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吸血鬼。
しおりを挟むーー雪乃さんから聞いた話だ。
「なぁ、何歳だと思う? 俺の事」
「う~ん……苦手なんだよぉ年齢当てって。でも色んな事知っているし、エラい人っぽいから35歳? くらい?」
「単純に見た目だけならもっと若いって事?」
「うん、せいぜい30歳? くらいかなぁ」
「相変わらずバカみたいに素直だもんなお前。まぁ俺もお前の身体の不思議に興味あるし、少しナイショ話を教えてやるよ」
「……えっ? 昭和7年? 何この免許証。偽物?」
「まぎれもねーよ、俺60歳だもん」
騙されていたのか、からかわれていたのかね……まったく今となってはなんだけれど。
彼が言うにはね、毎年北欧に3ヶ月ほど滞在するのだけれど、目的は若い子と血液の入れ替えをする為らしい。長い期間をかけるのは、提供者の健康を損なわせるつもりはないからだと。
「老けるってのはな、血液が老けるからってのが大きいんだよ。こんな事やっていたら、いつどんな歪みが来るか分からないけどな。どうだ? 面白いだろ」
そう言って私に札束を握らせると、彼は突然私の腕にナイフを入れたんだよ。
「ん……やっぱり何とも言えない味がするな、お前の血液。吸血鬼理論? とでも言うのか、あれはあながちハズレでもないんだよ」
「精密検査と献体にサインしてもらった礼もあるしな、このナイフお前にあげるよ。すぐに塞がるし傷跡も残らないんだぜ?」
「……ホ、ホントだ、血がもう止まってる」
これからしばらくの間、私は若い子にお願いしては血液を飲ませてもらっていたんだ……だって人によってはすごく美味しんだもの。
ーー……そのナイフ今でも持ってなんていませんよね? 雪乃さん。
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