雪と月

女装きつね

文字の大きさ
上 下
17 / 58

定年。

しおりを挟む

「うん……引き止めはしないけれどね。40歳定年説ってのがあるんだよ」

 どうせ『君は相変わらず元気がイイねぇ』とか『……血糖値でも気になるの?』なんて裏表に下着を履かされるような気分になるだろうと思ってたけれど……雪乃さんから出た言葉は、まるで卸したてのカミソリのように僕の前髪をぱらりと落とした。

「初めて “ 自分がどれだけ大した事がない人間か ” と叩きつけられるんだよ。でもそれも大切な一興さ、いいと思うよ。私も近くで見ていたいしね」

 来年で35歳、コンピュータを扱う仕事をかれこれ12年ほど務め上げている、のだけれど先々がおぼろ見え始めたのもあって、僕はフリーランスで仕事をしてみようかと考えてた。“ そうなれば2人の時間も増えるのだし ”  なんて想いを違和感なく問いかけたつもりがさぞかし頰を緩ませていたのだろう、雪乃さんは素麺を飲み込む前にせた唇を朱い箸で隠し覆った。

「……君の先輩。そうだねぇ、仕事を教わったような人だとしようか。仮に彼が40歳以上だとするでしょ? その頃には君も会社員として少しの立場もきっとあると思うんだ。そこでね、さて君が仕事を外注するとして……同じクオリティで仕事ができる25歳のフリーランスと、何か頭の上がりきらない先輩の40歳……ね? 唯一無二が無ければフリーランスってのはそこで定年なんだよ」

 でも……ありがとう。大丈夫だよ唯一無二は私が請け負うから。

ーー……まったく、本当にめんどくさい人だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...