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旅行記5 錬金魔法ショップ開業記
05 飛空船で魔法都市へ
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「それではしばらくは一棟全て改修工事を行なって、開店に向けての準備期間としましょう。研修先はロンドッシュですので、本場の魔法文化について学ぶことが出来ますよ」
ついに魔法グッズ管理会と加盟店契約を交わしたティアラは、ショップの改装工事期間中に研修を受けることになった。研修場所は、魔法グッズ管理会本部が設置されている伝統的な魔法の本拠地『魔法都市ロンドッシュ』である。
家族や所属ギルドに研修旅行の報告をして、荷造りや飛空船のチケットも手配し準備は万全。自室でボストンバッグや旅行用カートの荷物を眺めて、出立に向けてひと休み。
そこでティアラはふと、結婚してからジルと二人っきりで長期間旅をするのは初めてだと認識して、思わず赤くなった。
(そういえば長期の旅行は、フェルトからハルトリアに移動してきた時以来だわ。ポメが一緒とはいえ久しぶりに、ジルと二人っきり)
「ティアラ、荷物の確認は済んだか? そろそろ、飛空船乗り場に移動するぞ」
「えぇ。分かったわ、今行くから」
結婚後のティアラにとっては、初めての海外旅行だ。一応ジルと籍は入っているものの、結婚式やハネムーン旅行がまだのため思わず緊張してしまう。
* * *
車で飛空船乗り場へ移動し、二時間半ほどの空の旅を楽しむことに。座席で研修用の魔法グッズ店パンフレットを眺めながら、初めての土地に想いを馳せる。
「オススメの軽食はフィッシュアンドチップス、モルトビネガーやタルタルソースでより一層美味しく。田舎地域に行けば、歴史的な魔女の故郷巡りも出来ます」
「魔女ねぇ、いろんな国に魔導師はいるが、昔ながらの魔女は最近見かけないよな」
パンフレットには三角帽子に黒いローブの魔法使いのキャラクター、ほうきを片手に猫を連れて楽しそうにお買い物をしている姿が描かれていた。魔法を志す若者に、気軽なショッピングをして欲しいというコンセプトのようだ。
「ロンドッシュは錬金術や魔法の本場とされていて、魔導書や杖の輸入は世界一なんだとか。フェルトに住んでいた時は、精霊契約に基づいてフェルト流の呪文詠唱を勉強していたけど。まだまだ、覚えることがたくさんあるわね」
「そっか、ティアラはフェルト王宮の生活が長くて、海外は慣れていないんだったな。ハルトリアからロンドッシュは飛空船を使えば近いし、旅費もそれほどしないから勉強を兼ねて行く機会は増えるだろう」
「ふふっ。研修は魔法ショップの基本勉強会、現地のショップ見学、接客ノウハウですって。実際は開業しても錬金や買い付けをしなきゃいけないから、私がお店に顔を出すのは週に一、二回で良いらしいけど。接客なんて初めてだから不安だわ」
売り子として、同じ魔法ギルドに所属するハルトリア出身の黒魔法使いが、働くことは既に決定している。顧客の三分の一くらいはハルトリアからの移住者が想定されているため、故郷に詳しい人が良いとのギルドからの推薦だ。
だが、肝心のティアラは接客経験がないため、今回の研修で鍛えてもらうことになった。
「接客かぁ……以前、兄貴がバーを経営していた時のちょっとだけ手伝ったな。バーテンダーとして」
「えっ……ジルって、そんなアルバイトしたことがあるの?」
夫の意外な職歴に驚く反面、『そういえば、バーテンダーっぽい雰囲気の兄弟よね』と妙に納得する。
「いや、正確にはうちの余っている物件を利用して、兄貴がちょっとお店をやりたいって言って。週末だけ兄貴がバーテンダーとして店に出てたんだけど、ヘルプでオレも働いたんだよ。まぁ兄貴を巡って女の人達が揉めて、店を閉じちゃったけどな」
「そ、そう。バジーリオさんって、ハルトリア随一のイイ男を自称していただけあって、いろいろ大変なのね」
今回の開業にもそれほど抵抗なく乗る気になっていたハルトリア家の人々だが、既にいろいろな事業に挑戦済みのようで、何となくティアラはホッとした。
