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第六部 ハーレム勇者認定試験-前期編-

第六部 第2話 キャンプ場で観光クエスト

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 ダーツ魔法学園ギルドワープエリアから瞬間転移で異世界のゲートまで約三分、勇者イクト一行は観光クエストとして穴場のレジャースポットを訪れていた。

 結局、早朝にイクトが女アレルギー発症間近になったせいでミンティアがチートスキルを唱えてからの移動となった。それでも時間はたっぷりある……チートスキルが効いている間は女アレルギーを発症しないので安全だ。
 そのため、自然と女性陣がイクトに対して積極的になっていき……。


 * * *


「空気がおいしいってこういう場所のことを言うんだね、お兄ちゃん。あの川の水、冷たいかなぁ? 水浴びしたいかも」

 イクトの妹アイラがピンク色のツインテールヘアを靡かせながら大きな目を輝かせ、広いキャンプエリアではしゃぐ。華奢で可愛らしい彼女だが実はこのギルドメンバーの中では一番の武術スキルを持つ格闘家だ。

 12歳という若さでメンバー最年少でありながら、かなりの才能の持ち主である。おてんばなアイラはキャンプ場に興味津々のよう。

「アイラ、はしゃぎすぎて転ぶなよ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん」

「小鳥さん、こんにちは。えっこの間も冒険者が遊びに来てたの……へぇ。ふふっ楽しみだね」

 肩にちょこんと止まった小鳥と会話をしている少女の名はミンティア。
 ミントカラーのサラサラしたショートボブヘアのサイドをピンで止めている。

 一見、どこにでもいる異世界人に見えるこの美少女は勇者イクトの大事なパートナーであり、イクトにかけられた呪いである女アレルギーを緩和する回復スキルを持つ『聖女』だ。また、ショートダガーを用いて異空間を開き、精霊獣を呼び出す召喚士でもある。

「ミンティア、気に入ったみたいで良かった」
「イクト君、みんな、今日は楽しい休日にしよう」

 自然環境がリラックスさせるのか、ナチュラルに手をつなぐ二人。
 キュッと結ばれた手は恋人同士の仕草そのもの……それもそのはず、この二人は現在婚約中のカップルだ。ふと、仲間達の視線が気になったのかパッと手を離し話題を切り替えるミンティア。

「あっ私キャンプの案内所で道具、貰ってくるね。レインちゃん、エリスさん、一緒に行こう」
「うん、じゃあ行ってくるね」
「バーベキュー楽しみですわ。イクト様、キャンプ場にも素敵な女性が遊びに来るかも知れませんが、あまりいろいろな女性に目移りしてはダメですわよ」

 エリスがヤキモチを焼くような仕草で可愛らしく『めっ!』と注意をするとイクトはイケメンフェイスをキープしつつもデレデレと嬉しそうに、「ごめん、エリス。気を付けるよ」と、機嫌を取るような優しい声でエリスの髪を撫でた。

 パタパタと何事もなかったようにミンティア、レイン、エリスの三人はキャンプの運営施設へ。

 黒髪をボーイッシュにカットした爽やかで中性的な少女の名はレイン。
 イクトの同級生であり、この世界でも珍しい女勇者だ。スレンダーでクールな彼女に憧れる下級生も多い。正式には星のギルドという隣のギルドの会員だが、相互パートナーとしてしょっちゅう助っ人してクエストを手伝って貰っている。

 銀髪ロングヘアの神秘的な美少女は神官エリス。

 由緒正しい神官一族の出身で占いの卓越した才能を持ち、よく当たる恋占いで学園内では密かに人気……彼女に告白して玉砕する男子生徒もしばしばいるが……まぁ、いろいろ仕方ない。
 ギルドでは主に後方支援を担当する……ちなみにエリスもイクトと婚約中の身だ。

 チチチ……と、青々とした雲一つない空からは小鳥達の愛くるしい鳴き声。
 自然の木漏れ日が柔らかく冒険者達を迎える。
 絹のような長い黒髪をポニーテールに結んだ美しい少女マリアが小瓶に川の水を集め、測定魔法を唱え始めた。

