情を向けられてる言葉はよく拾ってありがとうって言うし、すっごく見られてるって。半分監視されてる気分にもなったり。
「反応薄いとなんで?って詰めてくるってさ」
「あはは……」
「初めは愛の強さかって嬉しかったけど、俺だけを見ろって強制されてる気分になって、友だちにも嫉妬するし、面倒臭くなったそうだ」
「ふーん」
僕は変な汗が額から滲んできていた。僕それ全部嬉しかったんだよね。彼は僕だけを強く愛してくれるのを、とても喜んでいた。おお…ぅ……僕おかしいのかな。
「今もそんな?」
「え?ええ……あんまり変わんないですね」
そうか、人はそうそう変わらんよねって。
「だから俺はあいつの恋人無理ってなった。お互いまんざらでもないよなって雰囲気になったことがあったんだ。でも俺友だち多いんだよ。ノンケもゲイもね。それに口出されたらキレる自信がある。でも俺は受けもタチも出来るからそこは問題なし」
ゆうも、溺愛って感じは辛く感じるから無理だねって。あたしも無理ってママ。
「ちーちゃんが悪くも、ひろちゃんが悪いわけでもない。相性よ」
「そうそう。俺たちは程よく泳がせてくれる相手がいい。それだけだ」
夫婦みたいなもんかな。束縛しなくてお互いを尊重して、相手を否定せず、信じる。
「そうだね」
「でも、ふたりはそうして裏切られた。だからだろ」
「うーん……」
心の奥底に「人を信じる」ってことを恐れる部分があるんだ。だから確認するし、束縛もする。
「あーなんか納得した。僕らは思った以上に心から血を流して、塞がってないのかも」
「うん。無意識に広翔はそれを嗅ぎ取って、ちーちゃんに告白したんだろうさ」
「うん。たぶん僕もそれで……」
傷を舐め合ってただけなのかな。いや違う。きっかけはそうかもしれないけど、僕は広翔が好きだ。ちーちゃんって大切にしてくれる広翔が大好きなんだ。
「そんなでも広翔が大好き」
「うん。それでいいよ。今はどんな感じなんだ?」
僕は今の状況を簡単に説明した。
「あー……寂しさの向こう側って感じだな」
「うーん……悟り開いた?とは違うかもだけど、寂しいを感じないように心が鍵かけてる?」
あー……そうかもね。
「もう耐えられなくてそうしてるんだろ?」
「あはは……そうかも」
ゆうはいいなあって。うざいけどそこまで愛せる相手って羨ましくもあるって。
「ふふっそう?」
「うん。言葉にしたらケンカになるんじゃないの?」
「そっかな」
「いや……ぶちまけると寂しさに潰れるかもね。だってまだ一年あるし」
やなこと言うね。佐久間さん。
「後一年でしょ?」
「うん」
「別れて新しい彼が欲しい?」
「いえ」
「なら話してみれば?向こうも嫌われたらって言わないだけかも知れないじゃない」
みんな次々に質問してくる。僕はお酒を飲んでふう。そうだね一度話したほうがいいな、決意を実行しなくちゃか。
「ちーちゃん日に日に弱っていってる感じがするから、スッキリさせたほうが楽かもね」
「はい」
ママにもそう言われて、そうだよなあって思ったり。そんな話をバーでして翌日の朝に広翔から連絡が来た。
「ちーちゃん俺のこと好き?」
「好きだよ」
「うん……ありがと。ちーちゃんの心が俺から離れていくような気がしてる」
寂しそうな困ったような、甘える顔で。僕は焦って、
「そんなことない!大好きだよ!ひろちゃんこそ……僕のこと好き?」
「好きだよ!当たり前だろ!」
ふたりとも口ではそう言ってるけど、どちらもテンション低め。心が寂しさの先に行ってしまっているんだ。達観してるっていうか、隙間だらけになってると言うか。それでも不安で愛の確認はする。
広翔は年に一回二回くらいの短い帰国、会えば燃え上り愛し合うけど、その気持ちを長く維持できない。今日は何したあれしたなんて報告も、あんまりしなくなっている。週末に少しだけ。
「またね。ひろちゃん」
「うん千広」
携帯のボタンを押して終わり。
「こんなはずじゃなかったのにな」
後一年、こんなで元に戻れるんだろうか。ひろちゃんはその時、僕を好きでいてくれるんだろうか。自分はひろちゃん好きなままだろうか。
だろうか?
この言葉は不安の塊だ。僕が誰かを好きになることはないと断言は出来る。でもそれと、ひろちゃんを愛したままかは別物だ。
「いやだあ……こんな僕が嫌いだ!」
あんなに愛してたのに、今も愛してる愛してるんだよ。あの燃え上がるような強い愛は……クソッ!
