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旅行記4 夫婦初めての共同クエスト
12 星の導きは、まだ続く
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最高品質のレアポーションとは、レベルの高いSランク錬金術師のみが生成できるとされているアイテムだ。魔法ショップでも時折入荷するが、なんせSランク錬金術師の数が少ないため、入荷もまばらである。
「あぁっ! このレアポーションさえあれば、今回の外来種にやられて怪我した人々も皆助かるでしょう。ありがとうティアラさん……早速、治療を開始します」
「私も治療に立ち会っていいですか? 少しでも、お手伝い出来ることがあるなら」
「是非、お願いしますわ。まずは生成したポーションを飲みやすいように、小分けします。レアポーションは濃度がとても高いから、シロップ一杯分くらいで効果があるのよ。今回は吸い飲みに移して、さらに飲みやすくするわ」
回復魔法に頼っていた頃は知らなかった錬金ポーションの使用方法を、術師から細かく教えてもらう。一回の錬金から五人分のポーションが出来上がったようだ。病人が薬を飲む時に使う吸い飲み容器に小分けにして、服用できる状態を作るとすぐさま患者の元へ。
「うぅ……苦しい……!」
一番重症の患者のベッドは、白いカーテンの仕切りで覆われていたが、呻き声はずっと聞こえていた。仕切りのカーテンを開けると、雷魚の魔法に撃たれた重傷患者はティアラより二、三歳年下の少女のようだった。
可哀想なことにおでこに火傷を負っていて、命を助けられたとしても火傷痕が残りそうである。
「錬金術で作ったレアポーションよ、これを飲めば助かるわ。頑張って飲んで!」
「今、この吸い飲み器で……。もう少しの辛抱よ」
自力で飲み物を飲めない患者が使う吸い飲みを、ティアラは患者の口に当てて、少しずつポーションを飲ませていく。
最初はなかなか喉にポーションが通らず、息苦しさが勝っていたが……。少女を心配したのか、ティアラの傍で見守っていたポメがベッドにちょこんと乗って、少女を慰めるように寄り添った。
「……ワンちゃんの毛並み、優しくて柔らかい。もう少し、頑張らないと……」
ごくんっ!
ポメが少女の不安な気持ちを和らげたのか、順調にポーションを飲み干すと、怪我の患部が光に包まれてみるみるうちに良くなっていった。
「成功だわ! あぁ……おでこの火傷痕も殆どなくなって。どうやらティアラさんのポーションには、組織蘇生魔法と同じような効果があるみたいね」
「ん……うん。あれ……私、雷魚にやられて死んじゃったんじゃ」
パチっと目覚めた少女は不思議な感覚のようで、ゆっくりと起き上がってキョロキョロと辺りを見渡した。
「実は、あなたは大きな火傷をしていたんだけど、偶然レアポーションを作れる方がこの湖畔に訪れていて」
「……私、火傷したはずなのに。もう痛くない、火傷痕も消えている。これが錬金のチカラ?」
状況を救護隊が説明し、手鏡で火傷痕が消えたことを確認すると、少女は驚いて嬉し涙を流した。寄り添っていたポメの頭を撫でて、ようやく笑顔が戻る。
「良かったわ、本当に。助かって……」
「あなたがポーションを作ってくれたティアラさん……助けてくれて、ありがとう。ふふっワンちゃんも!」
やがて外で行われていた討伐も無事に終わり、ティアラは救護隊からお礼のエーテルや素材をたくさん貰ってギルドへと帰還した。
* * *
ティアラが最高品質レアポーションで重傷患者を助けたことは、古代湖畔管理事務所からギルドへと通達されていた。
「おめでとうございます、ティアラ・ハルトリアさん。ギルド入会テスト、高得点クリアです! 今回のクエストの功績はギルドポイントとされ、ランクアップの基礎点として加算されます。それから……この案内書をティアラさんにと、魔法グッズ管理会が……」
