転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり

椿紅颯

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第六章

第45話『第三試験の追加情報……?』

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 昼休みも後半に差し掛かり、廊下が何やら騒がしい。

「どうしたんだろう?」

 この場にいる全員の疑問を代弁してくれたのは美咲。
 反応するのは彩夏。

「購買に新しいメニューが追加されたとか?」
「確かにそれは魅力的だけど、そんなことであんなに人が行き交うかな?」
「うーん……季節限定とか新商品には、やっぱり飛びつくんじゃないかな」
「その気持ちはわからなくもないけれど」

 結月、一華、叶も「わかるわかる」と便乗している。

 そんな談笑を繰り広げていると、とある男子の会話が耳に入る。

「さっき見てきたんだけど、掲示板のところに学事祭の告知があったんだよ」
「えー、早いって。ってことはもしかして……」
「ああそうだ。次の試験についてだった」
「まじかぁ……」

 声に身振り手振りが追加されているので、その落胆具合は伝わってくる。
 ついでに、2人して肩を落しため息をついているのだから相当なものだ。

 それにしても、気になることを聞けた。

「次の試験ってたしか……」
「遠征試験だったよね」
「だよね」

 桐吾の問いに応える。

「一番気になるよねぇ。私、遠足とかは行ったことあるけど、それ以外での外出ってほどんどしないからちょっとワクワクしてきた」
「もう彩夏ったら。試験なんだよ? お遊びで行くんじゃないんだから、そこは緊張感をもって――」
「はいはーい、了解いたしましたっ」

 いつものようなやりとりをするところに、まさかの加勢が。

「実は、私も彩夏ちゃんと同じで……ちょっと楽しみだったんだ」
「一華も? 実は私もなんだ。あんまりこの都市から出たことないんだよね」
「俺も俺も」
「え、えぇ……」

 一華、叶、一樹も乗ってくるものだから、美咲は掛ける言葉を失ってしまったようだ。

 たしかにみんなの言っていることは理解できる。
 一つ一つの都市は非常に大きい。
 その中でほとんど全てが満足いくほどにいろいろなものも充実している。
 手続等も、わざわざ中央都市に向かわなくても、各都市に設けられている市役所で事足りてしまう。
 僕は転校という名目で都市を横断しているけれど、そうでなければ都市外に出ないという人は少なくなさそうだ。

「せっかくだし、みんなで見に行こーっ」

 意気揚々に右拳を突き上げるのは結月。
 話題に賑わうみんなと同じく、僕たちも席を立った。

 

 僕たちが掲示板前まで辿り着くと、お祭りの熱は冷め始めていた。

「あんまり集まってないんだね」

 美咲がみんなの心境を代弁するかたちになった。
 その答えは目の前に。

 ――――――――――
 第三試験の内容
 ・遠征試験

 中央首都サーコカトミリアにて試験の実施

 内容は追って説明するから、その時を待たれよッ!

 ※内容伝達より前にパーティを申請をしていない場合、今試験並びに最終試験への参加は許可されない。
 よって、パーティを組めない人たちには別途用意される試験に臨むべし。
 尚、個人試験についてはパーティ得点の半分の配分となる。

 気たるチャンスを掴むのは自分次第。
 全校生徒の諸君、奮って参加してくれーッ!
 ――――――――――

「あっははぁ……」

 美咲は困り顔で頬を指でなぞった。
 今回ばかりは全員が全員、ほとんど同じ反応を見せている。

 あの一件から、光崎生徒会長への印象が変わったと思っていたけれど、そんなことはなさそうだ。
 このらしいとしか言えない文言を見ると、初見で抱いた印象に戻される。

 そして、この内容からみんなの反応が急降下した理由をわかった気がした。
 遠征という名の心躍る文言の後、残酷にも告げられる最終勧告――パーティの申請期限。
 今の今まで、期限というものがなかったから『まだ大丈夫だろう』と構えていた人たちにとって、終止符を打たれたといっても過言ではない。
 最終手段であった個人試験も、内容も出来具合もわからないけれど、獲得できる点数が半分というのはかなり絶望的だ。

「それにしても、中央首都かぁ。私は初めてだなぁ」
「う、うん。私も初めて」
「私もー、どんなところなんだろう。教科書に載ってる魔写でしかみたことがないからね」

 叶の切り出しに一華と彩夏が頷く。

「そう、そうそう」
「一華、なんかちょっとテンション高め?」
「い、い、いやっ?」
「ははーん」

 珍しく前のめりになる一華に対して、何かを納得した叶だけど、それはみんなにも伝わっていて、わかっていないのは本人だけみたいだ。
 少し顔を赤面させて、きょろきょろとみんなの目線を一身に集めていることに気づいて、さらに顔を赤くさせ俯いてしまう。

「それじゃあ、事も理解できたことだし教室に戻ろう」

 教室へ向かう僕たち。
 廊下を8人という人数で歩いているわけだけれど、この光景を客観的に見て思うことがあった。

「思ったんだけれど、費用ってどうなるんだろうね。もしかして、実費とかになるのかな?」
「確かにそうだね。学校行事だから移動日とか宿泊するなら数日間、ここら辺は公休にできると思うんだけど……金銭面はどうなるんだろう」

 桐吾の言う通り、休みとかはなんとかなる。
 だけど、移動費、食費、宿泊費、施設利用料金などを視野に入れると学生の身分としては中々に大きい出費となる。
 趣味にお金を費やすならまだしも、学園行事にそこまで割けるお金を持つ人は多くないと思う。
 現に、楠城家で考えると大変だ。
 当然、兄妹の中でアルバイトをしている人は誰もいない。
 それに、守結がパーティを組めたとすれば、楠城家は最低でも3人分の費用が掛かってしまう。
 予想される金額は……いや、考えると頭が痛くなるから今はやめよう。

 この疑問は当然の如く、みんなの頭を悩ませる。

「うっわ、そりゃあねえぜ。くっ……親に土下座して頼み込んだとしても、どうなるかわからねえ」
「私も親と相談しないと」
「だよねー、私も相談かなぁ」

 一樹、美咲、彩夏は同じ答え。

「そ、そうだね……」
「まあ、そうなるよね」

 一華、叶も同じく。

「私はたぶん、全然問題なーし」
「僕も大丈夫かな」

 結月と桐吾はさすがといったところ。

「金銭的なことは仕方がない。無理しても良くないから、最悪……辞退するのは視野に入れておこう。こればかりは、自分たちでどうにかできる範囲にないからね」

 本当に、できるなら辞退はしたくない。
 自分から可能性を捨てるような真似だけは絶対にしたくない。
 叶えたい目標がある。応えたい期待がある。

 ……だけど、個人的なことでみんなに無理を強いるのは間違っている。

 それに、諦めるにはまだ早い。
 現状を鑑みるに、パーティ数はそれほど多くないと予想できる。
 なら、もしかしたらなんらかの補助を出してくれるかもしれない。

 僕は、このパーティのリーダーとして、やるかやらないか決断を強いられる時が必ず来る。
 最後の最後まで諦めないというのも、リーダーとしての役目。

「可能性に賭けて、準備だけはしっかりとしておこう」

 みんなからの快い返事に、僕はリーダーとしての意を決した。
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