転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり

椿紅颯

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第十一章

第80話『最終試験終了』

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 全員の視線はその光景に集約した。

 予想だにしていない光景、リーダーであり指揮官の戦闘不能。
 しかし状況は進み続ける。
 こんな状況だからこそ、美咲はあの打ち合わせを思い出した。

「スリー・ツー・ツー!」

 美咲の声を大にした号令により、みんなは一瞬にして我に返る。
 そうだ、今は戦いの最中。
 立ち止まってはいけない。
 考えるのを辞めてしまうのはいけない。
 目の前に敵は居る、なら、やることはただ一つ。

 ――勝利への前進。

「おらああああああああああ」

 一樹は足を止めた兄貴に飛び掛かる。

 激しい撃ち合いが再び始まる。
 だけど、さっきとは状況も陣形が違う。
 一樹に続いて結月も後を追い、追撃。
 兄貴は一方的な攻撃から、防戦一方に切り替わる。

「彩夏、援護頼むよ」
「お任せあれ!」
「叶、行くよ」
「勝ちに、ね」
「ああ」

 スリーマンセルの一つである桐吾・叶・彩夏は、兄貴がしてきたような突撃の役割。
 戦況をかき回す攻めの一手。
 相手が7人居ても関係ない、この3人ならそれに臆することはない。

「おりゃおりゃおりゃー!」
「はぁあああっ」
「【インサイト】」

 桐吾の攻撃が一撃防がれた後、次は別の相手へ攻撃をする。
 それを繰り返し行うことによって、相手は考えることも思い通り動くこともできない。

 彩夏はもう戦術もあったもんじゃない。
 魔法スキルをぶっ放し、ランダム方向に飛ばすことによって陣形を崩す。
 だけどただ粗雑にスキルを放っているわけじゃない。
 しっかりと桐吾や叶に当たらないように連携を意識している。

 叶はヘイト管理スキルにより、相手のプリーストを拘束。
 これにより相手パーティは回復をすることができない。

 まさに攻めの布陣。

「負けるもんかぁ!」

 相手のパーティもただ攻められ続けるわけはない。
 メイジの魔法がこちらの主軸となる美咲へと飛んできた。

「させないよ」

 一華が美咲の前に立ち、大盾で攻撃を防ぐ。
 こちらは守りの一手。
 かき回せているといえど、やはり反撃は必ずある。
 その時のためのツーマンセル。

 そして、守りながらも攻めている。
 なぜなら、一華は相手のナイトへ、ヘイト管理スキルを発動させているから。
 当然、そんなことをすれば相手も同じ手を打ってくる。
 どちらも睨み合いの状況が続き、どちらもそれ以上のことができなくなってしまう。
 でもそうじゃない。それだけじゃない。
 相手の盾は動きを重視した中盾。
 対する一華は大盾。
 身動きが取れず、視線を外すことができないのなら、いっそのこと動かず盾を構えていればいい。
 その後ろに、一番狙われる美咲が姿を隠す。

 攻めと守り、一身一体の布陣。

「キミたち、随分とやってくれるじゃないか」
「――っ」

 光崎さんが落胆する声の意味するところ、それは目線の先で起きた。

 ――兄貴の戦闘不能。

 残り、七対七。

「一樹、結月は反転して加勢!」
「おうよ!」
「いっくよー!」

 数だけでは同じ。
 だけど、こちらと相手ではまるで戦況が違う。
 相手が失ったのは、強力な攻めの一手。対するこちらは後方支援の指揮官。
 こちらはもう1人の頼れる指揮官がいるに対し、あちらはもう1人の強力な人が残っていない。
 しかも、光崎さんは既に幻覚スキルを使用してしまっている。
 それに、相手のプリーストとナイトが拘束されている今、実質的に七対五。

 つまり、後は全力をもって攻めるのみ。

「は、ははっ。やってくれたね志信くん。これは絶対に君の思惑だろう……今答えが聞けないのは残念だよ。ああ残念だよ。でもね、ボクたちだって最後まで足掻いて勝利に手を伸ばしてみせるよ」

 言葉通り、光崎さん含み動ける人たちは指揮がなくても臨機応変に立ち回り反撃を繰り出してくる。
 上級生という意地、報酬の獲得、もはやそこにはそんなものはなく、ただ貪欲にし勝利を欲する姿があった。

 しかし、それは時間の問題。
 1人、1人、また1人。
 次々に相手パーティは倒されていく。

「ははっ。ボクたちが勝つと思っていたんだ……けど……ね」

 最後、光崎さんが戦闘不能。

「試合終了!」

 明泰学園長の宣言の元、試合は終了となった。
 そして同じくして、戦闘不能となった僕含む人たちはすぐさま担架で医務室へ運ばれる。

「ちょいちょい待ちなさい」

 医務室へ駆け出そうとするみんなは明泰学園長に呼び止められた。

「仲間を心配する気持ちはわかるが、君たちは今学事祭において優勝を果たした。つまりは最優秀賞を獲得したという意味でもある。てことは、疲れているとは思うけどこれから君たちにはやってもらわなければならないことがある」

 みんなはその話の内容がいまいちわからず、疑問を表情に出す。

「勝者が居るということは、同じくして敗者も居る。この意味はわかるね? だから、みんなの前に立って、その祝福を受ける義務があるということだ」
「学園長。でもそれを少しだけ先に延ばしてもらうことはできないのですか……?」
「月森君が言いたいことはわかる。が、鉄は熱いうちに打てともあるし、何より時間の猶予ってものもある。なんせ、ここは我々の学園ではないからの」
「……わかりました」
「すまないね」

 無理もない。
 いくら学事祭とはいえ、こんなに大きい施設へ来たのだから、これ以上の期間延長などできるはずがない。
 どのように段どられていたかはわからないけれど、長居はできないということだ。

 荷物等は後から送るとのことで、この後すぐ、みんなは魔車に乗り、超特急で学園へ帰っていくことになった。
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