「魔法グッズ管理会から案内書? そういえば、錬金ってポーション以外にも、装備品なんかも作れるのよね」
「ええ、錬金は多方面のアイテムに適用されますので。ポーション以外にもアクセサリーや装備品の錬金も勉強出来ますよ。けど今日は、これ以上MPを消費しないように、ご自宅で静養されてください」
かなりの好成績でギルド入会テストに合格したティアラだが、初めての錬金でかなり疲労したのも事実。月が高くなる前に、取り敢えず今日は邸宅に帰って休んだ方がいいと、車ですぐ移動することに。
邸宅でお土産待ちの義妹ミリアに、海岸で採取した錬金素材『安らぎの貝殻』をプレゼント。小瓶に詰めた可愛いらしい貝殻は部屋のインテリアとしても最適で、ミリアはとても喜んだ。
その後、夫婦で暮らす離れのリビングで、温かいジャスミンティーを飲んでようやくホッとひと息つく。
「はぁ……慣れない錬金で、ドッと疲れが出ちゃった。けど、怪我した人達を全員助けられたし、良かった」
「ハイランクモンスターが現れた聞いた時はヒヤヒヤしたが、無事にいろいろ切り抜けられたな。それとティアラ、入会テスト合格おめでとう!」
「ジル、今日は本当にありがとう。これから頑張るわっ」
ソファに並んで座っていたジルから合格おめでとうの言葉を貰い、ようやくティアラの中で本日のクエストが達成された気がした。
(これからは錬金術の勉強をもっとして、家にも錬金ポットや釜を設置するでしょ。ポーション以外にも、ジルやミリアちゃんの装備品も錬金で作れるようにして。たくさんやることがあるわ)
ティアラのカバンの中では、帰りがけにギルドから手渡された案内書が開封されるのを待ちわびていた。中身は魔法グッズ管理会から『あなたも魔法ショップを開きませんか?』と、ショップ開設のマニュアルだ。
人生の転機となる案内書にティアラが目を通すのは、この数時間後のこと。
錬金魔法グッズのショップ開設案内がきっかけで、新たな旅に出ることになるのだが。それはまた、次の旅行記で。
――ティアラを誘う星の導きは、まだ続くのである。
「あぁっ! このレアポーションさえあれば、今回の外来種にやられて怪我した人々も皆助かるでしょう。ありがとうティアラさん……早速、治療を開始します」
「私も治療に立ち会っていいですか? 少しでも、お手伝い出来ることがあるなら」
「是非、お願いしますわ。まずは生成したポーションを飲みやすいように、小分けします。レアポーションは濃度がとても高いから、シロップ一杯分くらいで効果があるのよ。今回は吸い飲みに移して、さらに飲みやすくするわ」
回復魔法に頼っていた頃は知らなかった錬金ポーションの使用方法を、術師から細かく教えてもらう。一回の錬金から五人分のポーションが出来上がったようだ。病人が薬を飲む時に使う吸い飲み容器に小分けにして、服用できる状態を作るとすぐさま患者の元へ。
「うぅ……苦しい……!」
一番重症の患者のベッドは、白いカーテンの仕切りで覆われていたが、呻き声はずっと聞こえていた。仕切りのカーテンを開けると、雷魚の魔法に撃たれた重傷患者はティアラより二、三歳年下の少女のようだった。
可哀想なことにおでこに火傷を負っていて、命を助けられたとしても火傷痕が残りそうである。
「錬金術で作ったレアポーションよ、これを飲めば助かるわ。頑張って飲んで!」
「今、この吸い飲み器で……。もう少しの辛抱よ」
自力で飲み物を飲めない患者が使う吸い飲みを、ティアラは患者の口に当てて、少しずつポーションを飲ませていく。
最初はなかなか喉にポーションが通らず、息苦しさが勝っていたが……。少女を心配したのか、ティアラの傍で見守っていたポメがベッドにちょこんと乗って、少女を慰めるように寄り添った。
「……ワンちゃんの毛並み、優しくて柔らかい。もう少し、頑張らないと……」
ごくんっ!
