上 下
41 / 129
第五章

第40話『反撃開始』

しおりを挟む


 ――反撃開始。

 ……でも、完全に形勢逆転できたわけじゃない。気を抜けば一瞬で壊滅だ。
 気を引き締めないといけない状況には変わりない。

「みんな、ヘイト管理は変わらず僕と結月ゆづきでやる。――行くよ!」
「わかった」
「よし、やったりますかーっ」

 簡易的な指示を出し終え、再び前へ――。

「【インスタントヒール】【クイックヒール】――【スタン】!」

 ――敵の攻撃に集中して回避。そして頭部へ的確に行う。そして――。

『グィィィィイ!』

 ――寸での回避。次に――。

結月ゆづき!」
「てぇぇぇぇい!」

 ――結月との連携。

 更に今では守結まゆ桐吾とうごの攻撃に、魔法スキルによる行動阻害。勝利までそう遠くはないはずだ。

 ……そして、僕は見逃さなかった。その防御する動作を。

「次の気絶で一斉攻撃!」

 そう声を張り、みんなへ指示を飛ばした。

「【スタン】! ――――今だっ!」

 三方向からの一斉攻撃。
 その剣撃はレンジャーラットに命中――。

『じぃぃぃぃぃゃゃゃゃゃ!!!!!!!!』

 ――断末魔と共に、爆発四散した。

 僕たちは勝った。勝利した。勝利したんだ。

「やっっっったぁー!」

 その歓喜の声と共に結月が飛び付いてきた。

「勝ったんだよ! 私たち勝ったんだー! やったやったっ!」
「ちょ、ちょっと結月!」

 まるで、小さい子供が初めて大きいぬいぐるみを買ってもらって抱き締めるてきている。それはもう嬉しそうに。
 僕も嬉しい。嬉しいけど……いろんなところが当たっている。
 それに……。

「ちょっと、なにやってるのよ! しーくんから離れなさーい!」
「み、みんなの前で、そ、そんな! わた――」

 と、まあそうなるわけで……。

「あっはは、さっきまでの緊迫感はどこかに飛んで行っちゃったね」
「ひゃー、こちとらずっと酸欠で倒れそうだったのに」
「なんにしても、勝ったんだし、なんでも問題なしっ」

 という感じに助けはこない。

「はぁ……そうだ。康太こうたを!」

 ため息一つの後、康太こうたを回復させに行こうとすると、

「はいよ。お待たせしましたっと」

 目線を向けた先に、康太の姿があった。

「あーあ、もう全部終わっちまったってやつかぁ。はぁ……はぁ……」

 背中を丸め肩を落とし、酷く落ち込んでいる。
 悔やむ気持ちは僕にもわかる。
 前回の僕もそうだった。
 油断はなかった。
 でも、それだけじゃ補えないこともある。
 自分の実力を信じて戦っても、その実力が足らなかった悔しさ。
 自分の全力をもってしても勝てないという悔しさ。

 そんな気落ちしている康太に、幸恵さちえが近づき、

「何はともあれ私たちは勝ったんだし、そう落ち込むなってーっ」
「まあな。それもそっか。そうだな! 俺たちはは勝ったんだ、やったぜ!」

 幸恵さちえの励ましによって、雰囲気がガラッと変わり始めた。
 気分の移り変わりの激しさに、こちらが驚くばかりだけど、少し単純すぎじゃないか……?

 そんな勝利の余韻に浸っていると、辺りの景色がいつもみる演習場の景色へと戻り始めた――――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

World End

nao
ファンタジー
 法術という異能によって成り立った世界で、無能力者の少年ジンは狂った神が人間の魂に刻み込んだ魔物化の呪いによって姉や友人、彼を包んでいた世界の全てを失う。  失意のドン底にあった彼は善神と自称する神ラグナから世界の真実を伝えられる。彼は狂った神への復讐を誓い、ラグナの庇護の下で力を蓄えて狂神を打倒するために力を蓄える。やがて新たな旅に出た彼は仲間と出会い、そして運命の出会いを遂げる。   大切な仲間達と出会い、別れ、人間世界に仇なす者となっても彼は旅を続ける。強大な力の前に、数多くの仲間を失い、傷つきながらも最後まで戦い抜いた末に彼が辿り着いたのは世界の終焉と安息だった。  これは人々から怨まれ、多くを失いながらも最後まで戦い続けた男の物語である。

俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~

草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★ 男性向けHOTランキングトップ10入り感謝! 王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。 だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。 周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。 そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。 しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。 そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。 しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。 あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。 自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...