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第十部 異世界学園恋愛奇譚〜各ヒロイン攻略ルート〜

妖精のクリスマスプレゼント:1

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 今日は、クリスマスデートクエストの初日。朝からギルドカフェクオリアで待ち合わせして、ミーティングを行うことになった。待ち時間の間、ハーレム勇者認定協会から送られてきたアズサのプロフィールを確認。


【エルフ剣士アズサ】
 本名:アズサ・風祭・シルフィールド
 年齢:地球では20代前半
 誕生日:3月18日
 身長:167センチ(ヒールを履くと172センチくらい)
 体重:54キロ
 バスト:Dカップ
 血液型:B型
 趣味:剣の稽古、カフェ巡り、家庭菜園
 好きな食べ物:手作りポトフ、ハヤシライス、自然派素材のハンバーガー
 苦手な食べ物:合成着色料
 特技:フェンシング、フラワーアレンジメント、パッチワーク
 得意料理:エルフ族特製ポテトサラダ、妖精のふんわりケーキ

(備考)
 初期メンバーであり、貴重な前線アタッカーでもあるエルフ剣士アズサは冒険の仲間として欠かせない存在。これまでも、あらゆる難所を彼女の剣に助けられたことだろう。そんな頼り甲斐のあるアズサだが、たまには甘えたい時もあるようだ。
 ちょっとだけヤンキーキャラであるが、根はエルフ族特有のはわわキュルルンキャラであるため、ロマンティックな対応が重要と言えよう。

(アドバイス)
 これまでは弟みたいに可愛いだけの存在だった草食系男子の彼が、ふとした時に見せる男らしい仕草にキュンキュンしちゃう!
 そんな王道の攻略法が、アズサさんのハートを射止めるには効果的。騙されたと思って、彼女を引っ張っていく姿勢を見せていこう。まさかの急接近も夢じゃない。


(エルフ族特有の『はわわキュルルン』キャラとは……? いや、以前エルフの里で記憶が消去されたアズサは、まさにそんな感じのピュアエルフだったな。でも、ヤンキー姐御肌キャラも捨てがたいし……)


 * * *


 オレがアズサ攻略法を一通り読み終えると、タイミングよくアズサ御本人がカフェに到着した。気まずくて、素早くスマホ画面を閉じて笑顔で対応する。

「お待たせ、イクト」
「アズサ! 今日は、キノコとチーズオムレツの朝食セットがお得なんだって。せっかくだし奢るよ」
「サンキューな。イクトも立派になったよな本当に……」

 あながち、先ほど読んだアズサ攻略法は嘘ではないのか。オレがふとした瞬間に見せた男らしい奢り宣言に、やや頬を赤らめて金髪のまとめ髪を弄りながら照れる仕草をする。これは……クリスマスデートは、かなり期待できそうである。もしかしたら、もしかすると……サ終直前に女アレルギーを『卒業』してしまう可能性も。

 本日のアズサの装備は、ボアのついたフード付きの白いショートコートにショコラ色のニットワンピース、黒いタイツとブーツ……スラリとした美脚が男心を刺激する。そして、護身用のショートソードが、ダークグリーンの鞘に守られながらキラリと腰を輝かせていた。カジュアルながらもシックな色合いのお姉さん剣士ファッション。

 デートは彼女の郷里であるエルフの里にて行う……初めて過ごす異種族の里でのクリスマスデートを予定している。いつもなら、ギルド運営のワープゲートを使用して目的の場所へと瞬時に移動出来ていたが、エルフの里は例外だ。

「実はさ、エルフの里の最奥には地球への移動ゲートがある関係で、直接移動でしか行くことが出来ないんだ。近道としてはネオ新宿にあるハロー神殿までゲートで移動して、そこから『特急列車アズリーサ号』で二時間半ってところかな? 手間がかかっちゃっうけど」

 運ばれてきたオムレツと紅茶をひとくち含んでから、アズサが申し訳なさそうに、詳しい事情を説明してくれる。デート場所の指定はハーレム勇者認定協会が定めているから、別にアズサのせいではないのだが。

「えっ……そういえば、エルフの里へのワープゾーンって見たことなかったけど。そういう理由があったのか」
「うん。日帰り旅行は無理だから、イクトには宿に泊まってもらうことになるけど。ほら……エルフの里ってイクトにとっては因縁深い場所だろう? 前世のアバターで、女アレルギー起こして倒れたっていう……」

 そうだ、すっかり忘れていたがオレの初代アバター体はエルフの里で女アレルギーを発症し……帰らぬ人となっている。しかも、死因はエルフの里直営温泉でアズサに抱きつかれたことだと推定されている。
 今思うと突然倒れたのは疲労が蓄積してた関係で、死因は突然死なのかも知れない。本当の死因はよく分からないのだが、アズサは里から弾圧されて……その後の魔獣革命で命を落としたんだっけ。

 思わずお互いを取り巻く空気が悪くなり、無言の時間が続く。カフェの中に流れるクリスマスソングまでしっとりとしていて、サ終のムードを盛り上げているようだ。

「きっと、サービス終了直前になってこのデートクエストが組み込まれたっていうのは、オレ達の最後の試練的なものなんだよ。前世より組み込まれた因果を解消することにより、『真のサービス終了』が成し遂げられるんじゃないのかな」
「そうか……イクトがそう言ってくれるなら気が楽だよ。アタシの存在ってあれ以来、不吉なイメージがついちゃっているからさ。友人のコノハもあんなにピュアだったのに、アタシが誘ったギャンブルのやり過ぎでダークエルフに目覚めて里を追われたし。アタシ、もしかして姐御肌キャラなんじゃなくて不幸をよぶエルフなんじゃないかってちょっとだけ、悩んだんだ」
「大丈夫だよ。そのトラウマを克服するために、今回のデートがあるんだ。わだかまりの無い状態でサ終するために……!」

 今回のデートクエストは、ただのクリスマスを浮かれて愉しむだけのものじゃない。初代アバターからオレ達が引き継いだ原罪を『ジーザス・クライスト』の如く、洗い流すための聖戦なのだ……!
 オレの見解では『この異世界における聖書』の啓示に描かれた大いなるバビロンの崩壊とは即ち、上を目指す冒険者の自己犠牲を伴うガチャのことを指していると見た。一見すると的外れに思うかも知れないし『地球での聖書』の解釈はよく分からないが、少なくともこの異世界についてはその考えが妥当だ。

 何故なら、ガチャが回らなくなる事でこのスマホゲーム異世界はいとも簡単に『終了』してしまうのだから。異世界そのものは継続するのだろうが、オレ達の手の届かない存在になってしまう。

 一部のブラックギルドで見受けられる上級冒険者のしごきと、初心者冒険者のいたちごっこのような煽り合い。それすら、スマホゲーム異世界の崩壊を狙う『額に666の印を受けた魔獣』の手中で憎しみあっているのに過ぎない。

 ――原罪を巡る最後の聖戦が、エルフの里で行われる!

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