捨てる神あれば拾う神あり こんな僕でいいってどこ見て言ってんの?

琴音

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二章 お互い足りない

5.叱られていじめられて

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 僕は「マッチョママ」と覚えていたあの店「Red Bud」赤い蕾って店名。
 会社からのほうが近いか……家からでもあんまり変わらないかな。

「こんばんは」
「いらっしゃい。ちーちゃん」

 あれから、広翔がいない時にたまに来るようになっていた。当然自分の行きつけも行く。週末は特に寂しくて、人見知りのくせに誰かといたい、話したいなんて。広翔と付き合うようになって僕は少し変わったのかな。

「はいどうぞ」
「ありがとうママ」

 特別誰かと大騒ぎするわけじゃない。ここにいて、みんなが騒ぐのを見ていることが多い。誘われることもなくはないけど、きちんと断っていた。広翔が言うほど声をかけられることもないし。

「まだ帰ってこないの?」
「うん。年に一回は長くいない時期があるんだ。短いのは結構あるけど」
「ふーん。よく続いてるわね」
「ふふっ寂しいけど、広翔がいてくれればいいんだ」

 ママは呆れたような感じ。あたしはそんなの寂しくて死んじゃうって。

「アレの歴代恋人はみんな寂しくなったんだと思う。放置期間が長くて誘惑もそこら中だから」
「想像はつくね」

 ゆうとさちが僕の側に来た。さちはもうひとりのボーイ。彼はまだ入店はいって一年経ってないそうだ。

「寂しいちーちゃん発見!」
「寂しい言うな!本気で寂しさ実感するでしょ!」
「あはは。俺が抱っこしてあげるよ」

 ギュッと抱き合うだけだけど、こんな遊びも楽しい。

「ちーちゃん見た目じゃ分かんないけど、触ると気持ちいい。ひろがご執心なのがよく分かる」
「やめて!恥ずかしいでしょ!」

 僕もってさちもギュッ。

「やべぇなんか分らんけど、相変わらずちーちゃん抱き心地がいい」
「やめて!」

 週末なのに今日は少しお客さんが少ない。三連休の前だからかな。みんな遠くに遊びに行くのか、近場は少し空くんだよね。

「ちーちゃんはなんか、体鍛えるとかしてるの?」
「なんも。デスクワークだからね。でも最近運動不足だからジムには行ってる。営業の時とは運動量が違うから、お腹が心配」
「ふーん。なら元の体質かな」

 ママがほら働けえってお酒を出すと、ふたりはそれを持ってソファ席に向かった。

「ちーちゃんマジで気をつけてね」
「はい?」
「あの二人と同じように感じてる客もいるのよ。店の中はともかく、外では助けてあげらんないから」

 僕なんか狙っても美味しくないし。

「この店の人がおかしいだけだよ。僕モテたことないもん」

 ヤ~ねこの子はって。ものすごく呆れてる。

「あなた、ゲイバー来てなかったって言ってたでしょ?」
「うん」
「ノンケのバーでナンパなんかないわよ。でもここは違う。若いきれいな女性が歌舞伎町歩いてるみたいなもんになる。意識して!人の趣味は千差万別よ?」
「あ、はい……」

 ゲイは、ママみたいな人を普通の人の美女と感じる。マッチョ大好き、くま系も。このへんはすっごくモテる。ノンケのこの系芸能人を神のように崇めるのもある。僕もステキと思うし。広翔も細マッチョでステキで、ふっくらな胸が好き、二の腕も。よくもんでたりもする。

「僕見ただけじゃガリに近いからモテないよ」
「うーん、女性好みの体型かしら」

 でも上着脱ぐとあれ?ってなるって言われた。

「そう?」
「ええ」
「でもママはモテるでしょ?」
「そりゃあ若い頃はね。今は彼一筋よ」
「ふーん。何年?」
「あー……十年ちょっとかな。もう家族みたいな感じ」

 ゲイカップルは、長続きしてる人は少ないって何かの記事で読んだけど、長い人もいるか。うん、僕もそうなれるように頑張ろう。

 楽しく世間話して、ほろ酔いで駅に向かう。たくさんの男女や男男のカップルも見かけながら、うっ……横目に見えるのはすごい店構えのアダルトショップ。そこから小さな公園を抜けて、もうすぐ駅かというところで肩を叩かれた。

「ねえ君」
「はい?」
「君Red Budから出て来たよね」
「はあ」
「今晩ひま?ひとりでしょ?」
「え?」

 かなり酔った感じの、僕より一回りは上そうなスーツのお兄さん?おじさん?

「あの……」
「どう?俺結構上手いよ?損はさせないよ」

 うっ……初めてだよナンパなんて。

「いやあ~……間に合ってます」
「君かわいいよね、俺君みたいな子好きなんだ」
「あ、あはは……」

 怖い……本気で怖い。僕はカバンを強く握りダッシュ!とりあえず大通りまで行けば!

