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第1章

第08話 仲間と一緒に旅立ちへ

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 無事、断罪イベントの回避に成功し、ゲームのシナリオ変更することが出来た。とはいえ、悪役令嬢は呪われた存在であるため、油断は禁物だ。確実に、不幸のフラグから逃げるために今後も気をつけなくてはいけない。

 そして、これまで不明瞭だった断罪回避後のシナリオは、伝説の乙女ゲームのイケメン聖剣士『スメラギ・S・香久夜』様に弟子入りすることだった。
 まさか、この乙女ゲームの世界が他のゲーム異世界とも繋がっていたことに驚く。だが、近頃のスマホアプリゲームに至っては、作品中でも他所のゲームとコラボしてクロスオーバー展開は当たり前だ。
 おそらく、『隣国』と呼ばれている国々は、他所の乙女ゲーム異世界だと思っていいだろう。

「さて、無事スメラギ様に弟子入りすることが決まった訳だが。やはり弟子になる限りはガーネット自ら、挨拶に行かなくてはいけないね。スメラギ様が仰るには、さっそく今日から出立して欲しいそうなんだが行けそうか?」
「えっ。あっはい! じゃあ、学校はお休みということに……」
「いや、学校は休みではなく、転校という扱いになるそうだ。女学校では魔法使いは育てていても、剣士は育てていないらしいからね。所属予定のギルドと連携している冒険者用の学園に、近々転入することになるだろう」

(えっ転校? ということは、もはや本来の乙女ゲームプレイヤーとは、関わりが切れるんじゃ?)

 ガーネットの通う女学校の同級生の誰かが、この乙女ゲームのヒロイン的存在であるプレイヤーのはずだった。けれど、明確にはヒロインが誰なのか検討もつかず、対処が難しかったのだ。
 もはや、転校することで距離を置いて別のゲーム設定に移行する方がマシである。

「分かりました。では、支度を済ませたら出立を……」
「うむ。今日からお前は、ただの箱入り令嬢ガーネットではない。これまで、蝶よ花よと育ててきたが……これからは厳しくしなくてはいけない。少し、寂しくなるがな。見習い剣士用のアイテムと装備品をギルドから預かっているから、それに着替えたら剣士のチュートリアル開始だよ。その宝箱を開けなさい」

 まるで、本格派RPGの最初の旅立ちのような展開で、宝箱が私の真後ろに設置されていた。ここは、自宅の居間のはずだが、お城で王様に挨拶をするレベル1の勇者の気分だ。

 一体、どういうシナリオ展開の乙女ゲームと連携しているんだろう。もしかして、私が知らない新作のシナリオだろうか。

 未知の展開に戸惑いつつも宝箱を開けると、基本装備である女性用ソードと見習い剣士の服、ミニスカと黒いニーソ、冒険者ブーツ。旅立ちに必要なゴールドを手にいれる。
 これまで、自分では現金を殆ど持ち歩かず、使用人に支払いを任せていたから、ゴールドでの買い物は新鮮なものになるだろう。
 そして、『冒険者用スマホ』と呼ばれる高性能管理アイテムも手に入れた。本格的に使用するのはギルドに加入してからだが、すでに冒険者の仲間入りを果たした気分を味わえる。

 自室に戻りもらった装備に着替えて、ふと例の前世の記憶を取り戻す魔法のブローチに目がとまった。

(今はまだ、前世の記憶があるからいいけど、いつまでこの状態を維持出来るか分からないし。一応、身につけておこう)

 例のブローチを首回りの水色リボンに装着して、見習い剣士ガーネットの完成!

「お嬢様、素敵です! 想像以上に似合っていて、惚れ惚れします」
「あぁ……! けど、本当に旅立ってしまうのね。うぅ最近まで、優雅にお茶をするのが日課のごく普通の令嬢だったのに。立派になられて……」

 想定外に似合う剣士ファッションに、メイド達も絶賛。もしかして、冗談抜きで前世のうちに1度くらいは、剣士の経験があったりして。

「けど、本当にガーネット様1人でスメラギ様のところまで行かせて、大丈夫なのでしょうか? スメラギ様の住まう『香久夜御殿』に辿り着くまでの道中には、雑魚とはいえモンスターが出没するとか」

 誰もが思う不安な部分をメイドのクルルが指摘。一般の女学生ですら初級者魔法を使えるのに、ガーネットは1つも魔法を覚えていない。剣だって、まだ素振りをしたことすらないのだ。

 すると、不安をかき消すかのごとく、ガーネットの部屋の扉がノックされた。誰だろう?

「失礼、します。この庭師アルサル、ヒストリア王子……いえ『ギルドマスター賢者ヒストリア』からの勅命を受けて、今回の出立に同行することになりました! まだ、剣を扱えないであろうお嬢様のボディガードをするように……と」



 扉の向こうにいたのは、我が家の庭師アルサルだった。いつものチャラ男風ではなく、ピアスの数も控えめでよそ行きっぽい外見だ。

 ところで、聞き間違いでなければ『ギルドマスター賢者ヒストリア』と言わなかった?

「アルサル! ギルドマスター賢者ヒストリアって、私が所属するギルドのトップってヒストリア様なのっ?」

 ヒストリア王子って、乙女ゲームのイケメン王子様なだけじゃなく、ギルドマスターなんて偉い役職に就いていたんだ。
 どうりで、スムーズにギルド入りが決定したと思ったら、ヒストリア王子が入れてくれたのか。

「ええ、あまり話したがらないので、これまでお嬢様には秘密裏にしてきましたが。今後は、ヒストリア王子ではなく、ギルドマスターとしてお嬢様を鍛えていくとか。まぁ慣れてしまえば、いつものヒストリア王子ですよっ。オレもガーネット様が1人で旅立つなんて無謀だと思っていたんで、是非と引き受けたんです」

 なぜ、アルサルとヒストリア王子がしょっちゅう連絡を取り合うほど親しいのか、不思議だったけど。つまり、アルサルも彼のギルドメンバーだったということなんだろう。

「そうだったんだ。私ってまだまだ知らないことが、いっぱいあるのね。まだ駆け出し者の剣士だけど……これからよろしくねっ」
「ええ、こちらこそ! オレは庭師ですがポーション作りなどの錬金術も得意です。バトルもそこそこやれるんで、よろしく!」

 庭師アルサルと、初めての『仲間』としての握手を交わす。冒険者スマホに、庭師アルサルのデータがバトルメンバーとして記録された。

 優しく微笑むアルサルは、ヒストリア王子に少しだけ似ていて……。まさか、2人が腹違いの兄弟だなんて、この時は思いもしなかったのである。
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