78 / 129
第四章
第31話『手渡される一枚の紙』
しおりを挟む
廊下に出ると、光崎さんが壁に寄りかかっていた。
「お、志信くんお疲れ様。楽しめたかな?」
「はい。貴重な時間を経験させていただきました」
「まあ、緊張で胸がドッキドキだっただろうけどね~」
「そうですね。手汗びちょびちょでしたよ」
圧倒的緊張感から解放された。
本来であれば、目上でありこの学園の生徒会長相手に対しても、同じく緊張感を持たないといけないのだけれどなぜか緩んでしまう。
失礼だとはわかっていても、今は気を緩めて話したいというのが正直な意見だ。
肩を落して息を整えようとした時、下がった目線で光崎さんの手荷物一枚の紙が目に入った。
「その紙は?」
「あーあー、そうだったそうだった。えっとね、このまま教室に戻ってもらって大丈夫……って言いたいところなんだけど、これ見てくれる?」
「……はい?」
手渡された一枚の紙。
――――――――――
特別試験の実施!
対象者
現時点においてパーティ編成が完了している人。
実施場所
第一演習場、第二演習場
実施内容
現地にて伝達
実施日時
本日、午後の部
がんばろーな!
――――――――――
と、記されている。
誰が制作したかは一目瞭然。
だけど、これはあまりにも急すぎる。
本当にこの内容に承諾が得られるのかは疑問だけど、それが通ってしまうのがこの学事祭。
「ええ、これ、横暴すぎません?」
「いいや? ボ・クは生徒会長だからねっ。問題なしなーし!」
「は……はぁ」
抜けた声しか出ない。
「これを渡してくれたってことは、実施内容を聞いても?」
「いいや、それはダメだね。今回の特別試験は、対策を講じさせず突発的状況にどう対応するかを見定めるものでもあるから」
「なるほど……納得はしたくないのですが、理解はできますね」
「話が速くて助っすかる~! じゃあじゃあ、早速移動しちゃおっか。ああ、そうそう。お腹減ってるでしょー? これとこれ、食べちゃって」
光崎さんはポケットから保存食を二個渡してくれた。
それには見覚えがある。
家の地下に常設してあるやつと同じで、食べるのに抵抗がない。
パサパサしてなく食べやすいから助かる。
と、思う反面、弁当を残すことへの罪悪感と守結の悲しむ顔が容易に浮かんでしまうのが少しだけ心苦しい。
でも、こればかりは仕方がない。
「じゃあ歩きながら食べちゃっていいから、いこいこー」
「はい、わかりました」
「その紙、もう見ることないだろうし折り畳んでポケットにしまっちゃってー」
たしかに、これを持ったままでは食べにくい。
光崎さんの言った通り、数回折り畳んでポケットにしまうことにした。
歩き始めるも、ふとあることに気づく。
「あれ、特別試験って午後の部の授業から開始ですよね。もう移動するんですか?」
「あー、そうそう。ちょっとわけありでねー」
「そうなんですか。……あれ? でも、この道ってどちらの演習場からも逆方向ですよね?」
「あー、細かいことは気にしない気にしない。何も考えずについてきてー」
詳しい説明をしてほしいというのが本音。
でも、この紙にも書かれているし、さっきの説明でもあった通り詳細を聞くのは野暮というものかもしれない。
ここは素直についていくのが正解みたいだ。
「お、志信くんお疲れ様。楽しめたかな?」
「はい。貴重な時間を経験させていただきました」
「まあ、緊張で胸がドッキドキだっただろうけどね~」
「そうですね。手汗びちょびちょでしたよ」
圧倒的緊張感から解放された。
本来であれば、目上でありこの学園の生徒会長相手に対しても、同じく緊張感を持たないといけないのだけれどなぜか緩んでしまう。
失礼だとはわかっていても、今は気を緩めて話したいというのが正直な意見だ。
肩を落して息を整えようとした時、下がった目線で光崎さんの手荷物一枚の紙が目に入った。
「その紙は?」
「あーあー、そうだったそうだった。えっとね、このまま教室に戻ってもらって大丈夫……って言いたいところなんだけど、これ見てくれる?」
「……はい?」
手渡された一枚の紙。
――――――――――
特別試験の実施!
対象者
現時点においてパーティ編成が完了している人。
実施場所
第一演習場、第二演習場
実施内容
現地にて伝達
実施日時
本日、午後の部
がんばろーな!
――――――――――
と、記されている。
誰が制作したかは一目瞭然。
だけど、これはあまりにも急すぎる。
本当にこの内容に承諾が得られるのかは疑問だけど、それが通ってしまうのがこの学事祭。
「ええ、これ、横暴すぎません?」
「いいや? ボ・クは生徒会長だからねっ。問題なしなーし!」
「は……はぁ」
抜けた声しか出ない。
「これを渡してくれたってことは、実施内容を聞いても?」
「いいや、それはダメだね。今回の特別試験は、対策を講じさせず突発的状況にどう対応するかを見定めるものでもあるから」
「なるほど……納得はしたくないのですが、理解はできますね」
「話が速くて助っすかる~! じゃあじゃあ、早速移動しちゃおっか。ああ、そうそう。お腹減ってるでしょー? これとこれ、食べちゃって」
光崎さんはポケットから保存食を二個渡してくれた。
それには見覚えがある。
家の地下に常設してあるやつと同じで、食べるのに抵抗がない。
パサパサしてなく食べやすいから助かる。
と、思う反面、弁当を残すことへの罪悪感と守結の悲しむ顔が容易に浮かんでしまうのが少しだけ心苦しい。
でも、こればかりは仕方がない。
「じゃあ歩きながら食べちゃっていいから、いこいこー」
「はい、わかりました」
「その紙、もう見ることないだろうし折り畳んでポケットにしまっちゃってー」
たしかに、これを持ったままでは食べにくい。
光崎さんの言った通り、数回折り畳んでポケットにしまうことにした。
歩き始めるも、ふとあることに気づく。
「あれ、特別試験って午後の部の授業から開始ですよね。もう移動するんですか?」
「あー、そうそう。ちょっとわけありでねー」
「そうなんですか。……あれ? でも、この道ってどちらの演習場からも逆方向ですよね?」
「あー、細かいことは気にしない気にしない。何も考えずについてきてー」
詳しい説明をしてほしいというのが本音。
でも、この紙にも書かれているし、さっきの説明でもあった通り詳細を聞くのは野暮というものかもしれない。
ここは素直についていくのが正解みたいだ。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~
草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★
男性向けHOTランキングトップ10入り感謝!
王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。
だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。
周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。
そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。
しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。
そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。
しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。
あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。
自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する
あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。
俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて
まるでない、凡愚で普通の人種だった。
そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。
だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が
勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。
自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の
関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に
衝撃な展開が舞い込んできた。
そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。
※小説家になろう様にも掲載しています。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる