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北海道っ!
しおりを挟むーームサシさんから聞いた話しだ。
「まぁ、あの北海道旅行がきっかけだな。麗佳と俺……、そして朝倉も」
北海道旅行、それはレコード会社が主催したフェスでもらった副賞だった。
学園祭での演奏の後、だらけっぱなしの先輩方が食いつくモノを探していたところに、部員全員で夏休みの避暑旅行という格好のゴチソウを見つけて、私がホレホレと誘惑したのだ。
それはみやび先輩が芸能界に入るきっかけとなったのだけど、旅行の最中にムサシさんと麗佳さんはコッソリと親密さを増していたらしい。
月日を経て、ようやく半年前に2人は結婚式をあげた。けれどもしもあの事件がなかったのなら、今の麗佳さんはきっとバリバリの建築士だったのではないかと思う。
式の当日、それはずいぶんと久しぶりに見た麗佳さんの笑顔だった。
もちろん式にはオカカル部も招かれ、みんなが祝福に空を仰いだ……でもきっと誰もが感じていただろう “ ここにみやび先輩が存在しない違和感 ” を。
ーー夏休みの寸前、日本のトップアーティストを多数抱えるフォックスの主催するコンテストフェスが開かれた。優秀賞は賞金100万円と北海道旅行というのだから先輩たちを口説くにはもってこいだったんだ。
お嬢様学校はおおよそ裕福な家庭も多いのだけれど、夏休みはハワイでバカンスよ。みたいなきらびやかなレジャーなどは意外にも聞かない話で、家業の勉強にいそしむ生徒や、見識を拡げるために海外へホームステイするような生徒が多く、思いの外 “ 質素 ” な夏休みだったりする。
それはもれなく先輩方もだったようで、素直に学友と楽しめる避暑旅行、学生時代の思い出作りというのはすこぶる魅力的に映ったようだ。
やる気というのか、何かがみなぎったみやび先輩は、あれよあれよと作詞作曲までをこなし、その楽曲をひっさげて挑んだ私達オカカル部は、200組の予選をあっさりと勝ち抜き、見事北海道旅行をかっさらった。
2泊3日でお泊りというのが、みやび先輩のフラちな色欲に火をつけたのだろう。……うん、間違いない。
「どうやらあの時から朝倉に目ぇつけていたらしいからな、あのクソプロデューサーっ……と、あ、悪りぃ麗佳」
「いいのよ、もう。……ったくだからって大学まで中退するなんて、バカというかムサシらしいというか」
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