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私以外の家族全員が玉の輿結婚計画に盛り上がった為、私は異様なプレッシャーを背負いながらクライン邸へと遊びに行くことになってしまいました。
「ついに決戦の日になったわね、マリッサ。私は今日という日のために、お前を立派な令嬢に育て上げたつもりよ。水色の清楚系ワンピースもよく似合ってるし、ヘアもメイクもバッチリね」
「ふむ、旅立ちの前に。この男受け抜群の白い帽子とクラシカルなショルダーバッグを装備して行きなさい」
娘のドレスアップした姿を確認して心底満足そうなお母様。そして魔王討伐を目指す勇者を旅立たせるかの如く、更なる装備品もとい、お洒落アイテムをプレゼントしてくれるお父様。
「マリッサ姉ちゃん、頑張ってくれよ。姉ちゃんが良いところに嫁いでくれれば、うちが経営する農園にも信用が戻ってオレの大学進学費用も楽に調達出来るんだって。我が家の命運は、姉ちゃんにかかってるんだからさっ」
弟のミカエルに至っては自分の進学先やら奨学金やらのことで、頭が一杯の様子。あの子、そんなことも気にしていたのね。
「お嬢様、ファイトッ! 今時のご令嬢は、恥じらいながらも攻めていくのが主流です。良いご報告をお待ちしておりますわ」
「マリッサお嬢様バンザイ! 我がアンジュール領に栄光あれ!」
お屋敷の前で使用人達が車に乗り込む私に掛け声をかけています。まるで戦地にでも行くようなノリですが、女にとっては今日がまさに勝負の日なのかしら?
とほほ、けど仕方がないですよね。まぁ自転車操業生活から脱却したい気持ちは、痛いほど良くわかります。
みんなの期待を重々しく感じながらもついに食事会の当日を迎え、私は一週間のお泊まり旅行をすることになったのです。
* * *
その日の午後三時ごろ、まだ日が登っているうちに辺境地からクライン邸へと到着しました。初めての訪問ですが、我が家の敷地の三倍くらいはありそうでぶっちぎりの豪邸です。出迎えはジュリアス・クライン公爵自らがしてくださって、スマートなエスコートはお姫様になったよう。
「遠方からよくお越しくださいました、マリッサさん。いやぁ……改めて見ると、本当に可愛らしいお方だ。ふふっ使用人達もあなたの登場にざわついていますよ。僕に好きな女性が出来たんじゃないかって」
「えぇっ? やっぱり私達って恋人設定になっているのでしょうか。実はうちの家族も、ゆくゆくは恋仲になると思い込んでいるみたいなんです」
「……僕達、親しくなるキッカケは地球時代のお話がしたいだけだったはずですが。やはり若い男と女、しかもあなたは誰もが見惚れるストロベリーブロンドの乙女。期待が高まるのは、当然の展開なのでしょう。今日は長旅でお疲れでしょうから、手料理は明日にしてゆっくり休んでください」
我が家は辺境扱いとはいえ、クライン家の領土と隣接しているのですが。いやはや数時間の車の移動は身体に応えていました。クラインさんも私が疲労しているのを察しているのか、手作りハンバーガー計画は明日にしてくれるとか。
(いやぁ優しい人ですよね、クラインさんって。モテるわけだわ、まったく!)
恋愛経験に乏しい世間知らずな私は、この一週間に及ぶお泊まりデートがお屋敷の方から見てどのような意味を持つのか。まったく見当がつかないのでした。
「ついに決戦の日になったわね、マリッサ。私は今日という日のために、お前を立派な令嬢に育て上げたつもりよ。水色の清楚系ワンピースもよく似合ってるし、ヘアもメイクもバッチリね」
「ふむ、旅立ちの前に。この男受け抜群の白い帽子とクラシカルなショルダーバッグを装備して行きなさい」
娘のドレスアップした姿を確認して心底満足そうなお母様。そして魔王討伐を目指す勇者を旅立たせるかの如く、更なる装備品もとい、お洒落アイテムをプレゼントしてくれるお父様。
「マリッサ姉ちゃん、頑張ってくれよ。姉ちゃんが良いところに嫁いでくれれば、うちが経営する農園にも信用が戻ってオレの大学進学費用も楽に調達出来るんだって。我が家の命運は、姉ちゃんにかかってるんだからさっ」
弟のミカエルに至っては自分の進学先やら奨学金やらのことで、頭が一杯の様子。あの子、そんなことも気にしていたのね。
「お嬢様、ファイトッ! 今時のご令嬢は、恥じらいながらも攻めていくのが主流です。良いご報告をお待ちしておりますわ」
「マリッサお嬢様バンザイ! 我がアンジュール領に栄光あれ!」
お屋敷の前で使用人達が車に乗り込む私に掛け声をかけています。まるで戦地にでも行くようなノリですが、女にとっては今日がまさに勝負の日なのかしら?
とほほ、けど仕方がないですよね。まぁ自転車操業生活から脱却したい気持ちは、痛いほど良くわかります。
みんなの期待を重々しく感じながらもついに食事会の当日を迎え、私は一週間のお泊まり旅行をすることになったのです。
* * *
その日の午後三時ごろ、まだ日が登っているうちに辺境地からクライン邸へと到着しました。初めての訪問ですが、我が家の敷地の三倍くらいはありそうでぶっちぎりの豪邸です。出迎えはジュリアス・クライン公爵自らがしてくださって、スマートなエスコートはお姫様になったよう。
「遠方からよくお越しくださいました、マリッサさん。いやぁ……改めて見ると、本当に可愛らしいお方だ。ふふっ使用人達もあなたの登場にざわついていますよ。僕に好きな女性が出来たんじゃないかって」
「えぇっ? やっぱり私達って恋人設定になっているのでしょうか。実はうちの家族も、ゆくゆくは恋仲になると思い込んでいるみたいなんです」
「……僕達、親しくなるキッカケは地球時代のお話がしたいだけだったはずですが。やはり若い男と女、しかもあなたは誰もが見惚れるストロベリーブロンドの乙女。期待が高まるのは、当然の展開なのでしょう。今日は長旅でお疲れでしょうから、手料理は明日にしてゆっくり休んでください」
我が家は辺境扱いとはいえ、クライン家の領土と隣接しているのですが。いやはや数時間の車の移動は身体に応えていました。クラインさんも私が疲労しているのを察しているのか、手作りハンバーガー計画は明日にしてくれるとか。
(いやぁ優しい人ですよね、クラインさんって。モテるわけだわ、まったく!)
恋愛経験に乏しい世間知らずな私は、この一週間に及ぶお泊まりデートがお屋敷の方から見てどのような意味を持つのか。まったく見当がつかないのでした。
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