転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり

椿紅颯

文字の大きさ
上 下
55 / 129
第二章

第8話『事前確認は大事だね』

しおりを挟む
「それでは、パーティ組とそうでない組では内容が異なりますので、早速始めていきたいと思います」

 海原先生は序盤、そうでない組に付きっきりで授業が行われることになった。
 では、僕たちは何をするかと言うと、調らしい。
 今回初めて組むメンバーもいるためそういう配慮があるみたいだ。

 さて、まず初めに確認しないといけないのは武器。
 今回加入した一樹と叶と一華のメイン武器の構成を確認しないといけない。

 準備運動を始めるみんなの前で、提案を始める。

「まずは、装備を確認したいんだけどいいかな?」
「おっ、いいぜぇ」
「そうね」
「う、うんっ!」

 三人の承諾を得られた。

「じゃあ、俺が最初で良いか。俺のメイン武器は斧だっ! ほらよっと」

 流れるままに両手斧を展開する一樹。
 ウォーリアが扱う武器の中では最大火力を誇る武器ではあるが、一撃一撃が大振りになってしまうため選択率的には多くはない。謂わば物好きの武器だ。
 だけど、悪い点だけが目立つわけではない。
 その見るからに大きな見た目なのだが、スキルこそは発動できないけど軽い防御も可能。剣でも同様のことが言えるけど、片手剣のように攻撃を弾くというよりは、攻撃を受け止める感じになる。

「なるほどね。それで、腕に自信のほどは?」
「もちろんあるぜ。日課にしてる筋トレの量を聞きたいか⁉」
「あーいや、今は良いかな。今度、機会があったらお願いするよ」
「おう……そうか」

 筋肉自慢でもしたかったのか、何故かしょんぼりし始める一樹に僕は「あははぁ」と苦笑いを浮かべる。
 だがしかし、冗談で言っていないことは一目でわかった。
 見た目だけでも重量感のある両手斧を担ぐ姿は、完全にその重さに慣れているというのを物語っている。
 その重さから、両手斧の使用者たちは体に乗せるのではなく、地面に刃先を接地させることがほとんど。
 だけど、一樹は右手で柄を持って肩に乗せ左手は空いている状態。
 自慢ではないけど、あんなこと僕には絶対真似できない。

「ありがとう一樹。じゃあ次は――」
「私たちね」
「うん、お願い」
「私はね、小盾と片手剣よ。そして、一華は大盾と片手槍」
「ほほう」
「ああでも、私は大盾スタイルもできるから、心配しないでね」

 叶のスタイルに素直驚いた。
 小盾と片手剣というスタイルは、どちらかというとウォーリアに多い。
 最前線での攻防において、身軽に動き回りながら戦う片手剣一本スタイルとは違う。
 それに、至近距離で敵の攻撃を弾きながら攻撃を与えることはウォーリアの特権ともいえる。
 だけどそれをナイトでやるということは、それだけ冷静に敵の攻撃を捌きながら敵のヘイトを管理できるということ。
 正直それは相当な技術であることは明白。

 逆に一華のスタイルは一般的といえる。
 ナイトというクラスを選択する人間で、攻撃を加えながら攻撃を捌こうと考える方が少ないからだ。
 このスタイルは、大盾で防御に専念して大きな隙を見つけては、剣より長い槍のリーチを活かし些細なダメージしか入らない攻撃をする。
 これがもっとも安全な策なのだからだ。
 叶や康太のようなスタイルが珍しすぎるということ。

「ちょ、ちょっとー! 私にも喋るぐらいの出番は残しといてよー!」
「だって、私がまとめて伝えた方が効率いいでしょ。同じクラスなんだし」
「それはそうなんだけど……!」

 第一印象から今まで思うに、叶は常に物事を冷静かつ柔軟に判断しているように感じる。
 叶と一華が仲良しということに起因するものかもしれないけど、息がぴったりに合っているようにも見えなくもない。
 だとするのであれば、そのスタイルを選んでいる理由もそこまで心配する必要はないのかも。

 一華は……感情のままに叶をポンポン叩いているのだけど、それもまた仲が良い証拠なのだろう。

「はい展開」
「うわわっ! ビックリしたー」
「ほら、志信に怒られるよ」
「あ、あ、あ、ごめんなさい!」

 叶の催促に慌てて武器を展開する一華。
 そんなに慌てる必要は無いんだけどな、とつい苦笑いを浮かべるも、僕は叶の発した言葉を聞き逃さなかった。

 いや、叶には僕がどういう風に映っているんだい? と、心の内でツッコミを入れずにはいられない。

「じゃあさ、先生がこっちへ来る前に軽い対人戦で様子見をしてみようか」
「ほっほーう、それいいな」
「なになにっ、おっもしろそーじゃん!」

 どうしてかノリノリの一樹と結月。
 二人の中では対人戦というのはかなり血が騒ぐものなのかもしれないけど、本来なら避けなければいけない戦いというのを忘れてるでは、と心配になる。

「人数的に四対四といきたいところだけど、そういう連携が入る練習は今後するってことで、今は一対一ぐらいにしておこう。僕と美咲は見学ってことで」
「そうね、私はみんなの姿を眺めて勉強させてもらうわ」

 と、言い終えてはすぐに僕の間隣に移動してくる美咲。

「そこで、組み合わせなんだけど、結月・叶、桐吾・一樹、彩夏・一華、って感じでお願いしたいんだけどみんなの希望はあったりする?」
「なしなしっ」
「ないわ」
「ないかな」
「ないな」
「ないね」
「な、ないよ」

 全員の承諾は得られた。
 後は、各々が準備運動を終えれば始められる。

「そうだ、みんなわかってると思うけど一応ね。練習自体は真剣に取り組んでもらっていいんだけど、本気になったりはしないでね。これは、みんなの現時点でどれだけ動けるかっていう確認であると共に、パーティメンバー同士で動きを知っておくことが目的ってことは忘れないで」
「お、おう。そんなの知ってたぜ、当たり前だよなっ!」

 他のみんなは首を縦に振っていたが、若干1名だけは認識が違かったらしい。
 危ない危ない。
 こういうとき、結月辺りは「本気でやり合うのが当たり前じゃんっ」とか言い出しそうだからあえて言葉にしてみたけど、思わぬところが釣れてしまった。
 だけど、これで心配はいらなそうだ。

 たかが授業たかが練習といっても、やはり攻撃を撃ち合うのだから、前衛クラス辺りは途中からヒートアップし始めてもなんら不思議ではない。
 そうなってしまえばストップがかかっても尚、攻撃の手を止めず最悪、声が届かなる可能性がある。
 そんなことになれってしまえば、見学組の僕と美咲の後衛クラスではどう足掻いても止められない。
 一番最悪なのは、どちらかが戦闘不能になるまで戦闘を続行してしまうことだ。
 これはもう、先生に怒られるコース。

 さて、みんなはどんな戦い方を見せてくれるのかな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

僕と精霊〜The last magic〜

一般人
ファンタジー
 ジャン・バーン(17)と相棒の精霊カーバンクルのパンプ。2人の最後の戦いが今始まろうとしている。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話

亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。

処理中です...