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雫。
しおりを挟む「33Hzの基調にΘ波とソルフェジオを織り込んだ音楽、眼にはさも血液のよう彩どった朱い照明、そして魔法のお香。お酒なんてものがなくてもね、存分に酔えるのですよ」
「どうりで……まぁ、たまげたモンだっ。雪乃ちゃん、君は世界征服でもしたいのかい?」
ーーカウンター越しに来客者と話す雪乃さん。最初は随分と怪し気な内装にするモンだと思っていたのだけれど、そんな企てであったなど、かつてまで知らなかった事だ。
料金を来訪者に決めさせると聞いた時も、えらく突飛な事をするモノだと思ったのだけれど、『せっかくなのだから隠しの狭間まで案内して差し上げたいじゃない?』と言った雪乃さんの思惑はどうやら絵空ではなかったらしい。
ーー雪乃さんから聞いた話だ。
現代に生きて行くのならお金は必要なんだけれどね、それは言い換えたら魂のエネルギーなんだよ。
紙幣なんてのは石油に価値を持たすよう誰かが勝手に作ったルールにすぎなくてさ、あくまで生きていく為のエネルギーなのだから、それを必要と激しく稼働している甲斐に集まるんだ。
狭間を覗くってのは甲斐を始動させるのに存外最適なんだよ、さも顕然と “ 生 ” を実感できるのだから。
「別段野望なんてモノがある訳ないじゃないさ。壁に囲まれるのがね、私はすこぶる苦手なんだよ」
だけれどね、そんな意識が集まればどうなると思う?
ーーこのあとに続いた言葉で僕は頭部を鈍器で殴らたよう陥った。……しかし喉を踊らすほどに見てみたい、雪乃さんの言う “ 壁の無い世界 ” を。きっとこの人はケタケタと越えて行くのだろうから。
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