夫婦で談笑しているうちにあっという間に時間は過ぎ、研修地である『魔法都市ロンドッシュ』に到着するのだった。
ついに魔法グッズ管理会と加盟店契約を交わしたティアラは、ショップの改装工事期間中に研修を受けることになった。研修場所は、魔法グッズ管理会本部が設置されている伝統的な魔法の本拠地『魔法都市ロンドッシュ』である。
家族や所属ギルドに研修旅行の報告をして、荷造りや飛空船のチケットも手配し準備は万全。自室でボストンバッグや旅行用カートの荷物を眺めて、出立に向けてひと休み。
そこでティアラはふと、結婚してからジルと二人っきりで長期間旅をするのは初めてだと認識して、思わず赤くなった。
(そういえば長期の旅行は、フェルトからハルトリアに移動してきた時以来だわ。ポメが一緒とはいえ久しぶりに、ジルと二人っきり)
「ティアラ、荷物の確認は済んだか? そろそろ、飛空船乗り場に移動するぞ」
「えぇ。分かったわ、今行くから」
結婚後のティアラにとっては、初めての海外旅行だ。一応ジルと籍は入っているものの、結婚式やハネムーン旅行がまだのため思わず緊張してしまう。
* * *
車で飛空船乗り場へ移動し、二時間半ほどの空の旅を楽しむことに。座席で研修用の魔法グッズ店パンフレットを眺めながら、初めての土地に想いを馳せる。
「オススメの軽食はフィッシュアンドチップス、モルトビネガーやタルタルソースでより一層美味しく。田舎地域に行けば、歴史的な魔女の故郷巡りも出来ます」
「魔女ねぇ、いろんな国に魔導師はいるが、昔ながらの魔女は最近見かけないよな」
パンフレットには三角帽子に黒いローブの魔法使いのキャラクター、ほうきを片手に猫を連れて楽しそうにお買い物をしている姿が描かれていた。魔法を志す若者に、気軽なショッピングをして欲しいというコンセプトのようだ。
「ロンドッシュは錬金術や魔法の本場とされていて、魔導書や杖の輸入は世界一なんだとか。フェルトに住んでいた時は、精霊契約に基づいてフェルト流の呪文詠唱を勉強していたけど。まだまだ、覚えることがたくさんあるわね」
「そっか、ティアラはフェルト王宮の生活が長くて、海外は慣れていないんだったな。ハルトリアからロンドッシュは飛空船を使えば近いし、旅費もそれほどしないから勉強を兼ねて行く機会は増えるだろう」
「ふふっ。研修は魔法ショップの基本勉強会、現地のショップ見学、接客ノウハウですって。実際は開業しても錬金や買い付けをしなきゃいけないから、私がお店に顔を出すのは週に一、二回で良いらしいけど。接客なんて初めてだから不安だわ」
売り子として、同じ魔法ギルドに所属するハルトリア出身の黒魔法使いが、働くことは既に決定している。顧客の三分の一くらいはハルトリアからの移住者が想定されているため、故郷に詳しい人が良いとのギルドからの推薦だ。
だが、肝心のティアラは接客経験がないため、今回の研修で鍛えてもらうことになった。
「接客かぁ……以前、兄貴がバーを経営していた時のちょっとだけ手伝ったな。バーテンダーとして」
「えっ……ジルって、そんなアルバイトしたことがあるの?」
夫の意外な職歴に驚く反面、『そういえば、バーテンダーっぽい雰囲気の兄弟よね』と妙に納得する。
「いや、正確にはうちの余っている物件を利用して、兄貴がちょっとお店をやりたいって言って。週末だけ兄貴がバーテンダーとして店に出てたんだけど、ヘルプでオレも働いたんだよ。まぁ兄貴を巡って女の人達が揉めて、店を閉じちゃったけどな」
「そ、そう。バジーリオさんって、ハルトリア随一のイイ男を自称していただけあって、いろいろ大変なのね」
今回の開業にもそれほど抵抗なく乗る気になっていたハルトリア家の人々だが、既にいろいろな事業に挑戦済みのようで、何となくティアラはホッとした。
夫婦で談笑しているうちにあっという間に時間は過ぎ、研修地である『魔法都市ロンドッシュ』に到着するのだった。
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