17 / 129
第三章
第16話『視認、ソルジャーラット』
しおりを挟む
モンスターを掃討して進んだ先には、休憩できそうな草原広場があった。
広場といってもそこまで広大というわけでわなく、教室半分ぐらいの広さ。
「予定通り僕が偵察に行ってくるね。みんなはその間に休憩してて」
「なあ、やっぱり俺が付いていったほうがいいんじゃないのか?」
先ほど話し合った内容に、康太は苦言を呈してきている。
言いたいことはわかるけど、この状況では仕方がない。
残り時間の見えない戦い。流れるような連携に効率のいい戦い方だとしても、このまま連続して戦闘を続けてしまえば消耗が激しすぎる。
せっかく休める場所が見つかったんだ、休息は必要。
それに、一番労力の少ない僕が偵察に行くぐらいならなにも問題ない。
「いいって、時間も惜しいし行ってくるね」
「やっぱり、ちょーっと待ったー!」
横槍を差しをしたのは守結だった。
「急にどうしたの」
「はーい、私一緒に行きまーす」
「じゃあ僕も――」
「おーっと桐吾くん、それはいけませーんっ」
桐吾は、立ち上がるのを制止され申立を横暴にも拒否された。
この場の全員が理解に苦しむ状況のなか、守結は言葉を続ける。
「ここは、私たち姉弟に任せておきなさーい」
「は、はあ……」
「みんなごめんね。こうなったら、曲げないタイプの人だから何か言いたいと思うけど諦めて。時間も惜しいし――じゃあ行ってくるね」
若干強引ではあるけど時間が惜しい。
時間短縮のためにも、先を急ごう――。
――足を進めて数分。
草木が生い茂ったエリアへと到着した。
身を隠す場所が少ないため、僕たちは姿勢を低くしてゆっくりと草木の影を移動。
「なんかさ、こういうの久しぶりだよね」
「小さい頃に家のなかを探索してたときのこととか?」
「そうそう、あのときは家がすっごく大きく感じたよねー。今の状況にそっくり」
のっそりのっそりと進むなか、ひそひそと話しながら守結の横顔は無邪気な笑みを浮かべている。
小さい頃に住んでいた家も、今と変わらずの大きさで家を歩き回った。ただの散歩ではなく、幼い僕たちの小さな足ではちょっとした冒険だった。
たしかあのときも、理由なく姿勢を低くして物陰に隠れながら移動していたような記憶がある。
懐かしい思い出に浸っていると、
「ねえねえ、あれって――」
声を一段と小さくした守結は、足を止めて前方を指を差している。
その先に目線を向けると、あるモンスターがいた。
エリアボス、ソルジャーラット。
ぱっと見ただけでは、先ほど戦ったランス・ソードラットと大差なく、灰色の体毛で全身を覆い、その上からでも分かるほどの隆起した筋肉。
だけどそれらと違うのは、まず一つにその体格。先ほどのやつらよりは高いけど、僕たちと同じかそれより少し小さいぐらい。
最後に装備。今までのラットと違って盾と防具を装備している。さらに腰に鞘を携えて、直剣を扱う。
エリアボスとは、簡単に言ってしまえばその種族の長。
役職的なものであり、基本的には同じ種族同士であれば連携をとるという。
それに、常駐モンスターと違って個性のようなものが観測されていて、別種族とならば闘争的になることもあるそうだ。
そして、極め付きは学習能力。
エリアボスは、戦闘中に相手の傾向を学習――反応を示し、ダンジョンであれば要注意な存在となっている。
「あれ、私たちで倒せるかな?」
「どうだろう……」
相手を凝視しながら思考を巡らせる。
初見の相手ではあるけど、人数だけでなら問題はないはず。
次に編成。前衛3人に後衛4人、内――盾役1人に攻撃役2人と支援2人に攻撃役2人。かなりバランスも良く問題点もない――。
「うーん、戦ったこともないし、明らかに強そうだからやっぱり無理かなぁ」
「いや、大丈夫だと思うよ……うん、僕たちならいける」
「ほほーう。よーし、いっちょやっちゃおっか」
「早速戻って相談だね」
満面の笑みで右拳を小さくこちらに突き出す守結に、それに応えて拳を合わせてみんなの元に向かった。
広場といってもそこまで広大というわけでわなく、教室半分ぐらいの広さ。
「予定通り僕が偵察に行ってくるね。みんなはその間に休憩してて」
「なあ、やっぱり俺が付いていったほうがいいんじゃないのか?」
先ほど話し合った内容に、康太は苦言を呈してきている。
言いたいことはわかるけど、この状況では仕方がない。
残り時間の見えない戦い。流れるような連携に効率のいい戦い方だとしても、このまま連続して戦闘を続けてしまえば消耗が激しすぎる。
せっかく休める場所が見つかったんだ、休息は必要。
それに、一番労力の少ない僕が偵察に行くぐらいならなにも問題ない。
「いいって、時間も惜しいし行ってくるね」
「やっぱり、ちょーっと待ったー!」
横槍を差しをしたのは守結だった。
「急にどうしたの」
「はーい、私一緒に行きまーす」
「じゃあ僕も――」
「おーっと桐吾くん、それはいけませーんっ」
桐吾は、立ち上がるのを制止され申立を横暴にも拒否された。
この場の全員が理解に苦しむ状況のなか、守結は言葉を続ける。
「ここは、私たち姉弟に任せておきなさーい」
「は、はあ……」
「みんなごめんね。こうなったら、曲げないタイプの人だから何か言いたいと思うけど諦めて。時間も惜しいし――じゃあ行ってくるね」
若干強引ではあるけど時間が惜しい。
