15 / 53
手淫。
しおりを挟む六畳の部屋と四畳ほどの台所。単身者には相応であろうこの部屋、雪乃さんの寝床は少しばかり手狭なモノだった。そこに暇だからと……いや、雪乃さん目当てにちょくちょくと訪問していた僕にはただ一つ慎まざるをえない情動があった。
居間のド真ん中で毅然と鎮座している四つ脚、いわゆるコタツだ。間違いなくこの部屋の重鎮であろう四つ脚は、季節を厭わずすっかり雪乃さんの寝室となっている。
「手にしてしまうと管理しなきゃならないんだよ、物であれ何であれ。そんなのめんどくさいじゃないのさ」
……妙に説得力がある、だけれど後になってから気付かされるんだ “ 屁理屈の天才かっ ” と。
布団に覆われた四つ脚の中、細身な雪乃さんは差し支えなくコロコロと寝返えられるけれど、僕はどうにも腰骨が邪魔して上手く体勢を変えられないでいた。
残暑の中で幾分湿気を帯びたようなコタツ布団、それでも就寝はやっぱり四つ脚の中だ。先の話通り、コタツがあるのだから布団は “ 余計なモノ ” とされているのだから仕方がない。
しかしいくら “ 変人 ” とはゆえ流石に雪乃さんも暑いらしい。だろうけれど丈の短いシャツのようなワンピース一枚という雪乃さんの寝姿は色々と困りものなんだ。
突っ込んだ爪先には雪乃さんのふくらはぎやらお尻の感覚を覚えるし、寝返るたび僅か開いた猫のような唇とデコルテが嫌でも目についてくる。男性だとは分かっていてもなのだけれど、……たまらず雪乃さんの寝息を確かめると血流の強さを自分で確かめた。
それが限界、……目眩にうたれ手を伸ばしたモノならばたちまちこの人は意識を開くだろう。これなら…、慰めるくらいならと思惑はどうやら外れてしまったようだ。
「なんだよ……毒でも回ったような顔して。……まぁ男性は52秒に1度毒が回るらしいからね。……うーん、だけれど最後までとかは時間が欲しいんだ。辻褄も無いけれどあまり慣れれなくてね、きっと君の前では演者にはなれそうにないし」
そう言うと雪乃さんは剥き出していた僕に、至極ゆっくりと手を添える。
ーー『……このままいっそ』と何度も過ぎる衝動を抑えつけながら、ついには雪乃さんの色細い指を白く濡らしていた。
1
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる