雪と月

女装きつね

文字の大きさ
上 下
38 / 53

巨乳。

しおりを挟む

 あぐねるようはさみを刺した封書。さいなまれ事があるワケではないのだけれど、毎度訪れる健康診断の結末を覗くのはイヤなものなのだと傾げる僕に、カウンター越しの雪乃さんが “ ふわり ” 紫煙を揺らした。

「そのまま “ ロジャー・バニスター効果 " って言われるのだけれどね」


ーー雪乃さんから聞いた話だ。

 イギリスのロジャー・バニスターと言う陸上選手が由来の事らしい。

 1950年代。当時の医師や生理学者、科学者までもが人類が4分以内で1マイルを走る事は物理的に不可能で、仮に4分を切ったのならそれは “ 死 ” を意味するとの見解だった。

 だけれど、ロジャー・バニスターが壁を打ち破った途端、あれよあれよとそこからたった3年間で15人ものランナーが3分台を記録したのだという。

 この不思議な現象は、不可能という思い込みが人間の限界を作り、可能だという信念が限界を押し広げるという意味で “ ロジャー・バニスター効果 ” と名付けられたようだ。

「一匹のノミを瓶に詰入れて蓋をするとね、瓶から出してあげても瓶の高さまでしか飛べなくなるんだよ。ヤツったら本来は人間で言うなら300メートルは飛べるのにさ」

 能力の限界、そして寿命までもが “ 思い込み ” なのだと雪乃さんは言った。

「環境による負荷が減っただとか医療の進歩がとかじゃないんだよ。誰かが300歳まで生きたなら、いづれ人類の寿命は300歳になるのさ。古代に存在したと言われている “ 巨人族 ” なんてのもあながちその類いなんだ」


ーー迷い無く信じ切るというのは難しいモンだと自分の胸元のシャツを引いて覗き込む雪乃さん……大きくなれと自分の胸に暗示でもかけているのか? それはややも困るものだけれど、しかしそろそろブラジャーを付けてほしいものだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...