ガーベラ

一条 瑠樹

文字の大きさ
上 下
13 / 21
幸せな2人

Gerbera12話 彼女の哀しみ 女の絆

しおりを挟む
Gerbera12話 

    彼女の哀しみ 女の絆


                            一条 瑠樹

病院の廊下を彼は車椅子に乗って…


彼女は車椅子を引きながら彼の車椅子をひいて売店に買い物に行き屋上に行きたいと言う彼のリクエストに応えたい気持ちで連れて行った…後から彼の母親が飲み物を持って彼と彼女の所へ来た…


「なぁ綺麗だなぁ河の向こうには立派なお城が堂々と観えるよ…こんなビルの谷間に堂々と観える…あのお城に今度2人で昇ろう…僕が歩けるようになって君とスキップしながら城跡の公園でゴム跳びしようか…(笑)」


「貴方馬鹿ねぇ…さっきから売店でこのハンカチがナウイとか、今日は一日中出来ないのに…ゴム跳びしようかとか…(笑)…スキップしながらとか…今は死語よ…兎に角大学もお母様が休学届け出してくれてるし…腕が動くんなら勉強してよね…貴方が意識ない時に私が大学まで行って色々テキストもらって有るから2人で病室でお勉強よ…解ったならしっかりお勉強よ!!」


彼は気付いた…彼女も責任を感じて休学を決めた事を…
彼は車椅子を自分で引こうとしたがまだ腕はそんなに動かない…


「あらあら…のろけて笑って大っきい声で…貴方は胃の調子はどう?看病疲れで余り食べてないからかしらねぇ?少し多めに食べなきゃいけないわ!!貴方も早く歩けるようになって母さんの肩でもまたもんでちょうだい(笑)」


3人は複雑な一面と彼女と彼の母親との連携プレー…
時には彼の母がリーダーシップを彼女が補佐しながら…
時には逆に彼女の手元を母がしながら…毎日があわただしく…時にはゆっくりと過ぎていく…


「お母様…少しだけ観てて下さい!!吐き気がまたするのでトイレに行って来ます…またすぐおさまると思うので少しだけ観てて下さい…」


彼女は駆け出した…


「大丈夫かなぁ?母さん付いて行かなくて大丈夫かなぁ?!」


「たまに気分悪くなるみたいなのよ!!無理ばかりさせてるからかなぁ…でもあの子は貴方が居ないと駄目みたいよ…あの子は本当は気のやさしい良い子だけど一旦切れちゃうとブレーキかけるの大変な子ねぇ…事故の加害者の女性にも何度も連絡して脅かすし…貴方が手術室に入ってる時も疳の虫が治らないし!!…普段はやさしいやさしい可愛らしい子なのに…本当に切れちゃうと駄目な子だわ…色々溜め込んじゃうのねぇ!!」


うぶで素直な彼女をまるで自分の愛娘のように…やさしい彼の母親は彼女の悲しみを気が強いと言葉を変えて彼に伝えた…


「ねぇ母さんお願いあるんだよ…僕が外室出来るようになったら母さんだけに付いて来てもらいたいところがあるんだ…彼女が用事に出かけたら…その隙に行きたいんだよ…多分バイト代が振り込まれてるよ…買い物をしたいんだ…頼むよ…母さん…」


彼の母親は頷いて笑った…
彼女が戻って来てトイレ行ったら吐き気が治ったと2人を前に笑った…良かったと笑って彼もまた3人仲良く病室に戻ってきた…


彼女は買い物に出掛けたいと言って要るものをメモして1~2時間病室を後にした…彼のパジャマと彼女の着替えをアパートまで取りに帰って買い物を済ませて夜風の中花屋によって黄色いガーベラを一輪買って帰って来た…


言わば病院の付き添いの毎日の日課も兼ねて…


1人で1時間程泣いてアパートを出たらまた病院に向かう途中で買い物を済ませて…


交代で母親は実家に戻り会社事務の報告を聞いてそれを彼のお爺さん彼の母親の実父に連絡する…
その後洗濯物を済ませて実家の食事を作り1時間程1人で泣いて…このあいだ彼が母親に放ったミサイルトークを思い出しまた泣いて夜遅くに病院に帰って来た…病室から休憩所に彼女を連れて行った…2人で仲良く暖かい紙コップの自販機ココアを飲んでる時に彼女は老舗のサブレとカルシウムのサプリメント、美肌効果のあるサプリメント、などを母親に渡した…


「ねぇお母様…最近あたしも勿論お母様も少しあの人のお世話で疲れてますわ…良かったらこれは…きやすめにしかならないかもしれませんが……2人で試しましょう(笑)…」

「まあ!…こんな高価な物を…いいの?!」

「はい…そんな高価なものじゃないですが…」

「ありがとうねぇ!! なかなか自分では買えなくて…今から早速2人で試しましょう(笑)私にはもったいないわ…いいのかしら…貴方水買ってきて…ほら!小銭沢山有るから…どっちから先に飲めばいいのかしらね…(笑)」



2人の看病疲れを癒してくれる女性ならでわの細やかな楽しみになり病室では今日買って来たガーベラが彼を癒してくれる…
2人は今日別々の所に身を隠して互いに彼の為に見せないように…見られないように涙を流して悲しみや苦しみや憤りを一輪の花咲くこの場所に持ち込まぬように…

互いにこの花が咲く場所で互いの帰りを待って…笑いながら夜中のひと時を過ごしてまた明日は彼の側に出来うる限り全力を尽くす為に…




2人は女同士の絆を今この場所で細やかにおおらかに噛み締めていた…
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

DREAM RIDE

遥都
青春
順風満帆に野球エリートの道を歩いていた主人公晴矢は、一つの出来事をキッカケに夢を失くした。 ある日ネットで一つの記事を見つけた晴矢は今後の人生を大きく変える夢に出会う。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...