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逆行転生編1
07
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金色の髪を風に靡かせて微笑むレイチェルは、まるで御伽噺の女神が地上に降臨したかのような麗しいオーラの持ち主だった。イザベルからすると、直径先祖の双子の姉ということになるが、そのカリスマ性に圧倒されてしまう。
「どうやら間に合ったようね、ララベル……。あらっあなた……もしかして……」
「あっあの……その。私、実は……」
まじまじとレイチェルは、双子の妹ララベルであるはずの人物の顔を見て首を傾げた……。が、何かに気付いたように、ニコッと笑ってララベルの頭を撫でた。
「ふふっどうやら、訳ありのようね。けど、事情は落ち着いてから詳しく聴くわ。いいこと、祈りは双子しか使えない特別な秘術。貴女は私の言葉を復唱すればいいだけだから、安心して」
「……分かりました。レイチェル……さん」
今目の前にいるララベルの肉体に、子孫の魂が入っていることすら、全てお見通しなのか? だとすると、巫女に備わっている特別な霊力の賜物か、はたまた双子特有のテレパシーのような何かだろうか。イザベルがレイチェルについて考察する余裕もなく、敵の再攻撃を思わせる不穏な音が響き渡る。
『キュエエエエエエエッ!』
『キシャアアアアアアッ』
頭上には無数のモンスターが羽ばたきの音と共に結界が解けるまで待機していた。バサバサと荒い羽ばたき、鋭いクチバシでガラスのような結界に亀裂を作ろうと躍起だ。
ガツガツガツ! バリバリ、バリンッ!
ひび割れた結界は次第に弱っていき、このまま放置していては上空から一気に攻め込まれてしまいそうだ。
「はっ……いけない。守りの結界よ、天の光を輝かせたまえっ」
ヒィイイインッ! シュウウウウッ!
魔法陣が再び天に現れて、クチバシで突いていたモンスターの攻撃を弾く。
『ギャウッ?』
イザベルが咄嗟に結界魔法を補強する呪文を唱えて難を逃れるが、この作業を何度も繰り返しては魔法力が持たない。
「ララベル、もうこれ以上の魔法力消耗は危険だ」
「ごめんなさい、カエラート男爵。けど、今攻め込まれたらと思うと、無理も承知なの」
「大丈夫、ララベル? 清めの魔法水よ。飲んで……」
苦しそうに心臓を抑えるララベルを案じ、カエラート男爵がこれ以上の魔力消耗を中断させる。レイチェルから強力な回復魔法水を分けてもらい、胸の痛みを和らげていく。
「くっ……もう少し、休めると考えていたが。ヤツら、焦り出して結界を壊し始めたな。再攻撃の応戦はオレと御庭番達で何とかして、双子巫女のチカラで祈りを完成させなくてはいけない。見ての通りだがこれまでの戦いで、ララベルはかなり消耗しているんだが……」
「任せてくださいな、カエラート男爵。先ほどまで泉で禊をしておりましたので、妹の消耗している魔力を補うことも出来ましょう」
「よし……祈りの儀式を成功させるために、オレ達も全力でサポートするぞ」
カエラート男爵がレイチェルにララベルが本調子ではないことを伝えると、双子とはいえ姉という立場特有の頼もしい答えが返ってきた。
兎も角、レイチェルは双子の妹を先導しながら、黒い精霊の群れに立ち向かう。道を確実に開けるための聖水を撒きながら歩き、その堂々たる姿は人間というよりも既に神や精霊の域に近いものがあった。
(当時の菩提樹精霊の跡継ぎとなる方が、見初めた女性なだけはあるわ……。自分とも血の繋がりがあるなんて、なんだか不思議だけど)
双子の姉妹は結界のギリギリである門の入り口付近で立ち止まり、向かい合わせに立って儀式の準備を開始。
「天の神と平和の精霊よ、我らの心からの祈りを聞き届け、悪しき魂を鎮めたまえ」
「……鎮めたまえ」
「星の導きは太陽と月のみにならず、遠い遠い天体をも神は知りうる。そしてそれは、土星(サターン)の輪をも司り、すべての因果をも掌握するのだ」
「……掌握するのだ」
お互いに目を閉じて両手を祈りのために組み、姉の詠唱の続き妹がそれを擬える。聖なる祈りをかき消すべく、悪魔と形容した方が分かりやすいほど暗い瘴気を纏った黒い精霊達が次々とヤジを飛ばす。
『消シテヤル、消シテヤル、消シテヤル、消シテヤル!』
『オマエラ、一族ノ存在自体、邪魔。ゼンブ、ゼンブ、ゼンブ、ゼンブ……』
『未来ヲ我ラハ知ッテイル。スベテハ聖女ミーアス様ノ、栄光ノ為……!』
未来の人物であるはずの【聖女ミーアス】の名に、思わずイザベルの胸がギクリとしてしまう。
「ダメよ、ララベル。祈りの復唱を辞めては……。雑音に驚いてはいけない。まだ間に合うわ……もう一度」
「はっはい!」
危うく聖なる祈りの儀式そのものが中断しそうになるが、主な祈りの文言を唱えるレイチェルが狼狽始めた妹に注意を促す。辛うじて結界は破られずに、魔力を維持しつつ仕切り直すことになった。イザベルは胸の奥に生まれた動揺を言葉に出せぬまま、しかしながらこの不協和音のような襲撃の理由を見出した気がした。
(聖女ミーアスですって……! まさか、この黒い精霊達の襲撃は、未来からの刺客?)
「どうやら間に合ったようね、ララベル……。あらっあなた……もしかして……」
「あっあの……その。私、実は……」
まじまじとレイチェルは、双子の妹ララベルであるはずの人物の顔を見て首を傾げた……。が、何かに気付いたように、ニコッと笑ってララベルの頭を撫でた。
「ふふっどうやら、訳ありのようね。けど、事情は落ち着いてから詳しく聴くわ。いいこと、祈りは双子しか使えない特別な秘術。貴女は私の言葉を復唱すればいいだけだから、安心して」
「……分かりました。レイチェル……さん」
今目の前にいるララベルの肉体に、子孫の魂が入っていることすら、全てお見通しなのか? だとすると、巫女に備わっている特別な霊力の賜物か、はたまた双子特有のテレパシーのような何かだろうか。イザベルがレイチェルについて考察する余裕もなく、敵の再攻撃を思わせる不穏な音が響き渡る。
『キュエエエエエエエッ!』
『キシャアアアアアアッ』
頭上には無数のモンスターが羽ばたきの音と共に結界が解けるまで待機していた。バサバサと荒い羽ばたき、鋭いクチバシでガラスのような結界に亀裂を作ろうと躍起だ。
ガツガツガツ! バリバリ、バリンッ!
ひび割れた結界は次第に弱っていき、このまま放置していては上空から一気に攻め込まれてしまいそうだ。
「はっ……いけない。守りの結界よ、天の光を輝かせたまえっ」
ヒィイイインッ! シュウウウウッ!
魔法陣が再び天に現れて、クチバシで突いていたモンスターの攻撃を弾く。
『ギャウッ?』
イザベルが咄嗟に結界魔法を補強する呪文を唱えて難を逃れるが、この作業を何度も繰り返しては魔法力が持たない。
「ララベル、もうこれ以上の魔法力消耗は危険だ」
「ごめんなさい、カエラート男爵。けど、今攻め込まれたらと思うと、無理も承知なの」
「大丈夫、ララベル? 清めの魔法水よ。飲んで……」
苦しそうに心臓を抑えるララベルを案じ、カエラート男爵がこれ以上の魔力消耗を中断させる。レイチェルから強力な回復魔法水を分けてもらい、胸の痛みを和らげていく。
「くっ……もう少し、休めると考えていたが。ヤツら、焦り出して結界を壊し始めたな。再攻撃の応戦はオレと御庭番達で何とかして、双子巫女のチカラで祈りを完成させなくてはいけない。見ての通りだがこれまでの戦いで、ララベルはかなり消耗しているんだが……」
「任せてくださいな、カエラート男爵。先ほどまで泉で禊をしておりましたので、妹の消耗している魔力を補うことも出来ましょう」
「よし……祈りの儀式を成功させるために、オレ達も全力でサポートするぞ」
カエラート男爵がレイチェルにララベルが本調子ではないことを伝えると、双子とはいえ姉という立場特有の頼もしい答えが返ってきた。
兎も角、レイチェルは双子の妹を先導しながら、黒い精霊の群れに立ち向かう。道を確実に開けるための聖水を撒きながら歩き、その堂々たる姿は人間というよりも既に神や精霊の域に近いものがあった。
(当時の菩提樹精霊の跡継ぎとなる方が、見初めた女性なだけはあるわ……。自分とも血の繋がりがあるなんて、なんだか不思議だけど)
双子の姉妹は結界のギリギリである門の入り口付近で立ち止まり、向かい合わせに立って儀式の準備を開始。
「天の神と平和の精霊よ、我らの心からの祈りを聞き届け、悪しき魂を鎮めたまえ」
「……鎮めたまえ」
「星の導きは太陽と月のみにならず、遠い遠い天体をも神は知りうる。そしてそれは、土星(サターン)の輪をも司り、すべての因果をも掌握するのだ」
「……掌握するのだ」
お互いに目を閉じて両手を祈りのために組み、姉の詠唱の続き妹がそれを擬える。聖なる祈りをかき消すべく、悪魔と形容した方が分かりやすいほど暗い瘴気を纏った黒い精霊達が次々とヤジを飛ばす。
『消シテヤル、消シテヤル、消シテヤル、消シテヤル!』
『オマエラ、一族ノ存在自体、邪魔。ゼンブ、ゼンブ、ゼンブ、ゼンブ……』
『未来ヲ我ラハ知ッテイル。スベテハ聖女ミーアス様ノ、栄光ノ為……!』
未来の人物であるはずの【聖女ミーアス】の名に、思わずイザベルの胸がギクリとしてしまう。
「ダメよ、ララベル。祈りの復唱を辞めては……。雑音に驚いてはいけない。まだ間に合うわ……もう一度」
「はっはい!」
危うく聖なる祈りの儀式そのものが中断しそうになるが、主な祈りの文言を唱えるレイチェルが狼狽始めた妹に注意を促す。辛うじて結界は破られずに、魔力を維持しつつ仕切り直すことになった。イザベルは胸の奥に生まれた動揺を言葉に出せぬまま、しかしながらこの不協和音のような襲撃の理由を見出した気がした。
(聖女ミーアスですって……! まさか、この黒い精霊達の襲撃は、未来からの刺客?)
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