辺境令嬢ですが契約結婚なのに、うっかり溺愛されちゃいました

星里有乃

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 お泊まり会二日目、午前。
 クライン家のキッチンを借りて、ついに始まった地球風ハンバーガー作り。
 二人とも料理用にエプロンを装備、私は自慢のピンク髪を後ろで一つに結び、ミントグリーンのワンピースと小花柄のエプロン。クラインさんは白い爽やかシャツに黒のズボン、シックなネイビーのエプロンです。

「お待たせしましたマリッサさん、ふふっエプロン姿も可愛さが際立って、よくお似合いですよ。ピンク髪も清潔感のある一つ結びで料理モードですね」
「は、はうっ。クラインさんも……そのエプロン姿、カッコイイです……」

(うわっさすがのモテ男! シンプルなファッションでもよく似合ってるし、むしろ脚が長くスタイル抜群なのがよく分かるっ)

 ここで彼の魅力に参ってしまってはお料理になりません。平常心、平常心!

「では、今回のお泊まり会のメインイベントであるハンバーガー作り、始めましょうか。マリッサさん、よろしくお願いします」
「あっはい。クラインさん、よろしくお願いします。えぇと食材は、一通り揃ってるんですね」

 牛ひき肉、小麦粉、パン粉、卵、トマト、アボガド、チーズ、パン生地、ナツメグやケチャップなどの調味料……食材は全部クライン邸の使用人が揃えてくれて、準備万端。
 付け合わせのポテトやオニオンリング、フレッシュコーンやドリンクの類はシェフが隣のキッチンで用意してくれるそうです。

「うわぁアボガド入りのハンバーガーなんて、栄養価満点でオシャレでしょうね。あっ調味料はこんなにたくさん種類があるんだ。すごいっ」
「アボガドは僕の趣味で用意したんですが、オススメですよ。パン生地を円形の型で焼いてハンバーガー用のバンズをつくり、平行してビーフパティを作りましょう」

「えぇとじゃあ私は、ビーフパティを担当すればいいんですよね。あっバンズはもう生地を練ってあるんだ」
「はい。流石にパン生地は時間がかかるんで、先に僕がチャチャっと練っておきました」
「あはは、助かります。では本日はアボガドとトマトのチーズ入りハンバーガーということで、レッツクッキング!」


 贅沢にクライン領で愛されている高級ビーフを百パーセント使用したビーフパティは、繋ぎの卵やパン粉を使いナツメグなど香辛料で味を整えます。形を整えたら、いよいよフライパンで……と思いきや、クラインさんがひとこと。

「せっかく美味しいチェダーチーズがあるんで、ビーフパティと一緒に焼いて蕩けさせたら如何でしょう? 先にビーフパティに軽く火を通して、チェダーチーズを乗せることになりますが。いいですか?」
「あっはい。その方法で、大丈夫です!」

 さらに付け合わせ食材の途中経過も気になるのか、クラインさんが隣のキッチンで使用人達のお仕事ぶりをチェック!

「おや、ポテトがそろそろ揚がりそうだ。ポテト係さん、油を切るための網に移してください。オニオンリングはタワータイプにするんで、大きさごとに、並べておいてくださいね」
「はっ! ジュリアス様」

 まるでこのキッチンを仕切る料理長の如く、的確な指示を出すクラインさん。ここの邸宅の主であることが、ビシバシと伝わってきます。

(私も頑張らないと……)

 油をひいたフライパンにジュワッと音を立てるビーフパティ、両面を軽く焼いたらチェダーチーズをポンっと乗せて……トロッとチーズが蕩けてきたら、ビーフパティ完成!

「おぉっ上手に焼けましたね、マリッサさん。いい子、いい子っ」
「も、もうっ! 私、子供じゃないんですよ」
「あははっ分かっていますよ。こんな素敵なレディと一緒に料理が出来て、嬉しいだけです」

 天然タラシのクラインさんに動揺しつつも、二人で協力して作業を続けていきます。
 焼きあがったバンズを半分に切って、調味料を塗りアボガドなどの野菜とビーフパティを挟んで……付け合わせのポテトやオニオンリングタワーも一緒にお皿に飾ったら完成!

 するとクラインさんがそっと肩を抱いてきて、私の耳元で使用人達に聞こえないように、そっと甘い声で。

「夫婦初めての共同作業、みたいですね……」
「かっからかわないで、くださいよぉ~」

 クラインさんが悪戯に囁くから、思わず頬がほてってしまったけど、私の顔が赤いのはお料理中の熱気にあてられたということにしておきました。

 ――実のところ、思わずクラインさんから伝わる熱にあてられたのは……内緒です。
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