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第二部 前世の記憶編

第二部 第3話 伝説のハーレム序章(前世編)

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 オレの女アレルギーの原因は、魔王の娘グランディア姫の呪い?


「あれは、姫様がまだ地球に住んでいた頃です……当時はゲートを通じて異世界と地球を往き来するのが普通となっており、姫様も十代中ごろまでは地球で育ったのです……ピッ」
「へえ、やっぱり身の安全を確保するためとか?」
「はい、ですが……それは反対派の魔族から身を守るため……まさか、あんな女好きの地球人と出会う羽目になろうとは……それが例のハーレム勇者ユッキーなのですっピッ」

 復活した不死鳥は当時の様子をリアルタイムで知っているらしく、まるでつい最近の出来事のようにユッキーの人となりについて語りはじめた。

「ユッキーは天然の女タラシで人柄は悪くはないのですが、とにかく女性を見ると口説かずにはいられない性格なのです。ただ、効率よくハーレムを構築していた所を見ると、気のありそうな女性を見抜く事が出来る特殊チートスキルの持ち主だったと考えられていますっピ」

 自分に気のありそうな女を見抜くチートスキル…………なんかただのイケメンな女好きっぽい人だな。
「姫様は……ウブな姫様はすっかり騙されてしまい、結婚の約束を……いや正確には、一夫多妻制なので騙された訳ではないので詩が……あまりハーレムメンバーの皆様と仲良くなかったのです」

 病室の空気が一気に緊迫し始める……よく考えてみたら、普通は存在しないようば幻の生物不死鳥が蘇って前世について語るなんてファンタジーな展開……地球の暮らしでは滅多にお目にかからない。

 窓辺の白いカーテンがふわりと揺れる……空気を入れ替えるために開けておいたものだが、話も複雑そうだし窓を閉めたほうが良いだろうか?

「念のため、ボク窓を閉めてくるね」
「真野山君、ありがとう。悪いね気を遣わせちゃって」
「ピィ、姫様の子孫にそんな事をしてもらうとは……ずいぶん庶民の暮らしにアオイさんは慣れているのですね。でも、そっちの方が良いのかも知れませんっピッ。姫様は地球人に対する警戒心の足りなさは、少し不安もありました……とても純粋な方でしたから……」

 異世界と地球が融合してきているからと言っても、全ての人が異世界に詳しいわけでもないし……好意的かどうかも分からない。今回入院している病室が個室で良かった。



「グランディア姫は恋人の勇者ユッキーが女好きで、いろいろな娘にちょっかいを出していたので、たいそう悩んでおりましたっピッ。そして、魔王一族に伝わる伝統の呪いで浮気ができない体質に変えるように、魔法をかけられたのですっピッ! おそらく勇者ユッキーの生まれ変わりと推定されるあなたに、女アレルギーというカタチで呪いが利いているのでございましょうっピッ!」

 不死鳥のヒナが曰く、オレの前世は伝説の女好き勇者ユッキーで、恋人の魔王の娘グランディア姫の呪いで女アレルギーになったと推定されるらしい。

「前世……ですか。アースプラネットでは前世の概念が当たり前ですが、記憶をきちんと継承して生まれ変わるのは難しいとされています」
「えっそうなんだ……ライトノベルだと、異世界転生した主人公が前世の知識で無双するけど……」

 神官エリスが前世について説明してくれるも、記憶の継承はしないという意外な答えに拍子抜けする。
 でも、はっきり前世って認識されるほど前世の自分にそっくりな姿で生まれ変わる人がいるのだろう。
 そういえば、ヒナはオレの顔を見てすぐにユッキーだと勘違いしていたようだし、もしかしたら、顔がそっくりなせいもあってハーレム勇者として選ばれたのだろうか?

