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こっくりさん。
しおりを挟む石を見つけた。縒れた文庫の上、マジナイか漬物石のよう乱雑に白っぽいモノが数個。
「死んでしまっているけれどね、それは蛍石だよ」
……石が死ぬ? いや、そもそも分かりやすく話をするつもりがないのだろうか、雪乃さんって人は。
なる程ね、これは死んだ石なんですねと半ば呆れる背中で茹ですぎた素麺を飴を練るよう捏ねていた雪乃さんは、さも面倒くさい感じで『何処からくすねたのか』と死体……いや死石の前に腰を落とした僕の疑問に答えた。
しかしふと祖母に言われた事を思い出したんだ『特にな、水月。川、水辺の石は綺麗だからと持ち帰ってはイカンのだよ。そんなモノはオレは面倒みきれんくなるだもの』
ーー雪乃さんから聞いた話だ。
「旧日本軍の秘密基地やら宇宙空間があるなんて話があったんだよ」
宮城県にある田代峠、途中で通行止めになっているその先は随分な曰く付きのようで、今だ詳細は明らかになっていないようだ。そんな噂が雪乃さんの悪ノリを呼んだのだろう、出向いた記念にと石を持ち帰ったらしい。
『この世界にオカルトなんて早々無いんだよ。私が見ている幽霊話なんてのもね、時間の歪みと残留信号なんだけれど、これも最近じゃ量子力学って名前で議論されていたりしてね』
緑色の霧に引き込まれるとか、身体が思いと違うように動くとか……何とか生還したとしても大病を患ったり記憶障害に陥ったりとかね、そりゃあもう大変な “ 曰く ” だってんで持って行ったんだよ、ガスマスクとPH試験道具を。
想像が当たっていたみたいでさ、しばらくすると試験管が僅かに酸性を示し始めたんだ。蛍石ってのは天然のフッ化カルシウムなんだけれどね、例えばそこに硫黄なんかの酸系が混ざると最悪フッ化水素になるんだよ。それは簡単に人体を溶かす程なんだけれど、中途半端な結合状態を吸引すると麻薬のような幻覚を引き起こすんだ。
高純度のフッ化水素ってのは世界でも日本の独占に近いのだけれど、その研究には随分昔から東北が深く携わっていてね。そんな危険な研究ってのは山奥でひっそりとやるのが定石だったりするんだよ。
旧日本軍や宇宙人ではないけれど、それはまるでバベルの塔ってヤツなのかもしれないね。
「狐、戌、狸でコックリさんって言うんだけれどさ……これって人を惑わすにはもってこいの名前じゃない?」
ーーそれって心霊オカルト話の方がマシなんじゃないですか? 雪乃さん……。
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