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出会い

木瓜 Piacere

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いつまでも夢を見たかった
いつまでも夢でいて欲しかった

1度目を開けば夢は消えてしまう。物心ついた時にはわかっていた。いや、わかる事を強要させられた。子供ゆえの儚い反抗心が芽生えるこの頃、母親の言う事に「なんで?なんで?」といつも道理質問攻めにした。いつもは戸惑った顔を見せる母は、この日に限って私を振り払った。母は私を横目で睨み、吐き捨てた。「いつまでも夢にしがみつく様なお馬鹿なお子様父に似た子供は嫌いなのよ」と。私の記憶が正しければ、彼女はその後知らない男と一緒に出ていき、そのまま1晩帰ってこなかったと思う。

私が無機質なのも、中途半端に現実的で中途半端に夢見がちなのも全てあの女に原因がある。彼女にとって当時の私は父を連想させる様な騙されやすく、真っ直ぐで馬鹿な少女だった。でも、今は___

「大丈夫?」
突然声が聞こえた。過去の記憶に入り浸っていたお陰で私は初音に話しかけられていることに気づかなかった。
「ごめん、少しぼーっとしてた」
目頭を擦りながら呟くと後ろから体当りされた。
「もう、ほんっとあんた馬鹿だな。もうちょっと周りに気を配れよ」
体当りしてきた少女が早速毒を吐いてくる。
...あのね、周りに気を配るべきなのは私達なんだよ
校門のド真ん中で大騒ぎする様な奴を人が快く思う事なんて無いに等しい。私は大騒ぎする馬鹿とオロオロして使い物にならない眼鏡ちゃんを置いて足早に去った。

何時からだろうか
私があの2人のお守りを頼まれたのは
何がどうなっているのかは知らないけれど、ある日を堺に初音がくっつく様になったのが始まりだ。正直私は2人が大嫌いだ。指示待ち族の初音も、無神経で他人の迷惑を顧みない朱音も。
でもそれ以上に

私自身が大嫌いだ。
絶交発言を何回も繰り返し、それなのにまだ依存している私が。
何故私は何時までもそれを引きずるのだろうか。私は何故意味も無く考えるのだろう。

まって
何故、私は何回も言ってるんだ?それに、何時私はお守りを頼まれた?何故記憶がぼやけるんだ?
おかしい。同じ様な日が何回も続くのは普通だ。ただ、昨日起きた事と今日起きている事が一致している。一昨日も、その前も。一体どういう事なの?

ごちゃごちゃになった頭を1回リセットする。こんな所で馬鹿な妄想は止めよう。そんな事したってどうにもならない。どうせみんな私の気でも狂ったのだと思うんだから。
頭の中でそうこうしてるうちに、教室の前にいた。私はドアをはねつけて教室に入ると、フラフラしながら自分の席まで行った。いつも道理「彼奴の一日の睡眠時間どんくらいなのさ?」と呆れ顔で言われるのはもう慣れた。正直「あんたらの五月蝿さはもう慣れたからあんたらも私の無気力さに慣れてよ」とでも言いたいが睡眠時間を削りたくない。取り敢えず組んだ腕を枕にし、うつ伏せになった。
ウトウトしながら、放課後はどこに行こうか、と考えていた。昨日と同じ場所じゃ先が知れる。

HRが終わった後、私は早足で階段を駆け上がり、そのまま屋上庭園に直行した。ここは私のお気に入りスポットだ。何より、人が少ない。今いるのは向かいにいる男子生徒1人と私だけ。私は近くにあるベンチに座り、一冊の本を取り出した。

「花言葉全集」

お昼休み私が図書館に寄った時、ふと手に取った本だ。パラパラとページをめくる。とあるページが目に止まった。
「ピアチェーレ」
意味は退屈だ。今の私によく似てる。その時、肩を叩かれた
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