ポメが少女の不安な気持ちを和らげたのか、順調にポーションを飲み干すと、怪我の患部が光に包まれてみるみるうちに良くなっていった。
「成功だわ! あぁ……おでこの火傷痕も殆どなくなって。どうやらティアラさんのポーションには、組織蘇生魔法と同じような効果があるみたいね」
「ん……うん。あれ……私、雷魚にやられて死んじゃったんじゃ」
パチっと目覚めた少女は不思議な感覚のようで、ゆっくりと起き上がってキョロキョロと辺りを見渡した。
「実は、あなたは大きな火傷をしていたんだけど、偶然レアポーションを作れる方がこの湖畔に訪れていて」
「……私、火傷したはずなのに。もう痛くない、火傷痕も消えている。これが錬金のチカラ?」
状況を救護隊が説明し、手鏡で火傷痕が消えたことを確認すると、少女は驚いて嬉し涙を流した。寄り添っていたポメの頭を撫でて、ようやく笑顔が戻る。
「良かったわ、本当に。助かって……」
「あなたがポーションを作ってくれたティアラさん……助けてくれて、ありがとう。ふふっワンちゃんも!」
やがて外で行われていた討伐も無事に終わり、ティアラは救護隊からお礼のエーテルや素材をたくさん貰ってギルドへと帰還した。
* * *
ティアラが最高品質レアポーションで重傷患者を助けたことは、古代湖畔管理事務所からギルドへと通達されていた。
「おめでとうございます、ティアラ・ハルトリアさん。ギルド入会テスト、高得点クリアです! 今回のクエストの功績はギルドポイントとされ、ランクアップの基礎点として加算されます。それから……この案内書をティアラさんにと、魔法グッズ管理会が……」
「魔法グッズ管理会から案内書? そういえば、錬金ってポーション以外にも、装備品なんかも作れるのよね」
「ええ、錬金は多方面のアイテムに適用されますので。ポーション以外にもアクセサリーや装備品の錬金も勉強出来ますよ。けど今日は、これ以上MPを消費しないように、ご自宅で静養されてください」
かなりの好成績でギルド入会テストに合格したティアラだが、初めての錬金でかなり疲労したのも事実。月が高くなる前に、取り敢えず今日は邸宅に帰って休んだ方がいいと、車ですぐ移動することに。
邸宅でお土産待ちの義妹ミリアに、海岸で採取した錬金素材『安らぎの貝殻』をプレゼント。小瓶に詰めた可愛いらしい貝殻は部屋のインテリアとしても最適で、ミリアはとても喜んだ。
その後、夫婦で暮らす離れのリビングで、温かいジャスミンティーを飲んでようやくホッとひと息つく。
「はぁ……慣れない錬金で、ドッと疲れが出ちゃった。けど、怪我した人達を全員助けられたし、良かった」
「ハイランクモンスターが現れた聞いた時はヒヤヒヤしたが、無事にいろいろ切り抜けられたな。それとティアラ、入会テスト合格おめでとう!」
「ジル、今日は本当にありがとう。これから頑張るわっ」
ソファに並んで座っていたジルから合格おめでとうの言葉を貰い、ようやくティアラの中で本日のクエストが達成された気がした。
(これからは錬金術の勉強をもっとして、家にも錬金ポットや釜を設置するでしょ。ポーション以外にも、ジルやミリアちゃんの装備品も錬金で作れるようにして。たくさんやることがあるわ)
ティアラのカバンの中では、帰りがけにギルドから手渡された案内書が開封されるのを待ちわびていた。中身は魔法グッズ管理会から『あなたも魔法ショップを開きませんか?』と、ショップ開設のマニュアルだ。
人生の転機となる案内書にティアラが目を通すのは、この数時間後のこと。
錬金魔法グッズのショップ開設案内がきっかけで、新たな旅に出ることになるのだが。それはまた、次の旅行記で。
――ティアラを誘う星の導きは、まだ続くのである。
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