時間短縮のためにも、先を急ごう――。
――足を進めて数分。
草木が生い茂ったエリアへと到着した。
身を隠す場所が少ないため、僕たちは姿勢を低くしてゆっくりと草木の影を移動。
「なんかさ、こういうの久しぶりだよね」
「小さい頃に家のなかを探索してたときのこととか?」
「そうそう、あのときは家がすっごく大きく感じたよねー。今の状況にそっくり」
のっそりのっそりと進むなか、ひそひそと話しながら守結の横顔は無邪気な笑みを浮かべている。
小さい頃に住んでいた家も、今と変わらずの大きさで家を歩き回った。ただの散歩ではなく、幼い僕たちの小さな足ではちょっとした冒険だった。
たしかあのときも、理由なく姿勢を低くして物陰に隠れながら移動していたような記憶がある。
懐かしい思い出に浸っていると、
「ねえねえ、あれって――」
声を一段と小さくした守結は、足を止めて前方を指を差している。
その先に目線を向けると、あるモンスターがいた。
エリアボス、ソルジャーラット。
ぱっと見ただけでは、先ほど戦ったランス・ソードラットと大差なく、灰色の体毛で全身を覆い、その上からでも分かるほどの隆起した筋肉。
だけどそれらと違うのは、まず一つにその体格。先ほどのやつらよりは高いけど、僕たちと同じかそれより少し小さいぐらい。
最後に装備。今までのラットと違って盾と防具を装備している。さらに腰に鞘を携えて、直剣を扱う。
エリアボスとは、簡単に言ってしまえばその種族の長。
役職的なものであり、基本的には同じ種族同士であれば連携をとるという。
それに、常駐モンスターと違って個性のようなものが観測されていて、別種族とならば闘争的になることもあるそうだ。
そして、極め付きは学習能力。
エリアボスは、戦闘中に相手の傾向を学習――反応を示し、ダンジョンであれば要注意な存在となっている。
「あれ、私たちで倒せるかな?」
「どうだろう……」
相手を凝視しながら思考を巡らせる。
初見の相手ではあるけど、人数だけでなら問題はないはず。
次に編成。前衛3人に後衛4人、内――盾役1人に攻撃役2人と支援2人に攻撃役2人。かなりバランスも良く問題点もない――。
「うーん、戦ったこともないし、明らかに強そうだからやっぱり無理かなぁ」
「いや、大丈夫だと思うよ……うん、僕たちならいける」
「ほほーう。よーし、いっちょやっちゃおっか」
「早速戻って相談だね」
満面の笑みで右拳を小さくこちらに突き出す守結に、それに応えて拳を合わせてみんなの元に向かった。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~
椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。
しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。
タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。
数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。
すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう!
手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。
そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。
無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。
和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

異世界の英雄は美少女達と現実世界へと帰還するも、ダンジョン配信してバズったり特殊部隊として活躍するようです。
椿紅颯
ファンタジー
黒織秋兎(こくしきあきと)は異世界に召喚された人間だったが、危機を救い、英雄となって現実世界へと帰還を果たした。
ほどなくして実力試験を行い、様々な支援を受けられる代わりに『学園』と『特殊部隊』へ所属することを条件として提示され、それを受理することに。
しかし帰還後の世界は、秋兎が知っている場所とは異なっていた。
まさかのまさか、世界にダンジョンができてしまっていたのだ。
そして、オペレーターからの提案によりダンジョンで配信をすることになるのだが……その強さから、人類が未踏破の地を次々に開拓していってしまう!
そんな強すぎる彼ら彼女らは身の丈に合った生活を送りながら、ダンジョンの中では今まで通りの異世界と同じダンジョン探索を行っていく!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。
阿吽
ファンタジー
クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった!
※カクヨムにて先行投稿中

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】

現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる