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旅行記5 錬金魔法ショップ開業記
08 待ち受ける二者択一の未来
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魔女ベルベッドが水晶玉に手をかざすと、ティアラの目の前で光が輝き始め、少し先の未来を映し出す。そしてその光のオーラに引き込まれるようにして、ティアラの意識は未来を疑似体験するのであった。
「ここは、一体どこ? この見覚えのある風景はフェルトの王宮」
「きゅーん」
「ポメ、あなたもこの場所にワープしてしまったの?」
ティアラとポメは透明の魂だけの存在になっているようで、王宮内の人々はティアラ達の存在を見ようともしない。
混乱する王宮では王太子マゼランスや次期王妃候補のクロエに対する反発が頂点を達しており、ついに国家解散に向けての動きが本格化していた。
「王太子マゼランスを玉座から、引き摺り下ろせっ。伝説の聖女クロエを魔女裁判にかけろっ」
「おそらくクロエは古い伝説の書物にある黒い魔女に違いないっ。魔女伝説の本場ロンドッシュから識者を呼んで、クロエの本性を暴き出そう!」
「ふんっ識者など呼ばなくても、どうせ悪い魔女に決まっている。まだ少女だからと甘くしていたが、よく考えてみれば相手は人間じゃないんだぞ。十四歳という年齢だって真っ赤な嘘だ!」
一度、魔女裁判への勢いがついたフェルトの民衆を止める術はなく、あわやクロエは断罪の十字架にかけられる。クロエの唯一の味方であるマゼランス王太子は、身柄を拘束されてしまいクロエを助けに行くことが出来なかった。
遠からずマゼランスも処刑になるだろうと誰もが予想していたため、先に魔力の高いクロエを殺すことにしたのだ。
「うぅ……どうしてなの、アタシだってみんなのために魔力を全部捧げたのに。命がけで頑張ったのに、贅沢の一つも言っちゃいけなかったの? 怖いよ、助けて……ママッ!」
ボロボロの布を着せられて黒い髪は無残に切られて、泣き叫ぶクロエは全盛期の面影すらない。
「噂によるとクロエの母親は、魔女の本拠地でも珍しい最後の【悪い魔女】らしいぞ。親子揃って断罪されるとは、これも因果か」
「おお神よ、どうか悪い魔女を滅ぼし我々を救い出してください」
伝説の『黒い聖女』と呼ばれるようになったクロエの魔女裁判は、滞りなく遂行された。やがて誰も彼女が聖女であったことなど、思い返す者などいなくなった。
断罪を終えた処刑場は虚無となり、魂の存在として流れを見守っていたティアラとポメだけがその場に残った。
「これが近い未来にやってくる精霊国家フェルトの姿、想像していたよりもずっと荒れていて残酷だわ。クロエは確かに生意気な娘だったし、私に対しても嫌な子だったけど。聖女として魔力を捧げていたことには変わりないのに。断罪を決めた人達は、本当にこの方法でフェルトに良い未来が待っていると思っているの?」
するとティアラの心の声を聞いていたのか、柔らかな少年の声がティアラに問いかけてきた。
「ティアラはクロエが断罪されるのを見て、可哀想だと思ったんだね。確かにクロエは贅沢が過ぎたかも知れないけど、マゼランス王太子が止めればよかっただけだし。僕もこの断罪はやり過ぎだと思うよ。ねぇ【魔法経営に携わる慈善家のティアラ】ならこの未来を変えられるって言ったら、どうする?」
「どうするって、あなたは一体誰? この声はどこから。まさか、ポメ……?」
声のする先はどう考えても、ティアラの足元の可愛らしい幻獣ポメから発せられているものだった。ティアラはこれから大きなビジネスに携わりながら、慈善家になる未来があると気づく。
そして近い将来ティアラに待ち受けている未来は、フェルトを本当の意味で救い出すか否かの大きな二者択一の選択肢だということも知るのであった。
「ここは、一体どこ? この見覚えのある風景はフェルトの王宮」
「きゅーん」
「ポメ、あなたもこの場所にワープしてしまったの?」
ティアラとポメは透明の魂だけの存在になっているようで、王宮内の人々はティアラ達の存在を見ようともしない。
混乱する王宮では王太子マゼランスや次期王妃候補のクロエに対する反発が頂点を達しており、ついに国家解散に向けての動きが本格化していた。
「王太子マゼランスを玉座から、引き摺り下ろせっ。伝説の聖女クロエを魔女裁判にかけろっ」
「おそらくクロエは古い伝説の書物にある黒い魔女に違いないっ。魔女伝説の本場ロンドッシュから識者を呼んで、クロエの本性を暴き出そう!」
「ふんっ識者など呼ばなくても、どうせ悪い魔女に決まっている。まだ少女だからと甘くしていたが、よく考えてみれば相手は人間じゃないんだぞ。十四歳という年齢だって真っ赤な嘘だ!」
一度、魔女裁判への勢いがついたフェルトの民衆を止める術はなく、あわやクロエは断罪の十字架にかけられる。クロエの唯一の味方であるマゼランス王太子は、身柄を拘束されてしまいクロエを助けに行くことが出来なかった。
遠からずマゼランスも処刑になるだろうと誰もが予想していたため、先に魔力の高いクロエを殺すことにしたのだ。
「うぅ……どうしてなの、アタシだってみんなのために魔力を全部捧げたのに。命がけで頑張ったのに、贅沢の一つも言っちゃいけなかったの? 怖いよ、助けて……ママッ!」
ボロボロの布を着せられて黒い髪は無残に切られて、泣き叫ぶクロエは全盛期の面影すらない。
「噂によるとクロエの母親は、魔女の本拠地でも珍しい最後の【悪い魔女】らしいぞ。親子揃って断罪されるとは、これも因果か」
「おお神よ、どうか悪い魔女を滅ぼし我々を救い出してください」
伝説の『黒い聖女』と呼ばれるようになったクロエの魔女裁判は、滞りなく遂行された。やがて誰も彼女が聖女であったことなど、思い返す者などいなくなった。
断罪を終えた処刑場は虚無となり、魂の存在として流れを見守っていたティアラとポメだけがその場に残った。
「これが近い未来にやってくる精霊国家フェルトの姿、想像していたよりもずっと荒れていて残酷だわ。クロエは確かに生意気な娘だったし、私に対しても嫌な子だったけど。聖女として魔力を捧げていたことには変わりないのに。断罪を決めた人達は、本当にこの方法でフェルトに良い未来が待っていると思っているの?」
するとティアラの心の声を聞いていたのか、柔らかな少年の声がティアラに問いかけてきた。
「ティアラはクロエが断罪されるのを見て、可哀想だと思ったんだね。確かにクロエは贅沢が過ぎたかも知れないけど、マゼランス王太子が止めればよかっただけだし。僕もこの断罪はやり過ぎだと思うよ。ねぇ【魔法経営に携わる慈善家のティアラ】ならこの未来を変えられるって言ったら、どうする?」
「どうするって、あなたは一体誰? この声はどこから。まさか、ポメ……?」
声のする先はどう考えても、ティアラの足元の可愛らしい幻獣ポメから発せられているものだった。ティアラはこれから大きなビジネスに携わりながら、慈善家になる未来があると気づく。
そして近い将来ティアラに待ち受けている未来は、フェルトを本当の意味で救い出すか否かの大きな二者択一の選択肢だということも知るのであった。
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