195 / 355
第七部 ハーレム勇者認定試験-後期編-
第七部 第6話 女子会と長いダウンロード
しおりを挟む「では、早速女勇者限定クエストを受ける準備を始めましょう! 萌子(もえこ)先輩、まず女性キャラ専用のスマホアプリをダウンロードが必要になるんですけど……このギルドってWi-Fi環境良いですよね?」
「うん、確かフリーWi-Fiだと思うよ。萌子ちゃん、じゃあこのアプリをダウンロードしてね」
ミリーとレインに促されて、女性専用スマホアプリをダウンロード。
その名も『蒼穹のエターナルブレイク-ガールズストーリー-』略して『蒼イクGS』だ。
やはり、この異世界は何かしらのスマホゲームとリンクしているらしい。てっきり女性アバターバージョンに変化するだけなんだと考えていたが、女性キャラ専用ゲームがプレイできるとは……。普通のRPGをプレイしている人だって、異性の主人公でゲームを楽しむ人も多いしあまり深く考えなくても良いだろう。
「アプリをダウンロードできたら、データのダウンロード画面が始まります。データダウンロード中に助っ人予定のメンバーにあらかじめ連絡をしたり、攻略サイトで情報を収集しておくと良いですよ」
手際よく、てきぱきとクエスト準備をし始めたミリー。
「へぇ、ミリーは随分このアプリに詳しいんだね」
「はい! サービス開始当初からプレイしていて……結構人間関係の狭いゲームアプリだったから萌子先輩が加入してくれると助かります。まず、女勇者三人以上集めて攻略ってクエストがあるんですけど……女勇者自体少ないじゃないですか。なかなか、編成が出来なくて困っていたんです、だから萌子先輩の加入は女神様からの助け船だと思っています!」
握り拳をつくり、熱っぽく語るミリーは女ゲーマーそのもので、おそらくこのゲームアプリの攻略にかけているのであろう事が窺える。プレイヤーの人数が少ないゲームなのも、攻略難の原因だろう。
「女神様からの助け船か……まぁ期間限定の女アバターだけど、こうやって喜んでもらえるなら萌子になった甲斐もあるよ」
オレこと萌子のスマホから美しいピアノと弦楽器のサウンドとともにデータダウンロード画面が始まる。
データ2パーセント、4パーセント……しばらく時間をおいて5パーセント……なかなか6パーセントにならないな? これは一体……?
「ねえ、ミリー……このゲームなかなかデータがダウンロードできないんだけど……」
「ええ、すごく長いんですよ。そのゲームのダウンロード……でも自室でダウンロードするよりもこのギルドカフェのWi-Fiを使った方が絶対早いんで!」
「う、うん……」
「あっ待ってるダウンロード中にケーキセットを食べようかなっ? 私無料クーポン持っているんで今回は私がそれで先輩たちの分も出しますねっ。この無料クーポンもゲームの特典なんです!」
「えっ? ありがとう。まさか後輩におごって貰うとは……その分しっかり働くよ」
「ミリーちゃん、ありがとう。頑張るね! あっ私のスマホから助っ人メンバーに声をかけておこうか? バトルのサポーターはメイドのミーコちゃんが適任かな。あとは……回復役が必要なんだよね、確か。最近賢者に転職したマリアさんがレベル上げしたいって言っていたけど……」
「けっ賢者っ! 賢者にクラスチェンジされた方がいらっしゃるんですかっ? 凄すぎ! 随分頭の良い仲間がいらっしゃるんですね!」
「マリアさんはイクト君……つまり萌子ちゃんのギルドメンバーなんだよ。清楚で美人でスタイルもよくて……凄く優しくて素敵な人なんだ」
レインってそんなにマリアのこと高評価に考えていたのか?
