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花火。
しおりを挟むめずらしく雪乃さんから『出かけないか』と連絡を受けた。扇風機と向き合っていた耳先に突飛な事をねじ込まれたおかげで、風呂上がりだと言うのにまた汗をかいてしまったようだ。
八月の末は夕方とはいえ存分不快な質量なのだが、伝うのはそれとは違う何か冷たいモノだった。
初夏の頃、「君が " そうめんが食べたい " と言ったせいなのだから踏むのを手伝え」などと小麦粉を片手にニヤニヤするような雪乃さんが、世間一般的、それと相変わらない如くに “ 花火見物 ” をしたいなんて口走るのは、もはや狂気の沙汰。
よほどホラー映画よりもザワついたのだから、汗も冷たくなると言うもんだろう。
「いいですけれど……どうしたんですか? らしくもないですよ?」
「昨日戦争勃発の記事を新聞で読んでね、何か改めて探してみたくなったんだよ」
「え? 花火を見ながら何かを探すんですか?」
続けられた言葉に、僕はどうしょうもなく落ちる雫を眺めていた。
日本の花火が何故世界一だと思う? 発見された火薬を世界中の誰もが “ 人殺し ” の道具に作り変えていた時、ひと握りの日本人だけは “ 鉄砲や大砲なんかより人々が喜ぶ美しいモノを作ろう " と星空を見上げたからさ。
ーー……私はね、そんなヤツらが堪らなく愛おしいんだよ。
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