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正編 第二章
第16話 継母は前世のお母さん
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入学早々、生徒会役員になることが決まったカルミアはその日は少し帰りが遅かった。生徒会の仕事を覚えるためのマニュアルや説明を受けてからの帰宅だったからだ。
父親の再婚が決まるという気まずい雰囲気の中で夕飯を囲むのを嫌がったルクリアは、先に夕飯を済ませてなるべくカルミアと顔を合わせないようにした。自室にバスルームや洗面などが揃っているため、食事以外は自室にこもってしまえば明日の学校には影響ない。
(お父様の再婚を知ったカルミアがどんな反応になるか分からないけど。意外とすんなり受け入れるかも知れないし、凄く情緒がおかしくなるかも知れないし。どちらにせよ、しばらく関わらずにやり過ごしたいものだわ)
ルクリアの嫌な予感は当たり、父の再婚を知ったカルミアの動揺は酷かった。大好きな父に奥さんが出来るからというわけでもなく、モブメイド扱いしていたローザが継母に収まるから……という訳でもない。彼女の気持ちを揺るがすものはただ一つ、【乙女ゲームのシナリオに無い展開だから】だった。
* * *
「お父様、今……なんて仰ったの。冗談でしょ、モブメイドと夫婦になって、尚且つモブメイドが私の継母だなんて。エイプリルフールは一週間前に終わったわよ!」
「いや、エイプリルフールの嘘ではない。お父さんは決めたんだ。ワシは将来を見据えて、いつも健気にお前のことを支えてくれるこのローザを妻にしよう。そして、お前の母親になってもらおうって」
「ウソ、嘘よ。こんな展開あり得ないっ。だって今日から私の乙女ゲームが本格的に始まったのよ。生徒会にもスカウトされて、【生徒会自己啓発セミナー】も受けてきたわ。ふふっ会長が言うには、私は特別なんですって……聖女枠でこれから【美人広報】として活躍するの!」
どうやらカルミアの生徒会での役割は、【広報係】という居てもいなくてもよさそうな気楽な枠だった。
前任も聖女の資格を持つ女子生徒が広報役を担っていたが、実は広報係という役は他の会計や副会長も状況に応じて代理で出来るものである。実際に企業内でも、営業担当者や外回りの人が広報役を兼任してしまうこともあり、それほど重要なポジションではない。
「生徒会で係を貰えて、テンションが高くなっているのはよく分かる。むしろ、会長や副会長になれず広報係あたりのモブ的などうでもいい雑用係から入るのが普通だ。金銭を担う会計係なんか、一生回って来ないだろうしな」
この性格では予算を任される会計係だけは回って来ないだろうと、父親は少し安心していた。重要事項に程遠い広報係なら持ち前の自己顕示欲と承認欲求の強さで、彼女でもこなせるだろう。
だが、カルミアは【生徒会自己啓発セミナー】でよっぽど広報が偉大であると洗脳されているのか、自分が絶対権力者であるかのような風に勘違いしていた。
「馬鹿にしないでっ広報は雑用係じゃないっ。私が聖女でマドンナの広報よっ。お父様は分かっていないのね、広報係がどれほどの権力者か。広報が全ての宣伝内容を任せられている、もはや生徒会長よりも校長よりも美人広報の私が学園の頭脳なの! 学園の支配者なのっ。学園の男はみんな広報の私と付き合いたがって、広報の私を奪い合って揉めて、私の地位を脅かす美女やモテる女は広報の権力で排除する! それが学園の法則よっ」
「いい加減にしなさいっ!」
バシッッッ!
いつも以上に妄想癖を炸裂させたカルミアの頬をビンタしたのは、モブメイドと馬鹿にされても耐えていたローザだった。
「痛い、何よ。もう母親ヅラ? まだ私は貴女が私の母親だなんて認めていないわっ! だいたい、乙女ゲームのシナリオでは主人公に継母が出来るなんて載っていない!」
「いいこと、私は貴女がその辺の馬鹿な女になって欲しくないの。貴女は人生を踏み外し始めている」
「ふん。踏み外す? 乙女ゲームの主人公であるこの私が、これからの人生どう踏み外すのよ。具体的に失敗例を挙げてくれたら、ちょっと考えてやってもいいわ」
初めて見るローザの怒る姿に、怯んだカルミアは少しだけ相手の話を聞くことにした。
「私は貴女のことが嫌いで叱っている訳ではない。ご要望にお応えして例を挙げましょう……【謎の自己啓発セミナー】で広報というだけで大した顔面でもない勘違い女が美人広報という肩書きで図にのり、社内で既婚者相手に運命を信じて不倫をスタート。けれど自己啓発セミナーのストーリーとは違い、相手は運命の赤い糸ではなくシングルマザーに」
「な、何よそれ。あんたの前世の記憶かなんか……? ふんっ。それから先はどんな感じに転落するの?」
カルミアはまるで自分の前世の母親のような経歴の女性のエピソードに、内心ヒヤヒヤしていた。その後、母親は水商売のホストみたいな男にハマった挙句、謎の事故死をした。もし、彼女が【お母さん】の生まれ変わりなのなら、その後の展開もきっちり当たっているはずだ。
「シングルマザーにも関わらずホストクラブに通い詰めて、大した顔面でもないチャラいだけの場末のホストにハマって水商売へ。ホストクラブのツケが払えず、水商売も続かなくなり、やがて可愛い娘【未亜】を遺して事故に見せかけられて恋人と共に殺された。そんな馬鹿な女に、貴女にはなって欲しくない」
可愛い娘の【未亜】遺して死んだのは、間違いなくカルミアの前世のお母さんだった。
「……そう。そうだったんだ。へぇ……こんな身近にあの女が転生していたんだ。だったら、なんで可愛い娘の【未亜】置いて、チャラい男になんか走ったのよっ。私は、私は……お母さんさえいてくれたら、どんなに貧しくても、辛くても頑張れた! そばに居てくれるだけで、良かったのに! 今更、母親ヅラなんかしないでっ!」
「未亜ちゃん……!」
* * *
二階のルクリアの自室にまで聴こえてくる異母妹カルミアの泣き叫ぶ声に、ルクリアはやっぱりカルミアには継母は早かったかと溜息をついた。まさか、カルミアが泣き叫ぶ理由が【ローザが前世のお母さんだったから】とは、その時は想像すらしなかった。
父親の再婚が決まるという気まずい雰囲気の中で夕飯を囲むのを嫌がったルクリアは、先に夕飯を済ませてなるべくカルミアと顔を合わせないようにした。自室にバスルームや洗面などが揃っているため、食事以外は自室にこもってしまえば明日の学校には影響ない。
(お父様の再婚を知ったカルミアがどんな反応になるか分からないけど。意外とすんなり受け入れるかも知れないし、凄く情緒がおかしくなるかも知れないし。どちらにせよ、しばらく関わらずにやり過ごしたいものだわ)
ルクリアの嫌な予感は当たり、父の再婚を知ったカルミアの動揺は酷かった。大好きな父に奥さんが出来るからというわけでもなく、モブメイド扱いしていたローザが継母に収まるから……という訳でもない。彼女の気持ちを揺るがすものはただ一つ、【乙女ゲームのシナリオに無い展開だから】だった。
* * *
「お父様、今……なんて仰ったの。冗談でしょ、モブメイドと夫婦になって、尚且つモブメイドが私の継母だなんて。エイプリルフールは一週間前に終わったわよ!」
「いや、エイプリルフールの嘘ではない。お父さんは決めたんだ。ワシは将来を見据えて、いつも健気にお前のことを支えてくれるこのローザを妻にしよう。そして、お前の母親になってもらおうって」
「ウソ、嘘よ。こんな展開あり得ないっ。だって今日から私の乙女ゲームが本格的に始まったのよ。生徒会にもスカウトされて、【生徒会自己啓発セミナー】も受けてきたわ。ふふっ会長が言うには、私は特別なんですって……聖女枠でこれから【美人広報】として活躍するの!」
どうやらカルミアの生徒会での役割は、【広報係】という居てもいなくてもよさそうな気楽な枠だった。
前任も聖女の資格を持つ女子生徒が広報役を担っていたが、実は広報係という役は他の会計や副会長も状況に応じて代理で出来るものである。実際に企業内でも、営業担当者や外回りの人が広報役を兼任してしまうこともあり、それほど重要なポジションではない。
「生徒会で係を貰えて、テンションが高くなっているのはよく分かる。むしろ、会長や副会長になれず広報係あたりのモブ的などうでもいい雑用係から入るのが普通だ。金銭を担う会計係なんか、一生回って来ないだろうしな」
この性格では予算を任される会計係だけは回って来ないだろうと、父親は少し安心していた。重要事項に程遠い広報係なら持ち前の自己顕示欲と承認欲求の強さで、彼女でもこなせるだろう。
だが、カルミアは【生徒会自己啓発セミナー】でよっぽど広報が偉大であると洗脳されているのか、自分が絶対権力者であるかのような風に勘違いしていた。
「馬鹿にしないでっ広報は雑用係じゃないっ。私が聖女でマドンナの広報よっ。お父様は分かっていないのね、広報係がどれほどの権力者か。広報が全ての宣伝内容を任せられている、もはや生徒会長よりも校長よりも美人広報の私が学園の頭脳なの! 学園の支配者なのっ。学園の男はみんな広報の私と付き合いたがって、広報の私を奪い合って揉めて、私の地位を脅かす美女やモテる女は広報の権力で排除する! それが学園の法則よっ」
「いい加減にしなさいっ!」
バシッッッ!
いつも以上に妄想癖を炸裂させたカルミアの頬をビンタしたのは、モブメイドと馬鹿にされても耐えていたローザだった。
「痛い、何よ。もう母親ヅラ? まだ私は貴女が私の母親だなんて認めていないわっ! だいたい、乙女ゲームのシナリオでは主人公に継母が出来るなんて載っていない!」
「いいこと、私は貴女がその辺の馬鹿な女になって欲しくないの。貴女は人生を踏み外し始めている」
「ふん。踏み外す? 乙女ゲームの主人公であるこの私が、これからの人生どう踏み外すのよ。具体的に失敗例を挙げてくれたら、ちょっと考えてやってもいいわ」
初めて見るローザの怒る姿に、怯んだカルミアは少しだけ相手の話を聞くことにした。
「私は貴女のことが嫌いで叱っている訳ではない。ご要望にお応えして例を挙げましょう……【謎の自己啓発セミナー】で広報というだけで大した顔面でもない勘違い女が美人広報という肩書きで図にのり、社内で既婚者相手に運命を信じて不倫をスタート。けれど自己啓発セミナーのストーリーとは違い、相手は運命の赤い糸ではなくシングルマザーに」
「な、何よそれ。あんたの前世の記憶かなんか……? ふんっ。それから先はどんな感じに転落するの?」
カルミアはまるで自分の前世の母親のような経歴の女性のエピソードに、内心ヒヤヒヤしていた。その後、母親は水商売のホストみたいな男にハマった挙句、謎の事故死をした。もし、彼女が【お母さん】の生まれ変わりなのなら、その後の展開もきっちり当たっているはずだ。
「シングルマザーにも関わらずホストクラブに通い詰めて、大した顔面でもないチャラいだけの場末のホストにハマって水商売へ。ホストクラブのツケが払えず、水商売も続かなくなり、やがて可愛い娘【未亜】を遺して事故に見せかけられて恋人と共に殺された。そんな馬鹿な女に、貴女にはなって欲しくない」
可愛い娘の【未亜】遺して死んだのは、間違いなくカルミアの前世のお母さんだった。
「……そう。そうだったんだ。へぇ……こんな身近にあの女が転生していたんだ。だったら、なんで可愛い娘の【未亜】置いて、チャラい男になんか走ったのよっ。私は、私は……お母さんさえいてくれたら、どんなに貧しくても、辛くても頑張れた! そばに居てくれるだけで、良かったのに! 今更、母親ヅラなんかしないでっ!」
「未亜ちゃん……!」
* * *
二階のルクリアの自室にまで聴こえてくる異母妹カルミアの泣き叫ぶ声に、ルクリアはやっぱりカルミアには継母は早かったかと溜息をついた。まさか、カルミアが泣き叫ぶ理由が【ローザが前世のお母さんだったから】とは、その時は想像すらしなかった。
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