転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり

椿紅颯

文字の大きさ
上 下
50 / 129
第一章

第3話『新たなパーティメンバー』

しおりを挟む
 学事祭のパーティ参加条件としてフルメンバーというのがあった。
 パーティを組む場合、自クラスというのもある。つまり、今回は守結《まゆ》たちと一緒にというわけにはいかない。
 発表があったのは今日だったとしても、できるだけ早く編成終了して連携力を高めたいところ。

 昼休み、教室で昼食を摂りながらの雑談をしていた。
 そんな折、僕、桐吾《とうご》、結月《ゆづき》、美咲《みさき》、彩夏《さやか》は全員がいつもより少し暗い雰囲気で話をしている。
 そして、僕は本題を切り出した。
 
「たぶん、僕が考えていることはみんなも同じだと思う。このままだと、僕たちはパーティ申請ができない。だから、なんとしてでもメンバーを集めないといけない」
「そうだね、最低でも後1人が必要だね」
「いやーっ、勧誘かぁ。私、そういうの苦手なんだよねぇ」
「うん……私も得意な方ではない、かな」

 美咲《みさき》と彩夏《さやか》のやりとりは耳が痛すぎる。
 正直、由々しき事態に陥ってしまっているかもしれない。
 他のみんなが苦手というならば、転校してきたばかりの僕ができるはずがない。
 そうでないとしても、僕だって勧誘が得意ではない。顔見知りなら兎も角、こんな状況ではお手上げだ。

 希望の星とも言える結月《ゆづき》に彩夏《さやか》が話題を振る。

「うーん、困ったねー。困ったねー。あ、結月《ゆづき》ならできるんじゃない? いや、この中では断トツに――」
「いやー、私も無理無理ー。なんでかって言うのは、志信《しのぶ》も同じ理由なんでしょ?」
「うっ、うん」

 まるで見透かされていたかのような回答に言葉が詰まってしまう。
 他は顔馴染み同士でパーティを組んでいるのは容易に予想ができる。
 僕を除く各々も、どこかのパーティに加入するのであれば、そこまで難しくは無いだろう。
 そんなことを考えていても意味がないのはわかっている。でも、こんなお手上げな状況に打開策を打ち出すことが出来ない。

 全員が頭を悩ませていると、

「なあ……偶然聞こえちまったんだけど、メンバーを探してんの?」
「……え? うん」
「ああ、ごめん。盗み聞きするつもりはなかったんだが」

 そこには、右手を首の後ろに回して申し訳なさそうにしている一樹《かずき》の姿があった。

「そこで、だ。俺も偶然とパーティを探していて、もし良かったらでいいんだけど……いや、俺をパーティに入れてほしい!」

 一樹《かずき》はそう言いながら頭を下げ始めた。
 それを見て、僕は戸惑いを隠せず目を見開いてみんなの方へ視線を向ける……と、みんなも大体同じ反応を示している。
 視線を戻しても尚、頭を下げたままの一樹。
 どうやらこの状況下で僕が判断を下し、それを言葉にしないといけないらしい。

 ……冷静に考えれば、断る理由があるのか?
 僕たちは今まさに人手を探している。更には初対面でもない。今日話したばかりではあるけど、かなりの好印象だった。
 これぞ千載一遇の機会と捉えず何と取るか。

「うん、わかった。僕からもお願いするよ、よろしく」
「お……おお! 本当か! 本当なのか! よっしゃー、よろしくな!」

 返答を聞いた一樹は、下げていた頭をサッと戻してガッツポーズを取り始めた。……と、思ったらすぐに和らかい表情に戻って自己紹介を始めようとした時だった。

「改めて自己紹介を――」
「あ、あの! ちょっといいですか!」

 一樹の話をバッサリと断ち切るように声が割り込んできた。
 この場の全員から一身に視線を集めたのは、2人の少女。
 体力測定のとき、謝罪の言葉を叫んでいた長月《ながつき》さん。と、もう1人。
 
 第一声こそ声量はあったものの、続く声は雑音にかき消されそうなほど小さかった。

「あの、話してるところに割って入ってごめんなさい。パーティのことでお願いがあって――」
「あー、ごめんね。流れに水を差して悪いんだけど、パーティ編成にあたって人数不足っていうのが聞こえちゃってさ。……つまり、もしよかったら私たちもパーティに加えてくれないかなって話なんだけど」

 と、長月さんの話をこれまたバッサリと切ったのは隣の彼女。
 顔自体は見たことがあるけど、あの時謝られていた側の人とは違う髪型をしている。記憶が正しければ肩にかかるぐらいだったはずだけど、今目の前にいる彼女は背中まで艶のある黒髪を伸ばしている。
 だがしかし、同じクラスメイトというだけで話したこともなく、本当に顔を見たことがある程度でしかない。

 現状、彼女たちをパーティに加えれば8人のフルパーティを編成できる。
 それは、願ったり叶ったりではあるけど、今日が初めましてという人を加えるのに抵抗がないと言えば噓になる。
 誰かに助け舟を出そうと目線を配らせるも、一樹の時同様で、「志信が決めて」という無言のメッセージを訴えてくるのみ。

 ええい、背に腹は代えられない。なるようにしかならない!

「うん、じゃあ2人ともよろしく」
「ほ、本当にー!? 私なんかがいて了承してくれるな――」
「ありがとう。じゃあまずは自己紹介をしておくね。私は香野《こうの》叶《かなえ》。そして、こっちが長月《ながつき》一華《いちか》だよ。私は叶《かなえ》、こっちも一華《いちか》って呼んでね」

 右足重心で腰に手を当てて、これまた一華の話をバッサリと斬ってしまう叶。
 自分の番を強制的に奪われたのを受け入れがたいのか、口をパクパクさせてオロオロとしている。
 あまりにも自然な流れすぎて、まるで何かのお笑い的なノリなのか、それともこれが日常的なのか違うのか。色々と考察はできるけど、このてんやわんやな感じだけでは何とも判断が付かない。

 それでも、この流れを止めてしまってはもったいないから、気にせず流れに乗ることにした。

「う、うんよろしくね。僕のことも志信《しのぶ》で大丈夫」
「僕も同じく桐吾《とうご》で」
「じゃあ俺も一樹《かずき》でよろしくっ!」
「お好きなようにどうぞー」
「私も彩夏《さやか》でよっろしく!」
「私も美咲《みさき》でいいわ、よろしくね」

 そういえば、忘れていたけど一樹の自己紹介もバッサリといかれていたような気がする。
 何事も無かったかのように乗ってくれているのは、ノリがいいのか特に気にしてないのか。
 少なくとも表情に出てないということは、そこまで悪くは思っていないのだろう。
 
「ちょ、ちょっともー! 私にも喋らせて―!」

 途中で自分の台詞をとられた一華は、顔をぷんぷんさせて両腕を曲げ伸ばして声を大きく抗議開始。
 だけど、本人の顔の赤さとは裏腹に、この場の雰囲気は一気に明るくなり笑顔が沸き起こった。
 これで一安心。この調子なら、今日の放課後にはメンバー申請が可能だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話

亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...