転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり

椿紅颯

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第五章

第35話『孤独な試練の始まり』

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「まさか、学園にこんなところがあるだなんて想像もしていませんでした」

 僕が連れてこられたのは生徒会室――地下。

 内装は至ってシンプルで、演習場と同様に防刃防法加工で無機質な灰色の壁・床・天井となっている。
 広さは演習場の半分程度。
 だけど、この内装ということは、疑似ダンジョンや疑似モンスターを出現させられるということ。

「でしょでしょ~。ボクも生徒会に入るまでは知らなかったんだぁ~。だからね、このことは試験終了しても他言無用で頼むよ」
「わかりました。それで、ここでなにをするんですか? 試験開始まではまだ少し時間の猶予があると思うのですが。――それとも、特別試験というぐらいですから、今から何かしらの準備でお手伝いとかですか?」
「……それがね、今回のこの特別試験はパーティを組んでいる人が対象になっているんだけど、キミだけは違うことをやってもらうことになってね」
「どういうことですか?」

 光崎さんはこちらに背を向け、空を眺めながら何かを考えている。
 そのまま数歩だけ円を描きながら歩いて、足を止めた。

「ちょっとね。いろんなことがあって、今回の突発的特別試験も実はその中の一つなんだ。その嵐はいってしまえば本当に突風を吹き起こしてきたんだけど……風に流されるほどボクだって馬鹿じゃない。だからそれに抗おうって決めたんだ」

 当然、それが何を意味しているのかは僕にはわからない。

 だけど光崎さんから向けられる力強い目線は、嘘を語っているようには思えないのも事実。

「でもね、これがボクにできる精一杯。お仲間のみんなには悪いんだけど、キミを守るためなんだ。わかってくれ」
「先ほどから何を言っているのかが理解できません。もう少し詳しく説明してください」
「ごめん、それはできないんだ。そして、今キミが起こそうとしている行動も容認できない」

 一瞬、心臓を掴まれたような感覚を覚えた。
 
 僕は今、光崎さんから指摘されたように行動を起こそうとしていた。
 こんな良くわからない状況で、これから大事な試験が行われるというのに足を止めてはいられない。
 だったら、いち早くみんなのところへ向かい、一緒に試験へ挑んだ方が絶対良いに決まってる。

 だから、この部屋から立ち去ろうとしていた。

「じゃあ、説明してください」
「すまない」
「……拒絶されるというならば、僕も従うわけにはいきません。では――」
「すまない――【リストーション】、【ダゾール】」
「っ⁉」

 リストーション。
 一定距離内の対象を指定し、身体を拘束スキル。
 ダゾール。
 一定距離内の対象を指定し、幻惑を見せるスキル。

 つまり、光崎さんのクラスはダークメイジ。

 攻撃力こそはないものの、能力減少系や移動阻害系といった妨害=デバフスキルを得意とするクラス。

 流れるようなスキル回しに、対策をとっていなかったため防ぐことはできなかった。
 スキルを掛けられ、立っていられなくなってしまいそのまま床に垂れ込んでしまう。
 これらのスキルは、正直に言うと力尽くよりよっぽどたちが悪い。

「ど……して」
「倒れた衝撃は痛かったよね、ごめん。でも、おとなしく言うことを聞いてくれなかったキミが悪いんだ。それを考慮してくれるとありがたい」
「……」
「そして、キミには悪いんだけどこの特別試験が終わるまでここに居てもらう。――今のうちに謝っておく。たぶんキミなら知ってると思うけど、このスキルは効果中、対象に悪夢を見させる。辛い時間になると思うから、耐えてくれ」
「……――――」

 次第に意識が薄れていく。
 酷い眠気に襲われた時と同じ感覚。

 どうして、なぜ、そんな言葉を吐きたくても口は動かない。
 それに、たぶん答えは返ってこない。

 頭の中で何一つ整理できず混乱したまま、僕の意識は完全に途絶えてしまった――。
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