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第六部 ハーレム勇者認定試験-前期編-

第六部 第29話 水着で海水浴クエスト

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 夏休み……イベント盛りだくさんの長期休暇に、心をときめかせている者も少なくないだろう。
 プール、海水浴、花火大会、夏祭り、そうめん流し、天体観測、バーベキュー、遊園地、肝試し、大型同人誌即売会など……思いつくだけでもレジャーが、てんこ盛りだ。


 けれど、オレは魔法学園の勇者。
 やはり、勇者っぽく夏休みは鍛錬とか? 
 卒業後は、異世界転生者専門ギルドに所属しながら、高難易度クエストに挑戦し、勇者らしく活動していく予定だ。
 世間のリアルな生活が充実している皆さんのように、長期休暇をエンジョイしても良いのだろうか? 
 一応オレも勇者の端くれなので、ごくたまには真面目にいろいろ考えてみる。

 オレが冷房を効かせた部屋でサイダーを飲みつつ、机の上に置かれた卓上カレンダーを眺め、ぼんやりと物思いに耽っていると、守護天使エステルとお目付役のリス型精霊ククリがロフトルームからちょこんと顔を出して優しく微笑んだ。

「イクト君、今年前半お疲れさま。いろいろ大変だったけど、せっかく魔法学園最後の夏休みだし楽しく過ごしてね!」
「ちなみに夏休み中も女の子達とデートを楽しむと、ハーレム勇者認定試験のポイントとして加算されます。合格目指してどんどんデートしましょう! エリスさんやアオイさんとのデート試験も残ってますしね!」

「デート試験か……」

 思い起こせば今年の一学期は大変だった。
 ハーレム勇者認定試験なる謎の多き試験を受験することになったり、オレ自身の今の身体が擬似ネフィリム体というアバター状態で魂がインしているということが判明したり、異世界転生者同士の懇親会もあったし……。

「そういえば、夏休み最初のクエストは海水浴クエストだったよね。みんなで泳ぐんでしょう? 海にもモンスターがいるかも知れないし、平和を守りつつ頑張ってね」
「アイラちゃんも楽しみにしているそうですよ。この間嬉しそうに話していました。妹さんとの交流も大事ですからね」

 アイラか……。
 地球でも異世界でもアイラはオレの妹だ。
 もしかするとアイラもオレやレインと同じく、アバターに魂をインしている状態なのかも知れないが、今現在のアイラが幸せならこのままでもいいのかも。

「そうだな。難しいことは後回しにして、せっかくの夏休みを満喫するよ。ありがとう」

 海水浴クエスト……海水浴場に出没するかもしれないモンスターを人知れず倒す、という中級クエストだ。といっても、ほとんどモンスターが現れることはないらしいので普通に観光できるらしいが。

 そういえば、レインがこの間の懇親会ガチャで当たった水着装備を着てくるって話してたよな……あの水着……結構大胆だった。


 そんなこんなで、数日が経ち、無事に海水浴クエスト当日を迎えたのだが……。


 オレはすっかり忘れていたのだ。
 実は、オレの持病である女アレルギーはパートナー聖女ミンティアが毎日オレのために祈りを捧げることで、緩和しているに過ぎないと言うことに。
 そして、ミンティアも万能ではなく魔力休憩が年に一回は必要だということ。
 さらに、女の子全員が水着姿になる海水浴クエストは女アレルギー持ち勇者にとっては、危険きわまりない命がけのクエストであるということに……。


 大胆な水着を装備した仲間たちとのラブなイベントは、モンスターの襲撃より激しく熱く、オレ自身の理性とのバトルだ。
 女アレルギーを克服したつもりになっていたオレにとって、史上最大の試練が訪れる。


 ギルドのゲートをくぐり、異世界の海水浴場に無事到着。
 人間族はもちろん、エルフ、魔族、獣人族らも水着姿で海を満喫中。着替えのため仲間たちと一旦離れ、さっと海パン姿になり、再び外へ。
 あらかじめ、服の下に水着を着てきたというアイラが一番乗りで外で待っていた。どうやら、海の家の食事が気になるらしくメニューをじっと見てる。

「どうした、アイラ。なんか食うか?」
「いらっしゃいませ。アイスもかき氷もありますよ」
 笑顔の店員さんがメニュー表を差し出す。
「お兄ちゃん、アイラね……ミルクかき氷がいいな! バニラアイスがのってて美味しそう、お兄ちゃんは?」
「そうだな、メロン味にするか……すみません。かき氷、ミルクとメロン、ひとつずつ下さい」
「兄妹で海水浴ですか? うちにも妹がいるんですよ。仲がよろしくて羨ましい……今日は暑いから、アイス多めのサービスですよ! おおきに、まいどあり」
「わぁ、ありがとう。お兄ちゃん行こう」
「アイラ、はしゃぎすぎるなよ」
「はぁい!」

 着替え中の仲間たちを待ちながら、シートに座り、しばらく妹とふたりでかき氷タイムだ。しゃくしゃくした氷を口に含むとキィンと頭に響く。
 俗に言う猛暑が続いたせいか、ひんやりかき氷が格段に旨く感じる。

「美味しいね、お兄ちゃん……あっレインさんの着替えが終わったみたいだよ!」
「ああ……レイン、このかき氷うまい……よ……」

 ぽとん! 
 動揺してしまい、思わずかき氷をスプーンからこぼす。じわじわとシートの上で溶け始めるかき氷。まるで、このとろけるかき氷はオレのハートを現しているようだ。

 オレの眼前には、例の大胆な水着を着用した女勇者レインの姿。



「イクト君……お待たせ……」

 頬を赤らめつつ、登場した女勇者レイン。
 レインの赤い魔法の水着は布の面積が少なく、スレンダーな身体のラインがくっきりはっきりとよく分かり、そしてスレンダーながらも発展途中の美しい胸元が膨らみ、少ない布地で素肌を守りつつ、ウエストはくびれていて白い肌はもちもちと吸い込まれるようで……。
 気のせいだろうか? 何だかレインのバストサイズが成長している気がする。

「あのガチャ装備……結構大胆だったんだね。実際に着てみると、すごく面積が少なくて……変かな? でも、この装備すごく守備力が高いんだって。なんでも魔力で精霊の保護がかけられていて……って、イクト君?」

 どきん! 可愛すぎる……どうしよう。
 どっどっどっ……。
 あれっ? チカラが抜ける、心臓が早い、息が苦しい……。

「お兄ちゃんどうしたの? 顔が青いよ!」

 顔が青いだと……?
 
 オレの意識が朦朧とし始めると、女アレルギーを緩和するチートスキルを持つミンティアが、水着を身にまとい駆け寄ってきた。

「お待たせ、イクト君! 実は今日は年に一度の魔力回復日で女アレルギーの治癒魔法が効かないけど、イクト君も耐性が出来てきたみたいだし、このくらいの水着なら、大丈夫……ってイクト君っ?」

 女アレルギーの治癒魔法が効かないだと……?
 タイミング良く、ぞろぞろと現れるギルドメンバー達。

「にゃあ、メイド服以外を着るのひさしぶりにゃん」
「よお、イクト。どうだこのエルフ特製セクシー水着、今日は一緒に楽しもうな!」
 メイドのミーコと姉御肌のアズサはまだ女アレルギーに気づいていないのか、満面の笑顔だ。

「イクト様……今日はデート試験も兼ねていますので、ゆっくり、まったり……ねっ」
 デートが嬉しいのか、ぴたっとくっついてくるエリス。
「ねえイクトさん、今日はたくさん泳ぎましょうね」
 Fカップ巨乳のマリアが優しく手を振り、胸が揺れ……。

 ぷつん! ……そこでオレの意識は途絶えた。


『お昼のニュースです。今日の午前10時ごろ、異世界海岸で女アレルギーによる熱中症が発生し、クエスト中の勇者が倒れました。水分補給をこまめにし、十分に気をつけて下さい』

 
 こうして、波乱のクエストが幕を開けたのである。




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