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スコトマ。
しおりを挟む架空の人物などは毎度同じ洋装をしている事が多いものだ。それはキャラクターの印象を付けやすいが故だろうけれど、日ごろ漆黒ばかりを纏う雪乃さんの言い分はやや違っている。
デザイナーのココ・シャネルが出掛けの寸前、アクセサリーを1つ取りなさいと言っていたでしょ? との言葉で呆けた僕に、ラムネを噛んだような顔をするなと雪乃さんは緩める猫の唇からケタケタと纒いを落としていった。
ーー雪乃さんから聞いた話だ。
“ スコトマ ” ってヤツだね。どんなに美味なモノであろうと満たされてしまえばさ、もうたくさんなんだよ。
人ってのはね、見るな、触るなと言われたら興味をソソるものさ。
だけれど水月以外は漆黒を纏った私 “ しか ” 知らないんだ。それは盲点、意外性となり尚に艶を放つんだよ。山猫廻しがタネを明かしてしまってはオマンマの食い上げ、ひとつもツマラナイってモンでしょ?
だもの刻んでおいた方がイイんだよ、己が手の内を晒したとても決して相手も同意とは限らない……ってね。
「だからね、今夜はもうこのままで眠ってしまいたいんだ……」
ーー何やらと言葉迷わせてカッコをつけたようですけれど、水飴を随分に溢した下腹部のままで胸に背中を委ねながらではね……あまり様にはなりませんよ? 雪乃さん。
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