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絵画。
しおりを挟む『君にひとつ面白いモンを見せてやろう』と誘いをもらった。
飲酒運転が当たり前だった時勢、僕達を乗せた車はグラスを置いた後、深夜の○○市に辿り着いた。
「借り手を探すワケにもいかなくてさ、ココ」
聞けばそのアパートのような一軒家は、知り合いから譲り受けたはイイが、処分に困っているらしい。
たしかに年季は入っていそうだけれど、西洋の会館みたいで雰囲気があるのにと顔を覗く僕に雪乃さんはポリポリと頬を掻き「それを君にも見てもらいたくてさ」と誘った。
電気を通していないからと2つのジッポーで照らしながら階段を登った先、月明かりが照らす窓辺には一脚のイーゼルがあった。傷まないようになのかキャンバスには黒い布が覆っている。
「な……何ですかコレ、どうやったらこんなモノが描ける……」
それは白樺の群衆がモチーフになっているただの風景画。だけれど……見ていられない、吐き気までを覚える嫌悪感が覆った。
「よほどな君にでもわかっちゃうよね、やっぱり……仕方がない。家を処分する前にコイツを処分しなきゃならないか」
この家の主の息子が書いたらしいんだけれど、親をメッタ刺しにした後にコレを書いて自害したらしいんだよ。
『いやいや、アナタ何見せてくれてるのですか、まったく』
ーー嫌なモノだ。邪心が込められた絵画……あれを忘れる事は一生ないだろう。
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