「安全な水かどうか一応、確認しますね。自然を守る水の守り神よ……呼び声に耳を傾け光を示せ……」

 マリアの聖なる祈りに呼応するかのごとく、淡い金色の優しい光が水を集めた小瓶の周りをダンスをするようにクルクルと廻っている。どうやら、川の水は良質なようである。

「すごい、この川の水から溢れる魔法力……聖なる回復地と同じ癒しの水ですよ。イクトさん、よくこんないい場所知っていましたね」
「ああ、同じ勇者クラスの友達から教えて貰ったんだ。凶暴モンスターの出ないエリアだからキャンプするのに最適だって」

 マリアとイクトはせせらぎに耳を傾けながら腕を組み、川辺に腰掛けた。
 マリアは、細身な身体に似合わず胸の大きなナイスバディでFカップの持ち主だ。腕に当てられた巨乳の感触を楽しみながらも、スケベ心を周囲に気づかれないようにストイックな表情を崩さず格好を付けるイクト。

 どこからどうみても恋人同士の二人……実はイクトはマリアとも婚約している。

「ずっと……こうして過ごせたらいいのに……」
「マリア……」

 そんな光景を既に見慣れているのか、感覚が麻痺しているのか、イクトの妹アイラは兄が様々な女とハーレムを満喫するのを気にも止めず、キャッキャッと遊ぶ。
 アイラの楽しそうな声に引き寄せられたのか、ムササビが木の穴からひょっこり顔を出して様子を伺う。川のせせらぎが天然のBGMのように流れる。

「よし! セッティング終わりっ。あとは準備してある野菜と肉を焼いて……おっ、たこ焼き器もあるな。うまいたこ焼きも一緒に作ってやるから楽しみにしとけよ! イクト、将来の嫁になるアタシのバーべーキューテク、惚れ直させてやるからな」

 甲斐甲斐しく、バーベキューのセッティングをしていたのは姉御肌の美人エルフアズサ。
 金髪のウェーブがかった髪をハーフアップに結い、とがった耳が妖精であることを示している。か弱いイメージの妖精族でありながら、凄腕の剣士である彼女は、やはりイクトの婚約者だ。

「サンキュー、アズサ。こっちも結界張るの終わったぜ」

 婚約している女と順番にイチャついているだけに見えていたイクトだが、実は周囲にモンスターが近づかないように勇者特有の魔法力で結界を作っていたようだ。

「わぁアズサさん、ありがとう。バーベキューとたこ焼きパーティー同時にできるね! お兄ちゃん、マリアさん席についてっ。あっミーコお帰り」

 アイラの視線の先にはミニスカメイド服姿とニーハイのよく似合う美少女ミーコ。
 一見普通のメイドさんだが、彼女には猫耳と猫の尻尾がついている。

「にゃあ、ただいま戻りましたにゃん。イクトお魚いっぱい貰ってきたにゃん」
「ミーコ、ありがとな。今日はメイドの仕事も程々にして一緒に楽しもうな」
「にゃあ、嬉しいにゃん……」

 猫耳をさわさわと撫でられゴロゴロ鳴くミーコ。
 ミーコはイクト専属のメイドで猫耳族という種族だ。現在の人間に近い姿の他に普通の黒猫の姿も持っている。彼女は子猫時代にイクトに助けられた恩から、人間モードになってもイクトを慕っている。

 みなさん、もうお気づきであろう……女性陣7人中、妹と女勇者、猫耳メイド以外は既にイクトと婚約状態であるという事に……。
 さらに今後は女勇者もイクトに攻略されてしまいそう……何故、そんなことが許されるのか?

 それは、イクトの拠点とする異世界では一夫多妻制が当たり前だからだ。

 キャンプ場近くの草むらでは、ベストに斜めがけのバッグを身につけた小動物がキョロキョロ……。

「あれは、女性7人に男性がひとり……まさにハーレム! 確認魔法発動……名前は結崎イクトさん……職業は勇者!」

 ハーレムモードでバーベキューをエンジョイするイクト達の姿を確認するリスが一匹。どうやらただのリスではなく、異世界配達業者の配達召喚獣のようだ。

「……ふう、ようやく見つけました。このハーレム勇者認定協会からの案内書、しっかり届けなくては……」

 この小動物配達員が届ける一通の手紙が、勇者イクトのハーレム人生を大きく揺るがすことになる……かも知れない。
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