「不死鳥は何度も蘇れるから、時代を経て生まれ変わりの人たちと会話する機会もあるって事だよな」
「私達にも、前世の記憶があれば良かったけれど……そのうち記憶が全員持てるようになるのかしら?」

 前世とかスピリチュアルな類のものは、話半分というかファンタジー特有の夢物語のようにしか考えてこなかったので突然色々語られてもピンとこなかった。が、女アレルギー発症で現在短期入院中の身としては原因をハッキリさせて女アレルギーを治したい。

「ピィ……とても言いにくいのですが、マリアさんたちと似た女性たちに会った事がある気がするのです……もしかしたら、前世で……。マリアさんたちのことを初めてお会いした時に、美しい方々だと思いましたが……遥か昔にも似たような経験があるのです……。もしかしたら……いや、それ以上はもう話さない方がいいみたいですっピッ」
「えっマリア達に見覚えがあるって事? 一体何処で……まさかユッキーのハーレムメンバーなんじゃぁ……」
「はっきりとは分かりません……ただ、ユッキーが生まれて初めてプロポーズした相手はグランディア姫様なのです。ですから、他の女性との交際は浮気とみなして呪いをかけていたのですッピ」

 まさかの呪い……しかも前世……これっておれ自身はあんまり関係なくないか? そんな呪いのためにオレは小さな頃から女アレルギーだったのか?
 それとも、他にも理由が? 女アレルギーはもはや生まれながらの体質だが、これを機に治す方法が見つかるかもしれない。

「あれっなんだか景色がぼんやり、ぐるぐる……」

 何だろう? 部屋の景色が歪む、浮かんできたのは遠い前世、もっと遠い前世……たくさんの女性の姿が浮かんでくる。

「うっなんだろう……頭が痛い……記憶が……」

 オレの心の中にぐるぐると巡りくる記憶のかけら……。どんどん頭の中に押し寄せてきて止まらない。

 浮かんできた女性たちはオレがよく知る……でも、記憶にない人たちもいるような……記憶を全て辿るのはまだ出来ないようで、思い出すのは複雑で難解なものだった。

 黒いロングヘアが美しいの優しそうなシスターはマリア、金髪のおてんばそうなエルフはアズサ、エリスによく似たベージュ色の髪の神秘的な女性、猫耳姿のミーコによく似た巫女さんやメイドさんまで……赤茶色の髪の美少女はカノンによく似ている。

 もちろん、妹アイラによく似た少女の姿もあった。時代は様々で国も多少の変化があるようだが、どの時代に生まれてもどの国に生まれても、オレは彼女たちと一緒だった。

 これって、もしかしてオレが前世で関わってきた女性たちの姿なのか? 友人、家族、恋人と様々な関係のようだがどの女性も大切な存在なのだろう。


 わずかな時間に起きた目眩の渦は、魂の記憶を揺さぶり、他にも因縁が深い人たちの記憶が一気にオレの中に流れ込んでくる。
 だが、流れ込んできた記憶は現在知っている人物たちのものだけではなかった。

『ねえ、イクトス……再会したら……結婚しようね。約束だよ……生まれ変わってもずっとあなたのこと想っているから……』
『勇者様……勇者イクトス様……いつか、あなたに会いに行きますわ。必ず……私のこと忘れないで下さいね……私の名は……ミンティ……アラ』

 見たことのない女性の姿も流れてくる記憶には混ざっている。ひとりはボーイッシュな黒髪のショートカットが印象的な黒髪青目の女剣士……もうひとりは、召喚獣を喚び起こす不思議な力を持つミントカラー髪色の少女……誰だろう? 昔の因縁深い人物か、遠い将来関わる誰かだろうか?

 ミンティアラ……? 
 何となく、古代人っぽい服装の美少女に頭が混乱する。きっとユッキーよりも、ずっとずっと昔の人だ。
 重要な人物のようだが、何故か彼女を思い出そうとすると頭が激しく痛くなる。

 イクトスとは、誰なのだろう……オレの遠い昔の名前だろうか? いや、今重要なのはユッキーとグランディア姫の記憶だ。
 オレは目眩の渦の中で、未だ現世では会ったことのない彼女たちに声をかけようとするが、『今は未だ……時が来たら……』と、守護天使らしき金髪の少女に止められてしまった。



 ぐるぐるとさらに、時が廻る。街を歩く人々の服装も徐々に現代風になっていく……だいぶ時代が現代に近くなっている……もしかしたら、ここがユッキーの時代か?

 やがて、辿り着いた先にいたのは、美しい青髪の真野山君によく似た超がつくほどの美少女だった。古城のテラスで星を眺めていたようだが、くるりとこちらを振り向いて哀しそうに微笑んだ。憂いを秘めた表情すら美しい……もしかしたら、彼女が……。
 フリルやレースをふんだんにあしらった黒のワンピースがよく似合う。少女は大きな瞳を哀しそうに伏せて、清らかな美しい声でポツリポツリと語りはじめた。

「……あなたはいろいろな女性を妻にしました。私にはあなたしかいないのに……もし生まれ変わりというものがあるのなら、その時は私だけと恋人になるようにあなたに呪いをかけましょう。あなたが女アレルギーになる恐ろしい呪いを……どんなにハーレム状態になろうとも、あなたは女性達に指一本触れることすら出来ないのです」

 美しい姫君は泣きながら、オレにそう告げると再び意識が遠のく。



 気がつくと、ジメッとした湿度高めの地面にドサっと倒れ込んでいた。草木の匂いがあたりからして来て、気をつけないと迷子になりそうな深さだ。すると、銀髪の若い男が、RPGの勇者風のコスチュームを着て歩いている。
 男の顔を見ると、オレにそっくりな顔をしている。まさか、あれが例の女好き勇者ユッキー⁈
『あいつが女好きだったせいで、オレは女アレルギーになったのか……』
 ひと言文句を言ってやろうと話しかけるが、涼しげな表情で無視される。

 もしかしてまだここは夢の中?
 オレは誰かの記憶を、夢で見させられているようだった。
 そんなわけで、ここより先のお話はオレの前世女好き勇者ユッキーの冒険の記録である。



 オレの名前はユッキー。
 本名は結崎イクトっていうんだけど、この世界では本名はヒミツだ! 今までごく普通の一般人だったんだけど、異世界転生して伝説の勇者というものになってしまった。

 理由はなんとなく推測できた。
 オレには結婚を誓った幼馴染がいた……彼女の名前はグランディア……。
 とても可愛い女の子だったが、異世界アースプラネットというところに帰ってしまった。
 そして、今オレがいるのはアースプラネットという世界らしい、彼女との結婚の約束が異世界転生を招いたのだろうか?
 しかし世の中はそんなに甘くなく、オレはすぐにはグランディアに再会できなかったため、次第にグランディアのことを忘れて他の女性に目移りするようになっていた。

 ある日森の中で迷っていると村娘の女の子が道案内してくれるという。運のいいことに女の子はすごく美少女である。見るからに清楚系で好みのタイプだ。

 女の子の案内のおかげで無事に村にたどり着いた。
「助けてくれてありがとう! オレの名前はユッキー! 君の名前は?」
「……マリアといいます、修道院でシスターの見習いをしておりますの。本当は男性とこんなに親しくしてはいけませんのに……もう帰ります!」

 そう言っては頬を赤らめながら、修道院の方に走って帰ってしまった。脈ありだな……修道女か、まだ見習いだっていうし、オレがアタックしても神もお許しになるだろう……シスターマリア、君はオレが落とす‼

 オレは村でしばらく滞在しつつ、シスターマリアとの接触をナチュラルに計ることにした。教会に毎日お祈りに向かい、清い心をアピール! シスターマリアに森で見つけたキレイな花を、プレゼントする。好感度を上げたところで、マリアに本格的にアタックを始めた。

「ユッキーさん……毎日お祈りにいらして、何をそんなに祈っているの?」
「オレなんかが世界を平和に導く勇者だってことがまだ信じられなくてね。神様に不安がなくなるようにお祈りしているんだ。それとある女性を好きになってしまって神様に懺悔しているんだよ。彼女は神様に仕える身だから……シスターマリア……君のことだよ、愛してる……オレと一緒についてきてほしい、冒険のパートナーとしてでなく人生の伴侶として」

「まあ……」

 シスターマリアは恥ずかしがりながらも、オレと一緒に冒険の旅に出ることを承諾した。
「ユッキーさん……わたし頑張ります。神様に誓って……もし旅の途中何かで離れても、あなたを見つけ出してあなたについて行きます!」
「ありがとうマリア……パートナーになった君だけにオレの本名教えてあげるね……結崎イクトっていうんだ覚えておいてね!」
「イクトさん! 私、一生、生まれ変わってもずっとあなたを愛し続けます!」

 こうしてオレは1人目のパートナーマリアをゲットしたのであった。でもこれは伝説のハーレムの序章に過ぎない。伝説の女好き勇者結崎イクトことユッキーのハーレム伝説の幕開けだ‼

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