ぼんやり部屋を眺める、広翔の気配の消えた部屋。僕しか使ってないから……どんどん僕の使いやすいだけの部屋になる。きっと広翔は、他所の部屋に帰って来てる気分になっていたはずだよね。
「心に広翔いればほっこりするなんて嘘だ。愛されてればいいなんて、顔を見てたからだ!バカだ……僕」
会おうと思えばいつでも会えるって環境だから、そう思えたんだよ!今更気がついても遅い。きっと広翔も同じこと考えてるはずだ。
これじゃ一年過ぎた時、なんか違うよねって別れるかもしれない。そんなのは嫌だ!広翔は僕のだ!
「よし!次に連絡来た時に!」
そんな決意をしながら、淡々と日々を過ごしていた。僕は広翔のおかげか、前より少しだけ人と話すのが苦にならなくなっていた。
いつも緊張の中で頑張って話してたのが、そこまで緊張しなくてもいいくらいにはね。
「あはは。あれはねちこく話しかけるから、黙ってる時間が少なくて訓練になったんでしょ?」
「うーん。そんなことはないけど」
「ええ~セックス中もしゃべってそうだよ」
ゆうは楽しそうに悪口を言ってるけどね。普段そんなにしゃべんないけど、セックス中はいじわるではある。
「ねえどんな?」
「あ~……想像に任せるよ」
やっばりか!ギャハハって大笑い。そう言うってことは言葉責めにされてるんだね?やりそうって。
「俺を見ろの究極だね」
「やめろよゆう。俺もそう思うけどさ。ぶはは」
広翔、ここでどんな会話を楽しんでたんだよ。佐久間さんまで大笑い。
「あれね。広翔は本当に相手の愛情を求めるんだ。その分あげるけどさ。俺昔の彼氏に相談されたことあんの」
「へえ」
その彼いわく、愛してる?俺好きとかは常にで、愛情を向けられてる言葉はよく拾ってありがとうって言うし、すっごく見られてるって。半分監視されてる気分にもなったり。
「反応薄いとなんで?って詰めてくるってさ」
「あはは……」
「初めは愛の強さかって嬉しかったけど、俺だけを見ろって強制されてる気分になって、友だちにも嫉妬するし、面倒臭くなったそうだ」
「ふーん」
僕は変な汗が額から滲んできていた。僕それ全部嬉しかったんだよね。彼は僕だけを強く愛してくれるのを、とても喜んでいた。おお…ぅ……僕おかしいのかな。
「今もそんな?」
「え?ええ……あんまり変わんないですね」
そうか、人はそうそう変わらんよねって。
「だから俺はあいつの恋人無理ってなった。お互いまんざらでもないよなって雰囲気になったことがあったんだ。でも俺友だち多いんだよ。ノンケもゲイもね。それに口出されたらキレる自信がある。でも俺は受けもタチも出来るからそこは問題なし」
ゆうも、溺愛って感じは辛く感じるから無理だねって。あたしも無理ってママ。
「ちーちゃんが悪くも、ひろちゃんが悪いわけでもない。相性よ」
「そうそう。俺たちは程よく泳がせてくれる相手がいい。それだけだ」
夫婦みたいなもんかな。束縛しなくてお互いを尊重して、相手を否定せず、信じる。
「そうだね」
「でも、ふたりはそうして裏切られた。だからだろ」
「うーん……」
心の奥底に「人を信じる」ってことを恐れる部分があるんだ。だから確認するし、束縛もする。
「あーなんか納得した。僕らは思った以上に心から血を流して、塞がってないのかも」
「うん。無意識に広翔はそれを嗅ぎ取って、ちーちゃんに告白したんだろうさ」
「うん。たぶん僕もそれで……」
傷を舐め合ってただけなのかな。いや違う。きっかけはそうかもしれないけど、僕は広翔が好きだ。ちーちゃんって大切にしてくれる広翔が大好きなんだ。
「そんなでも広翔が大好き」
「うん。それでいいよ。今はどんな感じなんだ?」
僕は今の状況を簡単に説明した。
「あー……寂しさの向こう側って感じだな」
「うーん……悟り開いた?とは違うかもだけど、寂しいを感じないように心が鍵かけてる?」
あー……そうかもね。
「もう耐えられなくてそうしてるんだろ?」
「あはは……そうかも」
ゆうはいいなあって。うざいけどそこまで愛せる相手って羨ましくもあるって。
「ふふっそう?」
「うん。言葉にしたらケンカになるんじゃないの?」
「そっかな」
「いや……ぶちまけると寂しさに潰れるかもね。だってまだ一年あるし」
やなこと言うね。佐久間さん。
「後一年でしょ?」
「うん」
「別れて新しい彼が欲しい?」
「いえ」
「なら話してみれば?向こうも嫌われたらって言わないだけかも知れないじゃない」
みんな次々に質問してくる。僕はお酒を飲んでふう。そうだね一度話したほうがいいな、決意を実行しなくちゃか。
「ちーちゃん日に日に弱っていってる感じがするから、スッキリさせたほうが楽かもね」
「はい」
ママにもそう言われて、そうだよなあって思ったり。そんな話をバーでして翌日の朝に広翔から連絡が来た。
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