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イベントクエスト-spring-
ひな祭り編4:お雛様からのお礼の品
しおりを挟む「はぁ! お腹いっぱいっ。ふわふわ桃のケーキも、桜の花入りゼリーも、あんこたっぷり桜餅も、みんな美味しかった!」
「本当、特にひな祭り本番の3月3日はご馳走が増えて凄かったね」
一年に一度の宴のために、用意された豪華オードブル。ちらし寿司に加えてサンドウィッチや、色とりどりのおかずがたっぷり。さらにスウィーツとして、ひなあられ以外にも桜餅、桜の花入りゼリー、桃のケーキなどが振舞われ雛人形達は大喜び。
楽しかったひな祭りも、3月3日の夜を過ぎてだいぶ落ち着いてきた様子。
新人雛人形のシフォン雛も、みんなと仲良く食事が出来て大満足。気がつけば、ついにシフォン雛が仕舞われる3月4日になろうとしていた。
「ふぁああ……たくさん美味しいものを食べたら、なんだか眠くなってきちゃった……。みんな、私もう活動限界みたい……また来年も遊ぼうね、お休みなさい」
ウトウトとした眠気が、シフォン雛に訪れる。そもそも、雛人形はひな祭りが終了すると同時にすぐに片付けなくてはならないという家訓を持つシフォン雛。今年は、ここまでの活動のようだ。
「あら、シフォン雛ちゃんは、きっちりと3月4日で眠る設定なんですね。お休みなさい……」
「ゆっくり休んでね。お休み」
仲間達も新入りを穏やかに休ませるため、ちょっぴり声のトーンを小さめにする。
安眠できるようにと、五人囃子が子守唄になるようなゆったりとした曲をチョイスして、演奏し始めた。
まるで、デパートの閉店時間のようなサウンドが流れる中、雛人形達がこの数日を振り返る。
「途中で雑魚モンスターの野良ぷるぷるが乱入してきて、びっくりしたけど……無事に済んで良かった!」
「本当、でもあの野良ぷるぷるって、あのあとここのギルドの会員に拾われてペットになったそうよ」
見張り番の猫耳メイドミーコ達が追い払った野良ぷるぷるだが、同情したぷるぷる愛好家がペットとして保護したという。
「えっ? じゃあ来年も……あのぷるぷるが……」
「その頃までは、きちんとペットとして躾をするらしいよ」
「そっか……ぷるぷるもお腹が空いていただけなのかも知れないしね」
このイベントがきっかけで野良ぷるぷるも引き取り手が見つかったし、結果オーライだったのだろう。
「そういえば、シフォン雛ちゃんのお内裏様……ついに決まりませんでしたね」
「自然の流れでイクト内裏になるかと思ったけど、持ち主の気持ちを確認出来ないんじゃ決められないし。しょうがないか……」
「しっ……誰か来ます! あっあれは、まさか……! エリスさんが、雛人形をしまう箱を持ってこちらへやって来る?」
この数日間、同じ特設ステージで過ごした仲間の雛人形たちが、シフォン雛の相手について噂をしていると見慣れた人影が……。
そう、3月4日の00時01分にシフォン雛を箱にしまうと持ち主と約束している神官エリスだ。
「さてと、約束通りシフォンさんの雛人形を早めに片付けないと……」
「むにゃむにゃ……もう、桜餅食べられないよ~」
どうやら、活動限界のシフォン雛はすっかり夢の中。大事に布にくるまれて、ついに箱の中へ……。
「ふぅ! 良かったですわ。シフォンさんとの約束をきっちりと守ることができて。他の雛人形のみんなも、数日後には持ち主さんの部屋に帰れますから安心してくださいね」
『はーい!』
「ふふっ! 空耳かもしれないけれど、お雛様達の声が聞こえた気がしますわ。私の占い師としての腕も少し上がったのかしら?」
* * *
「あれっ? いつの間にか、イベント報酬がボックスに追加されてる。オレ達、最近何のクエストしたっけ。アイラ、分かるか?」
「ゲーム内で、ひな祭りを飾るイベントがあったから、その参加賞だと思うよ。私は、今回自分に似た三人官女を預けたけど……。いろんなお雛様に囲まれて、お兄ちゃんそっくりなお内裏様があったような……」
「ふぅん……もしかしたら、誰かがオレの代わりに飾ってくれたのかも。まぁ報酬がもらえてラッキーだったよ」
その後、勇者イクト達をはじめとする冒険者達のプレゼントボックスに、【イベントクエスト- spring-ひな祭り編】の参加賞が配布された。
「あっ! ひな祭りを飾るクエストの報酬が届いたね。何故か、お雛様達のレベルが上がっているし」
「あれって、イベントクエストだったんだ。うちの雛人形大丈夫だったかな」
「報酬は、デジタルコインとギルドポイント、限定お菓子セット、それに桜色の武器防具レシピだって! さっそく、錬金で頼んじゃおう」
身に覚えのない報酬に首をかしげるものもいたが、特設ステージに預けた『雛人形達からのお礼の品』だと言われている。報酬のひとつである『武器防具錬金レシピ』は、冒険者達のファッションを春色に染め上げたそうだ。
『来年は、もっとたくさん遊ぼうね! 約束だよっ』
可愛らしい雛人形達の声が、スマホ越しに聞こえた気がした。
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