まあ、前世の見た目清楚系中身ギャンブラーの時代を知らなければ、そんな感じの評価か……。
「ふぇえー。さすがイクト先輩……っと、萌子先輩ですね! お仲間にも恵まれていて……私なんか、キラの面倒見てばかりで……キラって普段おとなしいけどバトルになると激しいじゃないですか? 二重人格的な……あれで、キラの戦闘についていけない人が多くて結局二人で組むことになったんですよぉ」
「……あのさ、ミリー。ボク、まだここにいるんだけど……」
「あっキラまだいたんだ。うーん、こうしているといかにも草食系男子なんだけどなぁ」
「いかにも草食って……ボク、いつもミリーの事を考えて、それで、それで……」
なんだかキラ君が顔を赤らめながらミリーに想いの丈を伝えようとしているが、女勇者限定クエストの事で頭一杯のミリーには伝わらないようだ。
「おお、なんか女子会が始まりそうだしオレとキラはここで撤退するよ。萌子ちゃんも今回は女子として頑張れよ! っほら、いこうぜキラ」
「うう、分かりました。萌子先輩、レイン先輩、ミリーをよろしくお願いします。じゃあこれで……」
「気をつけてねー」
男性陣のマルスとキラが早々に撤退。普段だったら、オレもマルスたちと一緒に撤退していたのかもしれないが、女アバターに変化した所為でこの女子会のメインとして参加している。
「では、萌子先輩の加入決定女子会を始めます!」
パチパチパチ……!
「お待たせしました。ふんわりシフォンケーキセット女子会バージョンです」
「わぁ可愛いー」
「萌子先輩、レイン先輩! このケーキ写真に撮って私達のゲーム内の活動記録に早速のせましょう」
「えっ活動記録? う、うん。いいけど……」
「やったぁ! じゃあ撮りますよぉ」
パシャッ!
「ふふふ、可愛くとれてるっ。アプリでデコって……女子会中です! ミリー……っと出来たぁ」
ミリーはシフォンケーキを味わう前に、パシャパシャとスマホのカメラ機能を駆使して、撮影、加工、デコ……とそつなくネットのマイページに活動記録を載せ始めた。
「こういう写真を活動記録映えする写真って言うんです。女性向けの装備品やアイテムも活動記録映えするものが人気なんですよ」
「活動記録映えか……なんか女の人って不思議なものに賭けてるんだなぁ。あっ写真、セピア色が混ざっていてお洒落……」
「ふう……活動記録の写真もネットに出したし……いただきまぁす!」
「じゃあ、私も……いただきます。ふわふわで本当に美味しいね」
「まさか、実際にケーキを食べるより先にネットに写真を出すとは……女子の世界は奥が深いな……いや、ミリーが活動的なのか……?」
「食べてる最中の萌子先輩の可愛い写真も掲載しておきますね!」
「えっ食べてる最中? なんか、ほとんどリアルタイム更新じゃない? その活動記録……」
パシャパシャ!
アグレッシブに、活動記録向けの写真を撮り続けるミリー。
カラン、カラン!
誰かが、ギルドにやってきた合図のチャイム。
「いらっしゃいませっ。はっ……あなた様は……伝説のメイドの生まれ変わりと謳われるミーコ様……っ。私、ミーコ様に憧れてメイドとして日々鍛錬をしております!」
「にゃあ、ありがとなのにゃん」
なんだか、騒がしいなと思ったら来訪者はオレのギルドメンバーだった。
「ミーコ、マリア!」
「にゃーん! マカロンの差し入れですにゃん」
「わあ! 私、マカロン好きです、ありがとうございます。はっもしかして、もう一人の方は賢者様ですか?」
「ふふ、初めましてミリーさん、賢者のマリアです」
「ふぁっ! 美しい……! これが噂の賢者様……新人女勇者のミリーです。よろしくお願いします」
マリア達も来たし、ゲームデータもダウンロードできているだろうと、ふとスマホを見るとまだ50パーセント?
どうやら、長い女子会になりそうだ。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる