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第四章
第29話『悲報はあれど朗報もありけり』
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「――という事がありまして」
「なるほどな、それはそろそろ面倒事に発展しそうな話だ」
マーリエットがお風呂へ向かったと同じく、ミシッダが帰宅した。
そして今は、ミシッダはアルクスが作った料理を「美味い、上手すぎる」と言いながら食べつつ、つい先ほどあった出来事を報告し終わったところ。
「私も詳しい事はわからないが、もしかしたら奴隷商とかにでも捕まっていたのかもしれないな」
「え、奴隷制度って先代の皇帝からなくなっているはずじゃないですか。どうしてそんな事に」
「いや、これはただの推測でしかない。それに、うちらが住んでいる帝国が制度を廃止したからといって、他国がまだ続けていたらどっちにしても変わらない」
「たしかに……でも、他国の人間が帝国に侵入するだけでなく、人を攫う事をしていたら皇帝も黙ってはいないんじゃないですか?」
「それはどうだかな。揉め事を起こすって事は、つまりはそういう事なんだぞ? わけのわからない連中のために、国民を戦争へ向かわせられると思うか?」
「……」
アルクスは戦争を経験した事はない。当然、人を殺めた事もない。
しかし、人が死んでいく残酷な光景を幼いながらも目の当たりにしてしまっている。
それは鮮明に記憶されており、何度も夢に見てしまうほどに。
だからこそ、ミシッダの言葉の意味を理解できてしまう。
大切な家族との死別を招く原因を、皇帝であれどたったの一個人だけの判断で容易く決めてしまうわけにはいかない。
「じゃあどうすればいいんですか。僕には政治とか外交とか、そういう難しい話は全くわかりません」
「そりゃあ私だってわからないさ。騎士団を抜けて以来、ずっとアルクスと一緒に生活してきたんだぞ?」
「……たしかにそうですね」
「おい、そこはすんなりと納得するんだな」
「だって、事実じゃないですか」
それはそうなんだが『私にも威厳というものがあるだろ』、と心の中で呟くミシッダであった。
「ですけど、もしもの事があったらミシッダさんが――」
「いいや、それは約束できない話だ」
「……」
「忘れたのか? 私は国の名誉騎士団から身を引いたんだ。反対を押し切ってまでここで生活をしているというのに、力を使ってもしも居場所がバレた場合――招集される事態になるかもしれない。それに、どっちにしても専用の剣がなければ半分ぐらいの実力しか出せないんだしな」
「そういえばそうでしたね……ですけど、実力の半分だったとしても相手が百人居ようとも余裕だと思いますけど」
「それはそうだろうが、結局は武器が先に壊れるって話だよ」
「あぁー。なるほど、そういう事でしたか」
「まあだから、もしもの時が起きたとしたらアルクスがなんとかするんだな」
「僕なんかが、どうにかできるんでしょうか」
「さあ? できるんじゃないか」
「なんでそんな投げやりなんですか」
「だって、実際にそうなってみないとわからないだろう?」
「それはそうですけど……」
ミシッダは片眉を持ち上げて思う。『これだから無自覚ってやつはよぉ』、と半ば呆れながら。
「まあなんとかなるさ。一番大切なのは、アルクスが気負いすぎないって事だけだ」
「――わかりました」
「その、すんげー真面目な目線が心配だって言ってんだけどな」
アルクスは、ミシッダの言葉を理解できずに首を傾げる。
「まあいい。そろそろマーリエットが戻ってくるだろうから、次の風呂はアルクスでいいぞ」
「わかりました。じゃあその前に、少しだけ外を走ってきますね」
「ああ、行ってこーい」
アルクスはいつも、こうして体を動かし足りない日は夜も走りに行く。
ミシッダはもうその真面目さっぷりを諦めているため、もはや止める事はない。それにもういい年だし、迷うわけがないとわかりきっているからというのもある。
そんな練習馬鹿の背中を見送ったミシッダは、アルクスが購入してきたマーリエット用の服を漁り始める。
「ほほお、アルクスにしては良い感じに選べてるじゃないか。私以外にプレゼントなんてした事がないっていうのに、どういう風の吹き回しだ?」
ミシッダは「はえ~」「ははぁー」「これ、私も着られるんじゃないかな?」、と小言を漏らし続ける。
そして最後。
「こんなに沢山あるんだから、一着ぐらい貰ってもバレ――」
「バレますよ。ていうか、私の存在に気が付いていて言いましたよね、最後の言葉」
「さあ、どうだかねぇ?」
「普通に扉を開けて入ってきたんですから、嘘はやめてください」
「まあまあそう怒んなって。お姫様にとっては、こんな贈り物はただの布切れでしかないんだろうが」
「……そんな事はありません。私は、今日初めて家族以外から貰ったプレゼントに喜びを覚えました」
「ほう?」
「ミシッダさんなら経験がおありではなくて? 権力の恩恵を受けようと、気に入られるために贈られる物が嬉しいと思いますか? 私は、そういうのが気にくわなかったので全て拒否していましたが」
「うわぁ、さすがは第一皇女。やってる事がえげつねー」
「その言い方、やめてください。もしもアルクスに聞かれたらどうするんですか」
「さあ? でも、このまま隠し続けるのはさすがに無理があると思うけどな? そろそろ腹を決めて、嫌われる覚悟で伝えないと、後々になってめんどくさい事になるかもしれないぞ」
「……それはそうですけど……」
マーリエットは何も言い返せない。
ミシッダの言う通りで、マーリエットはこの心地良い関係性が大切になってきてしまい、自分の正体を打ち明ける事ができずにいる。
――言いたい事はわかっている。『身分を偽って、いつものように大切な存在として接してもらっている事が心地よくなっているだけの卑怯者』、と言いたいのでしょう。そんな事、言われなくたって私が一番わかっているわ。
アルクスの優しさを知っているから、アルクスの心の内や悩みを知ってしまったから、アルクスの親族に起きた悲劇の責任が自分にあるから。
言い訳として挙げられるものは、次々に出てくる。
しかし、それら全てに共通している事――それは"自己保身"。
――こんな楽しい日常がいつまでも続いてくれたら良いのに。と、思う自分がいるのは否定できない。実際、身分を捨ててまでその選択をしても良いとまで思ってしまっている自分がいる。どこの皇族にそんな体たらくを言って許される制度があろうか。……本当に、自分が情けない。
「さて、発破を掛けるようで悪いが悲報ってところだな」
「な、何がですか?」
「たぶんだが、追手の数が増えてきたらしい」
「……それは、本当なのですか」
「私も詳しい事はわからない。だが、アルクスが今日の帰りにそれらしい人物達を見かけたらしい。しっかりと顔も確認して、前回のやつらとは違うという確証も得ているようだ」
「どうすればいいんでしょうか、私は」
「そんな事は知らない。一番手っ取り早いのは、自分の家に手紙を出せばいいんじゃないか? そうすれば、遅かれ早かれお国の騎士団が総出で救出に来てくれるだろう?」
「だけど……」
――それは今、できない。
「悪い、少し意地悪な言い方だったな。もう、お姫様の考えは理解できた。アルクスを、自分の騎士にしたいんだろう?」
「なぜそれを……」
「まあ、騎士団を抜けた今でも情報を流してくれる人は居るって事だ。逆に言わせてもらうが、よく今の今まで自分の騎士を任命せずに無事だったな。不思議で仕方がないよ」
「本当にその通りですね。私は誰からでも笑われて当然なほど、あまりにも世間知らずのようでした。今回の件を通して、この身をもって痛いほどわかりました」
「仕方がないんじゃあないか。自分が進む方向と同じ方向を向ける人間でなければ、そもそも騎士として任命する事はできない。なぜなら、主が死ぬその時まで付き従うという絶対的な忠誠心が試されるから」
「お高くとまっていたのでしょうね、私は。『正義』だの『国民を第一に考える』だの言っておきながら、いざ行動しようとすれば何もできはしない。できなかった。本当に、情けない話です」
マーリエットの視線は下がり、右腕で左腕を掴む。
「まあでも、今回の一件はもしかしたらちょっと待てば過ぎ去るかもな」
「どういう事ですか?」
「根拠はないが、ああいう連中は数日経っても痕跡一つ見つけられないと探す場所を変える。つまり、このまま時間の経過を待つだけで、普通に村へ行けるようになるかもしれない」
「そ、そんな事が本当にあるのですか?」
「だから、根拠は何もない。だが、そういう連中なんだよ。荒くれってやつらは」
「ですけど、その話が聞けて希望を持てました」
「そうかい、それはよかった。これでアルクスと村デートができるもんな」
「デ、デデデデデートぉ!? そ、そんな――私達は結婚を前提にお付き合いしているわけでもないのに、そんな事ができるはずないでしょう!!!!」
「っかぁー、これだからお高い身分の人間はよぉ。色恋についてだけは頭が固すぎるんだよ。どんだけ硬いんだよ、鉱石かよ」
「いやだって、その……私、異性と手を繋いだ事すらないんですよ……あ、でもアルクスとだけは……でもあの時は仕方がなかったというか……」
「初心すぎんだろ」
「だ、だってぇ……」
人差し指と人差し指をちょんちょんと突かせて恥ずかしがっているマーリエットを見て、ミシッダはそれはもう盛大なため息を吐き出す。
「ああもうやめだやめだ。そんな事より、明日も稽古の続きをする」
「よ、よろひくお願いしまふ!」
「はぁ……もしもの時のために、自分の身は自分で護れるようにしておく練習だぞ。浮かれるなよ」
「はひっ!」
「それで、明日は口実作りとしてアルクスを村で剣を買ってきてもらうつもりだ。どれぐらいの重さなら持てるんだ?」
「料理が盛られているお皿ぐらいなら……?」
「ったくよぉ。これだから皇女様はよぉ。じゃあ、アルクスと同じ短剣ぐらいしか選択肢がないじゃねえか。……まあいいか。服に忍ばせやすいし、たぶん扱いやすいだろ。初心者が戦闘できるかはさておいて」
「ご、ごめんなさい……」
「まあいい。今日も早く寝とけ。アルクスの朝は早いぞ」
「わかりました」
「なるほどな、それはそろそろ面倒事に発展しそうな話だ」
マーリエットがお風呂へ向かったと同じく、ミシッダが帰宅した。
そして今は、ミシッダはアルクスが作った料理を「美味い、上手すぎる」と言いながら食べつつ、つい先ほどあった出来事を報告し終わったところ。
「私も詳しい事はわからないが、もしかしたら奴隷商とかにでも捕まっていたのかもしれないな」
「え、奴隷制度って先代の皇帝からなくなっているはずじゃないですか。どうしてそんな事に」
「いや、これはただの推測でしかない。それに、うちらが住んでいる帝国が制度を廃止したからといって、他国がまだ続けていたらどっちにしても変わらない」
「たしかに……でも、他国の人間が帝国に侵入するだけでなく、人を攫う事をしていたら皇帝も黙ってはいないんじゃないですか?」
「それはどうだかな。揉め事を起こすって事は、つまりはそういう事なんだぞ? わけのわからない連中のために、国民を戦争へ向かわせられると思うか?」
「……」
アルクスは戦争を経験した事はない。当然、人を殺めた事もない。
しかし、人が死んでいく残酷な光景を幼いながらも目の当たりにしてしまっている。
それは鮮明に記憶されており、何度も夢に見てしまうほどに。
だからこそ、ミシッダの言葉の意味を理解できてしまう。
大切な家族との死別を招く原因を、皇帝であれどたったの一個人だけの判断で容易く決めてしまうわけにはいかない。
「じゃあどうすればいいんですか。僕には政治とか外交とか、そういう難しい話は全くわかりません」
「そりゃあ私だってわからないさ。騎士団を抜けて以来、ずっとアルクスと一緒に生活してきたんだぞ?」
「……たしかにそうですね」
「おい、そこはすんなりと納得するんだな」
「だって、事実じゃないですか」
それはそうなんだが『私にも威厳というものがあるだろ』、と心の中で呟くミシッダであった。
「ですけど、もしもの事があったらミシッダさんが――」
「いいや、それは約束できない話だ」
「……」
「忘れたのか? 私は国の名誉騎士団から身を引いたんだ。反対を押し切ってまでここで生活をしているというのに、力を使ってもしも居場所がバレた場合――招集される事態になるかもしれない。それに、どっちにしても専用の剣がなければ半分ぐらいの実力しか出せないんだしな」
「そういえばそうでしたね……ですけど、実力の半分だったとしても相手が百人居ようとも余裕だと思いますけど」
「それはそうだろうが、結局は武器が先に壊れるって話だよ」
「あぁー。なるほど、そういう事でしたか」
「まあだから、もしもの時が起きたとしたらアルクスがなんとかするんだな」
「僕なんかが、どうにかできるんでしょうか」
「さあ? できるんじゃないか」
「なんでそんな投げやりなんですか」
「だって、実際にそうなってみないとわからないだろう?」
「それはそうですけど……」
ミシッダは片眉を持ち上げて思う。『これだから無自覚ってやつはよぉ』、と半ば呆れながら。
「まあなんとかなるさ。一番大切なのは、アルクスが気負いすぎないって事だけだ」
「――わかりました」
「その、すんげー真面目な目線が心配だって言ってんだけどな」
アルクスは、ミシッダの言葉を理解できずに首を傾げる。
「まあいい。そろそろマーリエットが戻ってくるだろうから、次の風呂はアルクスでいいぞ」
「わかりました。じゃあその前に、少しだけ外を走ってきますね」
「ああ、行ってこーい」
アルクスはいつも、こうして体を動かし足りない日は夜も走りに行く。
ミシッダはもうその真面目さっぷりを諦めているため、もはや止める事はない。それにもういい年だし、迷うわけがないとわかりきっているからというのもある。
そんな練習馬鹿の背中を見送ったミシッダは、アルクスが購入してきたマーリエット用の服を漁り始める。
「ほほお、アルクスにしては良い感じに選べてるじゃないか。私以外にプレゼントなんてした事がないっていうのに、どういう風の吹き回しだ?」
ミシッダは「はえ~」「ははぁー」「これ、私も着られるんじゃないかな?」、と小言を漏らし続ける。
そして最後。
「こんなに沢山あるんだから、一着ぐらい貰ってもバレ――」
「バレますよ。ていうか、私の存在に気が付いていて言いましたよね、最後の言葉」
「さあ、どうだかねぇ?」
「普通に扉を開けて入ってきたんですから、嘘はやめてください」
「まあまあそう怒んなって。お姫様にとっては、こんな贈り物はただの布切れでしかないんだろうが」
「……そんな事はありません。私は、今日初めて家族以外から貰ったプレゼントに喜びを覚えました」
「ほう?」
「ミシッダさんなら経験がおありではなくて? 権力の恩恵を受けようと、気に入られるために贈られる物が嬉しいと思いますか? 私は、そういうのが気にくわなかったので全て拒否していましたが」
「うわぁ、さすがは第一皇女。やってる事がえげつねー」
「その言い方、やめてください。もしもアルクスに聞かれたらどうするんですか」
「さあ? でも、このまま隠し続けるのはさすがに無理があると思うけどな? そろそろ腹を決めて、嫌われる覚悟で伝えないと、後々になってめんどくさい事になるかもしれないぞ」
「……それはそうですけど……」
マーリエットは何も言い返せない。
ミシッダの言う通りで、マーリエットはこの心地良い関係性が大切になってきてしまい、自分の正体を打ち明ける事ができずにいる。
――言いたい事はわかっている。『身分を偽って、いつものように大切な存在として接してもらっている事が心地よくなっているだけの卑怯者』、と言いたいのでしょう。そんな事、言われなくたって私が一番わかっているわ。
アルクスの優しさを知っているから、アルクスの心の内や悩みを知ってしまったから、アルクスの親族に起きた悲劇の責任が自分にあるから。
言い訳として挙げられるものは、次々に出てくる。
しかし、それら全てに共通している事――それは"自己保身"。
――こんな楽しい日常がいつまでも続いてくれたら良いのに。と、思う自分がいるのは否定できない。実際、身分を捨ててまでその選択をしても良いとまで思ってしまっている自分がいる。どこの皇族にそんな体たらくを言って許される制度があろうか。……本当に、自分が情けない。
「さて、発破を掛けるようで悪いが悲報ってところだな」
「な、何がですか?」
「たぶんだが、追手の数が増えてきたらしい」
「……それは、本当なのですか」
「私も詳しい事はわからない。だが、アルクスが今日の帰りにそれらしい人物達を見かけたらしい。しっかりと顔も確認して、前回のやつらとは違うという確証も得ているようだ」
「どうすればいいんでしょうか、私は」
「そんな事は知らない。一番手っ取り早いのは、自分の家に手紙を出せばいいんじゃないか? そうすれば、遅かれ早かれお国の騎士団が総出で救出に来てくれるだろう?」
「だけど……」
――それは今、できない。
「悪い、少し意地悪な言い方だったな。もう、お姫様の考えは理解できた。アルクスを、自分の騎士にしたいんだろう?」
「なぜそれを……」
「まあ、騎士団を抜けた今でも情報を流してくれる人は居るって事だ。逆に言わせてもらうが、よく今の今まで自分の騎士を任命せずに無事だったな。不思議で仕方がないよ」
「本当にその通りですね。私は誰からでも笑われて当然なほど、あまりにも世間知らずのようでした。今回の件を通して、この身をもって痛いほどわかりました」
「仕方がないんじゃあないか。自分が進む方向と同じ方向を向ける人間でなければ、そもそも騎士として任命する事はできない。なぜなら、主が死ぬその時まで付き従うという絶対的な忠誠心が試されるから」
「お高くとまっていたのでしょうね、私は。『正義』だの『国民を第一に考える』だの言っておきながら、いざ行動しようとすれば何もできはしない。できなかった。本当に、情けない話です」
マーリエットの視線は下がり、右腕で左腕を掴む。
「まあでも、今回の一件はもしかしたらちょっと待てば過ぎ去るかもな」
「どういう事ですか?」
「根拠はないが、ああいう連中は数日経っても痕跡一つ見つけられないと探す場所を変える。つまり、このまま時間の経過を待つだけで、普通に村へ行けるようになるかもしれない」
「そ、そんな事が本当にあるのですか?」
「だから、根拠は何もない。だが、そういう連中なんだよ。荒くれってやつらは」
「ですけど、その話が聞けて希望を持てました」
「そうかい、それはよかった。これでアルクスと村デートができるもんな」
「デ、デデデデデートぉ!? そ、そんな――私達は結婚を前提にお付き合いしているわけでもないのに、そんな事ができるはずないでしょう!!!!」
「っかぁー、これだからお高い身分の人間はよぉ。色恋についてだけは頭が固すぎるんだよ。どんだけ硬いんだよ、鉱石かよ」
「いやだって、その……私、異性と手を繋いだ事すらないんですよ……あ、でもアルクスとだけは……でもあの時は仕方がなかったというか……」
「初心すぎんだろ」
「だ、だってぇ……」
人差し指と人差し指をちょんちょんと突かせて恥ずかしがっているマーリエットを見て、ミシッダはそれはもう盛大なため息を吐き出す。
「ああもうやめだやめだ。そんな事より、明日も稽古の続きをする」
「よ、よろひくお願いしまふ!」
「はぁ……もしもの時のために、自分の身は自分で護れるようにしておく練習だぞ。浮かれるなよ」
「はひっ!」
「それで、明日は口実作りとしてアルクスを村で剣を買ってきてもらうつもりだ。どれぐらいの重さなら持てるんだ?」
「料理が盛られているお皿ぐらいなら……?」
「ったくよぉ。これだから皇女様はよぉ。じゃあ、アルクスと同じ短剣ぐらいしか選択肢がないじゃねえか。……まあいいか。服に忍ばせやすいし、たぶん扱いやすいだろ。初心者が戦闘できるかはさておいて」
「ご、ごめんなさい……」
「まあいい。今日も早く寝とけ。アルクスの朝は早いぞ」
「わかりました」
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