「おい!待てよ!ねえ!」

 もう周りなんで見えない、必死に走った。そして駅に着いてすぐに改札に入り、よし!タイミングよく電車も来て乗り込んだ。

「ハァハァ……あ~ハァハァ……」

 息を切らせて乗り込んでる僕を、冷たい目を向ける人もいたけど無視。座席の横にもたれてハァハァ、なんとか帰宅した。
 もう何度もひとりで行ってて、何もなかったから油断した。これをみんなが注意しろって言ってたのか。

「怖かったぁ~……」

 玄関でドアにもたれてズルズルと座り込んでしまった。週末は寂しくて、ここのところ毎週行ってたけど行くの控えよ。それからはいつもの店で、優しいおじ様と楽しく話して過ごし、広翔が帰って来るのを待っていた。

 その数週間後に広翔が帰って来て、だいぶ落ち着いた頃この話を思い出して話したんだけど、ものすごく広翔が怖くなった。本気で怖い。

「千広、俺言ったよな。気をつけてって」
「う、うん」

 はあと深いため息、怒りか呆れか分かんない感じ。僕は上目遣いで見上げて……うっ怖い。

「千広が普段行ってる店のあたりとは違うんだよ。それ目的に来てる人もいるんだ」
「うん」
「夜の街に慣れてないってのは、雰囲気で分かるんだよ。そいつらはさ」
「はい」

 そこからくどくど叱られた。近くにホテルいっぱいあるでしょ?薬局にはセックスに使うであろう物が、これ見よがしにたくさん売ってるでしょ?見てるでしょ?って。
 そういう街なの!楽しく飲みに来てる人ばかりじゃない!アダルトショップも見たでしょ!おもちゃも、なんやかんや外からも見えるでしょ!って。

「ごめんなさい……」
「本当に分かった?理解した?」
「うん」
「マジで反省しろ。もちろんついて行くとか論外だからな」
「しないよ」

 ものすごく反省、僕にそんな価値はないと思ってたし、みんな大げさって……

「繁華街では男女同じだよ。女性の方が力が弱いからもっと怖いと思う」
「うん」

 水商売の場所自体あんまり行かないから、僕よく分かってなかった。

「でもそんなちーちゃんはかわいくもある。変に擦れてなくてさ」
「それ褒めてない」
「んふふっいいんだ。俺がいいならね」

 ちーちゃんって僕を引き寄せてキス。

「ひろちゃ……んっ」
「千広……俺を見て」
「んっ……んんっ」

 だんだん激しくなって……あん。シャツに手が…うっ乳首摘まないで……あっ…痛い!

「こんな千広を誰かに見せるとかない。俺だけが見るんだよ」
「ハァハァ……ひろちゃん」
「千広、ひろ愛してるって言って」
「あ、愛してる」
「うん」

 そのままベッドに移動して、盛り上がって僕がイキそうになった頃またもや。

「ひろちゃ……」
「うん?」
「辛い……イカせてぇ」
「やーだ」

 僕は彼に跨ってブルブル。自分で動いてって思ってもガッチリ腕を掴まれて動けない。

「あ、…ああ……」
「いい眺めだ。ちーちゃん」
「うっ……ひろとぉ……ふっうっ」

 手を引き抜こうとしてるんだけど、力入んなくて……自分で前触れないぃ!

「だめだよ、前は」
「苦しいの……ハァハァ……」
「うん」

 ちょっと腰を動かしたくらいじゃイケないし……ああ……

「なんて色っぽいんだろう。ふるふる震えてんのも堪んない。俺のちんこでこんなに悦んでさ、絶景だね」
「うっ……うぅ…」
「乳首立ってて真っ赤。俺が強く吸ったりつねったからだけどさ。キスマークもいいね」

 も……いや……してよ。してえ!!

「広翔して!してよ!お願いしてぇ!」
「まだね。いい顔してよ。ココもグチョグチョだね」

 片手で僕を押さえつけて、先をもてあそぶ。

「いじわるするから!ちんこパンパンなの!」
「うん。硬いし漏れてる」

 も……おかしくなる……イキたくてやだあ!

「ひろしてぇ!しろよ!いやあ!」

 おうってグイッて手を引かれて抱かれるとズンッと!

「ぐわあ!あ、ああ……はん…っ」
「いいねキッツい」

 少し動かしただけで僕はすぐに……ううっゔっ激しい快感で朦朧とする。

「潮吹きかな?」
「んっ……んんぅ……」

 中ビクビクで動けない。気持ちいい……が長い……

「俺とのセックスいいでしょう?」
「ハァハァ……辛いけどね」

 快感は激しいけど、その前がおかしくなりそう。

「そう?我慢の後の快感は堪んないでしょ?」
「そうね……我慢もまあ」
「だろ?俺も楽しいし、千広も気持ちいい。ウィンウィンだよ」

 そうかあ?僕がいじめられてるだけのような気もするけど。それにこの我慢させられるセックスは、僕が何かした時に多いような……?聞いてみるか。

「あ~俺を見て欲しくてさ。ちーちゃんの目がよそに行くのがイヤ」
「はあ」
「心配も愛だよ?それに俺は何かしてもらえばありがとうって言うし、ごめんなさいも言う。意地悪だけじゃないだろ?」
「うん」

 大人になると出来ない人いるんだよね。ああとかうんとか。非は認めないとか。なんか話しがずれてる?でも広翔は構わず、

「俺はそれ違うと思う。家族であっても言うべきものだよ。会社でもいるよね。間違ってたのを謝らず言い訳ばっかとかね」
「あれねぇ」

 必死に言われれば言われるだけこちらが「すん」としてしまう。反省がないんだなって。

「俺はちーちゃんに愛してもらいたいから、言葉は気をつけてる。大好きは伝えるし、自分が悪かったら謝る」
「ならいじわるしたって謝って」
「やーだ。ちーちゃんが油断してるのが悪いから」
「いや……そうだけど」
「セックスのいじわるはほら、刺激っての?」

 あ~……開き直りやがった。

「ちーちゃんの気持ちいいって顔は、俺のご褒美だから」
「あ~はいはい」

 何年経ってもこの溺愛?は変わらない。僕を抱きしめて嬉しそうに首に吸い付いてくるけど、溺愛と信じる僕もどうかしてる。SMに近いのか、僕М……?

「落ち着いた?なら」
「んっ……」

 僕がキスでとろけ始めるとゴム変えてズブリ。

「俺ずっとこうしてたい」
「うん……僕も」

 ずっとこうしていられると思ってた。愛して愛されて、あんまり会えない時もあってもずっとって、信じてたんだ。



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